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The Best of Earl Palmer その11

ベスト・オヴ・アール・パーマー、ハリウッド篇もやっと4回目、まずは、今後予定している楽曲のリストをご覧いただきます。前回のリストは1958年までだったので、今回はそれ以後で、1959年から1963年までです。細切れで恐縮ですが、いっぺんにできるほど生やさしい数ではないので、どうかあしからず。なお、トラックナンバーが前回のリストと一致していないのは、その後、オミットした曲があるためです。

15. Earl Palmer & His Ten Piece Rockin' Band - Drum Village (Part 1)
16. Earl Palmer & His Ten Piece Rockin' Band - Drum Village (Part 2)
17. Bobby Day - Rockin' Robin
18. Chan Romero - Hippy Hippy Shake
19. Eddie Cochran - Weekend
20. Larry Williams - Bad Boy
21. Ernie Fields Orchestra - In The Mood
22. Bobby Vee - Rubber Ball
23. Julie London - By Myself
24. Earl Palmer - New Orleans Medley
25. Sandy Nelson - Let There Be Drums
26. Gene McDaniels - Tower of Strength
27. Bobby Vee - Take Good Care Of My Baby
28. B. Bumble & The Stingers - Nut Rocker
29. Herb Alpert & The Tijuana Brass - The Lonely Bull (El Solo Toro)
30. Duane Eddy - The Ballad Of Palladin
31. Ray Charles - I Can't Stop Loving You
32. Nat King Cole - Ramblin' Rose
33. Frank Sinatra - Goody Goody
34. Frank Sinatra - Pick Yourself Up
35. Bobby Vee - The Night Has A Thousand Eyes
36. Nino Tempo & April Stevens - Deep Purple
37. Jan & Dean - Surf City
38. Bobby Darin - Treat My Baby Good
39. Jan & Dean - Drag City

◆ Earl Palmer & His Ten Piece Rockin' Band - Drum Village Parts 1 & 2 ◆◆
アール・パーマーはこれ以前にも自己名義(アール・パーマー&ザ・パーティー・ロッカーズ)の盤をリリースしています。しかし、ドラマーのリーダー盤というのはそうなりがちなのですが、あまり面白いとはいえず、比較でいえば、こちらのほうが楽しめるかな、というあたりです。

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パート1と2となっていますが、長い曲を切って前後半にしたわけではなく、はじめから別々に録音されていますし、どちらのパートもテンポ・チェンジがあって、ひとつのパートのなかで、さらにパートが分かれた形になっています。どちらかというとパート2のほうが、わたしには面白く感じられます。前半のシャッフル・ビート、テンポを上げた後半で連発されるフィルイン、どちらも楽しめるプレイです。

◆ Bobby Day - Rockin' Robin ◆◆
この曲は、マイケル・ジャクソンのカヴァーのほうで知られていた時期が長かったのですが、1986年の映画『スタンド・バイ・ミー』で、目立つところに使われた(開巻まもないトゥリー・ハウスのシーン。たんにこの映画が設定した時代の大ヒット曲というだけでなく、樹の上でロビンが囀るという歌詞もちょうどいいとみなされたのだろう)おかげで、以後、オリジナルが復権しています。マイケル・ジャクソンは、ジャクソン5時代にサーストン・ハリスのLittle Bitty Pretty Oneもやっています。先日も書きましたが、ボビー・デイとサーストン・ハリスを同類と思っているのは、わたしだけではないようです。

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アールのプレイとしては、ストップ・タイムでのスネアのアクセント、およびヴァースの入口における四分三連が聴きどころでしょう。ストップ・タイムでは、邪魔な他の楽器がなくなるので、マイクが当たっていないキックの遠い音を聴くことができ、そういう時代だったのだなあ、てえんで、やや感慨あり、です。

以上で1958年を終わり、以下、1959年の楽曲に移ります。

◆ Chan Romero - Hippy Hippy Shake ◆◆
かつて世界中のアマチュア・バンドがプレイしたはずの曲で、チャート・アクションにはあらわれないところで、非常に重要な意味をもっていました。しかし、世界のアマチュアにプレイされるようになったのは、スウィンギング・ブルー・ジーンズのカヴァーがあったおかげだろうと思います。チャン・ロメロのオリジナルまでさかのぼってカヴァーした、という例は少ないのではないでしょうか。

わたしはもちろんブリティッシュ・ビートをリアルタイムで聴いて育った世代なので、当然、Hippy Hippy Shakeといえば、スウィンギング・ブルー・ジーンズだと思っていました。80年代になってようやく、チカーノ・ロックのオムニバスLPに収録されていたロメロのオリジナルにたどりつき、なんだ、ストレート・カヴァーだったのかよ、とがっかりしました。完コピといっていいほどストレートです。

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なぜカヴァーのほうが有名になったかといえば、ひとつは、単純にわれわれが無知だったせいであり、もうひとつは、コケの一念といってもよいほどの、スウィンギング・ブルー・ジーンズの素晴らしいエネルギーの奔騰のおかげでしょう。アルバムを聴くと、かなり危ないところがあって、あまり買えないバンドですが、Hippy Hippy Shakeだけは、なぜかすべてがうまくいき、スピード感とエネルギーのあるパフォーマンスになっているのです(後年のCDではフォルス・スタートが収録され、一発録りだったことがわかった)。

典拠を忘れてしまい、確認することができないのですが、かつて読んだ資料では、たしか、この曲のソロもルネ・ホールとなっていました。同じチカーノであるリッチー・ヴァレンズあたりと似たようなメンバーではないのでしょうか。アールのプレイはアヴェレージで、いつものように安定したビートの提供に徹しています。

