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Baby It's Cold Outside その2 by Ann-Margret with Al Hirt
タイトル
Baby It's Cold Outside
アーティスト
Ann-Margret with Al Hirt
ライター
Frank Loesser
収録アルバム
Beauty and the Beard
リリース年
1964年
他のヴァージョン
Dean Martin, Johnny Mercer with Margaret Whiting, Carmen McRae with Sammy Davis Jr., Buddy Clark with Dinah Shore, Ray Charles with Betty Carter, Avalanches, Jimmy Smith & Wes Montgomery,
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この記事は、もともとひとつだったものを、エクサイト・ブログの文字数制限のために、二つに割った後半部分です。先に前半部分をお読みくださったのちに、以下をお読みになっていただければ幸いです。

◆ ディーン・マーティンのオリジナルと偽「新録音」 ◆◆
まだどれを看板に立てるか決めていませんが、最終候補は2種、例によって、わたしの大好きなディーン・マーティンのヴァージョン、そして、アン=マーグレットとアル・ハートのデュエットという勝負です。

f0147840_0264950.jpgディノはもうはまり役というしかありません。彼のためにあつらえたような曲です。ただし、ちょっと問題があります。すくなくともオリジナル盤はデュエットではないのです。

ディノのBaby It's Cold Outsideには2種類のヴァージョンがあります。ただし、ディノのヴォーカル自体は同じテイクです。どういうことかというと、最近になって、古いディノのヴォーカルに、新しいバックグランドを付け加え、べつにうまくもないし、雰囲気なんかまるっきりない女性シンガーとのデュエットに仕立てたものがあるのです。

f0147840_0304414.jpg会社がゴミ箱に捨てた古いトラックについていえば、わたしの耳にはまったく問題があるようには聞こえません。グルーヴはいいし、弦のアレンジはすばらしいし、フルートのオブリガートと間奏も立派なものです。これに問題があると感じるのは、近ごろの極端に低音を持ち上げたバランシングに慣れて、耳が馬鹿になった人間だけです。

問題があるとしたら、オリジナルの「マウス」役が女性コーラスだということです。でも、他のヴァージョンとは異なり、これはあくまでも「ウルフ」役のディノが主なのだから、ディノのキャラクターを浮き上がらせるには、むしろこのほうが効果的だと判断したのでしょう。わたしはオリジナル録音を支持します。

f0147840_031544.jpg確認できたかぎりでいうと、「新」録音を収録しているのは、Forever Coolという最近の編集盤だけです。デザインがいいので、ちょっとほしくなってしまうでしょうが、中身はすべて、Baby It's Cold Outsideと同様、「新」録音のデュエットばかりのようです。それ以外の盤はオリジナルを収録しているようですが、ディノのクリスマス・アルバムは種類が多く、毎年、シーズンになると新しいものが加えられています。そのなかの一枚は、改作盤を収録しているといっているブログがあったので、ご注意ください。

◆ アン=マーグレットとアル・ハート ◆◆
ディノ盤は「ウルフ」が主役ですが、ほかは「マウス」すなわち「可愛い子ちゃん」のほうが主役か、もしくは男女対等でやっています。

女性が目立っているものとしては、なんといってもアン=マーグレット盤が代表です。これまたディノ盤同様、新録音があり、相手役がだれだったか、最近の男性シンガーになっているようですが、オリジナルの「ウルフ」はアル・ハート、あのトランペッターです。といっても、ここではあのすばらしいトランペットはなしで、ヴォーカルのみですけれどね。



アン=マーグレットですから、どうしたってお色気たっぷりで、口では帰る、帰るといっているけれど、これならもう一押しすれば泊まるな、と思わせる雰囲気になっています。それがこのヴァージョンの最大の魅力です。

f0147840_0363148.jpgこの曲のカヴァーのなかには、「露骨」なものがあるそうです。でも、結局は「ウルフ」の企みも懇願も無に帰すのが構成の根幹なので、あまり露骨にやっては面白くないでしょう。アン=マーグレットのレンディションが「露骨」なほうの限界ではないかと思います。彼女の歌い方なら、男に言い寄られるなんて日に何回もあること、めずらしくもないという美女、相手を傷つけないあしらい方も承知している女性、という感じがします。期待だけはもたせてくれるのです。残念ながら、実体をともなわない空頼みですが!

