人気ブログランキング |
Headless Horseman by Bing Crosby
タイトル
Headless Horseman
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Don Raye, Gene de Paul
収録アルバム
The Legend of Sleepy Hollow
リリース年
1949年
f0147840_291055.jpg

◆ ブギーマンは今夜もやってくる ◆◆
もうEvil Moon特集は、昨夜のハロウィーンで終わったとお考えの方もいらっしゃったでしょうが、そうはいかないのです。

ジョン・カーペンターのオリジナル『ハロウィン』でも、マイケルは、ジェイミー・リー・カーティスに刺され、ドナルド・プレザンスに撃たれて、二階から転落したにもかかわらず、むっくり起きあがったのはお忘れではないでしょう。当ブログも、マイケルのようにむっくり起きあがって、ハロウィーンの曲をつづけます。

そもそも、ハロウマス、すなわち諸聖人の祝日、万聖節は今日11月1日なのです。クリスマスでいえば、10月31日のハロウィーンはイヴ、クリスマス当日が11月1日にあたることになります。

ハロウィーン・リプリーズにはどの曲を選ぶか悩んだのですが、いや、いまもって迷っているのですが、とりあえず、ビングおじさんのお話と歌を聴いてみるのはどうでしょうか。ビング・クロスビーがナレーション、イカボッド・クレイン役、そして歌を担当した、ディズニーの短編アニメ『イカボッドとミスター・トードの冒険』の挿入歌を選んでみました。

◆ 幽霊とバンシーの露払い ◆◆
こういうものは歌詞が重要なので、中身を見ていくことにしますが、ものすごく長い歌詞なので、細部に深入りせず、端折らせていただきます。まずはファースト・ヴァース、あるいはセカンド・ヴァースもつながっているのかもしれませんが、便宜的にファーストとしておきます。パーレンのなかは例によってバックの声です。バック・コーラスではなく、単独の女声、男声。

Just gather round while I elucidate
On what happens outside when it gets late
Along about midnight the ghosts and banshees
They get together for their nightly jamboree
There's things with horns and saucer eyes
And some with fangs about this size
(Some are fat, and some are thin)
(And some don't even bother where their skin)
I'm telling you brother it's a frightful sight
To see what goes on Halloween night

f0147840_0125144.jpg「みんなおいで、夜遅くなると、外でなにが起こるか話してあげよう、真夜中ごろになると、幽霊とバンシーが夜のジャンボリーに集まる、角が生え、サラのような目をしたものもいれば、こんなに大きな牙を生やしたのもいるし、チビもいれば、ノッポもいる、それどころか、皮膚がないものさえもいる、ハロウィーンの夜に起こることときたら、まったく見るも恐ろしい光景さ」

バンシーとはなんだ、と気になる方もいらっしゃるでしょうが、先を急ぎますので、なんなら検索なさってみてください。昔読んだ本で、「泣き女」と訳しているものがあったと思います。そういう妖怪だということでここは納得していただき、そそくさとセカンド・ヴァースへ。あ、そのまえに、女性の悲鳴や、ドアをドンドン叩くような効果音が入ります。

◆ 幽霊よりも困りもの ◆◆

And when the spooks have a midnight jamboree
They break it up with fiendish glee
Ghosts are bad but the one that's cursed
Is the Headless Horseman, he's the worst
(That's right, he's a fright on Halloween night)
When he goes a jogging across the land
Holding, noggin in his hand
Demons take one look and groan
And hit the road for part unknown
(Beware, take care, he rides alone)

「お化けたちが深夜のジャンボリーを開けば、最後は悪鬼のような嬌声をあげる、幽霊は困ったものだが、もっと始末に負えないのは首なし騎手、あいつは最悪さ(ほんとうにそうだ、彼こそハロウィーンの夜の恐怖)、彼があの姿勢で、手で躰を支えるように速歩で馬を駆れば、悪魔もそれを見たとたん、どことも知れぬところへ逃げていく(危ない危ない、気をつけろ、彼はひとりでやってくる)」

自動詞のholdの解釈はいろいろ考えられますが、馬上で姿勢を保つことをいっているのでしょう。ただし、このアニメの原作であるワシントン・アーヴィングの『スリーピー・ホロウの伝説』によると(そう、これを書くために、あわててProject Gutenbergにいき、いただいてきたのです)、首なし騎手は、鞍に自分の首を載せているらしいので、それをholdしているのかもしれません。子ども向けなので、あいまいにした可能性もあります。

f0147840_051446.jpg
伝統的なダブル・テイクのディズニー版。首なし騎手の出現に驚くイカボッドとミスター・トード。

◆ 断じて死んでいる ◆◆
以下はブリッジ。メイジャーへの転調がなかなか印象的な箇所です。

And there's no spook like a spook it's spurned
(They don't like him and he's really burned)
He swears to the longest day he's dead
He'll show them that he can get a head

