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Father Christmas by the Kinks
タイトル
Father Christmas
アーティスト
The Kinks
ライター
Ray Davies
収録アルバム
Come Dancing With the Kinks: The Best of the Kinks 1977-86
リリース年
1977年
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◆ いいだしかねて…… ◆◆
キンクスのレイモンド・ダグラス・デイヴィスは、わたしにとってはもっとも重要なソングライターです。中学のときから聴きつづけ、いまでもロックンロール史上最高の作詞家と思っているのだから、たぶん棺桶に入るときも、まだ同じように思っていることでしょう。

f0147840_00783.jpgレイモンド・ダグラスは、その長い長いキャリアのなかで、クリスマス・ソングのようなものを2曲だけ書いています。ひとつは本日のFather Christmas、もうひとつはアルバム、Arthur or the Decline and Fall of the British Empireに収録されたAustraliaという曲です。

後者は、「クリスマス・ソング」といっては強引の誹りをまぬかれないものです。We'll surf like they do in the U.S.A., we'll fly down to Sidney for a holiday, on a sunny Christmas dayという一節が、クリスマスに関係するだけだからです。もっとも、わたしのような得手勝手な人間は、あっさり「RDのクリスマス・ソングのひとつ」といってはばかりませんが。

じゃあ、本日のFather Christmasは、正真正銘のクリスマス・ソングか、というと、これがまた、すくなくとも、ふつうの人が楽しいときに聴く曲ではないのはたしかです。ダウナーなのです。まあ、レイモンド・ダグラスがストレートなクリスマス・ソングを書くはずもなく、彼の長年のファンとしては、これくらいのダウナーは当たり前と受け取るのですけれどね。

とまあ、そのような事情があって、ついに本番の特集のあいだはこの曲を持ち出すことができず、特集の尻尾、フェイドアウトというか、コーダというか、はみ出した場所に配置することになりました。

The Kinks - Father Christmas


◆ トナカイの災難 ◆◆
それでは歌詞を見ていきます。やや長めですが、Baby It's Cold Outsideのようなことはありませんから、しばらくご辛抱を。ファースト・ヴァース。

When I was small I believed in Santa Claus
Though I knew it was my dad
And I would hang up my stocking at Christmas
Open my presents and I'd be glad

「幼いころはサンタクロースを信じていた、もっとも、それが父親だということはわかっていたけれどね、クリスマスには靴下を吊し、プレゼントを開けては喜んだものさ」

dadとgladの脚韻はなかなかです。RDらしさをチラリと感じます。それにしても、この幼時の回想は、のちの嵐の予感をすでにはらんでいます。つづいてセカンド・ヴァース。

But the last time I played Father Christmas
I stood outside a department store
A gang of kids came over and mugged me
And knocked my reindeer to the floor

f0147840_013937.jpg「でも、最後にサンタクロースを演じたとき、つまりデパートの外にサンタの恰好をして立ったんだけれどね、そのとき、子どもの一団がやってきて、俺に襲いかかり、俺のトナカイを床に殴り倒してしまったんだ」

長じてサンタのアルバイトをする語り手は、あまり仕合わせのよい人生は送っていないのでしょう。そこにこの設定のポイントが隠れていると感じます。弱者が弱者に襲いかかる構図です。

◆ サンタの災難 ◆◆
以下はコーラス。いくぶん変形しながら、以後、繰り返し歌われることになるパートです。

They said:
Father Christmas, give us some money
Don't mess around with those silly toys
We'll beat you up if you don't hand it over
We want your bread so don't make us annoyed
Give all the toys to the little rich boys

「奴らはこういうんだ、サンタのおっさん、金を寄こせよ、あんな馬鹿みたいな玩具で俺たちの邪魔をするんじゃねえぞ、そんなもの渡したら、ぶちのめしてくれるからな、ほしいのは現ナマさ、だから邪魔するのはやめろ、そんな玩具なんか、みんな金持ちの小僧どもにやっちまえ」

breadはもちろんパンのことです。そのまま受け取っても結果は同じことですが、ここは俗語の「現ナマ」の意味でいっているのでしょう。

f0147840_03475.jpgこういうことがらというのは、時代にかかわらず存在したのですが、昔はそれをストレートに表現しなかったわけで(60年代のこのタイプの曲として、ロイ・オービソンのPretty Paperを取り上げています)、その点に時代の変化を感じます。

サード・ヴァース。

Don't give my brother a Steve Austin outfit
Don't give my sister a cuddly toy
We don't want a jigsaw or Monopoly money
We only want the real McCoy

