人気ブログランキング |
Stella Blue by Grateful Dead その2
タイトル
Stella Blue
アーティスト
Grateful Dead
ライター
Robert Hunter, Jerry Garcia
収録アルバム
The Grateful Dead Movie Soundtrack
リリース年
1981年(録音・撮影は1974年)
他のヴァージョン
a studio verison and live versions of the same artist, a symphonic version by Russian National Orchestra (conducted by Lee Johnson)
f0147840_2354236.jpg

◆ 74年録音の3ヴァージョン ◆◆
さて、歌詞の検討は終わったので、こんどは各ヴァージョンの比較です。もう、イヤになっちゃうほどたくさんあるんですけれどね。まず、もっとも興味深い、Steal Your Face、The Grateful Dead Moovie Soundtrack、Dick's Picks Volume 7という3種のアルバムに収録された、1974年録音のヴァージョンについて。

f0147840_005048.jpg昔から好きなStella Blueは、悪名高きライヴ・アルバムSteal Your Faceに収録されたヴァージョンです。このダブル・アルバムではじめてこの曲のライヴ・ヴァージョンを聴き、いい曲だなあと思いました。それまではスタジオ盤しか知らなかったので、「悪くない曲」ぐらいの認識でしかなかったのです。

f0147840_030579.jpg今回、ほかのものもいっしょに並べて聴き直してみましたが、やはり、このヴァージョンは心に染みる、という年来の考えに変わりはありませんでした。このアルバムの評判の悪さは、なによりもまずマスタリングがよくないこと、そして、感心できないトラックがいくつか収録されていることからきていると思います。デッドの全作品をリマスターした2番目の12枚組ボックス・セット(1973年のグレイトフル・デッド・レコード設立以降、アリスタ時代までが対象)Beyond Description 1973-1989から、このアルバムがオミットされたのは、不当な扱いと感じます。デッドは野球チームであり、ゲームには負けても、いいイニングがあるのです。

もうひとつ、抜きんでてよいと感じるのは、やはりEyes of the World 同様、The Grateful Dead Moovie Soundtrack収録ヴァージョンです。ガルシアのヴォーカルとギター、それにバンド全体のプレイはもちろん、マスタリングもていねいなので、文句がありません。やはり、このアルバムというか、この映画はクラシックです。

Steal Your Faceも、The Grateful Dead Movie Soundtrackも、ともに74年に録音されたStella Blueを収録しているので、全体としての雰囲気は近いものの、細部はずいぶん異なっています。もっとも大きいのはビル・クルーズマンのタムタムのサウンド(Soundtrack盤のほうがよい)、そして、キース・ゴッドショーが、前者ではエレクトリック、後者ではアコースティック・ピアノを弾いていることです。

Steal Your Faceヴァージョンに昔からなじんでいるとか、これではじめてこの曲の真価がわかった、といった過去の経緯をとっぱらって、可能なかぎり「無心に」、もう一度両者を並べて聴いてみました。僅差でThe Grateful Dead Movie Soundtrackヴァージョンのほうが出来がいいかもしれません。

f0147840_024999.jpgうちにはもうひとつ、Dick's Picksという、アーカイヴ・テープ放出シリーズの第7集(調べてみると、すくなくとも第36集まではリリースされているらしい!)に収録された、「Stella Blueの当たり年」である74年産のヴァージョンがあります。これはややテンポが遅めですが、やはり悪くない出来です。しかし、Steal Your FaceとThe Grateful Dead Movie Soundtrackがあれば、Dick's Picks 7は不要のように思います。

◆ その他の年のヴァージョン ◆◆
f0147840_042312.jpg残りのヴァージョンもひととおり見ておきます。73年のWatkins Glenヴァージョンはスタジオ録音と同じころのものです。ボブ・ウィアは、スタジオ録音の段階では、曲に対する理解が行き届かないことがあるという趣旨のことをいっています。Stella Blueに関しては、ウィアのこの言葉はそのまま当てはまるような気がします。記録によると、デッドはこの曲を72年からライヴでやっていたようですが、翌73年のWake of the Flood(スタジオ録音)およびWatkins Glenヴァージョンの段階では、まだ「これだ」という方法が見つかっていないと感じます。

