Fools Rush In その3 by Brook Benton
タイトル
Fools Rush In
アーティスト
Brook Benton
ライター
Johnny Mercer, Rube Bloom
収録アルバム
40 Greatest Hits
リリース年
1960年
他のヴァージョン
Rick Nelson, James Burton, Frank Sinatra, Glen Miller, Lesley Gore, Julie London, Dion & the Belmonts, Harry James, Doris Day & Andre Previn, Jo Stafford, the Flying Machine, Lita Roza, Bobby Hackett, Elvis Presley
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今日もまたチョンボ訂正からです。一昨日、リック・ネルソンは、Fools Rush Inのあと、つぎの大ヒットであるGarden Partyまで8年もかかった、なんて書いてしまいましたが、じつはFools Rush Inの直後にFor Youがトップ10に入っていました。この2曲の順序を逆に記憶していたための謬りでした。謹んで訂正いたします。The Very Thought of YouやShe Belongs to Meは、はじめから「大ヒット」にカウントしていないので、これはチョンボならず。

◆ グレン・ミラー盤 ◆◆
さっそく昨日のつづきで、残りのFools Rush Inを並べてみます。

もともと、この曲を最初にヒットさせたのはグレン・ミラーで、フランク・シナトラの最初のヴァージョンと同じ1940年にリリースされています。グレン・ミラーの魅力は管のアンサンブルにあるわけで、とくに木管の独特のミックスのしかたと(サックス群の上にクラリネットが乗る)、その結果としてのやわらかい響きで売ったといえるでしょう。この曲では、ミューティッド・トロンボーンも使っているようで、グレン・ミラーの他の曲よりいっそうやわらかいアンサンブルになっています。大ヒットもうなずけるサウンドです。

f0147840_23515155.jpgシナトラの1940年盤と同じ年のこのグレン・ミラー盤は、シナトラ盤とほぼ同じテンポで、全体のムードも似ています。「スウィング時代のバラッド」のテンポ、遅めのミドルといったあたりで、スロウではありません。スウィング・バンドが好きなのは、「ほんとうのスロウ・バラッド」、踊るに踊れないテンポのものはないことで、トミー・ドーシー楽団(つまりシナトラの40年盤)も、グレン・ミラー楽団も、これより遅いテンポでやることなど、チラとも思いつかなかったでしょう。

残念ながら、以後、この曲のテンポは落ちていきます。「スロウの50年代」に入ってしまうからです。このブログをはじめたせいで、50年代の録音と正面から向き合うことになり、おかげさまで、もとからあまり好きではなかったスロウ・バラッドが、天敵に思えてきました。50年代のスロウ・バラッドをどんぶりに山盛りにして聴いていると、そろそろ死んでもいいか、なんて気が滅入ってくるので、とりあえず50年代の録音は棚上げにし、あとで余裕があったらふれることにします。50年代を通じて、楽しいヴァージョンは皆無です。

◆ 中興の祖ブルック・ベントン ◆◆
50年代を通じて、まっしぐらに転落の道をたどったFools Rush Inが、アップテンポのロッカ・バラッドとして奇蹟の復活をするのはいつなのか、そこが気になったのですが、年代順に並べてみて、明瞭にわかりました。1960年のブルック・ベントン盤でよみがえったのです。このヴァージョンがなければ、Fools Rush Inは骨董屋でほこりをかぶることになり、歴史の闇に消えていたでしょう。

f0147840_23571335.jpgブルック・ベントン盤Fools Rush Inは、ビルボード・チャート24位までいった、まずまずのヒットなのですが、うちじゅうひっくり返しても、この曲が録音された経緯についてはわかりませんでした。まあ、それも無理はありません。わたしだって、Fools Rush In史において、ブルック・ベントン盤が決定的な転回点だったと気づいたのは、つい三日前のことなのですから!

