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Out in the Cold Again by Sam Cooke
タイトル
Out in the Cold Again
アーティスト
Sam Cooke
ライター
Rube Bloom, Ted Koehler
収録アルバム
The Man Who Invented Soul
リリース年
1961年
他のヴァージョン
Ferlin Husky, Dean Martin, Franky Lymon & the Teenagers
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昨日は、外は極寒だけれど、室内は暖炉と恋人のおかげで暖かいという、トミー・ローのIt's Now Winter's Dayでしたが、本日は、外に出るとすごく寒い、という歌です。

そういう曲はきわめて稀だとはいいませんが、スタイル、アプローチのまったく異なるヴァージョンがそろいました。メイン・ストリームあり、ドゥーワップ風あり、カントリーあり、ブルース風あり、じつにヴァラエティーに富んでいます。

◆ シェルターの外に出てみれば ◆◆
まずはどんな曲か、歌詞から見ていきます。各ヴァージョンで微妙に異同があるので、ここではサム・クック盤にしたがいます。

The song that you sang so sweetly
You called it our love refrain
Now it's gone and I'm left completely
I'm out in the cold again

「きみが甘くうたったあの歌、わたしたちの愛のリフレインといっていた歌は、もうどこにもない、ぼくはすっかり見捨てられ、寒い外へと放りだされてしまった」

というわけで、冬の歌かどうかはちょっと微妙で、寒い野外というのは、たんなる比喩かもしれません。

I dreamed that our love would linger
But just memories remain
I gaze at that ringless finger
Looks like I'm in the cold again

「ぼくらの愛はずっとつづくのではないかという夢を見ていた、でも残ったのは思い出だけ、リングをはずした指をじっと見つめていると、寒い外に放りだされたことをしみじみと感じる」

ということは、これは破れた結婚の歌ということになります。こんどはブリッジ。

So true, it hurts my pride
To step aside for somebody new
But deep down inside my whole world depended on you

「まったく、新しい相手のために脇に退かなければいけないのにはプライドを傷つけられる、でも、心の奥底では、ぼくのすべてはきみしだいだったのだ」

なんとなく、butという逆接の接続詞が落ち着き悪く感じます。概念的には、二つのセンテンスが順接になっているか、または、接続詞で結ばないほうがよいもののように思えるのです。なにかbutでつながなければならない理由があったのではないかと思い、しばらく考えてみましたが、結局、わかりませんでした。

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Out in the Cold Againを収録したサム・クックのMy Kind of Blues。管見ではCD化されていない。

サード・ヴァース。

I wanted your arms around me
To shelter me from the rain
But now I'm back where I started
Out in the cold again

「ぼくの躰に腕をまわして、雨から守ってほしかった、でも、いまや振り出しに戻って、外の寒さのなかにいる」

なんだか奇妙なヴァースです。男が女を守る、という常識は通用しないようで、おやおや、です。しかも、振り出しが外だというのだから、いよいよもって奇妙。まあ、この曲の「外」と「寒さ」は、直喩ではなく、暗喩であって、パートナーがいない状態のことをいっているとも受け取れるので、たんに、もとのようにひとりになってしまった、といっているだけかもしれませんが、男と女の役割の逆転が語られていることから、直喩である可能性、つまり、男は文無しの風来坊で、女性に拾われた、という設定なのかと解釈したくなります。

◆ サム・クック・ヴァージョン ◆◆
各ヴァージョンの検討に移ります。まずは看板に立てたサム・クック盤。イントロからセヴンス・コードを使っていて、ややブルーズ寄りのアレンジになっています。ファーリン・ハスキーのヴァージョンとは、メロディーもコードもかなり異なっています。

f0147840_0191299.jpgヴァースの冒頭は、ハスキー盤では、G-C-G-F-E-Cというコード・チェンジを使っているのに対し、サム・クック盤は、イントロでは同様の進行でやっているのに、歌に入ると、Cをオミットし、G7で押し通しています。ここは、GでもCでもかまわないという箇所ではなく、ハスキー盤のメロディー・ラインではEの音を、ただの経過音としてではなく、メロディーが降りてきた落ち着き場所として伸ばしているので、Cにいかないのであれば、このEも使えません。だからサム・クックは、ファーリン・ハスキーとまったくちがうラインをうたっています。

