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Purple People Eater by Sheb Wooley
タイトル
Purple People Eater
アーティスト
Sheb Wooley
ライター
Sheb Wooley
収録アルバム
Dr. Demento Presents: Greatest Novelty CD of All Time!
リリース年
1958年
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50年代ヒット曲集にしばしば収められるだけでなく、ハロウィーンの季節にはアメリカ中で流れているはずのモンスターものの定番でもあり、またワン・ヒット・ワンダー・アンソロジーにもしばしばとられ、みなさんの棚やHDDやポータブルにも収まっているであろう、「季節性耳タコ曲」の登場であります。

◆ ひとつ眼だって? ◆◆
それではファースト・ヴァース。

Well I saw the thing comin' out of the sky
It had the one long horn, one big eye
I commenced to shakin' and I said "ooh-eee"
It looks like a purple eater to me

「その生物は空からやってきた、一本の長い角がはえ、大きなひとつ眼をしていた、俺は震えだし、「ウッヒャー」といった、そいつは紫人喰いのように見えた」

thingには「生き物」という意味があります。The Thingすなわち『遊星よりの物体X』(ハワード・ホークスのオリジナル)または『遊星からの物体X』(ジョン・カーペンターのリメイク)というのは、「物体」のほうがタイトルとして響きがいいとは思いますが、要するに、辞書を引かない無精な映画会社、レコード会社の社員たちが、これまでに五万とまき散らしてきた誤訳のひとつです。

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モノクロからカラーへ 「物体」は進化し、パワーアップする

f0147840_130515.jpg大昔の通俗SFに出てくるモンスターは、みな目が大きく、bug-eyedすなわち「昆虫の目をした」という形容詞がつけられたそうです。ここでのひとつ眼はそんな連想かもしれませんし、あるいは、ギリシャ神話で、イアソンとアルゴ探検隊が遭遇するひとつ眼の巨人(名前失念)あたりが念頭にあったのかもしれません。

なぜ紫色なのか? たいした理由はないのでしょう。人間の肌にはありえない色ならなんでもよくて、紫がいちばん肌の色としては気色悪そうだから、といったていどのことじゃないでしょうか。

ファー・スト・コーラス。この曲では、すべてのヴァースのあとにコーラスがあります。

It was a one-eyed, one-horned, flyin' purple people eater
(One-eyed, one-horned, flyin' purple people eater)
A one-eyed, one-horned, flyin' purple people eater
Sure looks strange to me (One eye?)

「そいつはひとつ眼、一角、空飛ぶ紫人喰い、いやまったく奇妙な化け物さ(ひとつ眼だって?)」

パーレンのなかはバックコーラスの合いの手です。

◆ チップマンクス声のかるーいモンスター ◆◆
半音転調して、セカンド・ヴァースへ。

Well he came down to earth and he lit in a tree
I said Mr. Purple People Eater, don't eat me
I heard him say in a voice so gruff
I wouldn't eat you cuz you're so tough

「ヤツは地球にやってくると、とある木に降り立った、俺が「紫人喰いさん、俺を食べないでくれ」といったら、ヤツはひどいしわがれ声で『おまえなんか喰うものか、固くてお歯に合わない』といった」

f0147840_1454562.jpg紫人喰いのセリフのところは、テープの遅廻し(世間で「早廻し」といっているもののこと。じっさいにはスロウダウンして録音し、通常速度で再生する)による、異常にピッチの高い声でやっています。「チップマンクス風」です。といわれてわかった人はもうお若くない。

こんどは「一角だって?」というところだけがちがうコーラスをはさみ、また半音上げて、サード・ヴァースへ。

I said Mr. Purple People Eater, what's your line
He said it's eatin' purple people and it sure is fine
But that's not the reason that I came to land
I wanna get a job in a rock and roll band

「『じゃあ、あんたの好物はなんだい』ときいたら、紫人喰いがこたえるには『紫人だ、あれはすごくうまい、でも、俺がここにきたのはそれが目的じゃない、じつは、ロックンロール・バンドで働きたいとおもってな』ときたもんだ」

f0147840_140014.jpgファースト・ヴァースで、Purple People Eaterを「紫色の肌をした人喰いモンスター」と解釈したのはまちがいに見えるかもしれません。正しくは「紫人を喰うモンスター」なのではないか、と。でも、そういうことではないと思います。だれが聴いても、この表現では修飾関係は明白ではなく、モンスターが紫色なのだろうと思うのは自然なことです。それを逆手にとって、じつは「紫人」を食べるモンスターなのだ、とひっくり返したのがこのラインの意図でしょう。この「紫人」というのが、わけがわからなくて、笑えます。きっと広い宇宙のどこかに、やわらかくて美味な紫人がいるのでしょう。

