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The Christmas Song その3 by Booker T. & the MG's
タイトル
The Christmas Song
アーティスト
Booker T. & the MG's
ライター
Mel Torme, Robert Wells
収録アルバム
In the Christmas Spirit
リリース年
1966年
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最初にあげたヴァージョン・リストのうち、半分以上はオミットするつもりだったのですが、腹の立つものはなく(検索でヒットしても、はじめからよくないことがわかっているものはプレイヤーにドラッグしなかったのだから当たり前だが)、言及と無視の線引きはなかなかむずかしくて、ちょっと往生してしまいました。まあ、行き当たりばったりでやってみます。

◆ ブラック・シンガー ◆◆
悪いものはないとはいったものの、テンプス、スプリームズ、ジャクソン5、ミラクルズといったモータウン勢は全滅で、いいものがありません。ブラック・シンガーには向いていない、という意味ではなく、アレンジ、プレイがどれもこの曲には合っていないのです。ドラムが活躍するべき曲ではないし、ベースもあくまでも控えめにやるべきでしょう。つまり、ドラムとベースのサウンドで勝負したモータウンとしては、やりようがない曲なのです。

f0147840_2333166.jpgこのところ、フェンダーベースのシンコペーションや三連符が癇に障るようになってしまいました。中学生のとき、ラスカルズのベース(チャック・レイニーのプレイ)が、ときおり四分三連を放り込むのに仰天した前科がわたしにはあるのですが、あれは子どものときの話、四十年以上たって四捨五入で還暦ともなると、ゴチャゴチャとよけいな音を使って、ちょこまか動きまわるベースは下品だと感じます。

ベースの本分はグルーヴ、4分の表拍だけだってグッド・フィーリンはつくれます。4分の表拍で勝負できないなら、そのベースは下手なのです。四分三連のような小手先の子ども騙しをむやみにやるベースは、まず三流と思っておけば間違いありません。有名なベース・プレイヤーにその手合いが多いのはご存知の通り。

f0147840_23335427.jpgモータウンのクリスマス・ソングは、60年代終わりのものが多く、全盛期の録音はあまりありません。その弱さがこのThe Christmas Songの各ヴァージョンにもろに出たと感じます。スタッフの質が落ちて、屋台骨が傾いているのです。ベースのひどさに腹を立てているだけといえばそれまでなのですが、でも、あえていわせてもらうなら、モータウンにドラムとベース以外のなにがあるというのだ、です! 去年、テンプスのRudolph the Red-Nosed Reindeerを賞賛しましたが、あれは例外で、セヴンス・コードを使ったブルージーなアレンジであり、ミディアム・テンポだったから成功したのでしょう。

f0147840_23341948.jpgモータウンが全滅となると、ブラック・シンガーは寂しいことになるのですが、そのなかで、アイズリー・ブラザーズ盤は、歌はともかくとして、アコースティック・ギター一本のアレンジは楽しめます。とりわけ、モータウンの四分三連大馬鹿ベースを聴いたあとだと、ちょこまか動きまわるベースのないことがたいへんな福音のように思えてしまいます。

ジェイムズ・ブラウンのクリスマス・アルバムは、思ったほど頓狂ではなく、いいトラックもあるのですが、The Christmas Songは「どうだろうなあ……」という感じです。悪いとはいいませんが、とくにJBの柄に合った曲でもないような気がします。このへんはお好みなので、けっしてダメとはいいません。特定の趣味の方には向いているでしょう、という感じです。

◆ ブッカー・T&ザ・MG's ◆◆
今日はこの曲に鳧をつけるつもりなので、時間切れまでにできたところで終わりとします。よって、ここからは、いつ終わってもいいように、切り捨てるわけにはいかないものから優先して見ていくことにします。

f0147840_23373923.jpg去年のクリスマス・ソング特集で、MG'sのクリスマス・アルバムは期待はずれだった、と書きました。いかにもMG'sらしいスタイルでアレンジされた曲は一握りで、オルガンばかりが目立つスロウなレンディションが多く、「おう、なにかい、クリスマスってのはキリスト教の行事かなんかかよ」と言いがかりをつけたら、「当たり前だ、宗教行事だ」といわれて、振り上げた拳のもっていきどころがなくなり、憤懣やるかたないといった感じのアルバムです。そりゃそうでしょ、MG'sを聴こうという気分のときに、心のなかに十字架のじの字もキリストのキの字もないに決まっているじゃないですか。たとえクリスマス・アルバムだって、血湧き肉躍るビートを期待します。

