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Stormy Monday その2 by Bobby Bland
タイトル
Stormy Monday
アーティスト
Bobby Bland
ライター
T-Bone Walker
収録アルバム
The Best of Bobby Bland
リリース年
1962年
他のヴァージョン
T-Bone Walker, Lee Michaels, Lou Rawls, Them, the Allman Brothers Band, Derek & the Dominos (boot), the McCoys, ?(Question Mark) & the Mysterians, Mountain
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◆ 健忘症をひとつ克服 ◆◆
昨日のつづきで、本日はStormy Mondayの残るヴァージョンを一覧しますが、そのまえに、あとから思いだしたことを。

コメントで、nk24mdwstさんも、ジョージ・フェイムとズート・マニーがフット・ベース(ペダル・ベース)を使っていることを指摘していらっしゃいますが(前者は1枚所持、ろくに聴いていなかった。後者は高校のときに友だちのを脇から聴いたことがあるのみ)、わたしも昨夜、更新してからコーヒーをいれているときに、オルガンのフレーズが頭のなかに流れ、あっとなりました。

f0147840_2355548.jpgライ・クーダーのWhy Don't You Try Meです(Borderline収録)。これもスタジオでフット・ベースを使ったケースです。ただし、コーラスではフェンダー・ベースも入っていて、フット・ベースが聞こえるのは、ドラムが入ってこないヴァースのみですし、ドロウバー・セッティングはいかにもオルガンという感じの輪郭のないもので、リー・マイケルズのような、フェンダーと聴きまちがえかねない、アタックの強い音ではありません。

◆ ニンジンやピーマンも食べなさいといわれたので ◆◆
さて、本題。

Stormy Mondayは本来、典型的なブルース・コード進行なのですが、リー・マイケルズはブルース・コードではやっていません。いや、おおむねブルース・コード進行なのですが、装飾的によけいなコードを入れていて(キーをCとするなら、Em7、Dm7、E♭m7、D♭m7といったコード)、ハモンドの響きも相まって、これが非常に効果をあげています。わが家にあるStormy Mondayは、みなこのコード進行を使っているとばかり思いこんでいましたが、Tボーン・ウォーカーは通常のブルース・コード進行でやっていました。

f0147840_23562429.jpgとなると、よけいなコードがどこで加えられたかが問題になりますが、マイケルズほど大々的には使っていないものの、1962年のボビー・ブランド盤で、すでにちらっと出てきています。以後のカヴァーは、みなブランド盤を踏襲したことになります。当然でしょう。わたしはこのよけいなコードがあるから、この曲が好きなのです。マイケルズ盤は、このコードをほとんど前面に押し立て、ブルースでありながら、同時にブルースにはない叙情性も加えていて、そこが素晴らしいのです。

わたしは、ブルースはひとまわり(12小節)聴けばたくさん、LPまるごとはおろか、1曲聴くのもつらいという人間なので、Tボーン・ウォーカー盤はまるごとパスです。だいたい、ギターのチューニングが合っていないと思うのですが、ブルース系はチューニングが甘い人が多いようで、これが業界標準、要するに「味」なのでしょう。わたしにはわからない味ですが。

ボビー・ブランド盤は、上述のように、よけいなコードを加えたという功績があります。やっぱり、毎日毎日、コードが三つの曲ばかりやっていると、当のブルース・シンガー自身も退屈するのでしょう。意見が合いました。

f0147840_2358274.jpg?&ザ・ミステリアンズ(クウェスチョン・マーク&ザ・ミステリアンズと読みます。クウェスチョンがファースト・ネームで、マークがラスト・ネーム!)は、なにかの間違いでヒット(1966年のチャート・トッパー、96 Tears)を飛ばしただけの、ボロボロのガレージ・バンドなので、論外、もってのほか、問題外、ゴミのなかのゴミです。じゃあ、買うなよ、とおっしゃるかもしれませんが、これがトップ40道を極める修行のつらさ、「われに艱難辛苦を与えたまえ」って山中鹿之助もいっていると講釈師が教えてくれたでしょ。All My Trialsを歌っちゃいますよ。

マコーイズ盤Stormy Mondayは、リック・デリンジャー(リック・ぜーリンガー)が、ちょっと背伸びをしたがったのでしょう。スティーヴ・ウィンウッドはべつとして、十代のお子様には無理な曲です。でも、わたしも背伸びをしたがる子どもだったので、気持ちは理解できます。この人は中一のときに「ライヴァル」だと思っていた(!)ので、同情的なのです。ディノ・デジ&ビリーとか、スティーヴ・ウィンウッドとか、年齢が近いと、子どものころはものすごく気になりました。

f0147840_01339.jpgヒットの出なくなった末期、すなわち、サイケデリック以後になると、お子様バンドのマコーイズも、じつはそっちへと傾斜していきます。すくなくとも初期はスタジオ・プレイヤーの仕事であったことが、最近のオオノさんの発見で裏づけられましたが、ひょっとしたら、末期は「自立」の努力をしていたのかもしれません。成人以後はあれだけ弾くようになるプレイヤーだから、スタジオではミソっかすというのは、時代も時代ですし、すぐに我慢ならなくなったでしょう。

