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Fly Me to the Moon その1 by Bobby Womack
タイトル
Fly Me to the Moon (a.k.a. "In Other Words")
アーティスト
Bobby Womack
ライター
Bart Howard
収録アルバム
Fly Me to the Moon
リリース年
1968年
他のヴァージョン
別掲
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去年の秋に予告したとおり、六月はMoons & Junesと題して、月の歌、ないしはジューン・ブライド、(ひょっとしたら)ないしは、もっと大束に、結婚の歌を特集します。なぜ六月に月なのか、なぜジューン・ブライドはめでたいかというと、ギリシャ神話に起源があるのでことは面倒、委細後便ということで、本日は説明しません。そもそも、去年の六月にも書いたのですがね。

Fly Me to the Moonは、まったく説明の必要のない楽曲で、多少とも音楽を聴く方なら、とりわけ当家のお客さんのような方々のHDDには、すでに十や百や千のFly Me to the Moonが収録されていることでしょう。うちのHDDには以下のFly Me to the Moonがあるようです。

Frank Sinatra with Count Basie Orchestra
Frank Sinatra
Nat King Cole
Bobby Womack
Joe Harnell
Al Hirt
Petula Clark
Wes Montggomery
The 50 Guitars
The Three Suns
Matt Monro
Enoch Light
Laurindo Almeida
Ten Tuff Guitars
April Stevens
Dinah Washington
Eydie Gorme
Julie London
Cliff Richard
Jack Jones
Johnny Mathis
Neil Sedaka
Tony Bennett
Astrud Gilberto
The Four Lads
The Sandpipers
The T-Bones
Chris Montez
Stanley Black

シナトラのFly Me to the Moonは一種類ではなく、ライヴがありますし、ほかにも、ソースのちがいによって、同一のテイクでも複数のファイルのあるものがあります。これだけ数があると、今日中にすべて聴き直すのは不可能で、たぶん今日は取り上げてもごく一握り、ひょっとしたら、ヴァージョン検討はすべて明日以降にするかもしれません。

You Tubeに今日の看板にしたボビー・ウォマック・ヴァージョンがありますので、よろしかったらお聴きになってみてください。いや、わかっています。こんな曲、いまさら聴きたくもない、とおっしゃるんでしょう? でも、騙されたと思って、ウォマック・ヴァージョンを試してみてください。はじめて聴いたとき、わたしはひっくり返りました。

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◆ つまり換言するなら ◆◆
なにはともあれ、歌詞を見ることにします。ファースト・ヴァースとコーラスをまとめて。

Fly me to the moon
Let me sing among those stars
Let me see what spring is like
On jupiter and mars

In other words, hold my hand
In other words, baby kiss me

「月まで送りこんで、あの星々のなかでうたわせてくれ、木星や火星の春がどんなものかみせてくれ、つまり、ぼくの手をにぎって、要するに、キスしてくれということさ」

このヴァースがあったために、昨秋の月の歌特集ではこの曲を取り上げるのをためらったのです。もう六月一日、春とはいいにくいのですが、秋にやるよりはマシでしょう。

Fly Me to the Moonは、発表当初はIn Other Wordsというタイトルだったそうです。それをFly Me to the Moonというタイトルに変えてしまった犯人は特定できませんが、シナトラあたりじゃないかと思っています。

だれがコックロビンを殺し、だれがIn Other Wordsを抹殺したかはどうでもいいとしても、非英語スピーキング・ピープルとしては、このin other world=言い換えるなら、換言するなら、という硬い表現が歌のなかに出てくるのは、妙ちきりんな印象を受けます。英語としては硬い表現ではないのでしょうかねえ。よくわかりません。しかし、タイトルにしたということは、作者はこの言いまわしをポイントと考えていたことになり、やはり、歌のなかに出てくると耳立つ表現なのではないかと想像します。

でも、よく考えてみると、in other wordsの前後を等号で結べませんな。作者としては、そこに工夫したということでしょう。「つまり」といいながら、ぜんぜんつまりになっていなくて、脈絡もなく、手を握ってくれ、キスしてくれ、という可笑しさです。

◆ 忠実に訳せばtrueならず ◆◆
つづいてセカンド・ヴァースとコーラス。ナンシーに「2ヴァースの歌はいいんだよ」と教えたというシナトラ好みの、2バース、2コーラス構成の曲なので、これがラスト・ヴァースです。

Fill my heart with song
Let me sing for ever more
You are all I long for
All I worship and adore

In other words, please be true
In other words, I love you

「ぼくのハートを歌でいっぱいにして、永遠にうたわせてくれ、ぼくが思いこがれ、あがめ慕うのはきみだけ、つまり、正直であってほしい、要するに、愛しているということさ」