「侮辱された幽霊ほど怖いものはない(だれもが彼を嫌い、彼は怒り狂っている)、彼は誓って自分は死んでいるといい、頭を手に入れられることを示してみせる」

f0147840_0263443.jpgここはよくわからない箇所で、聴き取りにくくもあるところです。この曲の歌詞を掲げているところを何カ所かみましたが、spurnedとしているところばかりなので、それにしたがっておきます。ただし、多くのところがいっている、a spook that's spurnedには、どうしても聞こえません。thatという音は聞こえないので、イレギュラーな表現ではありますが、以上のようにしました。spookとit'sのあいだにあるthatが省略されていると考えれば、なんとかつながるのではないでしょうか。to the longest dayは、たんなる強意と解釈しておきました。

◆ 首がないから説得不能 ◆◆
サード・ヴァースとコーラスをまとめて。

They say he's tired of his flaming top
He's got a yen to make a swap
So he rides one night a year
To find a head in the hollow here
(And he likes 'em little, he likes 'em big)
(Part in the middle, or a wig)
(Black or white or even red)
The Headless Horseman needs a head
With a hip, hip and a clippity clop
He's out looking for a top to chop
So don't stop to figure out a plan
You can't reason with a headless man

「世間でいうには、彼は燃え立つ頭にうんざりしているし、交換したいと強く望んでいる、だから年に一晩、馬に乗って出かけ、この窪地で頭を見つけようとするのだとか、(小さかろうが、大きかろうが、真ん中分けだろうが、かつらだろうが、黒髪だろうが、白髪だろうが、なんなら赤毛だろうと)首なし騎手には頭がいる、ヒップ、ヒップ、チョキチョキチョッキン、なにがなんでも頭を切り落としたい、だから、立ち止まって、どうしようなどと考えてちゃいけない、頭のない騎手に説得なんか通用するものか」

はじめのあたりはよくわかりません。ヒップ、ヒップは、ヒップヒップフレーなどというときのかけ声、この場合は馬だから、馬に乗るときのかけ声の一種ということかもしれません。ディズニーのアニメだから、子ども向けなのですが、clopとchopの韻には、うひゃ、です。

f0147840_0305140.jpg
ジャンプする馬。ディズニーならではのみごとな躍動感。

◆ 運命の橋 ◆◆
最後のヴァースとコーラス。

Now if you doubt this tale is so
I met that spook just a year ago
Now I didn't stop for a second look
But made for the bridge that spans the brook
For once you cross that bridge my friend
The ghost is through, his power ends
So when you're riding home tonight
Make for the bridge with all your might
He'll be down in the hollow there
He needs your head. Lookout! Beware!
With a hip, hip and a clippity clop
He's out looking for a head to chop
So don't stop to figure out a plan
You can't reason with a headless man

「ほんとうのことかとお疑いなら申し上げるが、わたしはちょうど1年前にこの幽霊に出遭ったのさ、小川に架かる橋をめがけて一目散に逃げ出したね、あの橋さえ渡ればいいのさ、それで幽霊の負け、彼の力はあそこで消えちゃうのさ、だから、今夜、馬で家に帰るときには、あの橋をめがけてまっしぐらに走るんだな、首なし騎手はあの窪地にいる、あいつはおまえの首を狙っている、危ない危ない、ご用心」

コーラスはまえのと同じなので、省略します。たしかに、頭がないやつを相手に、まあ、落ち着け、話をきこうじゃないか、なんて、説得は無駄でしょう!

f0147840_0373377.jpg
この世とあの世の境目、運命の橋

以上、お読みになるあなた方もお疲れでしょうが、書くほうはもっと疲れましたぜ。当ブログでとりあげた曲のなかで、ヴァース当たりのワード数も最多、1曲当たりのワード数も最多だろうと思います。

