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Love's Made a Fool of You by the Bobby Fuller Four
タイトル
Love's Made a Fool of You
アーティスト
The Bobby Fuller Four
ライター
Buddy Holly, Bob Montgomery
収録アルバム
Never to Be Forgotten
リリース年
1966年
他のヴァージョン
Buddy Holly, the Crickets, Bobby Vee, the Hollies
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「馬鹿ソング」特集も折り返し点にさしかかり、ちょっと点検をしてみました。なにしろ、あまりの多さに、計画の立てようもなく、思いつくままに曲を選んできましたが、どんぶり勘定の上をいく「ざる勘定」でも、どうやら、取り上げるとはじめから決めていたもののうち、2、3曲ははみだしそうな気配が濃厚になってきたからです。

で、久しぶりにschedule.txtなるファイルを開いて(仕事ではメモなんか取らないぞろっぺえのくせに、遊びとなると、突如、きちょうめんになったりする)、ぜひやるべき曲、できればやりたい曲、シャレの変化球、と分けて、リストアップしようとしたところ、「ぜひやるべき」だけで24曲。四月はあと何日だっけ、などと考えるまでもなく、半数近くははみだすことになります。もはや、遊び球は投げられず、ちぎっては投げ、ちぎっては投げで、どんどんストレートを真ん中に投げ込んでいくしかないようです(といいつつ、変化球の虫はやはり騒ぐ)。

本日の曲は、Tonieさんが待ちかまえているホームラン・ボール、じっと待っていれば、かならずここに投げてくるはずだ、と考えていたにちがいない、バディー・ホリーの代表作です。だから、ボールをすこし揺らすために、看板にはバディー・ホリーではなく、ボビー・フラーを立てたかというと、左にあらず、Tonieさんは、この曲に関するかぎり、バディー・ホリーでくるか、ボビー・フラーでくるかは、五分五分と読んでいたはずです。ボビー・フラーにした理由は後段で述べることにして、歌詞を見てみましょう。

◆ ティーネイジ恋愛哲学 ◆◆
またしても構成のよくわからない曲です。どうも、コーラスはなし、でもブリッジあり、しかもそれが繰り返されるような気がするのですが、しかとはいえず、こりゃどうしたものか、です。ブリッジのように思える、転調してからのパートのほうが、ヴァースよりも長いというのもまたunusual。よって、まずはヴァースとブリッジのようなパートをつづけていきます。最初の2行がヴァース、空行をはさんだあとの4行がブリッジ、といっていいのかどうかよくわからないのですが……。

Love can make a fool of you
You do anything it wants you to

Love can make you feel so good
When it goes like you think it should
Or it can make you cry at night
When your baby don't treat you right

「だれもが恋にコケにされることがある、恋のためならなんでもしてしまうのだ、恋がうまくいっていれば、いい気分になることもある、恋人に冷たくされて、夜、涙を流すこともある」

50年代の歌なので、複雑なことはなにもいっていません。「演歌」といってもいいくらいです。

つぎはセカンド・ヴァースと考えられるパート。ここはブリッジ風パートにはつながらず、直後はギター・ブレイクになります。よって、ヴァースのみを。

When you're feeling sad and blue
You know love's made a fool of you

「哀しくて憂鬱な気分になったとき、恋にしてやられたことを覚るものだ」

どんどんいきます。間奏後のサード・ヴァースとブリッジ。

You know love makes fools of men
But you don't care, you're gonna try again

Time goes by, it's a-passin' fast
You think true love has come at last
But by and by you're gonna find
Crazy love has made you blind

「男は恋にコケにされることもある、でも、そんなことは気にもかけず、またやり直すものだ、時はあっというまに飛び去り、やがて、ついに真実の相手に出会ったと思うときがおとずれる、でも、遠からず、気違いじみた愛のために、目をくらまされていたこと気づくだろう」

最後は、日本的にはpolitically incorrectな単語の連打で、おいおい、ですが、考えてみると、おいおい、それはないだろ、といいたくなるのは、われわれではなく、昔の人たちのほうでしょう。われわれ現代人の「常識」は、たかだか半世紀前にもっていけば、笑い飛ばされてしまうような馬鹿馬鹿しいものなのです。

