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Autumn Leaves by Arthur Lyman
タイトル
Autumn Leaves (Les Feuilles Mortes)
アーティスト
Arthur Lyman
ライター
Jacques Prevert, Joseph Kosma, Johnny Mercer (English lyrics)
収録アルバム
Yellow Bird
リリース年
1961年
他のヴァージョン
無量大数
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ほんとうにこの曲を取り上げるのかよ、と思うのですが、存在しないことにして通りすぎるのも愛想がなさすぎるような気もするので、ちょっと投げやりに(失礼!)やってみます。好きじゃないのですよ、この曲は。

まずはわが家に降り積もった枯葉の山の一覧をどうぞ。♪so many peopleとポール・ウィリアムズを口ずさんでしまいます。

Roger Williams
Diane Schuur & Maynard Ferguson
Joe Pass
Tal Farlow
Arthur Lyman
Bert Kaempfert
Esquivel
Les Baxter
The Mantovani Orchestra
Nelson Riddle
The Three Suns
Bing Crosby
Doris Day
Edith Piaf
Frankie Laine
Frank Sinatra
Natalie Cole
Nat King Cole
Georgia Gibbs
Jackie Trent
Link Wray & The Raymen
Everly Brothers

Summertimeを取り上げたときには、ヴァージョンが多いとボヤきましたが、ここまでくると言葉もありません。こりゃもう、♪たき火だ、たき火だ、落ち葉たき、と燃やして、焼き芋でもつくるしかないでしょう。

◆ たんなる歌詞のペースト ◆◆
英語版では意味がないような気もしますが、いちおう、以下にジョニー・マーサーによる英語詞をあげておきます。二つのヴァースを以下にひとまとめに。

The falling leaves drift by the window
The autumn leaves of red and gold
I see your lips, the summer kisses
The sun-burned hands I used to hold

Since you went away the days grow long
And soon I'll hear old winters song
But I miss you most of all my darling
When autumn leaves start to fall

解釈は勘弁してもらいます。ジョニー・マーサーといえども、この歌詞はいかになんでもわたしの趣味ではありません。赤や黄に紅葉した葉がひらひらを舞い落ちるのを見て、過ぎ去った夏の恋を思い浮かべている、という内容です。うへえ。

◆ アーサー・ライマン盤 ◆◆
あまりいいものはありませんが、できるだけ多くのヴァージョンにふれるよう、鋭意努力してみます。

『金色夜叉』という尾崎紅葉の小説のなかに、寛一お宮の熱海の海岸の場というのがあります。たぶん、新派の当たり狂言だったのでしょう。わたしは、芝居も小説も知りませんが(小説は数ページ読んでみて、投げました)、「今月今夜のこの月を」云々という、この場面のセリフはよく知っています。わたしと同年代以上の方なら、どなたもご存知でしょう。わたしが子どものころは、むやみやたらに、この場面が漫才やコントに利用されたからです。

Autumn Leavesという曲は、わたしにとっては金色夜叉みたいなもので、ファースト・ラインを聴いた瞬間に笑いだしてしまいます。たぶん、クレイジー・キャッツがやっていたと思いますが、ほかのコミック・バンド、ボーイズ、漫才も、よくこの曲をネタに使っていました。元の曲はよく知らなくても、ギャグのネタとしてはよく記憶しているのです。

f0147840_23514243.jpgよって、もっとも好ましいヴァージョンは、勝手ながら、「笑えるもの」ということに決めさせていただきます。ほとんどが大まじめなヴァージョンで、まあ、それはそれで笑えなくはないのですが、笑えるようにつくってあると感じるのは、アーサー・ライマン盤です。

いや、出だしは大まじめで、いつものアーサー・ライマンのようなエキゾティックなムードすらありません。でも、だれだって、アーサー・ライマンが「枯葉よ~」なんてやるのは変だ、と思うわけで、この大まじめなアレンジには首をひねるはずです。疑い深いわたしは、「なにか裏があるにちがいない」と確信しました。