いや、それにしても、すばらしい声の持ち主だなあ、といまはじめて聴いたように感心してしまいました(小学校のときから聴いていたのだから、いくらなんでも空々しい)。ボビー・ジェントリージュリー・ロンドンについては、当ブログでは声を大にして推奨してきましたが、アン=マーグレットもこのクラスに加えようと思います。

◆ 懇願する狼たち ◆◆
「ウルフ」をコミカルに演じるタイプのヴァージョンもあります。

うちにあるものでは、まずジョニー・マーサーとマーガレット・ホワイティングのヴァージョンがそうなっています。調べがついたかぎりでは、これがオリジナル録音と思われます。マーガレット・ホワイティングの歌い方は、ぜんぜん「期待」をもたせてくれません。「おもてなしありがとう」というところでさえ、なんだか冷たく聞こえますし、I'll take your handsのところでは、小さな悲鳴まであげています。相手の反応を読めずに、うっかりもう一押しなどしたら、平手打ちを喰らいそうな気配すらあります。

Margaret Whiting & Johnny Mercer - Baby Its Cold Outside


こういう状態では、男としては、ディノみたいにクールにかまえているわけにはいかず、泣き落とし戦術しかなくなります。How can you do this to meのところでは、ほんとうに泣きが入っちゃいます。こうなると、「そんなひどいことしていいのかよ」というディノ盤を想定した解釈は通用しません。「そんなひどいことしないでくれよ、頼むから」というニュアンスへと変化しているのです。いや、じつに面白い歌詞です。

こういうコミカルな面は、シンガーとしてのマーサーの持ち味なのだと感じます。そのことは彼のJingle Bellsのところでもちょっとふれました。

f0147840_0493376.jpgカーメン・マクレーとサミー・デイヴィス・ジュニアのヴァージョンでは、「ウルフ」はさらに滑稽の度を増しています。「マウス」役がカーメン・マクレーなので、「未経験」には感じられず、大人がたわむれているようなヴァージョンです。いやあ、ニュアンスが千変万化する、じつに面白い曲ですねえ。

後半、サム・ザ・ウルフは、いろいろな声色を使い、大手搦め手から、いや、それどころか、立ち上がったり、ひざまずいたり、上下動まで加えて、なんとか口説き落とそうとしますが、相手は海千山千、かどうかは知りませんが、小娘ではないので、笑って取り合いません。いや、一カ所、サムの大熱演がよほど可笑しかったらしく、カーメン・マクレーはほんとうに笑いそうになっていますが。これはこれで、じつに面白いヴァージョンです。

f0147840_0554649.jpgバディー・クラークとダイナ・ショア盤も、コミカルなレンディションです。ダイナ・ショアは、男のあの手この手につい乗せられて、その気になりそうになっては、I really have to goと、自分に言い聞かせています。これもいいなあ、と思います。イントロで、ドアを開け、外では木枯らしが吹き、ついでにこの曲のメロディーが流れてくるという趣向も笑えます。

レイ・チャールズ盤はいらないでしょう。テンポも、アレンジ(マーティー・ペイチ)も重いし、相手役のベティー・カーターの声と歌い方も気に入りません。まったく楽しさが感じられないヴァージョン。

◆ インストゥルメンタル盤 ◆◆
インストゥルメンタル盤は2種だけもっています。ひとつは、すでに何度も登場しているアヴァランシェーズ盤です。またしてもクレジットとは異なり、ギターはひとりですが、この曲についてはこれでいいと感じます。オルガンとのデュエットでやっているからです。ギターが「マウス」、オルガンが「ウルフ」と、逆ではないかという役割分担ですが、歌詞を知らなければ関係ないことですから。

f0147840_103985.jpg後半はギターのインプロヴですが、なかなかいいプレイです。この盤が面白いのは、ギターのトーンといい、フレージングといい、すでに後年の「ギター・ヒーロー」たちのプレイのニュアンス、イディオムを先取りしてしまったようなところがある点です。