毎度ながら、be trueというのは嫌な表現だと思います。歌詞に頻出しながら、これほど日本語にしにくい言いまわしはないのではないかと思います。それこそ「要するに」、love meと同じ意味だとつねに思っています。そう書きたいのですが、「換言すると」といって、直後にI love youが出てきちゃうので、ここはヒジョーにやりにくいとしかいいようがありません。ともあれ、シナトラじゃないけれど、2ヴァースは歌は助かります。

◆ ボビー・ウォマックの爆破粉砕ヴァージョン ◆◆
世に「耳タコ」の曲はあまたあれど、この曲なんぞは、耳にタコができて、角質化が極度に進行し、象皮病みたいになっちゃっているといっていいのじゃないでしょうか。ということは、例によって、原曲解体爆破粉砕アレンジが好ましいということです。

よって、今日の看板はボビー・ウォマック・ヴァージョンとしました。じっさい、このヴァージョンがなければ、この曲は無視したでしょう。リリース当時はこのヴァージョンは知らず(そもそも、ボビー・ウォマックそのものが好きではなかった)、はじめて聴いたのは、ライノの60年代ソウル・ボックス、Beg, Scream & Shout!でのことでした。

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"Beg, Scream & Shout" 6枚組CDボックスで、オールドタイマーの方はご記憶だろうが、昔あった45回転盤のキャリング・ケースをそのまま模したボックスに収められている。じっさい、サイズは45回転盤用になっているので、CDの代わりにホンモノの45を入れることもできる。

いやあ、驚きましたねえ。こんなにいい曲だとは知りませんでした。というか、もう完全に耳が麻痺して、この曲が流れても、いいとも悪いとも、好きとも嫌いとも思わず、「たんなるFly Me to the Moon」という透明ななにものか、右の耳から左の耳になんら痕跡も残さず通過するだけのたんなる波動ぐらいに感じていて、音楽と思ってすらいませんでした。

しかし、ボビー・ウォマック・ヴァージョンを聴いたとたん、音楽として明確な像を結び、ちゃんとメロディーを認識したのだから、アレンジというのはおそろしいものです。

ギターのイントロからして、1小節も聴かないうちに、お、これはいいぞ、と身構えさせる魅力をもっています。いま、コピーしようとしたのですが、できませんでした。チューニングを半音上げているか、カポを使っているか、どちらかじゃないでしょうか。どうであれ、こういうプレイは、グッと気分が盛りあがります。FmからGm7にいくところが非常に魅力的です。ウォマック自身によるプレイなのでしょう。

じっさい、ヴァースに入って、管が入ってくると、うるさい、いらない、消えろ、と感じるほどギターがいいプレイをしています。もう8から16トラックの時期なので、管の抹消は可能なはずです。いまからでも遅くない、アンダブド・ヴァージョンをリリースしてもらいたいと思います。管を削除すると、R&Bらしさは失われ、ロック寄りの音になるでしょう。そうなればなったで、面白いと思うのですがねえ。

きちんとコードをコピーする時間がなかったのですが、コピーするまでもなく、ふつうのFly Me to the Moonとは、ずいぶん変えていると感じます。いまざっととったところでは、Cm7-Ab-Bb7-Eb-Eb7-Ab-G7-Cm7-Eb-Ab-Bb7-Eb-Dm-Cm-Fm-Gm7-Fm-Bb7-Eb-Cm7-Bb7といったあたりじゃないでしょうか。最後の三つはちょっと怪しいので、明日、修正するかもしれません。

いや、これだけじゃあ意味がないのですが、「ふつうの」Fly Me to the Moonのほうのコードをとるどころか、まだ数曲聴き直しただけなので、比較検討は明日以降にさせていただきます。

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キャリング・ケースを開けると、なかにはこのように、一見、ダストカヴァーに収めた45回転盤のようなものが6枚と、小さな箱がひとつ入っている。

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そのうちの1枚を取り出すと、こうなっている。一見、穴あきの45回転盤ダストカヴァーと中身のレーベルというおもむき。ロゴマークはチェス・レコードのパロディーになっていることにご注意。チェスのロゴは馬(チェスの駒)だが、ライノ・レコードだからこちらはサイを象っている。

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ダスト・カヴァーと中身はこういう関係。

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中身を完全に取り出したところ。一見、45回転盤だが、外側の溝のある部分は、プラスティックのCDホールダーにすぎず、レーベルに見えるものと、その外周がCDになっている。パアでんねんという悪凝りデザイン。

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悪凝りは盤のみにおさまらない。ライナーもこの小さな箱に入っている。

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小箱のなかにはこういうカードが入っている。

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じつはこのカードの一枚一枚がライナーで、表はアーティストの写真、裏がライナー。ついでに、トリヴィア・クイズがついていて、ゲームをすることもできる!

by songsf4s | 2008-06-01 23:57 | Moons & Junes