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The Best of Earl Palmer その10

本日は、ベスト・オヴ・アール・パーマー、ハリウッド篇その3です。おもに1958年の録音を扱います。

◆ Bobby Day - Over and Over ◆◆
われわれの世代の場合、ふつう、この曲はデイヴ・クラーク・ファイヴのビルボード・チャート・トッパーとして知っています。そういう感傷的な理由から、オミットしなかっただけで、大古典というわけでもないし(わが家には4ヴァージョンしかない)、アールのプレイもとくに抜きんでているわけでもなく、いつものように安定したビートを提供しているだけです。しいていえば、イントロおよび途中のストップ・タイムでの四分三連はちょっと魅力的です。

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DC5以外にわが家にあるこの曲のカヴァーは、スプートニクス(なんでや、てなものだが)とライチャウス・ブラザーズのものです。ご存知のように、64年からフィル・スペクターのドラマーは、ハル・ブレインからアール・パーマーに交代するので(ふつうはこの逆のコースをたどる。さすがはスペクター、つまらないところまで他人とはちがう!)、ライチャウスもほとんどすべてアールが叩いています。当然、ライチャウス盤Over and Overのドラムもアールです。

ただし、このOver and Overのようなアルバム・トラックは、フィレーズ時代のものでも、スペクターのプロデュースではなく、ビル・メドリーによるもので、どの曲もいかにもアルバム・トラックらしい、軽い仕上げになっています。

これがあったから、スペクターは安心していたのでしょうね。ライチャウスはのちにヴァーヴに移籍します。スペクターは、ほかのだれにも自分のような音作りをできるはずがないと自信をもっていたのでしょう。ところが、移籍第一弾の(You're My) Soul and Inspirationが出てみたら、スペクター・サウンドにうり二つ、しかもみごとにチャート・トッパーになってしまい、スペクターは驚愕し、腹を立てたという話が伝わっています。

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こういうことの裏側では、さまざまなファクターが働いているので、簡単に腑分けするわけにはいきませんが、プレイヤーたち、エンジニア、スタジオなどの条件が、最終的なサウンドの仕上がりに占める割合を、スペクターは過小評価していたのだと思います。スペクター以外のあらゆる人間が、それまでと同じ環境で、意図的に物真似に徹すれば、そっくりのものができてしまうのです。スペクター・サウンドは、フィル・スペクターだけがつくっていたわけではない、プレイヤー、スタジオ、エンジニアなどの力も大きかったのだ、ということが証明されたのではないでしょうか。

スペクターにはイマジネーションがあり、ビル・メドリーにはそれがないので、彼にできた唯一のことは、スペクターのイマジネーションが生み出したサウンドを、黙ってわきからくすねることだけでした。古物の縮小再生産が精一杯で、新しいものは作れません。当然、あとは尻すぼみで、ヴァーヴでのライチャウスには、ほかにめぼしいヒットはありません。しかし、皮肉なことに、同じころにスペクターのほうも尻すぼみになり、彼が強い影響力をもった時代は終わってしまいました。ケンカしても、仲良くしても、人生は短く、花の盛りは一瞬なのですな。

◆ Sheb Wooley - The Purple People Eater ◆◆
この曲については、昨年のちょうどいまごろ、ハロウィーン特集の一環として、すでに詳細に検討しています。楽曲としてご興味がある場合は、そちらをご覧ください。

ハロウィーンといえば、このThe Purple People Eaterと、ボビー・“ボリス”・ピケットのMonster Mashが二大古典と決まっていて、毎年、クリスマスのWhite ChristmasやJingle Bell並みに頻繁に、アメリカ中で流れているようです。

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まあ、そういう古典のなかの古典でもアールはプレイした、ということで、この曲については十分ではないかと思います。例によって、アールは「安定したビートの提供」に徹しています。

◆ Little Richard - Good Golly, Miss Molly ◆◆
これは本来ならニューオーリンズ篇で取り上げなければいけなかったのに、リリースが1958年だったために、見落としてしまった曲です。当落線上の曲なら、見落としたままでほうっておくのですが、これくらいのクラシックになると、無視というわけにはいきません。

わが家のHDDを検索すると、スウィンギング・ブルー・ジーンズ、ミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ウィールズ(Devil with a Blue Dress onとのメドレーだったため、邦題は2曲をかいつまんで「悪魔とモリー」された! こんな横着な邦題はほかにないのではないか?)、そしてCCRのカヴァーがありました。強烈な印象が残っているのは、やはりミッチ・ライダー盤です。子どもだったわたしは、ジョニー・ビーのキックでの8分連打に惚れました。小学校から中学にかけては、デイヴ・クラーク、キース・ムーン、ジョニー・ビー、ディノ・ダネリと、元気のいいドラマーには片端から惚れていましたっけ。

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リトル・リチャードのオリジナルは、リリースは1958年のものの、録音は1956年なので、メンバーも当然、J&Mの「ザ・スタジオ・バンド」、つまり、ニューオーリンズのレギュラーです。ニューオーリンズの8ビートがついに完成した曲、といっていいのではないでしょうか。Lucilleにはあった荒削りなところがなくなり、落ち着きと洗練の感じられる8ビートになっています。これを聴くと、LAに来た当初のアールは、いったん後退したのではないかと思えてきます。やはり、迷いがあり、「これだ!」といえるスタイルとサウンドが見つからなかったのではないでしょうか。そう感じるほど、このニューオーリンズ時代末期のプレイは光っています。

◆ Eddie Cochran - Summertime Blues ◆◆
またまた大古典です。今日は有名曲、大ヒット曲ばかりですな。この曲についても、すでに三度にわたって詳細に書いているので、ご興味のある方はそちらご覧いただけたらと思います。

『音楽の都ハリウッド』の一部(他サイトにリダイレクト)
当ブログの過去の記事1
当ブログの過去の記事2

大スターは、画面の端にうしろ姿を見せただけで、むむ、と思わせるものですが、いろいろな曲に挟まって登場すると、この曲は、イントロからしてもう「大スターの風格」があります。なんでしょうねえ、こういう魅力というのは? だれも派手なことなどしていなくて、たんにバックトラックが素で鳴っているだけなんですがねえ。要するに、これがグッド・グルーヴの力なのでしょう。

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アール・パーマー、ベースのコニー・スミス、ミューティッド・エレクトリックとアコースティック・リズムのエディー・コクラン、さらにはハンドクラップのシャロン・シーリーとジェリー・ケイプハートまでふくめ、すべてのプレイヤーのグルーヴの総和として、この心揺さぶるビートができあがったのでしょう。こういう風にすべてがうまくミックスされるセッションというのがあるものなのです。

アールは目立つようなプレイはしていませんが、いいグルーヴだなあ、と感じさせれば、それだけでドラマーとしては「勝ち」なのです。


by songsf4s | 2008-10-29 23:56 | ドラマー特集