64年にこれだけのことをやった盤があると、当時の子ども、すなわちわれわれが、ちょっと遅れて、たとえば68年ごろに知ったら、なんと思っただろうかと考えざるをえません。いや、どう思ったんでしょうかね。正直にいって、自分のことながら、うまく想像力が働きません。ひとつだけハッキリいえることは、60年代終わり、ギターの「新しい」スタイルに大騒ぎしていた自分は、ものを知らない馬鹿者だったと、いまでは痛感しているということです。

f0147840_113336.jpgもうひとつ、ウェス・モンドメリーとジミー・スミスのヴァージョンもあります。同じオルガンとギターのデュオでも、こちらはアヴァランシェーズのように、きっちり役割を分けてはいません。ジャズだから、申し訳程度にテーマをやると、すぐにインプロヴに突入なので、あとは曲がなんだろうと同じです。Baby It's Cold Outsideの「ヴァージョン」とはいいかねます。プレイも面白いものではなく、聴きどころなし(最後のシークェンスで、めずらしくウェスがミスっているのが「聴きどころ」か)。

一粒で二倍おいしい、とはいかず、天ぷらとマグロをひとつのどんぶりに盛って、「鉄天丼」というのをつくってみたら、まずかったというオチ。インスト盤は、ハル・ブレインもビシッとキメているアヴァランシェーズに軍配です。

◆ 名作と作者とその妻 ◆◆
フランク・レサーの曲は、すでにMoon of Manakoora by Dorothy Lamourと、Moon of Manakoora by the 50 Guitarsと、同じ曲ですが、二回にわたって取り上げています。そのときに書き落とした、人口に膾炙したレサーの曲としては、On a Slow Boat to Chinaもあります。

このBaby It's Cold Outsideは、もともとは、レサー自身が奥さんのリンといっしょに歌うために書いた曲なのだそうです。娘さんによると、パーティーでは大受けに受ける曲で(そりゃそうでしょう!)、「いつだってキャヴィアとトリュフに困ったことはなかった」と両親がいっていたとのことです。夫婦による盤もあるそうですが、残念ながら聴いたことがありません。

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左から、アンソニー・クイン、リン・レサー、フランク・レサー(1945年)

リンは、フランクといっしょにBaby It's Cold Outsideを歌うのが大好きだったので、フランクがワーナー・ブラザーズにこの曲を売ってしまったときには、烈火のごとく怒ったそうです。フランクは、こうでもしないかぎり、呪縛から逃れられず、一生、これを上まわる曲を書けないような気がした、と弁明したとか。ものをつくりつづけなければならない人間としての決断だったのでしょう。でも、奥さんが納得したかどうか。「夫婦の曲」として、Baby It's Cold Outsideを愛していた奥さんの気持ちもよくわかります。ほんとうに楽しい曲ですからね。

しかし、ワーナーに売ってしまったのも、それほど悪い取り引きではありませんでした。1949年のリカルド・モンタルバンとエスター・ウィリアムズ主演の映画、Neptune's Daughterの挿入歌となった結果、Baby It's Cold Outsideは、その年のアカデミー最優秀主題歌賞を獲得することになったからです。呪縛から逃れようとしたフランクにとっては、むしろ十字架になったかもしれませんが。

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フランク・レサー・ソングブック、"I Hear Music: Capitol Sings Frank Loesser"。Baby It's Cold Outsideは、ジョニー・マーサー盤を収録している。

ある曲のあらゆるヴァージョンを並べて聴いていると、原稿を書き終わったころには、その曲を歌いまくっているか、あるいは逆に、もう一生聴きたくないと思っているかのどちらかです。Baby It's Cold Outsideは、聴けば聴くほど面白くなってくるタイプの曲です。思ったよりむずかしい曲で、まだ歌うにはいたっていませんが!


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ディーン・マーティン
My Kind of Christmas
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by songsf4s | 2007-12-21 00:23 | クリスマス・ソング