深く考えずにブルック・ベントン盤Fools Rush Inを聴いていると、ベントン向きのアレンジじゃないなあ、女の子に歌わせたほうがいいサウンドだ、なんて思います。なぜそう感じるのか、理由を必死で考えたのですが、ジョーニー・サマーズのJohnny Get Angryしか思いつきませんでした。

もっとそっくりのものがあったように思うのですが、ほかに出てきたのはマージョリー・ノエルのDans Le Meme Wagon(「そよ風に乗って」という邦題だったと思うが、自信なし)ぐらいで、聴き直してみると、アッと驚く瓜二つとまではいきませんでした。そもそもこれは66年のヒットで、ベントン盤Fools Rush Inのあとに録音されています。そして、それをいうなら、ジョーニー・サマーズのJohnny Get Angryも1962年のヒットなのです。

ブルック・ベントンのキャリアのなかでは、やや浮いている感のあるFools Rush Inの高速アレンジがどこから出現したのはわかりませんが、汚れきった曲を洗濯するには荒療治しかない、という自然の哲理(なわけがあるかよ)にしたがって、まったくちがう曲に変身させようとしたのではないかと推測します。「みごとなアレンジ」も重要ですが、こういう「ドラスティックなアレンジ」によって、瀕死の楽曲が一命をとりとめることがあるのだなあ、と感銘を受けます。

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Brook Benton with Lesley Gore

この天使も怖じ気をふるう大胆な試みは、いつも目配りのするどいライノのアンソロジーのライナーの書き手にすら(相応の理由があって)無視されてしまいましたが、一粒の麦となって、3年後のリック・ネルソン盤でたわわに穂を実らせます。

50年代のあいだにたるみにたるみきったFools Rush Inのネジを、ベントンが思いきり締め上げなければ、この曲は息絶えていたにちがいありません。ベントン盤の出来不出来をいう前に、そのことを強く感じます。リック・ネルソン盤Fools Rush Inをインスパイアすることで、ブルック・ベントン盤は大きな役割を果たしたのです。

◆ レスリー・ゴア盤 ◆◆
リック・ネルソンのFools Rush Inときびすを接して、レスリー・ゴアもFools Rush Inをアルバム・トラックとしてリリースしています。

今日はまちがえないようにと、ボックスのセッショノグラフィー(老眼にはこれがつらい)で確認したところ、1963年9月21日にNYのA&Rスタジオで、クウィンシー・ジョーンズのプロデュース、クラウス・オーゲルマンのアレンジ(初期のレスリーのトラックはつねにこのコンビ)で録音されています。

f0147840_04790.jpgリック・ネルソン盤の録音日時は1963年8月15日、9月にはすでにホット100にチャートインしているので、ブルック・ベントン>リック・ネルソン>レスリー・ゴアという時系列順序です。しかし、レスリー・ゴアは、9月にリックのヴァージョンを聴いて、そのままレコーディングしたと、にわかに断定するわけにはいきません。レスリーは、アルバム・トラックとして、相当数のスタンダードを録音しているので、たんに、そういう流れで出てきた可能性もおおいにあります。

そのへんの道筋は、アレンジから読み取れる場合もあるのですが、この曲については判断できません。クラウス・オーゲルマンは腕のいいアレンジャーで、レスリー・ゴアとアントニオ・カルロス・ジョビンの二人は、オーゲルマンのほうに足を向けて寝られないはずです。

そして、腕のいいアレンジャーというのは、わたしごときが易を立てたところで、黙って坐ればピタリと当たる、なんてぐあいに、あっさり底が割れるような譜面は書かないのです。いくら筮竹をひねっても、「いかにもオーゲルマンらしい、いい譜面だ」なんて卦しか出ないのですな、これが。

よって、当たるも八卦当たらぬも八卦の山勘でいっちゃいますが、クウィンシー・ジョーンズとクラウス・オーゲルマンは、レスリーのセカンド・アルバムの選曲をした段階では、リック・ネルソン盤Fools Rush Inのことは知らなかったのだと思います。とくに近縁性のあるサウンドではないからです。

では、50年代を引きずった堕落アレンジかというと、そこはオーゲルマン、半チクな人間なら、レスリーのために書かれたオリジナル曲だと思ってしまうような、オーセンティックな「ゴア=ジョーンズ=オーゲルマン」サウンドのアレンジを書いています。結論として、どのヴァージョンにも似ていない、いかにもこの時期のレスリー・ゴアらしい、嫌味なところの皆無な、さわやかないいトラックに仕上がっています。

