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Georgia on My Mind by the Spencer Davis Group
タイトル
Georgia on My Mind
アーティスト
The Spencer Davis Group
ライター
Hoagy Carmichael, Stuart Gorrell
収録アルバム
Eight Gigs a Week
リリース年
1966年
他のヴァージョン
Ben Webster, James Brown, the Righteous Brothers, Ray Charles, Ray Charles & the Count Basie Orchestra, the Three Suns, Earl Grant, Kai Winding, Paul Weston, The Four Knights, Lou Rawls, Willie Nelson, Peter Cook, Van Morrison
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当地はこの三日ほど涼しい日がつづき、やれやれと一息ついています。しかし、人間というのはどこまでも身勝手なもので、こうなると、夏が終わってしまうのは惜しいような気もしてきます。ビーチボーイズのAll Summer Longに歌われたような気分ですな。

近所を飛びかっているトンボはほとんどがシオカラで、まだアキアカネは見ません。一昨日、キュウリを収穫しようと菜園に出たら、戦艦の入港のように威風堂々と飛んできたトンボがあり、ムム、何者、とにらんだら、これがギンヤンマ! 子どものときは、このトンボがどれほどほしかったことか。長いあいだ見ていなかったので、直立不動、最敬礼の気分で目送してしまいました。

◆ 自家醸造ヴォイス? ◆◆
クリス・ウェルチとスティーヴ・ウィンウッドの共著となっている、Roll with Itというスティーヴ・ウィンウッドの伝記を読み直しているのですが、改めて意外に思ったのは、小さいころ、プレイヤーとしての未来を想像したことはあったけれど、シンガーになるとは夢にも思わなかった、といっていることです。

スティーヴ・ウィンウッドといえば、なによりもまず「あの声」を思い浮かべるのですが、兄のマフ・ウィンウッドによると、スティーヴは「意識的にあの声を自分で作り上げた」のだそうです。

f0147840_04428.jpg自分の声を自分でつくる、なんてことができるだろうか、と思うのですが、スティーヴ・ウィンウッドというのは、どこまでも常人とは異なるような気もするので、半信半疑ながら、ないとも断言できないかな、と思います。印象とは異なり、じっさいには、声の質ではなく、歌い方がレイ・チャールズに似てしまったために、声自体も似ているように錯覚するのかもしれない、という気もします。

意識的にブラック・シンガーの歌い方を真似たのか、という質問に対し、ウィンウッドはこう答えています。

「答はイエスだけれど、意識的にその方向へと自分を鍛える必要はなかった。変声期よりまえの早い段階でブラック・ミュージシャンを聴くようになり、まさに変声期にさしかかった十三歳のときに歌いはじめたからだ」

スティーヴは意識的なものではないといっているものの、基本的にはマフの説を言い換えただけのことで、ブラック・シンガー、とりわけレイ・チャールズのレコードに合わせてシングアロングしているうちに、あの声に「なってしまった」といっているように読めます。とりあえずは、筋肉をつくるように、人工的に声をつくることもできるのかもしれない、ということにしておきましょう。

◆ 再掲トラック・リスティング ◆◆
さて、本日は、昨日申し上げたように、自家製ベスト・オヴ・スペンサー・デイヴィス・グループの仮想ライナーをやってみます。とうてい一日で終わるはずがなく、三回ほどに分けることになるでしょう。まずは、トラック・リスティングをもう一度掲載しておきます。昨日のリストをすこし修正して、29曲構成としました。

Dimples
I Can't Stand It
Every Little Bit Hurts
I'm Blue (Gong Gong Song)
Here Right Now
It's Gonna Work Out Fine
Midnight Train
It Hurts Me So
Keep On Running
Georgia On My Mind
Let Me Down Easy
You Must Believe Me
Hey Darling
Watch Your Step
Together Till the End Of Time
Take This Hurt Off Me
When I Come Home
Dust My Blues
On the Green Light
Neighbour Neighbour
High Time Baby
Somebody Help Me
I'm a Man
Look Away
I Can't Get Enough of It
Stevie's Blues
Waltz for Lumumba
Stevie's Groove
Blues In F

このブログをはじめてからそんなヒマがなくなってしまったのですが、以前はときおり自家製コンピレーションをつくって、友人たちに配布していました。ベスト・オヴ・グレイトフル・デッドなんか、スタジオとライヴに分け、CDにすると十数枚になるという巨大コンピレーションで、つくるほうは面白かったのですが、受け取ったほうははなはだしい迷惑だったことでしょう。

