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Monster Mash by Bobby "Boris" Pickett & the Crypt Kickers
タイトル
Monster Mash
アーティスト
Bobby "Boris" Pickett & the Crypt Kickers
ライター
Bobby Pickett, Leonard Cappizi
収録アルバム
The Original Monster Mash
リリース年
1962年
他のヴァージョン
The Beach Boys; Sha Na Na; Stephen Bishop with Linda Ronstadt, Karla Bonoff and Andrew Gold; Vincent Price; The Count, Zoe & Telly Monster (Sesame Street); The Chipmunks
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11年間で3回チャートインし、デビュー時はナンバーワン、さらにデビューから11年後にまたトップ・テン入りをした、文字通りのモンスター・ヒット、この曲なしではハロウィーンがハロウィーンにならないというきわめつけ、大真打ちのハロウィーン・フェイヴァリット、それが今宵お届けする、ボビー・“ボリス”・ピケット&ザ・クリプト・キッカーズのMonster Mashです。

◆ 蘇生はうまくいったものの…… ◆◆
歌詞に大きく重心がかかった曲なので、ともあれ、ストーリーをみてみましょう。ファースト・ヴァース。

I was working in the lab late one night
When my eyes beheld an eerie sight
For my monster from his slab began to rise
And suddenly to my surprise

「ある夜遅く、研究室で仕事をしていたとき、我が輩のまなこは不気味なものを捉えることとあいなった、我が輩の怪物が手術台からむっくりと起きあがりはじめ、そして、驚いたことに、突然……」

いじましいテレビ番組のように、これからというところで切って申し訳ありません。その後、なにが起こったかはコーラスへとつづくのであります。

モンスターにmyと所有格があたえられているのは、当然、語り手がモンスターの生みの親であるという含意です。フランケンシュタインの怪物の物語を思いだされよ。

以下にそのコーラス。パーレンのなかはバック・コーラス。

(He did the mash)
He did the monster mash
(The monster mash)
It was a graveyard smash
(He did the mash)
It caught on in a flash
(He did the mash)
He did the monster mash

「彼はモンスター・マッシュを踊った、それは墓場のスマッシュ・ヒット、たちまち大評判、彼はモンスター・マッシュを踊ったのだ」

f0147840_0444789.jpgわたしと同世代の方々には説明の要のないことですが、マッシュというのは、60年代初期に流行した、マッシュト・ポテトというダンス・ステップのこと。そんなものを踊ったのだからして、語り手の死者蘇生実験は大成功ということになります。

それにしても、自分で自分のことを大ヒット(smash)などと、よくまあ、ぬけぬけといったものです。じっさいに、コミック・ソング史上空前絶後の大ヒットになったからよかったものの、フロップだったら、みっともないことになっていたでしょう。まあ、ヒットしなければ、存在自体に気づく人間もいないわけですが!

◆ 電極:究極の刺激 ◆◆
セカンド・ヴァース。

From my laboratory in the castle east
To the master bedroom where the vampires feast
The ghouls all came from their humble abodes
To get a jolt from my electrodes

「城の東翼にあるわが研究室から、吸血鬼たちが宴会をしている主寝室にいたるまで、食屍鬼たちがみな、粗末な住処から抜けだして、我が輩の電極から刺激を得ようと集まってきた」

この語り手は、「フランケンシュタインの怪物」の生みの親である、フランケンシュタイン男爵という設定なのだろうと思います。したがって、モンスターは当然、「フランケンシュタインの怪物」です。あの物語(映画でもいいのですが)では、城に研究室があります。そうか、ということは、「大ヒット」は、城の範囲内のことですね。

ドラキュラたちが宴会をやっているのが、舞踏室ではなく、主寝室だというのが、小さいくすぐりですが、笑えます。

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最初とはちょっとだけちがうセカンド・コーラス。

(They did the mash)
They did the monster mash
(The monster mash)
It was a graveyard smash
(They did the mash)
It caught on in a flash
(They did the mash)
They did the monster mash

訳すまでももないでしょう。主語がHeからTheyへ、すなわち、モンスターからグール(食屍鬼)たちに変わっただけです。

◆ 幻のスーパースター、クリプト・キッカーズ・ファイヴ ◆◆
ブリッジ。

The zombies were having fun
The party had just begun
The guests included Wolf Man
Dracula and his son

「ゾンビたちも楽しんでいた、パーティーははじまったばかり、ゲストは狼男、ドラキュラ、そしてその息子」

シリーズ化したモンスター映画の続篇の常道、「~の復活」「~の花嫁」「~の息子」をきちんと押さえています。このように「常道を踏む」のは重要なことです。

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こちらは魔女のマッシュ。あのドロドロがマッシュなのです。

サード・ヴァース。

The scene was rockin'
All were digging the sounds
Igor on chains, backed by his baying hounds
The coffin-bangers were about to arrive
With their vocal group, "The Crypt-Kicker Five"

