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White Christmas その2 by Darlene Love
タイトル
White Christmas
アーティスト
Darlene Love
ライター
Irving Berling
収録アルバム
A Christmas Gift for You from Phil Spector
リリース年
1963年
他のヴァージョン
別掲
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◆ お知らせ ◆◆
この記事は、画像アップロードの途中で文字数制限を超過したために、すでにひとつのものとして公開したものを、のちに分割した後半部分です。12月16日午前0時半からの1時間ほどのあいだにいらっしゃった10人ほどの方は、すでに以下のテキストはお読みになっています。

それ以外の方、当ブログでWhite Christmasの記事を読むのははじめてという方は、できれば前半のほうを先にお読みください。以下は、ひとつまえの記事のつづきです。

◆ フィル・スペクター盤: さらなる革命 ◆◆
しかし、最後まで、ドリフターズと看板を争ったのは、ビング・クロスビー盤ではありません。フィル・スペクターのクリスマス・アルバムのオープナー、ダーリーン・ラヴのヴァージョンです。

f0147840_4171535.jpgこういう記事を書くには、どうしたって、これから扱う曲をエンドレスに流しっぱなしにしているわけですが、ところどころに、イントロが流れた瞬間、グイと耳を引っ張られるヴァージョンが出現します。耳を引っ張られるといえば、なんといってもダーリーン・ラヴ盤のイントロです。もう、完璧! すばらしい響きです。このサウンドを得るまでに、フィル・スペクターとラリー・レヴィンがどれほど試行錯誤したかと思うと、なにやらこの世の地獄をかいま見るような気がするほどです。

でも、楽しかったのだろうなあ、と思います。理想の音を追求しているとき、ミュージシャンはやはり天国にいるにちがいありません。たとえ板子一枚下は地獄でも、「これだ!」と叫ぶような音が聞こえたときは、もう死んでもいいと思ったのじゃないでしょうか。いつまでも色褪せない、新鮮な響きがダーリーン・ラヴの、いや、フィル・スペクターのWhite Christmasにはあります。

f0147840_4185264.jpg細かいことをいうと、はじめて聴いたとき、ストップ・タイムのところで、ハッとしました。To hear sleigh bells in the snow, the snowの、あとのほうのthe snowのところです。ほかのヴァージョンにはないコードを使っているのです。キーをCに移調していうと、ここはGにいけばいいだけの箇所です。でも、スペクターはここにオーギュメントを使っているのです。Gなら「解決」した感覚になるのですが、Gaugだと、サスペンドした感じになります。これが新鮮かつチャーミングで、いいフックになっています。

ついでにいうと、ハル・ブレインは借りてきた猫のようにおとなしく叩いています。でも、エンディングでは、ちゃんと二分三連の強いキックの踏み込みをやって、これから繰り広げられる、ドラマーのストンピング・グラウンドの予告編がわりとしています。「まあ、あわてなさんな、まだまだこんなもんじゃない、お楽しみはこれからだぜ」とニヤリとハルが笑っている顔が見えるようです。

◆ オーケストラもの ◆◆
ほかに、イントロが流れた瞬間、いいサウンドだな、と感じるのは、まずヘンリー・マンシーニ盤です。管だけのイントロも、弦が加わってくるところもなかなかいい音です。お得意の混声コーラスも登場しますが、これはいつもよりドライな録音で、もっとウェットにしたほうがよかったような気もします。でも、その裏の管や弦のオブリガートはじつにきれいです。

f0147840_420988.jpg同じ系統でいうと、パーシー・フェイスも、やはりイントロからよくできていて、さすがだなと思います。コーラス(こちらは女声のみ)は、ヘンリー・マンシーニ盤より浮遊感があります。

ついでに、オーケストラをさらにいくと、昨日のJingle Bellsでも登場した、アンドレ・コステラネッツのものも気持ちのよいドリーミーな仕上がりです。トランペットの使い方も、ストリングスもけっこう。この盤はかなりいいのじゃないでしょうか。

ドリーミーといえば、ジャッキー・グリースン盤も例によってその線です。アンドレ・コステラネッツほど変化に富んでいないので、ドリーミーすぎて、ちょっと眠気を催しますけれどね。

みなそれぞれ持ち場が決まっているようなものですから、エスクィヴァル盤はやはり、ちょっと珍が入っています。はっきりキャラクターが出るものですねえ。どうしてこういうアレンジになっちゃうのか。いや、面白いし、好きです。にぎやかなWhite Christmasというのがあってもいいのじゃないでしょうか。

f0147840_421210.jpgポール・モーリアもご存知のようなあのスタイルでやっています。こういう曲でリスナーの期待を裏切るわけにはいかないので、意外性の勝負は避け、予定調和にもっていくのがやはり「大人の判断」なのでしょう。