昔から贔屓なので、レスリーの不利になるようなことは、わたしは拷問されてもいわないのですよ。まことにけっこうなトラック、文句ございません。リック盤がヒットしていなければ、シングル・カットしてもよかったと思うほどです。しかし、日の出の勢いのこの時期、レスリーがシングル曲に困るなんてことはなかったので、たとえリック盤がヒットしていなくても、この曲が45回転盤になる可能性はほぼゼロだったでしょう。スタンダード曲はあくまでもLPの埋め草です。埋め草にしては、ゴージャスなサウンドですが。

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(left to right) Quincy Jones, Millie Small and Lesley Gore

それにしてもうまいなあ、と思うのは、弦のピジカートによるオブリガートになにを重ねているのか、何度聴いてもよくわからないことです。たぶん、マリンバとフルートないしはピッコロではないかと思うのですが、もうひとつぐらいは隠し味を入れているかもしれません。こういうところが、一流の一流たる所以です。

レスリーについても書くべきですが、なんせ世に名高い「馬鹿の女王」(すまん、レスリー)、この特集の主役といってもいいシンガーです。まだ何度も登場する予定なので、委細別便にて。

◆ ハリー・ジェイムズほか ◆◆
以上で、タイピングの手間をかけるに足るヴァージョンはすべて見ました。以下、時間の許すかぎり、その他のヴァージョンをつまみ食いします。

f0147840_0194483.jpgどうやら1940年の録音と思われるハリー・ジェイムズ楽団ヴァージョンも、悪いものではありません。ビッグバンドの時代だから、厭世自殺をしたくなるような気の重いサウンドではありません。ただ、グレン・ミラー盤のゴージャスな厚み、トミー・ドーシー盤のシナトラのヴォーカルのような、きわだった魅力がないだけです。でも、ハリー・ジェイムズのプレイがお好きな方は、それなりに満足できるでしょう。

上の「箱」のなかには、ディオン&ザ・ベルモンツと書いたのですが、ディスコグラフィーでみると、どうやらディオンのFools Rush Inは、ディオン単独名義のアルバムAlone with Dionが初出のようです(ディオンのキャリアがややこしいのはファンの方ならご存知でしょう)。たしかに、ベルモンツのバックコーラスは聞こえません。

f0147840_021113.jpg1961年リリースとなっていますが、前年のブルック・ベントン盤の影響は皆無で、50年代を引きずったアレンジのスロウ・バラッド。うっそー、それはないだろう、です。ベルモンツのときのスタイル(もちろん、WondererやRunaround Sueのイメージ)でやったら、ひょっとしたら面白いものができたかもしれませんが、「おれ、ほんとうはジョニー・マティスになりたかったんだ」みたいなヴァージョンで、裏切り者、この50年代の手先めが、と指弾したくなります。60年代きっての突出した堕落Fools Rush Inです。

多くのシンガーは、どこかで「大人の音楽」をやりたがるものなんですが、それが考え足らずのコンコンチキだというのです。ほら、小林信彦がいっていたでしょう。コメディアンというのは、みんな、どこかで森繁になりたがるって。あれです。問題外。ロックンロール・シンガーがクラブ歌手の真似なんかして、トチ狂ったのか、おまえは。

フライング・マシンとは、あのフライング・マシンのことか、と気になさっている方がいらっしゃるでしょうから、確認しておきます。そうです、あのSmile a Little Smile for Meのワン・ヒッターです。邦題は「笑ってローズマリーちゃん」でしたっけ? 「ちゃん」はわたしの妄想かもしれませんが。ときおり、あまりのことに、自分の責任であるかのように赤面してしまう邦題というのがありますなあ。

f0147840_0221598.jpgフライング・マシン関係の音源を断簡零墨にいたるまで集めたという、だれも買わないような盤がありまして、それを試聴しただけなのですが、彼らのFools Rush Inは、案外、悪くありません。どうやらデモらしくて、バッキングもアコースティック・ギターとボンゴ(ひどい音。手が痛むのをいやがって、指先だけで叩いている。横着者めが!)とベースだけというもので、ハーモニーもあちこちで外していますが、インティミットな雰囲気があるのは買えます。

