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James Bond Theme その1 by John Barry & Orchestra (OST)
タイトル
James Bond Theme
アーティスト
John Barry & Orchestra
ライター
Monty Norman
収録アルバム
The Best of James Bond: 30th Anniversary Collection
リリース年
1962年
他のヴァージョン
Billy Strange, Glen Campbell, the Exotic Guitars, Jimmy Bond & His Sextet, Hugo Montenegro, Johnny & the Hurricanes, Count Basie, Si Zentner
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お暑うございます。昼食の準備で、正午前に菜園にキュウリをとりに出たら、陽射しにガーンと叩き伏せられそうになりました。まさに「梅雨明け十日」の陽射し、梅干し作りの最後の仕上げ、天日干しにはもってこいですが、梅干しではない人間にとっては、もってこいどころか、どっかへもってけです。

さて、昨日はマカロニ・ウェスタンの代表作をやったので、本日は60年代映画のもうひとつの一大潮流である、スパイ映画の親玉をやります。その名も、えーと、ミスター?

「ボンド、ジェイムズ・ボンド」

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◆ またしてもクレジットの問題 ◆◆
まずはサンプル音源の所在を書いておきます。You Tubeにあるものとしては、これがもっとも網羅的ではないかと思います。1962年の『ドクター・ノー』(最初の2本の邦題がゴチャゴチャになっているのだが、こちらは『007は殺しの番号』だったと思う。フレミングの原作のほうの邦題は『ドクター・ノー』だった)から、えんえんと全ヴァージョンがつながって出てきます。

カヴァーとしては、ビリー・ストレンジ、グレン・キャンベル、エキゾティック・ギターズという3種が、右のリンクからいけるAdd More Musicの「Rare Inst. LPs」ページで入手することができます。No.5がグレン・キャンベルのThe Big Bad Rock Guitar Of Glen Campbell、No.34がエキゾティック・ギターズのAll Time Greatest Hits、No.43がビリー・ストレンジのThe James Bond Themeです。

f0147840_2323435.jpg前置きをもうひとつ。この曲の作者はだれなんでしょうねえ? 昔は、モンティー・ノーマンと書いておけば問題なかったはずなのです。でも、だいぶ前に、係争中だという記事を読んだ記憶があります。そのあと、どう決着がついたのか知りませんし、そもそも、そんな事実はなく、たんにジョン・バリーが書いたのではないか、という憶測を読んだだけかもしれません。

さまざまな世界であることでしょうが、クレジットというのは、立場の強い人間がもっていくことになっています。だから、わたしは、ジョン・バリーが、じっさいには俺が書いた、というのなら、そうなのだろうと思います。すくなくとも部分的には彼が書いたのではないでしょうか。

ということで、扱いに困るのですが、今回は、いちおう、従来のクレジットにしたがって、モンティー・ノーマン作としておきます。

◆ なんとなくスパイ ◆◆
f0147840_23502259.jpg改めてJames Bond Themeを聴くと、いや、改めなくても、じつにシンプルな曲だなあ、と思います。ギターをはじめて手にしたころ、当然ながら、よく知っているシンプルなフレーズを弾いてみたくなり、たとえば、Secret Agent Manのイントロや、このJames Bond Themeをやってみました。あの当時、ギターを弾こうとしていた世界中の子どもの多くが、わたしと同じことをしたでしょう(ジョニー・リヴァーズは、どこへいっても「あなたのレコードでギターを覚えた」という若者に会う、あのフレーズがおそろしく簡単だったからだろう、といっている。たしかに簡単だが、魅力的だから、みなあのリックを弾いてみたのである)。

シンプルであることは、けっして悪いことではありません。たいていの場合、いいことです。このテーマが長持ちしたことがそれを証明しています。ホーン・ラインから考えて、コード進行は、Em-C-A7-Cを繰り返しているのでしょうが、このコード進行だってシンプルです。ただし、あそこにもある、ここにもある、というほど陳腐化したものではありません。とっさには、ほかにこのコード進行を使った例を思いつかないくらいには変わっています。

ギターのフレーズのピッチがジャンプするところは、low E-high Eb-Dですが、これもシンプルながら、そう簡単に出てくるフレーズには思えません。ピッチをジャンプしなければ、E-Eb-Dと半音ずつ下降するだけのフレーズですが、EからEbまで1オクターヴ近くジャンプさせただけで、ひどくエキゾティックな響きになるのだから、じつにもって摩訶不思議。

