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Silent Night by Jingle Cats
タイトル
Silent Night
アーティスト
Jingle Cats
ライター
Tradittional
収録アルバム
Meowy Christmas
リリース年
1993年
他のヴァージョン
無数
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◆ キャッツ・スキャッツ ◆◆
ジングル・キャッツなどというグループはご存知ない方のほうが多いのではないでしょうか(いや、すぐに続篇も出たヒット作なので、案外、ファンが多いかも知れませんが)。クレイジー・キャッツは人間でしたが、ジングル・キャッツは正真正銘、猫の「ヴォーカル・グループ」です。

f0147840_0294527.jpgという風に書いただけでも、「彼ら」の盤を聴いたことがなくても、どういうものか、想像がつく方もいらっしゃるでしょう。そう、サンプルした猫の鳴き声を、人間がプレイしたトラックに載せていったのです。

はい、おっしゃるとおり、馬鹿馬鹿しい代物です。でも、世の中には、馬鹿馬鹿しいものも必要ですし、馬鹿馬鹿しさにもいろいろ種類があります。楽しいんだから、いいじゃないですか。

え、なんですか? このブログではいつも歌詞の解釈をするだろうって? まあ、やってみてもいいんですが、なんせ、あなた方のような人類には理解できない高度にして難解な言語で歌われているので、チンプンカンプンのマンボジャンボだと思いますよ。え? それでもやってみろって? 彼らは文字の文化をもたないので、不可能なんですが、ま、いいか。では、ファースト・ヴァース、いや超難解なので、ファースト・ラインだけ。

Ou mew mou, Ou mew mou, meow mewgrrr ou

「Silent night, holy night, round your virgin mother and child」

これだけ解読するのに三日もかかってしまいました。これ以上は、わたし程度の猫語理解力では不可能なので、ひらにご容赦を。

Jingle Cats - Silent Night


◆ PCサウンド・プロセシング ◆◆
昔、ある友人に、アイディアなんてものは二束三文だ、といったら、そうかな、アイディアのない人間のほうが圧倒的多数派だと思うけれど、と反論されました。わたしはいまだに、アイディアなんて一山いくらだと思っています。なにごとも、実現できて、はじめて意味をもつからです。

猫の鳴き声をサンプルして、サウンド・エディターのトランスポーズ機能を使えば、ピッチを修正して、歌のようなものをつくれる、というところまでは、だれでもわかることです。それなのに、だれもやらなかったのは、考えるだけでも死ぬほど面倒だからです。そもそも、1993年では、まだサウンド・エディター自体がめずらしかったし、いまとはPCのパワーそのものがまったくちがうので、すごく面倒だっただろうと思います。

f0147840_030402.jpg93年には、まだMP3なんてものは普及していませんでしたが、96、7年だったか、最初にCDを1枚まるごとMP3で圧縮したときには、ビットレートは128Kbpsだったのに、一晩かかりました。それくらいのCPUパワーしかなかったのです。それより数年前にこんなことをやったのだから、たいしたものです。

人を楽しませるには、ただ音程が合っていて、歌に聞こえる、というだけではダメです。それでは、1曲聴くだけで、もう十分、といわれてしまいます。ジングル・キャッツの生みの親、マイク・スパーラは、じつに忍耐強いだけでなく、なかなかユーモアのセンスもあります。

まず、猫の鳴き声を録った、映画の録音エンジニアがいうところの、未加工の「ワイルド・トラック」があるわけですよね。これに名前をつけて分類しなければなりません(ニャーとか、グルーとか、ミャといった鳴き声のタイプと、だいたいのピッチをファイル名にするだろうと推測できます)。つぎに、トランスポーズ機能でピッチを整えます。ブランクになっている音程(当然、そういうものがあるでしょう。スケールをすべて「歌って」くれる猫がいるはずがありません)も、トランスポーズでつくらなければなりません。

f0147840_031439.jpgつぎに当然、選曲とトラックの録音をやります。これはふつうに盤をつくるのと同じ作業だから、問題ありません。できあがったトラックに、こんどは猫の声のファイルをメロディーにしたがって並べていくわけですな。いまなら、CPUパワーがあがったので、かなり手早くできますが、昔はたいへんだっただろうと思います。HDDのシーク速度も現在の3分の1ぐらいですし、まだブロック転送などという手法もなかったか、せいぜい発展途上だったので、その面でもストレスは大きかったはずです。

プロデューサーの手腕は、この段階で発揮されることになります。ただピッチが合っているだけでは面白くないので、「演出」をしなければいけないからです。このSilent Nightでいえば、どこでハーモニーをつけるか、どこでちょっと変わった声を使うか、そういう演出です。ハーモニーが可愛いんですよ。ミャという声がハモるんですからね。これに対抗できるのは、キング・シスターズぐらいでしょう。

◆ 動画時代のジングル・キャッツ ◆◆
しょーもないことを書くのはこれくらいにしておきます。これはかなりのヒット作で、いまどきの半チクなシンガーのクリスマス・アルバムなどよりよほど売れたようですから、みなさんも耳にするチャンスがあるでしょう。White ChristmasAuld Lang Syneを映像化したものもあります。

こういうものを聴くと、音楽とはなんだろう、娯楽とはなんだろう、人間の能力とはなんだろうと、まじめなことを考えちゃったりもしますが、まあ、笑って楽しくホリデイ・シーズンを過ごせばいいのです。人間にマタタビかもしれませんが、わたしはこのアルバムは好きです。

あ、そうだ。人間が歌ったSilent Nightは改めて取り上げます。これでSilent Nightはおしまいかよ、と心配なさった方がいらっしゃるかもしれないので、念のため。でも、ジングル・キャッツに勝てる人間のシンガーがいるかどうか……ひょっとしたら、ほかの動物のほうがまだしも勝ち味があるかも。

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by songsf4s | 2007-12-09 00:19 | クリスマス・ソング