「パーティーはロッキンしまくり、だれもがサウンドを楽しんでいた、鎖につないだイゴールは、うなり声を上げる彼の犬に後ずさりさせられ、棺桶叩きたちももうじき到着、彼らのヴォーカル・グループ“墓蹴りファイヴ”をつれてくる」

be backed byはいくつか解釈が可能で、ひょっとしたら、わたしがイゴールというキャラクターのことを知らないために、まちがった解釈をしているかもしれません。on chainsというのは、両脚を鎖でつないでいる状態でしょう。

coffin bangerという妖怪は一般性はないようで、どういうものかわかりません。なにかのフィクションに登場するキャラクターかもしれません。棺桶叩きのヴォーカル・グループは、パーカッションがわりに棺桶をバンバン叩いて歌うのでしょうか。cryptは穴蔵、地下室のことですが、この場合、納骨する穴蔵のことでしょう。

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当然の企画ながら、ウルフマン・ジャックのDJ付きハロウィーン・フェイヴァリット集もあります。これまた当然ながら、紫人食いとモンスター・マッシュという二大ハロウィーン・ヒットを看板に立てているところは、「うち」と同じ! (追記:内容を確認したところ、多くは再録音で、ウルフマン・ジャックのしゃべりもなし。相当インチキな盤なので、まちがっても入手なさらないように。カヴァーだけは面白いので、削除せずにおきます)

『キャリー』の運命のプロム・ナイト、あの会場で演奏していたグループによる盤があるそうですが(あの大殺戮を逃れられなかったのでしょう、1枚のみだけだとか)、クリプト・キッカーズ・ファイヴの単独名義で盤を出せばよかったのに、と思います。

ここのコーラスは、セカンドと同じものなので略します。

◆ ローカル・ヒットからナショナル・ヒットへ ◆◆
フォース・ヴァース。

Out from his coffin, Drac's voice did ring
Seems he was troubled by just one thing
He opened the lid and shook his fist
And said, "Whatever happened to my Transylvania twist?"

棺桶からドラキュラの声が響き渡った、彼が腹を立てている理由はただひとつ、彼はまぶたを開き、拳をふりまわして叫んだ。『わたしのトランシルヴァニア・トゥイストはどうなったんだ』」

ドラキュラを「ドラック」と短縮してしまうのは、恐れ入っちゃいます。トランシルヴァニアはご案内のようにルーマニアの一地方、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の舞台です。

モンスター・マッシュがあるのなら、トランシルヴァニア・トゥイストぐらいあっても、べつにおどろくにはあたらないでしょう。なんなら、半魚人スウィムでも、ミイラ・ゴーゴーでも、キング・コング・モンキーでも、お好きなものをどうぞ、です。

いわせていただくなら、古典落語「らくだ」では、死人がかんかんのうを踊ります。こういうことにかけては、わが国のほうがずっと先輩なのです(なんて威張るほどのことでもないか)。

主語がtheyからitに変わっただけのコーラスは省略し、ラスト・ヴァースへ。

Now everything's cool, Drac's a part of the band
And my monster mash is the hit of the land
For you, the living, this mash was meant too
When you get to my door, tell them Boris sent you

「さて、万事好調、ドラックもバンドに仲間入り、我が輩のモンスター・マッシュも全国ヒット、なんじ生者らも、このマッシュの対象なのだ、我が城の門にきたら、彼らに、ボリスの招待だといいたまえ」

このあと、フェイドアウトでのセリフ(とイゴールのうなり声)があるのですが、Easy Igor(おとなしくしろ、イゴール)のあとはよく聞こえません。impatientとか、mash goodという言葉が聞こえるので、「おまえは忍耐心がない、ちゃんとマッシュしろ」とかなんとかいっているのじゃないでしょうか。

◆ 特殊な、特殊な、ウルトラ・レア・グルーヴ ◆◆
ボビー・“ボリス”・ピケットは、マサチューセッツ州サマーヴィルの映画館支配人の息子として生まれ、子どものころに見たボリス・カーロフ映画で、この俳優の大ファンになりました。素人タレント・コンテストでは、カーロフの物真似でいつも優勝していたといっています。

f0147840_116392.jpg俳優を志し、ハリウッドにやってきましたが、友だちのヴォーカル・グループ、コーディアルズに加わって、ダイアモンズのLittle Darlin'のセリフのところで、お得意のボリス・カーロフの物真似をしているうちに、バンド・メイトのレニー・キャピージが、それを使ってノヴェルティーをつくろうといいだして生まれたのが、このMonster Mash。はじめはMonster Twistだったのが、マッシュ・ポテトのほうがいいだろうというので、Monster Mashed Potato、それを縮めてMonster Mashとなったようです。mashには「どろどろのもの」という意味もあるので、たしかにモンスターにはふさわしい言葉です。