◆ 死せるバディー・ホリー、フォロワーを走らせる ◆◆
さて、ボビー・フラー。なんとも慕わしい人です。I Fought the Lawが衆目の一致する代表作でしょうが、この曲はもちだせるとしたら憲法記念日ぐらいしかなく(冗談、冗談)、チャンスはこの一回と見極めをつけ、バディー・ホリーをさしおいての看板となりました。

バディー・ホリー・フォロワーというのは、ジョン・レノンを筆頭に、ボビー・ヴィーだの、トミー・ローだのと、自薦他薦、あまたいますが、文字通り「衣鉢を継いだ」といえるのは、わたしはボビー・フラー以外にいないと思います。仮にあの飛行機事故がなく、バディー・ホリーが60年代なかばに活躍していたとしたら、ボビー・フラーのようなサウンドでやっていたのではないかと感じるからです。

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いや、じっさいにバディー・ホリーが5年後に生きていたら、バンドは組まず、ソロとして、もっと「大人の」シンガーになっていたでしょうが、それでも、ボビー・フラーのサウンド、元気のよさ、疾走感は、ミッド・シクスティーズ流儀で、バディー・ホリーのサウンドをアップデイトしたものと感じます。

死の直前、メインストリームへと歩み寄りはじめていたバディー・ホリーですが、生きてビートルズを見たら、もう一度、ロックンロールに回帰した可能性だって十分にありえます。そうなったとしたら、バディー・ホリーが1966年にリリースする架空の“カムバック”アルバム「Buddy Holly Sings Rock'n'Roll Hits」(このダサいタイトルに60年代中期を感じていただきたいのですがね)は、ボビー・フラー・フォーとの共演盤になるのではないでしょうか。そんな幻想を見るほど、ボビー・フラーはバディー・ホリーが60年代に転生したような人でした。

◆ 馬鹿正直な音作り ◆◆
くだらん話はおくとして、ボビー・フラーの最大の魅力は、純正なるギター・コード・ドライヴィングなサウンドです。バディー・ホリーがやりかけたことを、引き継いだと感じるのはその点です。

バディー・ホリーは50年代の人なので、グルーヴも穏やかですが、1966年ともなると、やはりガーンといきます。16分を弾きっぱなしのベース・ラインなんてえのも、なかなかオツです。ミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ウィールズだったら、キック・ドラムも16分で疾走しちゃうでしょうが、ジョニー・ビーのようにぜったいに足が痙らないドラマーはめったにいるものではないので(ほかにはジョン・ボーナムぐらいか)、それは無理な注文というもの。

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率直にいって、ドラムはうまいとはいえず、とくにイントロ・リックのもたつきなどは、気になるといえば気になりますが、良くも悪くも、これが60年代のロックンロールというもので、こういうときは、武士は相身互い、てことにします。なにしろ、66年といえば、わたしもブラバンで、はい全音符、2分、4分、8分、16分、はい、つぎはフラム、ロールなんて十年早い、と先生に怒られていたころなので、つい、共感してしまうのです。

現実のinstallationにおける瑕瑾はさておき、ボビー・フラーがなにを理想としていたかは、痛いほどよくわかります。わたしが中学のときに夢見た音も、まさにこういう号泣一直線、ちがうだろうが>ATOK、強弓一直線、ちがうってば、剛球一直線だったのです。ライヴ・バンドというのは、いっさいのギミックが使えないので、アマチュアはこういう音を目指すしかない、ともいえるのですけれどね。

f0147840_23555381.jpgボビー・フラーは、オーヴァーダブを嫌ったそうです。百パーセント完全にライヴで再現できる音を、スタジオでつくろうとしたというのです。気持はわかります。だから、スタジオ録音の瑕瑾は、ある意味で瑕瑾ではないといえます。ほとんどのバンドが、スタジオでの演奏はプロにやってもらっていた時代に、自前でやって、ここまでのことができたというのは、じつにもって立派です。バーズを聴け、ビーチボーイズを聴け、スタジオは完璧なのに、ライヴは中学生以下じゃないか、ですよ。

