人気ブログランキング |
The Best of Earl Palmer その18

前回は、事前のリストアップなしで1964年のトラックに入ってしまったので、今後予定しているトラックのリストを以下に掲げます。例によって予告なく変更する場合があります、って、それほど大げさなもんじゃござんせんが。

41. Sam Cooke - Shake
42. The Kickstands - Hill Climb
43. The Kickstands - Side Car
44. Glenn Yarbrough - Baby the Rain Must Fall
45. The Ronettes - Born to Be Together
46. The Righteous Brothers - You've Lost That Lovin' Feelin'
47. Jan & Dean - Dead Man's Curve
48. Jan & Dean - The Little Old Lady from Pasadena
49. Little Richard - Bama Lama Bama Loo
50. The Beach Boys - Please Let Me Wonder
51. The Righteous Brothers - Just Once in My Life
52. Tim Hardin - Misty Roses
53. Lou Rawls - Girl from Ipanema
54. Jackie DeShannon - I Can Make It with You
55. Brenda Holloway - Where Were You
56. The Supremes - I Hear a Symphony
57. The Righteous Brothers - (You're My) Soul and Inspiration
58. Ike & Tina Turner - River Deep, Mountain High
59. The Monkees - Tapioca Tundra
60. Lalo Schifrin - Mission Impossible
61. Ray Charles - In the Heat of the Night
62. Lou Rawls - Dead End Street
63. Brenda Holloway - You've Made Me So Very Happy
64. Jackie Wilson with Count Basie - Even When You Cry
65. The Monkees - It's Nice to Be with You
66. Michael Nesmith - You Just May Be the One
67. Ray Charles - Eleanor Rigby

これで終わりというわけではなく、すくなくともさらに数曲は追加するつもりなので、あと30曲以上、ひょっとしたら40曲はやらねばならないようで、うひゃあ、です。

◆ Sam Cooke - Shake ◆◆
アール・パーマーのプレイだと知るずっと以前から、イントロのドラム・リックが大好きでした。タムタムとフロアタムのプレイと響きもまことにけっこうなのですが、いきなりロールで入るところが素晴らしいアイディアであり、プレイとしてもきれいです。

ShakeはTwistin' the Night Awayの直系の子孫で、サム・クックのタッチが時代遅れになっていなかった証左であり、これが最後のシングルとは、そりゃあんまりじゃありませんか、ねえ旦那、とヨヨと泣き崩れてしまいます。どうせ芸能人、世にサム・クックありと知られた稀代の女蕩し、私生活なんてどうでもいいのですが、でも、殺されるような情事はするなよ、って、いまさら手遅れですが。

f0147840_23531448.jpg

だれのアイディアか、ギターがちょっとスタックス風、つまりスティーヴ・クロッパーのようなプレイをしていて、その点もこのトラックのきわめてコンテンポラリーな味わいに寄与しています。オーティス・レディングのカヴァーも有名ですが、やっぱり、オリジナルには三歩下がって師の影を踏まずです。

Twistin' the Night Awayのときに、うっかりShakeと混同して、アブコの悪辣な商売を罵倒するというフライングをやってしまいましたが、こんどはまちがいなく、アブコが汚い手を使った曲です。ボックスからオミットしてしまったのです。You Send Meがバラッドの代表作なら、Shakeはアップテンポの代表作ですよ。そういうものをボックスからオミットするのだから、悪辣で知られた音楽業界にあっても、常識はずれの悪辣さです。

◆ The Kickstands - Hill ClimbおよびSide Car ◆◆
サーフ・ミュージックはほとんどハル・ブレインの一手販売の感がありますが、アール・パーマーも多少はやっています。キックスタンズは、安上がりやっつけ企画盤の王者ゲーリー・アシャーの「またかよ」です。

したがって、いいだの悪いだのとゴチャゴチャいうようなものではないのですが、アール・パーマーのプレイが素晴らしいおかげで、どうにかなってしまっています。これだから、アシャーのような音楽的才能のない業界ゴロでも、つぎつぎといい加減な企画盤をつくっては小銭を稼げてしまうわけですな。

f0147840_2357459.jpg

アール・パーマー以外のメンバーは、この時期のハリウッドとしては、とくにすごいわけではなく、ギターもサックスもベースも格別面白くはないのですが(ジェリー・コールのピッキングは好みではないし、サックスも、スティーヴ・ダグラスよりプラズ・ジョンソンのほうが好き)、とにかく、ドラムだけは聴きどころ満載で、ここにあげた2曲以外にも、いいプレイがたくさんあります。

Hill Climbは、スネアで16分を叩きながら、アクセントをつけるという、ドラマーとしてはときおり必要になるタイプのプレイですが、アールはもちろん、この副次的基本技をじつにきれいに、そして素晴らしくホットにやっています。

Side Carは、フランク・キャップのティンパニーとの「デュオ」でボー・ディドリー・ビートをやったところがじつに愉快。おおいに楽しめます。フィルインに失敗がなく、この日のアールは非常に調子がよかったにちがいありません。この種のチープな「またかよ企画」では、ちょっとミスったからといって、リテイクさせてくれるわけではないので、ミスなしでやっておかないと、チョンボもそのまま盤にされちゃう憂き目を見るのです。