◆ Eddie Cochran - Weekend ◆◆
ヒット曲でもなんでもなくて、エディー・コクランのベスト盤などにも収録されることはほとんどない、オブスキュアーなトラックです。それなのに、アール・パーマーが伝記のディスコグラフィーにこの曲をリストアップしたのは、それなりの理由があったからでしょう。個人的に思い出深いか、またはプレイとして気に入っているか、どちらかだと考えられます。わたしは後者だと思います。

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イントロから非常にいいグルーヴで、いかにもハリウッドのアール・パーマーらしい軽快さがあります。イントロからヴァースへの移行の際に、一拍だけのシンコペートしたアクセントを使っていますが、この一打のタイミング、強さ、ともに申し分ありません。ドラマーのうまさというのは、こうしたささやかな一打にあらわれるものなのです。

アール・パーマーとエディー・コクランははじめからウマが合い、仕事を離れたつきあいもあったと伝えられています。あるいはそういうことが、アールがプレイしたコクランのトラックが、どこがどうだというわけではないけれど、いずれも気持ちのいいグルーヴになっていることの理由なのかもしれません。人間のやることだから、気分も大事でしょう。

◆ Larry Williams - Bad Boy ◆◆
またまた、なんでだろうとなあ、と首をかしげつつ、ジョン・レノンに敬意を表して、彼がカヴァーしたラリー・ウィリアムズのトラックをもう一曲あげておきます。この時期のラリー・ウィリアムズはほとんどつねにアール・パーマーなので、ジョン・レノンがラリー・ウィリアムズのどんな曲をカヴァーしようと、結局、アールのプレイを土台にすることになったにちがいありません。

こうして書いていても、下手だなあ、面白くもなんともないのに、とまた思っています。ラリー・ウィリアムズがあんまり下手なので、ちゃんとしたヴァージョンを残しておいてあげようと思った、なんてことはないでしょうね、やっぱり。ジョン・レノンがカヴァーしなければ、この曲も、ラリー・ウィリアムズも、すっかり忘れられ、幻のシンガーになっていたにちがいなく、アールがプレイした曲を探しまわるわれわれ好事家も、入手に七転八倒していたことでしょう!

◆ Ernie Fields Orchestra - In The Mood ◆◆
ハル・ブレインも同じことをいっていますが、アールもやはり、スタジオ・プレイヤーというのは、長いあいだ町をあけると、あっというまに仕事をとられてしまうので、ライヴの依頼は、週末だけですむ近場のものしか引き受けなかった、といっています。アールは、スタジオ・プレイヤーとしてもっとやれたはずの人間が、長期のツアーに出たために、それっきりになってしまったケースをたくさん見た、ツアーに出るのは「死の接吻」だとまでいってます。

アールの仲間だった、プラズ・ジョンソン、ルネ・ホールという、スタジオに張りつきっぱなしで生きていた売れっ子プレイヤーたちは、しばしば、スタジオから出ずに稼ぐ方法はないものかと話していたのだそうです。そういう話のおりに、アールは「In the Moodをやろう」と提案してみました。ニューオーリンズでは年がら年中、白人連中に「おまえら、In the Moodを知っているか?」ときかれていたので、それなら、彼らの子どもたちだってあの曲が好きだろう、あれをロックンロール・アレンジにしてみたらいいのではないか、と考えたというのです。

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Rene Hall (right) and Cliff White playing for Sam Cooke.

ルネとプラズが、じゃあ、おまえがアレンジを書けというので、再び、アレンジャー、アール・パーマーが登場することになりました。アレンジャーの権限がおよぶ範囲は管だけだろうと思いますが、この曲は、管のみならず、ギターのアレンジにも魅力があり、こちらはおそらくルネ・ホールの仕事でしょう。ホールはサム・クックの多くの曲で、ギターをプレイしただけでなく、アレンジもしています。のちにキャロル・ケイが、いわゆるレッキング・クルーのことをアレンジャー集団だったと評しますが、パーマー=ホール=ジョンソン=フリーマンという、この時期のハリウッドを席巻した「プリ・レッキング・クルー」もまたアレンジャーの集団でした。

アーニー・フィールズはスウィング時代からのバンド・リーダーで、このときには、LAのランデヴー・レコードに所属していました。アール・パーマー、ルネ・ホール、プラズ・ジョンソンの3人は、いつもの雇われ仕事ではなく、印税を稼ぐために自分たちの手でレコーディングし、いくつかのレーベルに打診したところ、ランデヴーが関心を示し、In the Moodがリリースされることになりました。フィールズの名義になったのは、彼がランデヴー所属のアーティストであり、パーマー、ホール、ジョンソンのいずれかの名前や、または新しいバンド名をつくるよりマシだと判断されたのだろうと推測します。フィールズはトロンボーン・プレイヤーですが、In the Moodはフィールズが関与する以前に、すでに録音済みだったのでしょう。

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アール・パーマーのプレイという側面からいうと、このトラックは、彼がハリウッドに移住してからこれまでで、もっともすぐれたグルーヴのひとつと感じます。ビルボード・チャート4位という大ヒットになったのは、アール以下の面々が、他人の金ではなく、自分の金のためにホットなプレイをしたからでしょう。素晴らしいトラックです。よけいなことですが、アールはこの曲の印税で家を建てたそうです!

ここまでで1959年のトラックを終わり、次回は1960年の曲から見ていくことにします。


by songsf4s | 2008-11-05 23:36 | ドラマー特集