最後に挑戦しかけて、残念ながら挫折してしまったのが、SDGにはじまり、最近までの全キャリアを網羅したベスト・オヴ・スティーヴ・ウィンウッドの編集でした。トラフィック以後は簡単で、選曲も終わり、疑似ライナーまで完成していました。それなのに、なぜ挫折したかといえば、スペンサー・デイヴィス・グループ時代の選曲が難航し、どうやってもトラック・リスティングを固定できず、したがって、疑似ライナーにも手をつけられなかったのです。なぜ選曲がむずかしいかは、以下の再挑戦疑似ライナーでふれることになるでしょう。

◆ Dimples ◆◆
1964年8月にリリースされた、スペンサー・デイヴィス・グループのフォンタナからのデビュー・シングルのA面で、もちろん、ジョン・リー・フッカーの代表作のカヴァー。

f0147840_0144723.jpgしかし、両方をお聴きになった方ならご存知のように、オリジナルにはまったく似ても似つかないカヴァーです。ブルーズですからね、レンディションによってぜんぜん異なる様相を呈するわけです。わたしはブルーズ大嫌い人間なので、ジョン・リー・フッカーにはまったく興味がないし、改めてフッカー盤を聴いても退屈なだけです(HDDを検索したら、もっていたので自分で驚いてしまった。もちろん、ヴィージェイ・レコードのオムニバスに入っていただけで、わざわざ買ったわけではない)。

フッカー盤とSDG盤のちがいを一言でいえば、オリジナルが泥臭くて鈍くさくてやりきれないカッコ悪さなのに対して、SDGのカヴァーは、きわめてホットなレンディションで、中学2年だったわたしが気に入ったのも当然だと、年寄りになって聴き直しても思います。

それにしても、リリース当時、ラジオでこの曲が流れてきたのを聴いたイギリスの子どもはビックリ仰天したでしょうねえ。いや、まあ、子どもだってボンヤリしたのもいるから、最先端の動きに関心のある子どもとかぎるべきかもしれませんがね。なんといっても、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカル・レンディションに驚くわけですが、それは、このとき彼が十六歳だったからではなく、このシンガーが何歳であろうと、そんなことには関係なく、とにかく、聴いた瞬間、なんだこれは、とギョッとするのです。スティーヴ・ウィンウッドがどういう人間か十分に知っている現在のわたしが聴いてもそう感じるのだから、なにも知らない当時のイギリスのリスナーのなかには、仰天した子どもがいたにちがいありません。

f0147840_0184117.jpgしかし、時代の先をいきすぎていたのか、あるいは、ふつうに聴くには強烈すぎたのか、このシングルはこそりと音をたてることすらなく消えたいったそうです。まあ、新しいものというのは、すぐには受け容れられないものだということでしょう。

もうひとついっておくべきは、イントロからドラムとベースのグルーヴがなかなかいいことです。こういうのは50年代60年代のオーセンティックなアーバン・ブルーズにはないもので、だから子どものわたしはブルーズにはすぐに関心を失ったのです。グルーヴの悪いものは聴いていられません。

◆ I Can't Stand It ◆◆
ソウル・シスターズの64年はじめのマイナー・ヒットのカヴァーで、SDG盤はセカンド・シングルのA面として64年10月にリリースされています。デビュー盤のDimplesがヒットしていれば、こんな短いインターヴァルでセカンド・シングルが出るはずがなく、苦しさがにじみ出ています。

どっちの出来がいいかというと、わたしはDimplesのほうだと思います。それでも、ドラムが不安定なソウル・シスターズ盤にくらべれば、SDGのI Can't Stand Itは、わたしにはオリジナルよりはるかに魅力的に感じられます。

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Dimplesではギターが活躍せず、ハーモニカがオブリガートを入れていますが、I Can't Stand Itでは、ウィンウッドがギタリストしての実力の片鱗のそのまた端っこの小さな小さな破片のそのまた痕跡のそのまた残響を、ほんのチラッと、一瞬だけ、微かにのぞかせてくれています。いや、そんなに強調するほど微少なものではなく、エンディングにかけてのギターとヴォーカルのユニゾンなんか、とうてい高校生の技には思えないものです。でも、これくらいでは、当時のリスナーはウィンウッドのすごさを理解しなかったでしょう。まだ圧倒的とはいえないのです。

◆ Every Little Bit Hurts ◆◆
モータウンLAが最初に契約した地元のシンガー、ブレンダ・ハロウェイが1964年にリリースし、彼女の最初のチャート・ヒットとなった曲のカヴァー。スペンサー・デイヴィス・グループ盤は、1965年1月に3枚目のシングルのA面としてリリースされています。

これまでと同様の路線で、同時代のアメリカのブラック・シンガーのカヴァーですが、ハード&ヘヴィーはダメと見たのか、3枚目のシングルはソウル・バラッド、しかも、スティーヴはギターではなくオルガンとピアノを弾いています。こういう信念に欠ける賭け金の移動は裏目に出ることになっていますが、案の定、このシングルもダメでした。ベンチがアホというべきでしょう。

