人気ブログランキング |
Blood and Butter by the Ghouls
タイトル
Blood and Butter
アーティスト
The Ghouls
ライター
Gary Usher, Richard Podolor
収録アルバム
Dracula's Duece
リリース年
1964年
f0147840_23374335.jpg

◆ その他大勢の記念日 ◆◆
11月2日はなんの日かご存知でしょうか。わたしもついこのあいだ知ったのですが、All Soul's Dayというのだそうです。辞書には、

n. 諸魂日 【カト】(奉教)諸死者の記念日《11月2日》

と出ています。ハロウマスが諸聖人の祝日で、翌日が諸死者の記念日とくるのだから、要するに、聖人になれなかったその他の人すべてのための、いってみれば、残念賞みたいな日ということになります。

本日は、これから取り上げる曲のリストアップのために、更新は休もうかと思っていたのですが、そういう日なら、Evil Moon特集のコーダないしはフェイドアウトとして、ヒットしなかった亡者でも弔ってみようかと思い直しました。

◆ 30分で1曲の強行スケデュール ◆◆
グールズ(食屍鬼)なんていうグループはご存知ない方が多いでしょうが、スタジオ・プロジェクトにすぎず、この「ドラキュラのホットロッド」という企画盤のみに使われたバンド名です。企画者はゲーリー・アシャーと思われます。

ちょっと見にくいでしょうが、The Hondells Vol.4 More Aliases and Early Recordingsという盤に付された、グールズのセッショノグラフィーをご覧あれ。

f0147840_23395587.jpg

エース大集合とはいきませんが、グレン・キャンベルとハル・ブレインがいるので、まあまあのメンバーといえます。なぜメンバーがやや落ちているのかは、このセッショノグラフィーから読み取れるように思います。

セッションの日付、時刻、所要時間に注目すると、10月8日の夜7時から深夜にかけて、わずか2セットのセッション(3時間が1単位なので計6時間)で録音していることに気づきます。通常のLPは3時間×3回、計9時間で録音するのが、この時代のハリウッドの組合加入プレイヤーによるセッションの慣行です。3時間で4曲、それを3回やって、LPに必要な12曲を録音するわけです。

それが、このセッショノグラフィーを見ると、3時間で6曲、それを2回と、通常の3分の2に圧縮してしまっているのです。こういうことが起きるのは、急いでいるときか、予算が足りないときです。この盤の場合、プレイヤーの料金が高くなる深夜に食い込んでセッションをしているので、金銭的問題より、時間的問題から、わずか6時間で録音したのだと推量できます。

f0147840_2346496.jpgどういう時間的問題か。それは、10月8日という日付が語っています。ハロウィーンに合わせた企画だからでしょう。それにしては、ちょっと遅いと思うのですが、企画書の承認が遅れたとか、楽曲の用意が遅れたとか、その種のよくある事情で、ギリギリのタイミングでの録音になった、といったあたりではないでしょうか。

だから、急なことで、メンバーもエースばかりそろえるわけにはいかず、ファースト・コールではない人だろうとなんだろうと、とにかく、手に入ったメンバーで強行せざるをえなかったのだと考えます。ハル・ブレインとグレン・キャンベルがあいていただけでもラッキーなくらいです。

◆ 最後のひと暴れ ◆◆
じっさい、ハルがいなければ、つまらないアルバムになっていたでしょう。ハロウィーン向けの当て込み企画ですから、楽曲の粒がそろっているはずもなく、半数はシンプルなコードとリックによるインストゥルメンタルで、「作曲」なんていうのは恥ずかしいぐらいのものですし、歌ものはパロディーなので、いわば既存の曲の替え歌のようなものにすぎません。そして、その歌も、だれがリードをとったのか知りませんが、ドラキュラの芝居はひどいもので、むやみにうなり声をあげるのが疳に障り、笑うに笑えません。

ギターも、それほど出来のいい曲があるわけではなく、好調時のグレン・キャンベルの豪快なソロはありません。たぶん、リッチー・ポドラーがリードをとった曲が多いのではないでしょうか。おとなしいプレイぶりが、グレンらしくありません。

唯一の楽しみはハル・ブレインです。これがいいのです! これだけ叩いてくれれば、ほかの音はいりません。例によって、「これは弱いな」と思ったときの、「じゃあ、俺がやる」根性を発揮したのだと思います。とにかく、アップテンポの曲は叩きに叩きまくって疾走しています。

とりわけ、看板に立てたBlood and Butter(必要な食べ物、生きるための糧、たつきの道という意味のbread and butterのもじり)や、そのパート2とでも名づけたほうがよいほどよく似ているVoo Doo Juiceといったインストや、タイトル曲のDracura's DeuceやBella Be Good(Johnny B. Goodeのもじり。ベラはもちろんベラ・ルゴシ)では、ハル・ブレインだけを聴いてしまいます。

繊細なドラミングもするいっぽうで、ときに暴れまくるプレイヤーではありますが、ここまで暴れているのは、それほどたくさんはありません。バーズのMr. Tambourine Man、そしてとりわけ、ママズ&パパズのCalifornia Dreamin'以降は、すこしスタイルが変わるので、ハルといえども、これほど豪快にストレート・シクティーンスを叩くことはなくなります。彼のこういうプレイが聴けるのも残すところあとわずか、若い躍動感に満ちたハル・ブレインの最後の大花火のようなプレイです。

◆ サーフ&ロッド&ウィアード ◆◆
ウェブ上で知り合った仲間と意見を交換するうちに、しだいに、ハルが「レッキング・クルー」と名づけた、ハリウッドのエース・プレイヤーたちが、イージー・リスニング系の盤でかなりプレイしたことがわかってきました。たとえば、ハリウッド・ストリングスなどという、得体の知れないアーティストの名義になっている盤では、ハル・ブレインとキャロル・ケイの音が聞こえました。

f0147840_23531649.jpgそういうものもつとめて聴くようにしてきましたし、これははじめからわかっていた、サウンドトラック方面も、折りを見て発掘の努力をしてきました。しかし、どうやら、いままで気づいていなかった分野があるのではないかという気がしてきました。怪奇音楽という、ジャンルなんだかなんだかわからない分野です。

そもそも、そんなものが意外に大きな分野で、大量の盤がリリースされていたことですら、つい最近気づいたことで、ハリウッドのエース・プレイヤーたちがそういう盤でプレイしているなどということは、まったく視野の外でした。

f0147840_2354143.jpgしかし、考えてみると、AIPなんていう映画会社は、怪奇映画で稼いだだけでなく、同時にビーチ・ムーヴィーも大量生産していて、ハリウッドのプレイヤーたちは、そうした映画のサウンドトラックでプレイしています。また、ラット・フィンクなんていうキャラクターも、サーフ&ロッドのすぐ隣にあり、グールズの生みの親であるゲーリー・アシャー自身、ミスター・ガッサー&ザ・ウィアードーズなんていう盤の制作にもかかわっているはずです。

なぜ、あの時代に怪奇ブームがわき起こったのかは知りませんが、どうであれ、ハリウッド音楽工場を研究する人間としては、この分野は新しい研究課題だと感じた2007年のハロウィーンでした。

これにてEvil Moon特集は正真正銘のフェイドアウト、つぎからは、すこし秋の歌を見ていこうと考えています。でも、選曲はまだまったくの白紙で、どうなることやら、まったくもっておぼつきません。

f0147840_013088.jpg

by songsf4s | 2007-11-02 23:37 | Evil Moonの歌