今度のコーラスはいままでとかなりちがうので、無精せずにペーストします。

Well bless my soul, rock and roll, flyin' purple people eater
Pigeon-toed, undergrowed, flyin' purple people eater
(We wear short shorts)
Flyin' purple people eater
Sure looks strange to me

「まったくなんてこった、ロックンロール・クレイジーの空飛ぶ紫人喰いだとよ、内股で歩く、育ちそこないの空飛ぶ紫人喰い、まったくおかしなヤツだぜ」

バックコーラスの合いの手、We wear short shortsは、ご存知の方はご存知、ロイヤル・ティーンズのヒット曲Short Shortsの引用で、メロディーもそのまま使っています。名前は忘れましたが、週末の深夜にやっているタモリのテレビ番組のエンディング・テーマといえばおわかりでしょうか?

◆ モンスターのパフォーミング・キャリア ◆◆
フォースまできましたが、まだ終わりではありません。

And then he swung from the tree and he lit on the ground
He started to rock, really rockin' around
It was a crazy ditty with a swingin' tune
Sing a boop boop aboopa lopa lum bam boom

「そしてヤツは木からひらりと地面に飛び降りると、ノリノリでロックしはじめた、それは無茶苦茶におかしな歌詞のノリのいい曲で、『バッパラパラッパラッパルンバンブーン』てな調子さ」

つづくフォース・コーラスでは、Short Shortsの引用のところが、「I like short shorts」にかわり、歌い手も女性コーラスではなく、紫人喰いの声、すなわち、チップマンクス声になり、このモンスターも、ご多分にもれず好色であることが明らかになります。

f0147840_1501763.jpg昔のB級ホラーでは、モンスター(または宇宙人、またはミイラ、または半魚人、または狼男、またはドラキュラ、その他いろいろ)が美女を掠うことになっていましたが、お互い、種が違うのだから、リビドーが発動するとは思えないんですがねえ。キングコングだって変ですよ。まあ、異種であってもリビドーが発動してしまうところが、モンスターのモンスターたるゆえんなのかもしれませんが。

その点、ゴジラなんか、美女には目もくれず(まあ、あちらから見れば、人間は蟻なみのサイズだから、どちらにしろ見えないのかもしれませんが)、くそみそいっしょ、美女醜女老若おかまいなしに、一律に踏みつぶしていったのは、世界のモンスターの頂点に立つ王者の、孤高の魂の発露というべきでしょう。アナーキーというべきか、お役所仕事的融通のなさというべきか。

このコーラスの最後の合いの手は「紫人だって?」となっています。自分でボケておいて、自分で突っ込みを入れるという、ある意味では現代的な演出。

さてフィフス、これでようやくおしまいのヴァース。

And then he went on his way, and then what do ya know
I saw him last night on a TV show
He was blowing it out, a'really knockin'em dead
Playin' rock and roll music through the horn in his head

「で、ヤツはどこかへいっちまった、で、驚くなかれ、昨日の夜、ヤツがテレビに出ていたんだ、ものすごい勢いで吹きまくって、観衆は完全にノックアウト、例の頭の一角でロックンロールをやっていたのさ」

f0147840_212353.jpgそして、管楽器のソロに突入。うーん、この楽器はなんでしょうねえ、木管であることはたしかですが、クラリネットか、ソプラノ・サックスか、はたまたチャルメラ(ウソ)による、いずれにしても、その楽器本来のサウンドではない、かなりいじった音による(わかった! テープ遅廻し録音によるテナー・サックス・ソロ。クラリネット・ソロと書いていたサイト、あなたは楽器の音色の微妙な違いに対する知識とセンスがなく、スタジオのギミックに関する知識と想像力に欠けていますぞ)、really blowin' outするソロがアウトロになっています。そして、植木等の「や、ご苦労さん」のような、チップマンクス声の「テキーラ」のひと言でサゲ。

◆ 「ホンモノ」のスタッフたち ◆◆
この曲はほんとうに多くの編集盤に採られていますし、うちのHDDを検索しても、4種類あることがわかりますが、それも当然です。細部のつくりこみがきちんとしていて、腐らないから、いまでもよく聴かれているのでしょう。