ボビー・フラーはそのことを知っていて、ライヴで客が失望することがないようにしたのだそうです。なんともはや、涙が出るほど誠実な人です。ほとんどの客はスタジオとライヴの呆れかえった落差に気づかないのに(ライヴというのは、聴くものではなく、見るものだった)、一握りの目利きのことを気にしていたのです。これはスターの考え方ではなく、ギタリストの考え方です。この点にも強い共感を覚えます。

しかし、ボビー・フラーが66年に没したことは、皮肉なことに、ある意味で幸運だったのではないでしょうか。66年秋に、イレクトリック・プルーンズのI Had Too Much to Dream Last Nigtがヒットしていることから明らかなように、いや、それ以前に、ブライアン・ウィルソンのPet Soundsがリリースされたことから明らかなように、ボビー・フラーが67年に生きていたら、時代の大きな流れと、自分が目指すものとのあいだに横たわる、おそるべき乖離に直面しなければならなかったでしょう。

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バディー・ホリー、エディー・コクラン、そしてボビー・フラーの早すぎる死は、じつに残念なことですし、とりわけ、ボビー・フラーの、殺人または暴行致死の疑いが濃厚であるにもかかわらず、検死解剖すらおこなわれずに、悪名高きLAPDに自殺として処理された疑惑の死は、いま読んでも憤りを覚えますが、でも、大きな歴史の枠組のなかでは、そこに「きちんと収まって」見えます。

長生きすることが幸福とはかぎらない、いや、それどころか、しばしば不幸であるのが、われわれの現実です。還暦すぎて、動かない体に鞭打ち(鍼打ち、または「針」打ちかもしれませんが)、ステージで跳ねまわっている、あのみじめなイギリスの耄碌じじいロックンロール・バンドみたいには、だれだってなりたくないでしょう。

◆ 他のヴァージョン ◆◆
MG'sのTime Is Tightが聞こえるので、残りは駆け足で。

もちろん、この曲を最初に録音したのはバディー・ホリーで、すくなくとも後年の目で見ると、彼の代表作のひとつに数えてよいものと思われます。ボビー・フラー盤を聴いたあとでバディー・ホリーにもどると、あれっと感じる点があります。ボビー・フラーのせいで、なんとなく、この曲も例のバディー・ホリー独特のパワー・コードのように思いこんでしまうのですが、じっさいには、コード・ストロークはアコースティックでやっています。ひょっとしたら、ニティー・グリティー・ダート・バンドのRave Onは、この曲からアレンジのアイディアをもってきたうえでrave upしたのか、なんて思いました。

f0147840_010718.jpgしかし、アコースティックの使い方が、もうカントリーのものとはニュアンスが異なっていて、その微妙なちがいが面白く感じられます。そもそも2本重ねているようです。重ねているといえば、バディー・ホリーのヴォーカルも、リヴァーブが深くてハッキリしませんが、すくなくともダブル、ひょっとしたらトリプルのようです。ふと、このリヴァーブをとったら、バディー・ホリーらしさの数割は減じられてしまうだろうと、よけいなことを思いました。盤というのは、本質的に「サウンドの手ざわり」なのです。

いずれにしても、本家のLove's Made a Fool of Youは、だれもがイメージする、いかにもバディー・ホリーらしい曲、バディー・ホリーらしいレンディションです。ステレオ、モノ、オルタネート・ミックスなど、数種類を聴きましたが、どれも本質的に大きなちがいありませんでした。

バディー・ホリーに取り残されたクリケッツもこの曲を録音しています。リード・ヴォーカルは、ほんの一時期在籍しただけのアール・シンクスですが、思いのほか、悪くない出来です。フロアタムがなんだかマヌケなサウンドで(チューニングが低すぎるか、ヘッドが安物)、それが馬鹿気分を盛り上げてくれます(いや、皮肉ではない、というか、皮肉は半分ぐらい)。

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クリケッツのメンバー変遷は複雑きわまるので、セッション・データを載せておく。Love's Made a Fool of Youは、クロヴィスのノーマン・ペティーのスタジオにおける最後のセッションでの録音だそうな。あとはハリウッド、NYになってしまう。