ハスキー
G-G(オクターヴ上がる)-F-E

クック
B-D-E-D-B-G-B(このBを伸ばして、スラーで最後に小さくGに落ち着かせる)

両者ともキーはGなのに、まったくラインがちがいます(サム・クックのEは、一瞬の経過音で、これくらいならコードがGのままでも衝突しない)。歌詞がなければ、同じ曲には聞こえないでしょう。このあとの、G-F-Eという、魅力的に響くコード・チェンジをサム・クック盤も採用しているので、ああ、同じ曲なのだなと感じます。

f0147840_0201059.jpgファーリン・ハスキーとサム・クックのスタイルのちがいというより、カントリーとブルーズの文化のちがいそのものを感じるような、アプローチの差がここにはあります。ハスキーのものはカントリー・バラッドなのに対し、クックのものは、ブルーズをベースにしたバラッド「のようなもの」になっています。スラーでメロディーを動かすのも、カントリー的ではないのかもしれない、と感じました。

サウンド面でいうと、サム・クック盤の管のアレンジには魅力がありますが、それ以外にはどうということはなく、彼のシンギング・スタイルを際だたせる曲と感じます。サム・クックのカタログには、自作曲をはじめ、すぐれた曲が山ほどあるので、Out in the Cold Againは、アルバムに入っていると目立ちませんが、コンテクストから切り離すと、なかなかいい曲だということがわかります。

◆ ディノのキャラクター ◆◆
f0147840_0211665.jpgファーリン・ハスキー盤とフランキー・ライモン盤は、前者は明確にたしかめられないものの、どうやら同じ1957年の録音またはリリースと思われます。曲がつくられたのは1930年代らしく、どうしてこの時期に、カントリー・シンガーとドゥーワップ・シンガーに同時に取り上げられたのかはよくわかりません。

ハスキーは、カントリー・シンガーに多い美声の持ち主で、素直に、やりすぎないように、きれいにうたっています。上述のように、サム・クックとはまったく異なるアプローチですが、これはこれで悪くないと感じます。マーティー・ロビンズと同系統の嫌味のないスタイルだからでしょう。

f0147840_0225532.jpgフランキー・ライモンは、いわば天才少年だったわけで、十五歳の時に録音したこの曲も、その卓越したヴォーカル・テクニックのショウケースになっています。美声とテクニック、ともに申し分ありません。でも、ジャクソン・ファイヴおよびソロ初期のマイケル・ジャクソンなどにも同じことを感じますが、子どもが大人の歌を大人っぽくうたうことには、つねに違和感と痛々しさがともないます。

マイケル・ジャクソンなんかカスに見えるほどうまいシンガーだけに、フランキー・ライモンのOut in the Cold Againには居心地の悪さをいっそう強く感じます。歌詞はどう見ても、もう若くない男の話なのですから。こういう歌を少年にうたわせると、どうしても「芸当をさせる」という見せ物的なムードが生まれてしまうことが気に入りません。マネージメントによる「児童虐待」といっていいのではないでしょうか。

f0147840_0235827.jpgその点、ディノのOut in the Cold Againでは、まさにこの歌詞が想定したであろう、ちょっとやつれの見えはじめた遊び人の肩をすぼめた姿が、音のなかから立ちあらわれてきます。年齢を重ねないとうたえないタイプの曲がある、ということを改めて教えられます。奇妙に感じると書いたサード・ヴァースですら、ディノがうたうと、彼がつねにまとっていた遊び人のキャラクターのおかげで、なるほど、そういうことか、と納得してしまうのだから、歌というのは不思議なものです。

これはすでに何度も取り上げたアルバム、Winter Romanceに収録されています。いま勘定してみたら、このアルバムで、まだ取り上げていないのはあと3曲を残すだけで、こうなったら、全曲取り上げようか、なんて思いました。スタイル、サウンドとしては、いつものディノで、ハスキー盤からカントリー風味を取り去り、メインストリーム色を打ち出したようなものです。オーケストレーションには、ちらっとゴードン・ジェンキンズ的イディオムが使われていたりして、アレンジャーの名前を知りたいところです。
by songsf4s | 2008-01-30 23:56 | 冬の歌