しかし、ジェリー・ガルシアは、Europe '72というライヴ・アルバムではじめてリリースされたRamble on Roseなどの曲について、リファレンスとして、ちゃんとスタジオ録音を残しておくべきだった、ということをいっています。これまた、たしかにそうだ、とうなずける言葉で、73年録音のスタジオ盤、Wake of the FloodのStella Blueは、出来とはかかわりなく、必要なことだったと思います。このヴァージョンが他と異なっているのは、ガルシアのスペーシーなペダル・スティールをフィーチャーしている点で、意図としては、このレンディションも理解はできます。

f0147840_0101794.jpg

f0147840_015012.jpg

f0147840_0173531.jpg
上から、国内盤LP、Wake of the FloodのレーベルA面、レーベルB面、そしてライナーの一部

この曲が好ましい姿へと変化しはじめるのは、73年12月19日に録音されたDick's Picks Volume 1収録ヴァージョンからのことです。あっさり流すような歌い方から、やや感情移入を強くした歌い方へ、そして、強弱のアクセントをすこし強くしたプレイへと変わりはじめています。しかし、この日にかぎっていえば、ちょっとテンポを落としすぎのように感じます。

f0147840_0261054.jpg
f0147840_0263636.jpg

So Many Roads収録ヴァージョンは78年の録音なので、アレンジそのものがすこし変化していますし、これまたかなりテンポを落としていて、うちにあるものではもっとも遅いヴァージョンです。ビル・クルーズマンもほかのヴァージョンでは使っていない、フロア・タムによる強いアクセントを入れたりして、ちょっと変わり種ヴァージョンです。セカンド・ドラマーのミッキー・ハートの復帰後なので、装飾的なタムの音も聞こえます。悪くはありませんが、とくに好きなヴァージョンでもありません。エンディングにかけてのジェリー・ガルシアのギターが、ほかのヴァージョンでは聴けない、トレモロ・ピッキングによるコード・プレイで、そのへんが魅力ではあります。

Dozin' at the Knickという、1990年のライヴもあります。いずれ、そのへんのことをくわしく書く機会があるかもしれないので、いまは簡単に触れるだけにとどめますが、わたしはブレント・ミドランドというキーボード・プレイヤー/シンガーが大嫌いで、彼が加わった1980年以降のデッドは、あまり聴く気がしません。

もうひとつ、一度、デッドをやめたミッキー・ハートが、70年代終わりに復帰しているのですが、彼の第二期のプレイというのもあまり好きではなく(Live/Deadなどの彼の第一期はよかった)、ドラマーはビル・クルーズマンひとり、キーボードはキース・ゴッドショーという、1972年から76年までのデッドが好きで、これが彼らの全盛期だと思っています。

でもまあ、Dozin' at the Knick収録のStella Blueは、ブレント・ミドランドがいた時代の録音としてはマシな部類です。ガルシアのヴォーカルには衰えを感じますが、後半のギターのインプロヴは、若いころとは大きくスタイルがちがう(使用ギターも異なる)ものの、これはこれで悪くないと感じます。

f0147840_0274166.jpg
f0147840_028465.jpg

同じ曲のさまざまなライヴ・ヴァージョンを集め、聴きくらべるなんていうのは、ひどくばかげたことに見えるかもしれませんが、グレイトフル・デッドを聴く楽しみというのは、こういうところにもあると思います。アーカイヴ・テープやプライヴェート録音が聴けるようになったことで、デッド・ヘッズの「寿命」が大きく延び、まだしばらくのあいだは楽しめることでしょう。

ひとつ書き忘れていたことがありました。リー・ジョンソンという人が、デッドのさまざまな曲をもとに、シンフォニーを書いています。その一部がStella Blueをモティーフにした楽章で、いちおう試聴してみました。デッドの曲でクラシカルなアレンジができるものがあるとしたら、筆頭にくるであろうトラックなので、それらしいものにはなっています。でも、クラシック・ファンは聴かないでしょうね。聴くとしたら、病膏肓に入ったデッド・ヘッズではないでしょうか。悪くはないけれど、だからといってわざわざ聴くほどのものでもない、と感じます。
by songsf4s | 2008-01-13 23:55 | 冬の歌