そしてもちろん、ドメニコ・サヴィーノは穏やかに、平和に、安全に、すこやかにやっています。おやすみなさい、という気分なので、ちょっと昼寝します。

◆ 歌もの、主として男性ヴォーカル ◆◆
f0147840_4222582.jpg昼寝から目覚め、夢のなかで楽曲リストを整理していたことに気づき、愕然としました。

夢のお告げで、ほかのヴォーカルものとしてはこれだ、という卦が出た(ウソ)のは、アンディー・ウィリアムズ盤です。なにやらボビー・ゴールズボロが登場しそうなイントロです。Honeyですな。

f0147840_423311.jpg案外な拾いものはパートリッジ・ファミリー盤。こちらはニルソンのEverybody's Talkin'が出てきそうなイントロです。イントロだけでなく、テンポも、全体のアレンジもEverybody's Talkin'からの借り物でしょう。ヴェンチャーズがすべて借り物ですませたのなら、一曲や二曲、同じことをやってもかまわんだろう、てなあたりじゃないでしょうか。こういう軽快なWhite Christmasも、チェンジアップとして悪くないと思います。まあ、チェンジアップや箸休めが必要になるほど、一気に大量にまとめてWhite Christmasを聴くのは、わたしぐらいしかいないんでしょうけれど! White Christmasの過剰摂取で死ねるかどうか、人体実験中です。

ウィリー・ネルソン盤のイントロは、オルガンがペダル・ポイントを弾くもので(そういうコード進行の曲ですから)、連想ゲームをつづけると、これはスリー・ドッグ・ナイトのOld Fashioned Love Songです。ちょっとLet It Beからいただいたりもしていますが、なかなかけっこうな出来です。ウィリー・ネルソンという人は、パセティックな曲をパセティックに歌っても、自然にざらつきが入るので、過度に感傷的になることのない、安全ネットかサーモスタットが組み込まれているみたいなもので、得なシンガーだと思います。

さらに連想ゲーム。オーティス・レディングは、自分のI've been Loving You Too Longのアレンジでやっています、これはこのあいだ取り上げたMerry Christmas BabyのA面としてリリースされたものですが、個人的にはこちらはB面だろうと思います。ヒット・ポテンシャルはMerry Christmas Babyのほうがあったのではないでしょうか。

ディーン・マーティン盤は、これといった特長があるわけではなく、ストレートにやっているのですが、ファンとしては十分に満足のいく出来です。アルバムChirstmas with Dinoには、2種類のWhite Christmasが収録されていますが、トラック17のオルタネート・テイクと注記されたもののほうが、ディノのヴォーカルはいいと感じます。この人独特のディクションと歌い廻しが、こちらのほうに強く出ています。

◆ ギター・インスト篇 ◆◆
流しっぱなしにしていたら、プレイヤーがインストのかたまりに突入したので、ごちゃごちゃいわずに、プレイヤーの並び順でやります。なんせ、あなた、63ヴァージョンあるのだから、いちいちタイトルを見て選んで、これをやろうなんていっている余裕はないのです。昔は迷い箸をすると、「なんです、お行儀の悪い」と母親に怒られたもので、そういうのはいくつになっても抜けないのですな。

f0147840_4254246.jpgチェット・アトキンズは、うちにある2枚のクリスマス・アルバム、Christmas with Chet AtkinsとEast Tennessee Christmasの両方で、White Christmasをやっています。前者はしばしばご紹介しているAdd More Musicでダウンロードすることができるので、みなさんも、当ブログの右にあるFriendsリンクからあちらに飛んで、「Rare Inst. LPs」というボタンを押し、チェットのすばらしいアルバムをぜひお聴きあれ。

f0147840_427166.jpgふたつのヴァージョンのうち、どちらがいいか、なんて野暮なことをいうのはやめておきます。どちらもけっこうです。わたしはギターが好きで、東に困っている人がいると聞けば飛んでいって試聴してみる宮沢賢治状態なのですが、チェットみたいなギタリストって、チェットしかいませんよね。ウェスみたいな人はけっこういるんですが。

同じかたまりに50ギターズのヴァージョンがありますが、これはこれで、そんなにけなしたものでもないと見直しました。50ギターズの出来のよいアルバムを知っているので、それと比較すると、50ギターズ変じて15ギターズとはまたセコい、量を減らして値上げを回避しましたってか、なんて思ってしまいますが、知らなければ、これはこれで心地よいと感じるだろうと思います。

そういえば、ちょうど本日から、Add More Musicでは、50ギターズのMaria Elenaの配布をはじめました。トミー・テデスコがリードです。これはいいですよ、ホント。ギター好き、トミー・テデスコ・ファンは、この記事はここらで切り上げ(わたしも切り上げたい)、あちらにいって、テデスコの美しいプレイをお聴きになるようにお奨めします。

◆ インスト、コンボ篇 ◆◆
さて、お客さんの大部分はもうお読みになっていないでしょうが、さらなるWhite Christmasめぐりをつづけます。

ギター・インストのWhite Christmasとしては、ヴェンチャーズ盤もあります。ヴェンチャーズのクリスマス・アルバムは、何度も書いているように、過去の有名曲のアレンジおよびイントロの借用によって成り立っていますが、この曲はヴェンチャーズ・ファン以外には出典がわかりません。

