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2007年 07月 01日 ( 1 )
Rain on the Roof by The Lovin' Spoonful
タイトル
Rain on the Roof
アーティスト
The Lovin' Spoonful
ライター
John Sebastian
収録アルバム
Hums of the Lovin' Spoonful
リリース年
1966年
他のヴァージョン
Jan & Dean
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ラヴィン・スプーンフルの曲はテレビや映画に使いやすいのか、Do You Believe in Magic(「魔法を信じるかい?」)、Daydream(「デイドリーム」)、Summer in the City(「サマー・イン・ザ・シティ」)、Did You Ever Have to Make Up Your Mind(「心に決めたかい?」)などを耳にしたことがあります。

ジョン・セバスチャンの声と歌い方は、あたたかくてフレンドリーな印象をあたえますし、彼が書く曲と歌詞もまたそれに合ったものです。しかも、歌詞としても音としても情景描写のうまい人なので、イメージさえ合えば、映像をうまく補強してくれるからでしょう。

このRain on the Roofも、なにかの映画で使われていそうな気がするのですが、残念ながらその記憶はありません。この曲のようにストーリーラインや情景が明瞭すぎると、映像を補強せずに、ノックアウトしてしまうからかもしれません。マッチするシーンはかぎられ、マッチした場合は「はまりすぎ」になるでしょう。

ファースト・ヴァースは、当然ながら状況設定です。

You and me and the rain on the roof
Caught up in a summer shower
Drying while it soaks the flowers
Maybe we'll be caught for hours waiting the sun

夏の驟雨にあって、ガールフレンド(恋人といいたいところですが、まだそれほど深い仲ではないことが歌詞から想像できます)と降り込められてしまった、太陽が顔を出すまで何時間も待たなくてはならないかもしれない、というわけです。

セカンド・ヴァースで「干し草の山に坐って」話していてずぶ濡れになってしまった(雷でわれにかえるまで雨に気づかなかった、という、ややリアリティの乏しいラインがあり、語り手が相手の女の子に夢中だということが強調されています)と説明があり、いまは「トタン屋根の下で」雨宿りしている、というので、二人は農家の納屋にいるのだと了解できます。

まえのヴァースに「濡れながら笑っていた」とあるので、降り込められたことをそれほど不快には思っていないことが感じられますが、サード・ヴァースでは、不快どころか、じつは雨を歓迎していることがわかります。

We can sit and dry just as long as it can pour
Cause the way it makes you look
Makes me hope it rains some more

なんだか試験問題のような、使役形を二重に使った構文ですが、ちょっと微妙なことを、うまく表現しています。きみの顔を見ると、雨宿りを喜んでいるみたいだから、もっと雨が降ればいいと思う、といっているわけです。だれにでも了解できる気分といえるでしょう。このサード・ヴァースが作者のたどり着こうとした目的地だったわけです。

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Rain on the Roofが収録されたアルバム"Hum of the Lovin' Spoonful"のジャケット

二人がどういう関係であるかという直接的な説明はいっさいありませんが、間接的にそれが浮かび上がってくるところに、ジョン・セバスチャンの作詞家としての技量がうかがえます。二人はまだ知り合って間もないけれど、もうお互いのあいだでは暗黙の了解ができている、きっかけさえあればほんとうの恋へまっしぐら、というように、ちゃんと想像がつくようになっています。

2分半のあいだにリスナーの耳とイマジネーションを捉えるには、こういう手法は非常に有効で、歌詞もヒットに一役買ったにちがいありません。

ティーネイジャー向けの音楽らしく、露骨ではない、ほのかなエロティシズムがかいま見えるところが、この曲のよいところです。どうやら彼女は二人きりで納屋に閉じこもっていることを喜んでいるみたいだから、このまま雨が降りやまなければ、きっとファースト・キスということになるぞ、という予感の歌なのです。

ティーン・ポップは直接にセックスを扱うことはない、未経験の十代の少年少女のセックスに対するあこがれと予感を歌うのだ、と書いた人がいましたが、この曲はまさしく幸せな「予感」を歌っています。語り手のジェンダーは男ですが、女の子の側から見ても、自分も経験をしてみたいと思うような状況でしょう。

歌詞ではまだ雨は降りやんでいませんが、複数のギターとオートハープを重ねた浮遊感のあるサウンドは、軒から雨だれがぽつり、ぽつりと垂れ、雷が遠くに去っていき、空に虹でも架かりそうな、夏の雨上がりを思わせる軽やかなものになっています。ラヴィン・スプーンフルというグループの持ち味であると同時に、66年ごろまではまだ濃厚に残っていたイノセンスが反映されていると感じます。

ふと思ったのですが、サウンドが雨上がりを思わせるということは、つまり、予感したことが現実になったあとの、晴れ晴れとした気分を暗示しているのかもしれません。作者はそこまでは考えていなかったかもしれませんが、そんな想像をしてしまいます。

Summer in the Cityは、アスファルトの焦げるにおいがしそうな、夏にはあまり聴きたくないサウンドですが、Rain on the Roofは、雨の日の午後に聴いていると、夕方には晴れるかもしれないな、なんて、明るい気分になってきます。
by songsf4s | 2007-07-01 13:18 | 夏の雨の歌