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I Put a Spell on You by Alan Price Set
タイトル
I Put a Spell on You
アーティスト
Alan Price Set
ライター
Screamin' Jay Hawkins
収録アルバム
Anthology
リリース年
1966年
他のヴァージョン
Screamin' Jay Hawkins, Nina Simone, Them, Manfred Mann, CCR
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本日の曲、I Put a Spell on Youは、オリジナルのスクリーミン・ジェイ・ホーキンズ盤の段階ではシンプルなマイナー・ブルースだったのが、後年のヴァージョンではいくつかのコードが加えられています。わが家にあるもので追跡できる範囲では、1965年のニーナ・シモンのカヴァーから、コードが加えられたようです。

わたしが当時もっとも好きだったヴァージョンは、ラジオで聴いただけのアラン・プライス・セットのものなので、ニーナ・シモン盤同様、やはりコードの多いこのヴァージョンを看板に立てました。

◆ 丑の刻詣りの五寸釘 ◆◆
それではファースト・ヴァース、とブルースのほうでいうかどうかは知りませんが、まあ、とにかく第一ブロックの歌詞を見ていきます。

I put a spell on you
Because you're mine
You better stop the things that you do
I ain't lyin', no I ain't lie
I just can't stand it baby
The way you're always runnin' 'round
I just can't stand
The way you're always put me down
I put a spell on you
Because you're mine

「おまえに呪いをかけてやる、おまえは俺のものだから、いまやっていることをやめたほうがいい、嘘じゃないぞ、まったく我慢がならない、遊びまわりやがって、俺をナメきったおまえのやり方にはうんざりだ、おまえに呪いをかけてやる、おまえは俺のものなんだから」

f0147840_23383276.jpg以上でこの曲の歌詞はほぼすべてです。「ほぼ」というのは、セカンドはこの歌詞を部分的に変えたもの、サードはインプロヴで、I love youだとか、You're mineだとか、I put a spell on youとか、そういうものを思いついた順に適当に叫んでいるだけで、ヴァースとかなんとかいう大げさなものではないからです。

義務教育を受けた方ならみなご存知のように、putは現在過去過去分詞が同型なので、時制がわかりません。すでに呪いはかけられたものと解釈することも可能ですが、文脈からすると、現在形として使われていると考えるのが順当でしょう。

アラン・プライス盤ではそのニュアンスはありませんが、オリジナルのスクリーミン・ジェイ・ホーキンズ盤を聴けば、この「呪い」は冗談でも脅しでもなく、まったくもって「嘘じゃな」くて、ヴードゥーだと感じます。日本でいえば、丑の刻詣りをして五寸釘を打つぞ、本気だからな、という歌なのであります。げに恋の地獄は恐ろしき哉。

また、run aroundは、こういう場合は浮気、恋の遊びを指します。

◆ イントロの勝負 ◆◆
アラン・プライスはアニマルズでデビューし、すぐにバンドを抜けました。当時の報道では、ツアーのきつさに耐えられないためとされましたが、わたしは、エリック・バードンがリード・ヴォーカルをほぼ独占してしまい、歌での出番が少ないことを嫌ったのだと考えています。その証拠に、アラン・プライスはすぐに自分のバンド、アラン・プライス・セットをつくって、すべてのリード・ヴォーカルを独占することになります。

f0147840_23393192.jpgイギリスのチャートは、アメリカのように単純に考えるわけにいかないのですが、わが家にあるチャート・ブックでは、このI Put a Spell on Youが、アラン・プライス・セットの最初のヒット曲であり、アメリカでも、トップ40には届かなかったものの、ホット100には入っています。ビルボードでは、アラン・プライスのヒット曲はあとにもさきにもこれ一曲で、英国ローカルのアーティストとみなしていいようです。

アラン・プライス盤I Put a Spell on Youの魅力は、彼がプレイしたオルガン(ハモンドではなく、コンボ・オルガン。The House of the Rising Sunに使ったのと同じものかもしれない)が全編を支配していることにあります。とりわけ、ちょっとクラシカルなイントロが印象的で、わたしがこのアラン・プライス盤を気に入ったのも、イントロゆえのことでした。

◆ メイジャー・コードの挿入 ◆◆
もうひとつ重要な点はコード進行なのですが、これはアラン・プライスの創始ではないようで、プライス盤より一年早いニーナ・シモン盤I Put a Spell on Youですでに使われています。

昔は、日本ではリリースされず、また輸入盤というものもごく一部の店でとりあつかっているだけだったので、ラジオでは聴いたことがあるけれど、手に入らないという盤もしばしばありましたし、また、国内でのリリースがかなり遅れる盤もすくなくありませんでした。アラン・プライス・セットも、リアル・タイムではリリースされなかったのではないでしょうか(わたしが気づかなかっただけかもしれませんが)。入手したのは、ずっと後年のことです。

f0147840_23444173.jpgそもそも、このヴァージョンの存在を知ったのは、67年か68年にニーナ・シモン・ヴァージョンを聴いたあとのことでした。ニーナ・シモン盤I Put a Spell on You自体、調べてみれば、わたしが聴いたのは、リリースから2、3年後だったようで、いまになって驚いています。