キャピージはデモをゲーリー・パクストンのところに持ち込み、パクストンが本番のプロデュースをしました。1962年なので、アール・パーマーでも、ハル・ブレインでもいいはずなのに、なんだか不安定なドラムで、だれだろうと思ってあちこち見てみたら、メル・テイラーと書いているところがありました。なるほど、それでフィルインのたびに乱れるのね、でした。

f0147840_1204275.jpgフィルインの「入り」で遅れ、その分を取り返すために途中は急ぎに急ぎ、最後はむりやり辻褄を合わせる、というかなり特殊な下手さで、真似ようたって、だれにでも真似できるというものではなく、その稀少性からいって、これはこれで、いわゆるひとつの才能といえるかもしれません。すくなくともこの曲には、この下手さは効果的だったといえるでしょう。これがホントの「レア・グルーヴ」、そんじょそこらにあるグルーヴではありません。これを「グルーヴ」をいってしまうと、わたしの音楽感は崩壊の危機なのですが!

ピアノはリオン・ラッセル(このマイナー・リーガー軍団にたったひとり混じった大リーガー、したがって、やや浮き気味)、ギターはパクストン、そしてベースはピケット自身だそうです。62年にフェンダー・ベース、しかもフラット・ピッキングのプレイで、そういうプレイヤーは知らなくて(レイ・ポールマンは親指フィンガリング、フラット・ピッキング・スタイルのキャロル・ケイがベースをはじめるのは64年、ジョー・オズボーンはすでにハリウッドで活躍中だが、リック・ネルソン・バンドの時代で、まだセッション・ワークははじめていないと考えられるし、そもそも、この曲はオズボーンのスタイルとはまったく異なる)、だれだろうと悩んでしまいましたが、ピケット自身では、わかるはずがありません!

パクストンは2バイ4板にサビ釘を打ち込み、それをゆっくりと抜くことで、棺桶の蓋が開くSEをつくったそうです。ゴボゴボいう音(昔のモンスター映画、気違い科学者映画にはつきものだった、フラスコのなかで得体の知れない液体が沸騰する音のつもりでしょう)は、もちろんストローでやったのだそうです。

この曲の魅力のひとつである、クリプト・キッカーズのバック・コーラスをやったのは、パクストンと、ジョニー・マクレー(パクストンのパートナー)、そしてリッキー・ペイジ(おそらくセッション・シンガー)の3人。女声はペイジという人だけのようなので、半分は彼女の声のおかげで、この曲はヒットしたことになります。

◆ 他のヴァージョン ◆◆
他のヴァージョンにふれる余裕がなくなりましたが、まあ、みなお遊びなので、どうということはありません。

セサミ・ストリート盤は、あの番組のためのものでしょうから、歌詞をかなり変えています。リード・ヴォーカルは「カウント」(ドラキュラ風キャラクターで、数の数え方を教える役目)なので、たとえば、「One, two, three zombies were having fun」などと、いちいち勘定したりしていて、これはこれで「細部に凝る」というノヴェルティーの常道をきちんと踏んでいて、好感がもてます。

スティーヴン・ビショップ、リンダ・ロンシュタット、アンドルー・ゴールドのヴァージョンは、いったいどういう機縁でうまれたものかわかりませんが、ロンシュタットのバック・コーラスはいいとして、ビショップのリードはミスマッチ。まあ、むりにボリス・カーロフをやろうとして、うまくいっていないところが、可笑しいといえば、可笑しいのですが。

ヴィンセント・プライスは、まさに俳優の盤、ほとんどセリフです。ドイツ風のなまりはお手のものというところでしょう。

ビーチボーイズは、ライヴではこの曲をよくやっていたようですが、とくに面白いことはありません。ヴォーカル・グループの名前は、クリプト・キッカーズ・ファイヴではなく、ビーチボーイズ・ファイヴと歌っています。

チップマンクス・ヴァージョンはヴィデオでもっています。わたしは恥ずかしながらマンクスのファンなので、当然、having funであります。

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また、ピケット自身によるリメイクやら、ステレオ・ミックスやら、各種のヴァリアントもあり、現在では1枚のアルバムにまとめられています。

◆ カウントダウン終了 ◆◆
ピケットは、「血液銀行のブルース」とか、「スカリー・ガリー」(Hully Gullyの替え歌)とか、モンスター・マッシュで言及された「トランシルヴァニア・トゥイスト」など、この傾向の曲をいろいろやっていますが、それはまたふれる機会があると思います。

このところ、毎日、開きっぱなしにしているハロウィーン・サイトのハロウィーン・カウントダウン時計は、ハロウィーンまで残り6分を切ったと告げています。急がねば!
by songsf4s | 2007-10-31 00:02 | Evil Moonの歌