なんだか、友だちのうちにいったら、アンプなしのリハーサルの最中で、思わず、頬をゆるめて聴いてしまう、というような雰囲気です。中学のとき、よそのバンドの練習を覗きこんでは、チャチャを入れたのを思いだしました。懐かしい雰囲気があります。こんな褒められ方では、フライング・マシンの連中としては心外でしょうけれど、デモまで聴いてやったんだから、文句をいいなさんな。

◆ エルヴィス・プレスリー&ジェイムズ・バートン ◆◆
エルヴィスのFools Rush Inは、70年代ボックスWalk a Mile in My Shoesには収録されていないのですが、ボックス付属のセッショノグラフィーにはもちろん記載されています。それによると、いや、書き写すのは面倒だし、読めそうな大きさなので、JPEGにします。

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ご覧のように、一週間で30曲録音しているのだから、すごいものです。アルバム2枚半です。

ジェイムズ・バートンの名前が先頭にありますが、この時期のエルヴィスのセッショノグラフィーでは、バートンが参加している場合はつねにそうなっています。一介の平プレイヤーではなく、バンド・リーダーとして雇われたという話なので、スタジオでもバートンがリーダーシップをとり、おそらく、セッション・シートに、ギタリストとしてのみならず、「セッション・リーダー」としても記載されていたのでしょう。それで、セッショノグラフィーでも先頭に書かれているのだと推測します。

それはともかく、逆に気になってくるのは、ジェイムズ・バートン盤Fools Rush Inの録音日時です。ライナーには1971年リリースとしか記載がないのですが、エルヴィスのセッションがキャンセルされたために、プロデューサーのフェルトン・ジャーヴィスの決定で、バートンのソロ・アルバムの録音にその時間を使うことになった、というのだから、エルヴィスのセッショノグラフィーに手がかりがありそうです。

で、この時期の録音状況をにらんでみました。71年リリースだと、70年録音の可能性も排除できないので、70年を見ると、9月のセッション(先日取り上げたSnowbirdもこのときに録音された)がありますが、バートンは参加していないので、これはオミット。

71年のナッシュヴィル・セッションは、3月、5月、6月の3回で、そのすべてにバートンは参加しています。このいずれかのときに、エルヴィスの体調が悪くなり、予定がキャンセルされたのでしょう。Fools Rush Inを収録した一連のセッションは30曲もやっているので、体調はよかったのではないかと推測されます(まあ、30曲の強行スケデュールのために過労で倒れたという推測もできるでしょうけれど)。

f0147840_0264749.jpgとなると、3月か6月。これじゃあ、どっちのヴァージョンを先に録音したのか、やはり判断できません。よって、またしても当たるも八卦当たらぬも八卦の山勘をいいますが、バートンがリック・ネルソンの昔のヒット曲を録音したのを聴いて、エルヴィスもFools Rush Inをやってみようと思いたったのではないかと考えます。バートンにとって、Fools Rush Inは昔なじみの曲、エルヴィスに思いださせてもらうまでもないからです。

長々と脇道の話をしているので、ははあ、と勘づかれた方もいらっしゃるでしょうが、これも褒められるような出来ではないのです。キーも同じAで、基本的には、リック・ネルソン盤を踏襲したアレンジです。ジェイムズ・バートンがいるのだから、まあ、当然でしょうが、アレンジの手間をかけていないことから、本寸法のトラックではなく、ことのついでに録音しただけの、アルバムの埋め草だと感じます。

バンドのグルーヴも気になります。バートンのソロ・アルバムとちがうプレイヤーがいるとすると、ドラムのケニー・バトリーです。バートンのソロは軽快なのに、エルヴィスのトラックはなんだか足を引きずるようなところがあるのは、ドラムのちがいかもしれません。バトリーはタイムがlateなのです。

この曲で面白いのは、エルヴィスがどんな気分でリック・ネルソンのヒット曲をカヴァーしたのかという、その心中のほうです。リックがGarden Partyの大ヒットで、ふたたび脚光を浴びるのは72年のことなので、「おい、リッキー、最近はどうしてる、がんばれよ」といった気分でしょうか。エルヴィスはリックのドラマのファンだったそうです。

◆ ふたたびリック・ネルソン ◆◆
まだいくつかヴァージョンがのこっていますが、もうよかろう、です。50年代の女性シンガーのものは、わたしには退屈で、最後まで聴き通すことすらできません。いつも褒めるジュリー・ロンドンも、Fools Rush Inについては、とくにいうべきこともなし。