しかし、ここがヴァージョン較べの妙というものなのですが、ほかのものと並べてみると、MG'sのThe Christmas Songは一頭抜きんでて聞こえます。ブッカー・ジョーンズのコピーをしたことがあるので、いまひとつ尊敬の気持ちが湧かないのですが、この曲のラインの作り方なんか、やはりみごとというべきで、ただボケッとオルガンを弾いていたわけではなかったことがよくわかります。興味深いメロディーの改変で、MG's盤Mrs. Robinsonに通じる魅力があります。

ダック・ダンという人も、ただ野太いだけかと思っていたのですが、やはり頭がいいのだということが今回のヴァージョン較べでわかりました。モータウン4種のベースがみな四分三連、二分三連を駆使して、コマネズミのように走りまわっているのに対し、ダック・ダンはドンとかまえて、大石内蔵助のように動きません。ベースというのはそうあるべき楽器なのです。

◆ オーケストラもの ◆◆
当家では、ヘンリー・マンシーニはけなさないことになっていますが、このThe Christmas Songも、やはりうまいものです。最初のリード楽器をトロンボーンにしたのも、いつもながら的確な選択ですし(こういうフワッとした曲だから合うのであって、速めの曲には向かない)、その背後で鳴っている、右チャンネルの管のアンサンブルも美しく、前半は文句のつけようがありません。

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後半もまたマンシーニらしくヴォーカル・ハーモニーをリードにしていますが、わたしとしてはこのコーラスのミキシング、バランシングが気に入りません。もっとオフにして、バッキングのような使い方のほうがよかったのではないでしょうか。マンシーニはコーラスのそういう使い方で成功している実績(たとえばCharade)があるので、なおのことそう思います。

ネルソン・リドルのThe Christmas Songは、その名もNatという、ナット・コール・ソングブックに収録されたものなので、コールのThe Christmas Songからご本尊のヴォーカルを消し、ピアノで置き換えたようなアレンジなので、カラオケといえなくもありません。しかし、中間部でのヴァイオリンはハンパじゃなくうまいですなあ。世が世なら、そして土地が土地なら、ポップ・オーケストラのセッションになど出てくるはずのないクラスの人だったりするのかもしれません。

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ジャッキー・グリーソンのものは、ある特定の層の需要に応えるためのものなので、「グリーソンにしては意外なアレンジ」などというものはありません。良くも悪くも、つねに同じ品質で、ダラッと体の力を抜いて、昔日のよしなしごとなどを思い起こすようにできています。その限りにおいては、グリーソンのThe Christmas Songもけっこうなものですが、この種のロウ・キーなラウンジ・ミュージック(つまり「もろのムード・ミュージック」)がお好みでなければ、a must to avoidです。

◆ ギタリストたち ◆◆
去年手に入れたクリスマス・アルバムでもっともうれしかったのは、アル・カイオラ&リズ・オルトラーニのSound Of Christmasでした。Ultra Loungeのクリスマス篇に入っていたHoliday on Skisがすばらしく、なんとかアルバムを聴きたいと思っていたのです。Holiday on Skisほどすばらしいものはほかにありませんでしたが、それは覚悟の前、全体としては、なかなかいいアルバムでした。

今年の夏に集中的に取り上げた映画テレビ音楽では、カイオラを褒めたり貶したり、じつに忙しかったのですが、詰まるところ、プロのギタリストというのはみなうまいので、勝負は上手い下手とは無関係なところで決まる傾向があり、そのことをいっていたのです。どこで勝負が決まるかというと、アレンジ、サウンド、録音、といった要素です。

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ギターの場合、いや、ほかの楽器もそうですが、とくにエレクトリック・ギターの場合、どういうトーンを選択(あるいは創造)するかも重要です。アル・カイオラという人も、独特のサウンドをもっていて、それが利点にもなれば欠点にもなり、それで各種映画テレビ音楽をあれこれ取り上げたときに、褒めたり貶したり忙しいことになってしまいました。