Stormy Weather その2 by Django Reinhardt」のときに、ジャッキー・ウィルソンのStormy Weatherにふれ、「伊勢佐木町ブルース」のようなイントロだと書きましたが、ニーナ・シモンのI Put a Spell on Youもまた、「伊勢佐木町ブルース」のストリングスに雰囲気がよく似ています。

いや、そんなことはいいのですが、ニーナ・シモン・ヴァージョンでは、スクリーミン・ジェイ・ホーキンズのオリジナルにはない、メイジャー・コードおよびペダル・ポイント(か、ストレートなコードか、微妙なところですが)が加えられたことが、後続のヴァージョンに大きな影響をあたえています。

f0147840_2347376.jpg便宜的に、すべてのヴァージョンがアラン・プライスのように、Gm(またはGm7)をキーとしているものとします。スクリーミン・ジェイ・ホーキンズは、Gm-Cm-Gm-D7という、3コードのシンプルな進行です。ニーナ・シモン盤は、Gm-F-E♭-D7がまず一ブロック、つぎのブロックはGm-G-Cm-Gm-E♭-D7(この下降進行は、ペダル・ポイントで置き換えることもできる。アラン・プライスはオルガンでやっているので、ファースト・ヴァースはペダル・ポイント的な響きになっている)というように、3度にあがるときに、経過音的にGメイジャーをはさんでいるのです。

これがリー・マイケルズのStormy Weatherにおけるコードの変更のように、非常に効果的で、心地よく響きます。わたしにとっては、この曲の魅力はこのコード進行にあるので、スクリーミン・ジェイ・ホーキンズのオリジナルは、まったくつまらないものに思えます。

◆ 残りのヴァージョン ◆◆
f0147840_23564025.jpgStormy Mondayの記事で、ヴァン・モリソンが影響を受けた曲を集めたVan Morrison's Juke Boxという編集盤が、Tボーン・ウォーカー盤Stormy Mondayを収録しているのはおかしい、コード進行の変更から考えて、ゼムが参照したのはボビー・ブランド盤にちがいない、と書きましたが、ゼム盤I Put a Spell on Youにも同じことがいえます。

Van Morrison's Juke Boxは、スクリーミン・ジェイ・ホーキンズのI Put a Spell on Youを収録していますが、ゼム盤は、3度上がるときに、やはりメイジャー・コードをはさんでいるので、ニーナ・シモン・ヴァージョンないしは、それ以前の、わたしが知らない、このメイジャー・コードを追加したヴァージョンを参照したにちがいありません。

f0147840_035131.jpgポール・ジョーンズがリード・ヴォーカルだった時代のマンフレッド・マンのI Put a Spell on Youも、やはりメイジャー・コードをはさむパターンを使っています。しかし、これは好みの出来とはいいかねます。

CCRのヴァージョンは、デビュー盤からのシングル・カットで、ビルボード・ホット100に届くマイナー・ヒットになっています(チャートインしたのはアラン・プライスとCCRのみ)。CCR盤だけは、ニーナ・シモンのような追加コードを使わず、スクリーミン・ジェイ・ホーキンズ盤と同じようなシンプルなコードでやっています。

わたしはほぼ同じころに、ニーナ・シモン、アラン・プライス、CCRのヴァージョンを聴いていますが、気に入ったのは前二者だけで、CCR盤は問題外と思いました。プレイが荒っぽくて、ドラム(のみならずバンド全体)も走るので、気持ち悪く感じたせいだろうとは思うのですが、今回、並べて聴き直し、やはり、このメイジャー・コードや、ペダル・ポイント風の下降コードも重要なのだと気づきました。これがあるからこそ、この曲がおもしろいのであって、メイジャー・コードをとってしまったら、ただの暗いマイナー・ブルースにすぎず、わたしはまったく関心をもたなかったでしょう。CCR盤には洟も引っかけなかったのは、そのせいもあったのだと感じます。

◆ 三つ子の魂 ◆◆
中学生なんて、ただやみくもに、手あたりしだいに音楽を聴いて、幼い嗜好を基準に、いいだの、悪いだのといっているだけのようですが、あとから詳細に検討してみると、かならずしも見当違いばかりではないという気がしてきます。

いろいろなStormy Mondayのなかで、リー・マイケルズ盤に強く反応したのには、自分なりに筋の通った理由があったことがわかってきましたが、I Put a Spell on Youについても、今回、各種ヴァージョンを並べてみて、やはり、中学のときと同じく、わたしの好みは、オルガンのせいでちょっとクラッシーなアラン・プライス盤と、非ブルース的なコード進行を強調したニーナ・シモン盤であることに、まったく変わりはありませんでした。

悪くいえば、十五歳から成長していないことになりますが、開き直っていうならば、人間の好みとは、年齢ごときの力ではビクともしない強固なものなのだともいえます。どっちでもいいのなら、いいほうにとっておくに越したことはないでしょう。子どものころに聴いていた音楽を、この年になっていまだに聴きつづけているということは、取り繕ってもしかたのない事実ですし。


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アラン・プライス
Geordie Boy: Anthology
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ニーナ・シモン
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by songsf4s | 2007-10-28 21:38 | Evil Moonの歌