結論として、わたしが面白いと感じたFools Rush Inは、リック・ネルソン、ジェイムズ・バートン、フランク・シナトラ40年盤、レスリー・ゴア、グレン・ミラー、フランク・シナトラ47年盤、ブルック・ベントンです。

f0147840_0441832.jpg書きながら、ずっと流していて、やはりリック盤になると、イントロを聴いた瞬間、これだ、とワクワクし、リックの歌が出てくる前に、もうグルーヴに乗っています。

左チャンネルがかなり混んでいるので、正確に聴き取れているかどうか自信がありませんが、ブラシによるスネア、ハイハット、カウベル、フェンダー・ベース、テレキャスター、アコースティック・リズム、そしてピアノという編成のようです。この時期のピアノはもうジーン・ガーフではなく、レイ・ジョンソンでしょう。あとはツアー・バンドのメンバーのみでしょう。意外にいいグルーヴなのが、アコースティック・リズムです。いつものようにリックのプレイだとしたら、ブラシのみならず、ここでもセンスのよさを見せたことになります。

リック・ネルソンは、まだ十六歳のときに、売り込みに来たエルヴィスのバンドとやってみて、使えないと判断し、ジェイムズ・バートンを選択したくらいで、非常にすぐれたリズミック・センスの持ち主なのです。リックの仕事が決まった直後に、バートンとカークランドがエルヴィスのバンドの連中に会い、「すごい話があるんだ、リック・ネルソンが俺たちを雇ってくれたんだぜ」といったら、すっと場がしらけた、という話が残っています。フォンタナやムーアらは、リックに断られたばかりだったのです。

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The first line-up of the Rick Nelson Band. (left to right) James Kirkland, Rick and James Burton

バートンの、シンコペーションを強調した、オブリガートとカッティングの中間のようなプレイも、タイムのよさがあらわれていて、これも全体のグッド・グルーヴに寄与しています。レイ・ジョンソンと推測されるピアノは、「上のほう」の味つけをやっていて、サウンドに明るさ、華やかさを加えています。

総じて、必要なものが適切に、過不足なく配置されていて、アレンジャーとエンジニアの名前が知りたくなります。アレンジャーだけは、いつものようにジミー・ハスケルとクレジットされていますが、エンジニアの名前がわからないのは、じつに遺憾です。

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ジミー・ハスケル。あちこちでいろいろな証言を残していて、ハリウッド音楽史研究者にとっては非常にありがたい人物。ハスケルとリック・ネルソン・バンドについては面白い話があるが、この特集で、リックはもう一度登場する予定なので、今回は出し惜しみした。

リック・ネルソンの初期のトラックは、エイブ・“バニー”・ロビンのマスター・レコーダーで録音されていましたが(エンジニアもオーナー自身)、このスタジオが「近代サウンド・レコーディングの父」デイヴィッド・パトナムのユナイティッドに買収されてしばらくたってから、リックも「親元」のユナイティッドに引っ越したそうです。

したがって、Fools Rush Inも、ユナイティッドでの録音にちがいありません。それなら、このバランシングも当然でしょう。御大パトナム自身がみずから卓に坐るのは、ナット・コールだの、ビング・クロスビーだのという、パトナムに挨拶したい大物が来たときだけだったようですが、パトナム門下にも腕のいいエンジニアがたくさんいました。

いつも思うのですが、すぐれたトラックには、その土地の音楽的インフラストラクチャーが反映されているものです。リック・ネルソンのFools Rush Inには、音楽都市ハリウッドが黄金時代のとば口に立ったことを感じさせる、なんともいえない華やかさがあり、それがつねにわたしの耳を引っぱるのです。

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Rick Nelson Sings "For You" リックが契約を更新せず、デッカに乗り換えたことに腹を立てた、リックのもとのレーベルであるインペリアルのルー・チャドは、さまざまな嫌がらせの一環として、Rick Nelson Sings for YouというまぎらわしいタイトルのLPもリリースした。引用符のあるなしなどどうでもいいようなものだが、このアルバムに関しては、デッカ盤を指す場合には引用符を落としてはいけない!

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by songsf4s | 2008-04-03 23:55 | 愚者の船