◆ Glenn Yarbrough - Baby the Rain Must Fall ◆◆
スティーヴ・マクウィーン主演の同題映画のテーマです。これはいろいろゴチャゴチャとからまって、一時はヴィデオの入手や疑問点の解明に一騒ぎやらかした、曰くつきの曲です。

f0147840_23595916.jpgスティーヴ・マクウィーンの役柄は、売れないカントリー歌手で、なんと申しましょうか、昔のクリシェを援用すれば、「魂の彷徨」といった話でした。で、劇中、当然ながらうたうシーンがあり、バンドがつくわけですが、ドラムがハル・ブレイン、ギターがグレン・キャンベルと、スタジオそのままの豪華メンバーが小さなバーに出演します。グレンは知りませんが、ハルは俳優組合にも所属していて、エルヴィスの映画などにも出演しています。それをいうなら、アール・パーマーも映画に出演したことがありますし、ビリー・ストレンジも「ローハイド」に出たことがあります。これまた、ハリウッドという土地柄のおかげです。

これで終わっていれば話は簡単だったのですが、まだ続きがあります。この曲がハル・ブレインの回想記に付されたディスコグラフィーにリストアップされているいっぽうで、アール・パーマーのディスコグラフィーにも入っているのです。こういう場合、ふつうはどちらかがトラップで、どちらかがパーカッションというパターンが多いのですが、この曲は、わかってみれば、そういうことではありませんでした。

じっさいにトラップに坐って音を出したのはアール・パーマーです。サントラ全体がそうだとは断言できませんが、すくなくとも主題歌のBaby the Rain Must Fallは、アールのプレイです。では、ハルはなにをしたかというと、どうやら、音は出さなかったようなのです。つまり、俳優として、プレスコの音に合わせてドラムを叩くふりをしただけなのに、ディスコグラフィーに繰り入れてしまったようなのです。しかも、音とふりがぜんぜんシンクしていないんだから、おいおい、ですよ。

これでもまだ終わりではないのです。スティーヴ・マクウィーンは歌が苦手だったようで、劇中の歌(いや、主題歌はグレン・ヤーブロウの歌だから、無関係だが)は、べつのシンガーによるものです。そのシンガーが、なんとビリー・ストレンジだったのです。

f0147840_013466.jpg

これだけいろいろあると、現物を見ないわけにはいかなくなり、どうにかこうにかVHSを手に入れました。しかし、うーん、どうだろうか、でした。怒り狂うような出来ではないのですが、デッド・シリアスなドラマなのです。「知り合い」がいっぱい出ている、というお祭り騒ぎの気分で楽しむには似つかわしくない作品で、もっとノーテンキな映画だったらよかったのに、でした。スティーヴ・マクウィーンも、べつに嫌いではないのですが、この映画にはミスキャストじゃないでしょうか。前から見ても後ろから見ても、シンガーには見えませんでした。

ゴチャゴチャいろいろありましたが、アールはいいプレイをしています。ダブル・タムのどちらかいっぽうが深くていい音で録れているおかげで、味わいがあります。

◆ The Ronettes - Born to Be Together ◆◆
アールは、すでにテディー・ベアーズのアルバムのときからスペクターの仕事をしています(何回か前の記事に書いたように、To Know Him Is to Love Himはサンディー・ネルソンのプレイ)し、スペクターズ・スリー、なんていってもスペクター・ファンしか知らないスタジオ・プロジェクトですが、そのときにもストゥールに坐っています。

しかし、スペクターがニューヨークに見切りをつけ、ハリウッドに腰を据えて、フィレーズのリリースを録音するようになって以降、1年半ほどはすべてハル・ブレインのプレイでした。クリスタルズのHe's a Rebelにはじまって、クリスマス・アルバムにいたる時期です。

ロネッツの初期のヒットはみなハルのプレイなのですが、ほかの仕事をキャンセルしろというスペクターの要求を拒否したために、以後、ハル・ブレインはスペクター・セッションから「パージ」されてしまい、かわってアール・パーマーがドラム・ストゥールに復帰します。

f0147840_031790.jpg

ロネッツに関しては、アールはすでにYou Babyからストゥールに坐っていて、曲としてはこちらのほうが好みなのですが、ドラムは活躍しないので、ここではアップテンポで、派手な展開のBorn to Be Togetherのほうを選びました。この曲もなかなかけっこうで、冒頭のロニーのレンディションなど、Be My Babyとは異なる、「大人の魅力」があります。

もちろん、アールのプレイ自体もすごいのですが、やっぱりスペクターはすごいと、ため息が出るサウンドでもあります。圧倒的にドラマティックなドラム・サウンドを得るために、ほかの楽器をリヴァーブで潰してしまうのを恐れなかったのではないか思うときがあるほどです。ハル・ブレインもアール・パーマーも、スペクターのときがもっとも印象に残るプレイをしています。

で、そのフィル・スペクター=アール・パーマーの代表作の話は、当然、本腰を入れて書かねばならないのですが、本日は時間切れなので、次回にさせていただきます。


by songsf4s | 2008-11-21 23:58 | ドラマー特集