すると後半、突然、派手にパーカッションが入って、チャチャチャに化けるわけですな。アーサー・ライマンが、ふつうにこの曲をやるはずがないと思ったよと、ここで安心してニッコリするわけです。チャチャチャ・アレンジのエキゾティカAutumn Leavesはなかなか珍で、楽しい出来になっています。

◆ そこそこ笑える(かもしれない)ヴァージョン ◆◆
f0147840_23523417.jpgあとはみな大まじめなので、わたしとしてはただただ困惑するのみです。そのなかで、マントヴァーニ・オーケストラは、いつものように装飾過多、人数過剰の大編成で、大まじめにドカーンとやるので、爆笑します。もっとも、マントヴァーニとしては、お笑いのつもりはこれっぱかりもないと思いますが、天然ボケみたいなものです。どんな曲も、かならず大編成でドカーンとくるから、じつに愉快で、近ごろ、おおいに贔屓にしています。

名前を見て、この人はぜったいに珍なアレンジでぶちかますはずだ、と衆目が一致するのはリンク・レイでしょう。ところがですね、イントロはちょっと珍なんですが、あとはふつうにやっているんです。ふつうにやると、身も蓋もなくド下手なプレイヤーだから、素人のど自慢を見るような気分でなら、そこそこ笑えなくはないですが、でも、たんなるド下手プレイヤー、という事実が白日の下に露呈されるだけのことで、芸で笑わしてくれるわけではないから、どうということはありません。

f0147840_23543549.jpgロジャー・ウィリアムズ盤は1955年のチャート・トッパーですが、なるほど、「力強い」ヴァージョンで、編成はまったくちがうのに、マントヴァーニのソウル・ブラザーじゃん、と思います。いきなり、ティンパニーのロールをぶちかましてくるんですからね。そのあとの、ただむやみに上下するだけのマヌケなピアノも、クレイジー・キャッツで石橋エータローと桜井センリがやっていたみたいな感じで、ワッハッハです。きっと、コミック・ソングとしてヒットしたのでしょう。

f0147840_23552277.jpgスリー・サンズもちょっと「珍」が入っています。たぶん、ロジャー・ウィリアムズ盤に影響を受けたのでしょうが、マリンバが、音階としてはむやみに上下し、ステレオ定位としては右往左往するのです。ほんのちょっとだけ笑える、というところで、どちらかというと、たんに珍なだけ、という感じ。

残念ながら、お笑いネタはこれで尽きたようです。

◆ あまり笑えないヴァージョン ◆◆
f0147840_23561765.jpgまじめなものでは、どれがいいでしょうかね。エディット・ピアフはさすがだと思います。でも、ピアフを聴くなら、ほかの曲にします。

ビングも、この人の声のよさが出た、悪くないヴァージョンだと思います。でも、ビング・クロスビーを聴くなら、ほかにいい曲がいっぱいあります。

ジャッキー・トレントは、すこしだけ「珍」が入っています。きっと、旦那のアレンジなのでしょう。英国ガール・ポップの味があります。でも、力んだヴォーカルは、ごめんなさい、です。

フランキー・レインはフランス語でうたっています。うーん、この人の声の太さが裏目に出たような気がするのですが。

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オーケストラものとしては、ネルソン・リドルがさすがに上品に仕上げています。でも、ネルソン・リドルを聴くなら、ほかの曲にします。

レス・バクスターも、マントヴァーニほどではないにしても、元来が金満物量攻撃の人なので、スケール感はあります。しかし、どう見ても喫茶店音楽、エレヴェーター・ミュージック、歯科医院待合室音楽、トイレに流すBGMです。レス・バクスターも、ほかにいいトラックがいくらでもあります。ドラマーは好み。