ふつうのロック・バンドは、手を抜いても、それが味になったりすることがありますが、コミック・ソングは、手を抜いたら、ぜったいに成功しません。細部にいたるまで趣向を凝らし、なによりも、本気でパフォームすることが重要になります。

f0147840_21483.jpg出来のよいノヴェルティーやコミック・ソングというのは、かならずそのようにつくられているもので、この紫人喰いも例外ではありません。ドラムはアール・パーマーですし、となれば、ピッチをいじってもちゃんとブロウしているテナー・サックスのソロは、プラズ・“ピンク・パンサー”・ジョンソンである可能性が高くなります。

f0147840_221982.jpgウーリーの他の曲のレコーディング・パーソネルなのですが、レッド・カレンダーとプラズ・ジョンソンの名前があるのをウェブで見ました。50年代終わりのハリウッドのレギュラーたちですから、わからなかったら、この人たちの名前を当てずっぽうでいっておけば、五分五分の確率で正解になってしまうのですがね。ここにアール・パーマーですから、50年代から60年代はじめにかけて、多くのロックンロール・クラシックをレコーディングしたメンバーでやっているのです。

フランキー堺は、シティ・スリッカーズをはじめるにあたって、「コミックをやるには、どうしても腕のいいミュージシャンが必要だ」といって、レベルの高いバンドになるようにメンバーを集めたそうですが、わかっていた人なのだな、と思います。

もちろん、クレイジー・キャッツの諸作における、萩原哲晶の、これでもか、これでもかというディテールにこだわったアレンジ、植木等の小さな工夫を積み重ねたレンディションなども、当然、想起されるべきものです。

◆ その日、遅くなって…… ◆◆
いま、The Billboard Book of Number One Hitsという資料のあることを思いだして、ひととおり読んでみました。

シェブ・ウーリーの友人の子どもたちが学校で仕入れてきたナゾナゾがあるのだそうです。「ひとつ眼で、空を飛び、一角で、人間を食べるもの、なーんだ?」というもの。こたえは「ひとつ眼で一角の空飛ぶ人喰い」と、ナゾナゾになっていない、オフビートなジョークで、ウーリーはこれをもとに曲を書いたのだとか。したがって、彼が付け加えた「紫」にも、たいした意味があるわけではなく、このナゾナゾになっていないナゾナゾのジョークに、よりいっそうナンセンスな味をあたえるための飾りなのでしょう。

f0147840_25203.jpgシェブ・ウーリーのものは、わが家にはあと1曲、40年代のものがあるだけですが、このときはふつうのヒルビリーです。どんな分野にもノヴェルティー・チューンというのはあるし、カントリー系にはとくに多いので、すでにノベルティーを歌ったことはあったのでしょうが、レコーディングとしては、紫人喰いがはじめてだったのではないでしょうか。

この後、ポップ・チャートでの大ヒットはなく、典型的なワン・ヒット・ワンダーのようにいわれることもありますが、カントリー・チャートでは、ノヴェルティー・ソング専用の芸名、ベン・コルダー名義で、各種のパロディー・ソングのヒットがあるようです。残念ながら聴いたことがありません。Harper Valley P.T.A. (Later That Same Day)なんて曲は、タイトルからして、ちょっと聴いてみたくなります。「その日遅くなって……」という、テレビ・ドラマのシーン転換の常套句で、あの大ヒット曲をからかったのでしょう。

f0147840_27360.jpgついこのあいだ、(Ghost) Riders in the Skyで、「ローハイド」のことにふれたばかりですが、シェブ・ウーリーはあのドラマのピート役でした(といっても、もう記憶が飛んでいるかもしれませんが)。本編のフィルモグラフィーもなかなか印象的で、『真昼の決闘』『ジャイアンツ』などの有名作品が並んでいます。

あ、それから、The Billboard Book of Number One Hitsは、やはりアウトロは、テナー・サックスのピッチをいじったものだと、あっさり書いていました。

もうひとつ、書き忘れていたことがありました。ウェブでウーリーのことを調べると、むやみやたらと、「ウィルヘルムの叫び声」という記事にぶつかります。簡単にいうと、ハリウッドのさまざまな映画(ある人の計算では100本以上)に、同じ叫び声がつかわれていて、「ウィルヘルムの叫び声」と呼ばれているのだそうです。この叫び声をやったのが、じつはウーリーではないかといわれているのだとか。その叫び声だけをつなげた映像というのがYou Tubeにあります。

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『真昼の決闘』のシェブ・ウーリー(右手前)と、エースのジョーのようにはすに坐ったリー・ヴァン・クリーフ(中央)

by songsf4s | 2007-10-25 00:59 | Evil Moonの歌