このThe Christmas Songについては、妙にいじらず、いつもの自分のサウンドでやっていて、それが楽曲に合っているので、文句がありません。こういう風に、メロディーだけを弾いて、それでも楽しませるのが、いちばんむずかしいんだよなあ、と溜め息が出ます。

f0147840_23524539.jpgチェット・アトキンズはいつものチェットよりやや控えめにプレイしています。まあ、曲調からいって、暴れるのは不可なので、当然ですが。ただ、2枚あるチェットのクリスマス・アルバムのうち、こちらは録音が新しく、バンドのレベルが落ちていますし、録音とバランシングも繊細さが足りません。モータウン同様、ちょこまか動きまわる落ち着きのないベースが癇に障ります。

トニー・モトーラという人は、50年代から60年代にかけてのNYのギタリストにとって、70年代以降のハリウッドにおけるトミー・テデスコに似た位置にあり、若い連中にとっての「親父さん」だったようです。ヴィニー・ベルはモトーラに深甚な感謝を捧げていました。トミー・テデスコ同様、面倒見のいい人だったのでしょう。

f0147840_23561549.jpgギタリストたちに慕われるには、ただ人柄がいいだけではダメです。だれもが認めるだけの力量がなくてはいけません。モトーラは、その点でもトミー・テデスコ同様、十分な資格を持っていることは、このThe Christmas Songを聴くだけでも手に取るようにわかります。じつにもってうまいものです。ただ、わたしの好みからいうと、エラ・フィッツジェラルドかなんかのように、メロディーラインを崩すのは下品で、モトーラのプレイはやりすぎと感じます。アル・カイオラやビリー・ストレンジのストイシズムのほうがずっと楽しめます。

また、60年代終わりの録音のため、モトーラ盤The Christmas Songでも、この時期の特徴である、ちょこまか動きまわる小人物ベースが、またまた癇に障ります。あの時代のシンガーやリード・プレイヤーはなにをボンヤリしていたのか、いまになると不思議です。主役の前に立ちふさがる奴は、馬鹿野郎、おまえは脇役だ、控えろ、と怒鳴りつけなくてはいけないのに。

◆ クルーナーたち ◆◆
四分三連、二分三連で動きまわる馬鹿馬鹿しいフェンダー・ベースを山ほど聴いたあとだと、たとえば、サミー・デイヴィス・ジュニアのThe Christmas Songのスタンダップ・ベースなど、じつにいいなあ、としみじみします。シンコペートは最小限、ほとんど表拍だけでやっているわけで、こういうのがうまいベースなのです。順番が逆になりましたが、サミー・デイヴィスのヴォーカルもなかなかけっこうです。

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さらに順番が逆ですが、サミー・デイヴィス盤The Christmas Songには、ほかのヴァージョンにはない前付けヴァースがあります。わたしは、たいていの場合、前付けヴァースなんてものは言わずもがなのよけいな付けたりと思っているのですが、このThe Christmas Songの前付けヴァースも例外ならず、ないほうがいい代物です。

わたしはペリー・コモとはほとんど無縁なのですが、改めて彼のThe Christmas Songを聴くと、なるほど、クルーナーの臭みはあまりない、これなら5分ぐらいはじっと聴いていられる、と思います。アルバム1枚だと、拷問でしょうけれどね。コモ盤のスタンダップ・ベースもけっこう。やっぱり、こういう曲にはフェンダーは不向きです。

よほど四分三連フェンダー・ベースに懲りたのか、アンディー・ウィリアムズ盤The Christmas Songもやはり、表拍で勝負のスタンダップ・ベースの音が心地よく感じられます。歌のほうは可もなし不可もなし、歌い上げるところをのぞけば苦にはなりません。

そろそろ時間切れですが、しまった書き落としたというヴァージョンはどうやらないようです。しいていうと、先日のリストにすら入れ忘れたアール・グラント盤がありますが、ご家庭向き安全パイで、わたしは嫌いではありませんが、強くお勧めするほどのものでもありません。同じオルガンものなら、MG's盤のほうがいいでしょう。
by songsf4s | 2008-12-24 23:56 | クリスマス・ソング