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エスクィヴァルは、天然で珍な人なので、この曲も珍にやっています。でも、珍すぎて、わけがわからないアレンジで、はたしてほんとうにAutumn Leavesをやっているのかどうかすら確信がもてません(誇張ですよ、誇張)。

f0147840_03312.jpgベルト・ケンプフェルトは、ハーモニカがリード楽器で、ちょっとエンニオ・モリコーネ風味です。おフランス暗黒映画の夕暮れのシーンにいかが、というサウンド。いや、まじめな話、ストレートなものとしては、このヴァージョンがいちばんいいかもしれません。ハーモニカをリード楽器にしたおかげで、嫌味のない叙情性がつくりだされています。

f0147840_035367.jpgダイアン・シューアとメイナード・ファーガソンは、イントロは派手で乗れます。でも、歌に入ると、並みのジャズ・シンガーの並みの歌。間奏はコード進行すら変えているみたいで、枯葉のひとひらすらなし。どうしてジャズの人たちは、楽曲をこういう風に足蹴にして平気なのでしょうか。なにかの曲をやる意味がないと、毎度思います。曲なんか選ばないで、ただ、コード進行とテンポだけ決めて、あとは好き勝手にやっていればいいのに。

ジョー・パスは、以前にもご紹介した、アンプラグド・アルバム収録のものです。もちろん、うまいのですが、ほかの曲のほうが楽しめます。ミス・ピッキングをほったらかしにしてあるのが、ちょっと引っかかります。パンチ・インなんかでごまかしたくないのでしょうが、それなら、リテイクしてほしかったと思います。

◆ その他のヴァージョン ◆◆
ジョージア・ギブス、ドリス・デイ、ナタリー・コールなんて人がこの曲をやれば、聴かなくても、結果は見えていますが、じっさい、予想どおりの凡庸さです。ただ、ナタリー・コールは、メドレーにしていて、冒頭はFor Sentimental Reasonです。だから、入った瞬間、お、意外にいい曲じゃん、と思い、すぐに、なんだ、Autumn Leavesじゃないじゃん、For Sentimental Reasonなら、いい曲に決まってるじゃんか、とだまされたような気分になります。

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ナット・コールはたいていはほめるのですが、ついこのあいだ、'Tis Autumnの記事に書いたように、弦や管がついたときは要警戒でして、この曲の弦も甘みが強すぎます。歌の出来も、ナット・コールとしては上の部類ではないでしょう。

フランク・シナトラも、やはり、ほかにいい曲が山ほどある人だから、なにもよりによってこの曲を聴くことはないじゃん、です。

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以上、子どものころからの天敵だった曲を全部火にくべてやりました。アーサー・ライマン、マントヴァーニ、ロジャー・ウィリアムズ、ベルト・ケンプフェルトだけを残して、あとはHDDから削除しても差し支えなし、てな感想です。

f0147840_0161725.jpgやれやれ片づいた、と安心して、コーヒーを入れに立ったら、エヴァリーズ盤にふれていなかったことに気づきました。忘れるのも当然の出来で、忘れたままにしておけばよかったくらいです。ジルベール・ベコーのLet It Be Meをカヴァーしたのがヒットしたので、またフランスものを、なんて思ったのでしょうが、当てごととなんとかは向こうから外れる、です、ファンとしては、こんな曲やるなよ、馬鹿、と泣きたくなります。そもそも、ドンだかフィルだかわからないのですが、ハイ・パートを歌っているほうは、フラットしています。デモ並みの粗雑ヴァージョン。

思うのですが、音楽を聴くというのは、このように、意図したわけではないのに、嫌いな曲を山ほど集める結果になるという、痛烈な、ほとんど致命的ともいえる副作用があるわけで、お互い、楽じゃありませんな。

配信なんてものは大嫌いで、まったく利用していませんが、ブツとして音楽が存在しない時代というのは、Autumn Leavesのような曲の場合、福音といえるかもしれません。消しちまえばいいだけですからね。

これがあなた、盤だと、割るだの、燃やすだのと、口では百万回いいましたが、いまだに実行できたためしがないわけで、ブツが残るというのは、じつにもって、やっかいきわまりありません。盤から、好きな曲だけ切り取って、あとは捨てられるなら、うちの中、とくに机まわりがスッキリして、広々とするでしょうに!
by songsf4s | 2007-11-18 23:47 | 秋の歌