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しかし、デビューからスティーヴ・ウィンウッドの歌を聴いていた一握りのファンは、Every Little Bit Hurtsで、この少年の底知れぬヴァーサティリティーを知って、またまた驚愕したにちがいありません。わたしがあの時代にイギリスの小学生だったら、家出してでも、バーミングハムまでSDGを見にいったことでしょう。

SDGというバンドのキャリアからいうと、Every Little Bit Hurtsもまた「無駄弾」の「空撃ち」だったかもしれませんが、スティーヴ・ウィンウッドのキャリアからいえば、こういうものがうたえることを知らしめておくのはきわめて重要です。三遊派の真打ちが、好きでも嫌いでも、受けても受けなくても、「鰍沢」や「文七元結」といった圓朝作の人情噺がきちんと演じられることを証明しないと、ホンモノとは認められないのと同じ原理です。Dimplesがうたえるだけでもすごいのですが、同じ人間がEvery Little Bit Hurtsもうたえるとなれば、すごさは幾何級数的に増大し、その演者の存在に厚みと奥行きが加えられるのです。

◆ I'm Blue (Gong Gong Song) ◆◆
アイク&ティナ・ターナーのバック・シンギング・グループ、アイケッツによる1962年のヒットのカヴァーで、スペンサー・デイヴィス・グループ盤は1965年7月リリースのデビュー・アルバムに収録されています。アイケッツ盤はミディアム・スロウで、ちょっとかったるいのですが、SDGはもっとずっと速い軽快なテンポでやっています。

楽曲としてはノヴェルティーに近い感じで、それほど好みでもないのですが、間奏のギターには惚れます。いや、ビックリ仰天するようなプレイをしているわけではありません。しかし、さまざまな芸事にいえることですが、踊りでいえば、「かまえ」が美しく、「立ち姿がつま先までピシッときまっている」のです。

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たとえば、上手いドラマーというのは、音を聴かなくても、スネアをヒットするときの左手の使い方、とくに手首の柔軟性を見るだけでわかるものですが、I'm Blueにおけるウィンウッドのギターは、一小節目の第一音からすでに「音の出」がすばらしくて、うまい、と唸ります。投手でいえば「球もちのよい」タイプで、伸ばすべきところはきちんと伸ばしていて、突っ込む気持ち悪さがまったくないことも賞美に値します。

タイムというのは、訓練である程度は修正できるとはいえ、基本的には天性のものであり、十六歳のスティーヴ・ウィンウッドが、だれにもなにも教わらなくても、タイム、グルーヴはどうあるべきかをよく承知していたことが、この間奏のギター・プレイから、はっきりと伝わってきます。このタイムのよさが、プレイヤーとしての彼のヴァーサティリティーを支えたにちがいありません。

◆ Here Right Now ◆◆
デビュー・アルバムに収録されたスティーヴ・ウィンウッド作のブルーズ。推測ですが、リードギターはスペンサー・デイヴィスで、ウィンウッドはピアノとオルガンだけをプレイしたのでしょう。

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この曲での2種類のキーボードのプレイは、I'm Blueのギターほど目覚ましいものではなく、いたって地味ですが、エンディング直前のピアノは一瞬、ハッとさせられますし、レイ・チャールズ風味が濃厚なヴォーカルも、うーむ、こいつは、と唸る味があります。

◆ It's Gonna Work Out Fine ◆◆
アイク&ティナ・ターナーの1961年のヒットのカヴァーで、前出ソウル・シスターズのI Can't Stand It同様、スー・レコードからリリースされたものです。これまでのカヴァー曲のなかで、これがもっともオリジナルの雰囲気を残したレンディションといえるでしょう。

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しかし、ほかの曲にもいえることですが、ドラムのピート・ヨークとベースのマフ・ウィンウッドのプレイはいずれもピシッとしていて、ブラック・ミュージシャンのオリジナルに強く感じる、グルーヴのかったるさはまったくありません。ピート・ヨークはテクニカルなタイプではないし、ミスもかなりありますが、基本的にタイムのいいプレイヤーで、バンドのドラマーとしてはこれだけできれば十分でしょう。

アイク&ティナのオリジナルは掛け合いの面白さを狙ったものですが、スティーヴ・ウィンウッドはおおむねひとりでうたっています。じっさい、それがこのカヴァーのキーポイントで、スティーヴの歌を味わうには恰好のサンプルといえるでしょう。

まだ6曲やっただけですし、しかも、看板に立てたGeorgia on My Mindまでたどり着いてもいないのですが、集中力の限界がきたようですし、時間切れも近いので、本日はここまで、残りは明日以降ということにさせていただきます。
by songsf4s | 2008-08-24 23:59 | スティーヴ・ウィンウッド