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メロディーではなく、「裏の」または「地の」ホーン・ラインは、B-C-Db-Cを繰り返すだけです。ここでもまた半音進行が異質性を演出しています。このB-C-Db-Cのあいだに、Eをはさんで、B-E-C-E-Db-E-C-Eとすると、Secret Agent Manのイントロ・リックに化けてしまいます。まあ、頂き物といってしまえばそれまでなのですが、こういう頂き方は、すでにひとつの芸と呼ぶべきであって、無能な人間の粗雑な盗みとは似て非なるものです。ここまでくれば、もはや独創というべきでしょう。

B-C-Db-CのあいだにEをはさむと、ニュアンスが微妙に変化して面白い響きになる、ということをだれでも思いつくかといえば、左にあらず、「瞬間の跳躍」が必要でしょう。まあ、B-C-Db-Cを2弦で弾いていて、うっかり隣の1弦(Eの開放)にピックを引っかけてしまったミスから生まれたものかもしれませんが、その場合でも、ミスをただのミスとして通りすぎず、面白い、と感じなくてはいけないのだから、やはり90パーセントの人間が見すごしてしまうことに気づいたのは才気というべきなのです。どうであれ、Secret Agent Manのイントロは、だれでも、なんとなく、「スパイ風」と感じるように、うまくつくってあったのです。

◆ トゥワンギン・ボンド ◆◆
James Bond Themeに話を戻します。アレンジとしては、いろいろ細かい飾りつけがしてあり、無駄だなんて失礼なことはいいませんが、でも、そうしたものは絶対不可欠な要素ともいえないでしょう。子どもの耳に残ったのは、B-C-Db-Cと動くシンプルながらムードのあるホーン・ライン(コードとしてはEm-C-A7-C)、そしてギターの低音弦の音でした。金管のアンサンブルによるメロディーは、副次的な要素にすぎません。

f0147840_235383.jpgOSTのギターはなかなか印象的なサウンドですが、どこかで聴いたような音でもあります。どうやってこの音をつくったかと考えると、重要なことはふたつだけ。ブリッジのすぐそばで強くピッキングする、そしてリヴァーブです。ということはつまり、ギター好きの方はもう答を出しているでしょうが、ドゥエイン・エディーとディック・デイルが合体したと考えればいいのです。

この曲がつくられた1962年には、ディック・デイルはまだLAのローカル・スター、いっぽう、ドゥエイン・エディーはイギリスでもすでによく知られていました。したがって、エディーのトゥワンギー・ギターが、James Bond Themeの基礎になっていると見ます。

ディック・デイルはフェンダーと協力して、強力なリヴァーブを積んだギター・アンプを開発するのですが、こちらはトゥワンギング・サウンドほど決定的な要素ではありません。リヴァーブそのものはすでに存在していたからです。じっさい、ドゥエイン・エディーだって、ディック・デイルほどむちゃくちゃではないにしても、リヴァーブをかけています。

わたしが盤なんか買ったこともなければ、007のなんたるかも知らなかった時代に、このギターがどう聞こえたかを想像すると、きわめて現代的な新しい音、映画音楽とは思えないほどポップ/ロック系の感触があったのではないでしょうか。

まあ、ギター以外の「構造躯体」そのものは、旧態依然たる古めかしいジャズ系のオーケストラ・サウンドで、あそこにもある、ここにもある、そこらじゅうどこにでもある、という二束三文の音です。しかし、この古めかしい背景の上に、古めかしいテナー・サックスなんかではなく、ドゥエイン・エディー風の、ということはつまり、ジャズとは完全に縁が切れている、ロック系のギターをリード楽器として載せたのは、手柄も手柄、大手柄といっていいでしょう。これがなかったら、ごくふつうのめだたない曲になっていたにちがいありません。

この曲には山ほどカヴァーがあり、明日以降に、すくなくともそのうち数種類は検討するつもりです。このところ怠惰になってきて、書き写すのも面倒だし、聴くのはもっと大変なので、「他のヴァージョン」欄は、今回も大幅に間引きして、どうせ褒めない決まっているジャズ系、管楽器系、ピアノ系はほとんどオミットしました。各ヴァージョン検討は、ギターもの、ロックンロール系が中心になります。

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by songsf4s | 2008-07-19 23:59 | 映画・TV音楽