White Christmasに借用した曲は、たいしてヒットしたわけではない、彼ら自身のBlue Starです。でも、子どものころ、わたしはBlue Starが大好きだったので、White Christmasも、いいなあ、と思いました。じっさい、Blue Starのアレンジは、タイトルどおり、星がきらめくような音ですから、White Christmasにはよくなじみます。

f0147840_4281391.jpgそれに、リードのコード・プレイが、チェット・アトキンズのようなウルトラ・ハイブロウではなく、真似できそうな気がするので、ついギターに手が伸びる仕組みになっています。今日も(70種類のWhite Christmasを抱えて忙しいのに!)ちょっといっしょに弾いてしまいました。アマチュア・ギタリストがクリスマスにプレイ・アロングしたい曲の筆頭ではないでしょうか。そして、このアルバムのなかでも、とくに出来のよい曲のひとつです。

インストとしては、またまたスリー・サンズ盤もあります。例によって珍ですが、これはこのアルバムのなかでもっとも珍。なんだかやたらににぎやかなWhite Christmasで、Jingle Bellsとまちがえたのかと思います。でもまあ、しっとりと、といえば聞こえがいいけれど、要するに、客なんかおっぽり出して、ひとり自分の世界に入っちゃって、むやみにナルシスティックに歌う女性ヴォーカルなんかより、こちらのほうがよほど気持ちがいい……いや、それほどではないにしても、気色の悪い思いはしないですみます。

◆ 大有名曲の〆はやっぱり大真打ち ◆◆
f0147840_4315410.jpgエルヴィス・プレスリーは、順列組み合わせと衣装替えを繰り返して、何度もクリスマス・アルバムがリリースされています。しかし、わたしの好みの方向のアレンジやレンディションがあまりなくて、ここまでまったく言及できず、エルヴィス・ファンのみなさんには失礼してしまいました。White Christmasはまあまあの出来だと思います。でも、エルヴィスを聴くなら、やはりクリスマス・ソングではないほうがいいような気もチラッとします。

エアロン・ネヴィルは、世にこれほどアップテンポが似合わない人はいないってくらいで、この曲も当然、スロウにやっています。この人の声は大好きなので、まあ、なんとなく聴いてしまいます。でも、White Christmasを聴いて、紙一重だなあ、と思いました。ちょっとズレると、ライオネル・リッチーになっちゃいそうな危うさがあります。そうなれば、わたしにとっては天敵ですから、またしても、割ってやるの、火にくべてやるのと、大騒ぎになっちゃいます。声というのは微妙なものだなあ、と痛感しました。バッキングがメロウすぎて、焼きすぎたマシュマロ状態なのもよくないと思います。メロウな声には、ちょっと対位法的なバッキングをしたほうがいいのです。

その点、ルイ・アームストロングは、いくらメロウなバッキングをしても、マシュマロが溶けて串から落ちてしまうような恐れはありません。間奏なんか、トロトロのストリングスですが、サッチモのヴォーカルがちょいビターなので、大丈夫。悪くない出来です。

f0147840_4324858.jpgわがプレイヤーには、検索結果リストの並び順のいたずらで、つぎにチップマンクス盤がきて、しかも、サッチモ盤と同じでキーがCなので、きれいにつながってしまいました。

でも、このトラックではチップマンクスは歌いません。最初にアルヴィンが登場して、「デイヴ、どうしたの、悲しそうな顔しちゃって」なんていうと、デイヴィッド・セヴィルが、「いや、悲しいわけじゃないんだよ」といって、White Christmasに入ります。ホワイト・クリスマスならいいのになあ、と思っていただけなんだ、というわけです。最後にまたアルヴィンが登場して、「デイヴ、見てみなよ、雪が降ってきたよ」といってエンディングとなります。いやあ、泣けますねえ。わたし、チップマンクスが大好きです。

エラ・フィッツジェラルドとバーバラ・ストライザンドの、どうだ、うまいだろ、といわんばかりの気色の悪いクリスマス・アルバムを中古屋に売り飛ばして、もてなしの心に満ちた、チップマンクスのあたたかくて楽しいクリスマス・アルバムをお買いになるように、強く、強く、衷心よりみなさまにお勧めします。わたしが考える音楽のあるべき姿は、エラ・フィッツジェラルドとは正反対の方向、たとえば、チップマンクスのサービス精神に結晶しています。

大真打ちのアルヴィンとチップマンクスが出てしまえば、あとはみな三文役者。いまや馬鹿馬鹿しいお座敷芸じみてきた、当ブログのクリスマス・ソング一気棚卸し、White Christmas篇も、これにて店じまい。お休みなさい。いや、棚卸しは明日もつづきますよ。またのご来場をお待ちしています。
by songsf4s | 2007-12-16 03:28 | クリスマス・ソング