つぎは、もうひとりのバディー・ホリー・フォロワー、ボビー・ヴィー盤。ボビー・ヴィーのバッキングは、あの時代のハリウッドの手練れ、「プリ・レッキング・クルー」とでもいうべき人たちなので、ボビー・ヴィーのLove's Made a Fool of Youは、良くも悪くも、いかにもハリウッドらしいスリックな仕上がりです。

f0147840_0195934.jpgボビー・ヴィー自身も、プロデューサーのスナッフ・ギャレットも、バディー・ホリーのことは強く意識していて、そのあげくに、このI Remember Buddy Hollyなんてアルバムまでつくっていますが、そりゃ見当違いというものじゃござんせんか、ギャレットさん、といいたくなります。バディー・ホリーもイワシの頭もない、というところでつくった盤のほうが、ボビー・ヴィーはずっといいと思います。

しかし、お立ち会い、このLove's Made a Fool of Youのギターは、いったいだれだよ、とギョッとするほどうまいのです。ボビー・ヴィーにからまって出てきたギタリストとしては、ハワード・ロバーツを知っていますが、こりゃちがうでしょう。明らかにカントリー系のピッキングだし、ジャズ・ギタリストはこういうベンドはしません。

となると、候補はビリー・ストレンジ、ジョー・メイフィス、トミー・オールサップ、さらには、ジャズ出身のくせに、注文されれば、ヴァン・ヘイレン風も軽くやってみせたことすらあるというトミー・テデスコあたりでしょうか。いや、トミーはないでしょう。うーん、だれだろう……。ビリー・ザ・ボスか、ジョー・メイフィスか。とにかく、好みのギターです。ボビー・ヴィーはどうでもよくても、ギターだけでも聴く価値のあるヴァージョンでしょう。

イギリスにも、バディー・ホリー・フォロワーは山ほどいます。というか、バディー・ホリーの蒔いた種は、アメリカではなく、イギリスで大輪の花を咲かせたというべきでしょう。たとえば、そう思わない人もたくさんいるでしょうが、キンクスのYou Really Got MeやAll Day and All of Nightなどの初期のヒット、そして、その影響を受けた初期のフーの「パワー・コード」は、みなバディー・ホリーの直接、間接の影響下に生まれたとわたしは考えています。いかん、前置きなんか書いているひまはなかったんだっけ。

f0147840_0234889.jpgで、ホリーズというグループは、そもそもバンド名からして、バディー・ホリーにちなんだもので、はじめから、俺たちはバディー・ホリー・ファンだと宣言しています。そのくせ、絶頂期にはバディー・ホリーの影響なんかチラとも見せなかったのは(まあ、パワー・コードは使ったし、「パワー・ポップ」の始祖ともいえるバンドなので、そういう意味ではバディー・ホリーの甥っ子ぐらいの雰囲気がなくもないが)、戦略だかなんだか知りませんが、考えてみるとおかしな話です。

戦略だったのだとしたら、そのままにしておけばいいものを、手遅れになってから、バディー・ホリー・ソングブックを出しているのは、なんともしまらない話で、結果も、なんだか気の抜けた代物です。わたしはホリーズ・ファンですが、どうも困ったアルバムなんですよ、これが。それでも、この1980年のアルバムBuddy Hollyのなかでは、Love's Made a Fool of Youは、Maybe Babyと並んで、マシなほうの出来です。Peggy SueやThat'll Be the Dayなんて、額に青筋が立ち、脳天から湯気がでますぜ。

◆ Young and Innocent Days ◆◆
耄碌してきたらしく、最近は同じことばかり書いていますが、バディー・ホリーとボビー・フラーの声を聴いていると、Young and Innocent Daysという、キンクスの歌が頭のなかに流れます。なんでしょうねえ、この若さの魅力というのは。彼らの声には、スーパーボウルの余興に出てきた老醜のストーンズの汚穢感とはまったく正反対の、初夏の昧爽のような清涼感があります。

1966年、子どもたちは、自分とさして年齢の変わらぬ若者たちの若々しい声を聴きながら、大人になったら、自分たちもああいう風になろうと決心しました。還暦になって、フットボールのオマケで、よろよろステージを這いまわる未来なんて、ほんのかすかにも思いませんでした。老醜無惨哉。バディー・ホリーも、ボビー・フラーも、あの若さで死なねばならないのは、さぞかし無念だったでしょうが、いまのわたしには、いいときに死んだと思えてなりません。
by songsf4s | 2008-04-14 23:56 | 愚者の船