◆ 教科書には無理な小説 ◆◆
このアニメのクライマクスである、イカボッドとミスター・トード(原作ではガンパウダー)が、スリーピー・ホロウで首なし騎手に追いまわされるシーンは、You Tubeでご覧になれますので、検索してみてください。adventure of ichabod disneyぐらいのキーワードでオーケイだと思います。

f0147840_0411529.jpgわたしは、このアニメを見たことがありませんでしたが、なかなかダイナミックなシーンの連続で、子どものころ、ディズニーのアニメに夢中になったことを思いだしました。こういうのを見ると、大ヒットした日本製のアニメなんか馬鹿馬鹿しくて見られないと思うのですが、それはひねくれ者のいうこと、ふつうは、細部の表現方法なんか気にせず、ストーリーを楽しむのでしょう。

中学だったか、高校のはじめだったか、英語のリーダーで、この物語のクライマクス、イカボッド・クレインが首なし騎手に遭遇する場面を読みました。今回、はじめて頭から尻尾まで読んでみましたが、いや、むずかしいのなんの、ほんとうにこんなものが教科書に掲載されていたのだろうかと首をひねりました。

f0147840_2104425.jpgいや、表現手法に複雑なところはないのですが、なんせ、現代では見かけない単語が山ほど出てきて、読書のときは辞書を引かない主義の人間は、ほとほと往生しました。とりわけ、風物人情をていねいに、というか、うるさいほど微細に描写するだけで、まったくアクションのない前半は、1ページも読まないうちに眠ってしまいました。

さすがにカー・チェイスならぬ、ホース・チェイスになると、たちまちスピードアップして、最後の数ページは一気に読めましたが、それまでの長かったこと、長かったこと、あだし心で、大昔の小説なんか読むものじゃないと反省しました。

◆ あと口のよくない結末 ◆◆
(ちょっとネタばらしをしますので、Project Gutenbergにいって、この小説を読もうと思った方は、ここは飛ばしてください。)

f0147840_0433174.jpgしかし、この話、後味がよくないのです。イカボッドは、橋を渡って首なし騎手の追跡を振り切ったと思ったとたん、首なし騎手が手にした自分の頭を投げつけ、そこでそのシーンはおしまい。翌朝、イカボッドの姿がないので、捜索がおこなわれ、遺留品が発見されます。イカボッドの着衣のかたわらには、つぶれたカボチャが転がっていたとか。結局、イカボッドは首なし騎手の餌食になったのだ、ということで一件落着。

いくらなんでも、これでおしまいではひどいと思ったのか、後日談があります。イカボッドと美少女を争ったブロン・ボーンズは、ライヴァルが消えたので、あっさりと素封家の相続人である恋人を手に入れるのですが、村人のひとりがニューヨークに出かけ、そこでイカボッドが生きていることを知ったと報告します。法律家になり、政治家になり、いまや新聞に出る有名人だ、というのです。

f0147840_046841.jpgイカボッドは、どうやら、ヒロインに袖にされたのと、首なし騎手の恐怖で、そのまま村を捨てたらしい、という結末です。ライヴァルのブロン・ボーンズは、この話が出るたびに、いかにも、俺は真相を知っている、というようすで笑い飛ばし、カボチャのことが持ち出されるたびにニヤニヤする、というのだから、つまり、イカボッドを邪魔に思ったブロン・ボーンズが、首なし騎手に化けて、さんざんイカボッドを追いまわし、最後は頭に見せかけてカボチャを投げつけ、イカボッドの心胆寒からしめ、村から追い払い、みごと目論見どおり、恋人を手に入れたという心。

イカボッドが首なし騎手の犠牲になったにせよ、ブロン・ボーンズの悪巧みにハメられたにせよ、彼がニューヨークでいかに成功したにせよ、正直者は馬鹿を見る、という結末なのです。生活はいかに変わろうとも、人間の心映えの奥底は、時代が変わっても変わらないものだ、なんて常識は通用しないようです。

◆ ビングの懐かしさ ◆◆
ビング・クロスビーがナレーションと歌をやるアニメなんて、出来をどうこういう前に、存在しているだけでうれしくなります。ギャラも悪くなかったのでしょうが、やはり、子どものためのものだから、という意識があったのでしょう。

このHeadless Horsemanという歌も、いかにもハリウッド風の楽曲であり、アレンジであり、サウンドで、歌詞の内容とは裏腹に、子どものころにかえったような心地がして、なんともけっこうなものです。まさに、古きよき時代のサウンドでした。

さて、これでハロウィーンはおしまい、当ブログのEvil Moon特集もおしまい……いや、マイケルは三たび起きあがり……。
by songsf4s | 2007-11-01 23:53 | Evil Moonの歌