「俺の弟に『600万ドルの男』の扮装なんか寄越すんじゃねえぞ、妹に可愛い玩具もいらない、俺たちはジグソー・パズルも、『モノポリー』ゲームの玩具の金もいらない、ほしいのはホンモノだけだ」

スティーヴ・オースティンは、ドラマ『600万ドルの男』でのリー・メイジャーズの役名だそうです。知りませんでしたが。われわれが幼いころ、『月光仮面』の扮装をして遊んだのと同じようなことなのでしょう。ウルトラマンだの、仮面ライダーだの、それぞれの世代に、それぞれのお好みがあるでしょうが。

◆ 玩具のかわりにマシンガン ◆◆
フォース・ヴァース。

But give my daddy a job 'cause he needs one
He's got lots of mouths to feed
But if you've got one, I'll have a machine gun
So I can scare all the kids down the street

「でも、うちの親父に仕事は寄こせ、親父には仕事が必要なんだ、食わせなければならない口がいっぱいあるんだからな、でも、おまえがもっているなら、俺にマシンガンをくれ、街にいる小僧どもみな震えあがらせてやるんだ」

えらいことをいう子どもですが、よそごとといってはいられない状況が日本にも伏在していて、ちょっと怖さを感じます。この歌を書いてからずいぶんたってからのことですが、レイ・デイヴィスは、連れの女性の財布を奪った男を追いかけ、脚を撃たれたそうです。ひょっとしたら、そのとき、自分がかつて書いたこの曲のことを思いだしたかもしれません。

RDの父親は長いあいだ失業していたと自伝に書かれています。RD自身、若くして失業し、職業安定所にいって、父親にばったり会ってしまったときのことを、父の胸中を思いながら、感慨深げに回想しています。

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最初のものとはいくぶん異なるブリッジ。

Father Christmas, give us some money
We got no time for your silly toys
We'll beat you up if you don't hand it over
We want your bread so don't make us annoyed
Give all the toys to the little rich boys

「サンタのおっさん、金を寄越しな、くだらない玩具なんかどうでもいいんだよ、金を寄越さないなら、ボコボコにしてやるからな、俺たちがほしいのは金だ、だから邪魔すんじゃねえ、そんな玩具なんか、みんな金持ちの小僧どもにやっちまいな」

最後のヴァース。

Have yourself a merry merry Christmas
Have yourself a good time
But remember the kids who got nothin'
While you're drinkin' down your wine

「みなさんには愉快な、愉快なクリスマスをどうぞ、どうか楽しいひとときをお過ごしください、でも、ワインを飲みほすときには、なにひとつもたない子どもたちのいることをお忘れなく」

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◆ 有害な正直さ ◆◆
レイ・デイヴィスは、カクテル・パーティーで思わず本音をいってしまうような人なのだと思います。他人のネクタイを褒められず、首にぶら下げるより、そこに首をぶら下げるほうが似合う、などといってしまうタイプの人です。じっさい、自伝のなかで、パーティーは嫌いだとはっきりいっていますし、ひどいパーティーのことも書いています。

f0147840_093878.jpgそれが彼とキンクスのキャリアに大きな災いをもたらしたこともありましたが(不愉快なことをしつこくいうアメリカ音楽家組合関係者を殴り倒し、以後、アメリカ市場から長いあいだ閉め出されたのもそのひとつ)、ひとつだけはっきりいえることがあります。正直で、誠実な人間であり、きれいごとの嘘っぱちはいわない、ということです。

クリスマスにこんな曲を聴きたいリスナーがいるとは、レイモンド・ダグラスも考えてはいなかったでしょう。それでも、こういう曲を書いてしまう人なのです。RDはほとんどつねに、Right place, wrong timeまたはWrong place, right timeの人でした。しかし、人々の目が同じところに集まっているときに、ふと、その反対側に視線をやることこそ、鋭敏な詩人の最大の資質です。

せっかく、きれいにクリスマス・ソング特集をやってきたのだから、こんな曲、持ち出さなければいいのに、と思いつつ、もっとも愛するソングライターの、ダウナーな曲を取り上げずにはいられないのだから、RD同様、わたしもWrong place, right timeかもしれません。「本番」が終わるまで日延べしたことが、わたしのせめてものみなさまへの気遣いです。


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キンクス
Come Dancing: Best of Kinks 1977-86 (Hybr) (Dig)
Come Dancing: Best of Kinks 1977-86 (Hybr) (Dig)
by songsf4s | 2007-12-27 00:04 | クリスマス・ソング