◆ 若いうちはまだまだワン・オヴ・ゼム ◆◆
f0147840_0121732.jpgすこし聴く気が起きるのが、ヴァン・モリソンのゼム時代のヴァージョン。久しぶりにゼムを聴くと、ヴァンはやっぱり年齢とともに成長して、よくなったタイプだということを確認できます。ゼム時代はまだ、黒っぽくつくっている感じがあり、歌のうまさがさきに聞こえてきてしまうのです。Bang時代もまだそういうところが残っていますが、それがだんだん消えていき、ただふつうに歌うようになって、素晴らしいシンガーが完成する、という正しい道を歩んだと思います。

エラ・フィッツジェラルドなんかが典型ですが、ダメな人は逆の道をたどります。はじめは、一所懸命、ただ素直に歌っていたのが、だんだん慣れてきて、音楽を、楽曲を、そしてリスナーをナメてかかるようになり、うまさばかりがめだって、曲を殺すようになっていくのです。ヴァンの一流ぶりが、この稚いヴァージョンを聴いてよくわかりました。いや、うまいんですよ。うまいだけだから、まだまだなのです。

f0147840_0133738.jpgVan Morrison's Jukeboxという、ヴァンに影響をあたえた曲を集めたオムニバスには、Tボーン・ウォーカー盤Stormy Mondayが収録されていますが、ゼムはTボーンのヴァージョンをベースにしてはいません。あのよけいなコードを入れているのだから、ボビー・ブランド盤を参照したに決まっています。こういう編集盤をつくるときは、先入観にとらわれず、ちゃんと音を聴いて、だれのどの曲のどういうところがその人に影響をあたえたのかを、きちんと検証してくれないと困ります。

f0147840_0151329.jpgルー・ロウルズは、バンドがいいので楽しめます。でも、あのコード進行は使っていないし、速い4ビートなので、Stormy Mondayを聴く楽しみはありません。エー、記憶で書きますが、アール・パーマー(ドラムズ)、ジミー・ボンド(スタンダップ・ベース)、ジョン・ピサーノ(ギター)というメンツだったと思います。ピアノは失念。ライヴではこういうメンバーですが、スタジオではしばしばキャロル・ケイがフェンダーを弾いています。わたしはベスト盤しかもっていませんが、それでもかなりのCK含有率なので、オリジナル盤の多くに参加しているのではないでしょうか。ルー・ロウルズのヴォーカルは……、うーん、暑苦しいのはあまり好まないのですよ。うまいですがね。

マウンテンは、ウッドストックのブートに入っていただけで、これがほしかったわけではないのに、ただくっついてきたというだけのこと。聴きたくもありませんが、いちおう聴きました。めげました。十代のときですら、思いきり馬鹿にしていたくらいで、この年になると、もはや笑う気にすらなりません。堅気の人間は一生聴く必要がありませんし、たとえあなたが、わたしと同類のトップ40ヤクザだとしても、Mississipi Queenだけもっていれば、日常生活にまったく差し支えありません。

◆ オールマンズ ◆◆
歐曼兄弟樂團(画像を探していて飛び込んだ台湾の販売サイトにこう書かれていました)ヴァージョンは、例のフィルモア・イーストでのライヴです。この盤は、昔からよく聴いていたつもりだったのですが、考えてみると、In Memory of Elizabeth ReedやWhipping Postの入っている、ディスク2のほうばかり聴いていて、Stormy Mondayの入っているディスク1のほうは、めったに針を載せることもなければ、トレイに入れることもなかったようです。

f0147840_0162375.jpgグレッグ・オールマンがオルガンを弾いているので、ちらっとリー・マイケルズ盤との近縁性を感じますが、ギター・バンドですから、そっちの方向へはいきません。しかし、ハモンドであのコード(オールマンズのキーはGなので、Am7、Bm7、B♭7、A♭7など)をやると、やっぱりいいなあ、と思います。Stormy Mondayという曲は、結局、この装飾的なコードに尽きるのじゃないでしょうか。

ランニング・タイムは10分を超えるので、当然、ソロ廻しがあります。オールマンズだから悪いものではありませんが、アンサンブルを必要とし、2本のギターがからむIn Memory of Elizabeth ReedやWhipping Postのようなお楽しみはありません。ただのソロ廻しです。途中、リズムを変えたりして、ダレないように努力してはいますが、ブルースでのソロ廻しは、どこまでいってもやっぱりブルースでのソロ廻し。それほど面白いものでありません。

◆ ドミノーズ、もとい、ボビー・ウィットロック ◆◆
最後にデレク&ザ・ドミノーズを残しておいたのは、出来のいいヴァージョンだからではありません。あまり音のよくないブートですし、バンドの状態もIn Concertのときほどよくはありません。ただし、ヴォーカルがボビー・ウィットロックなのです。In Concertには、ウィットロックがリードをとった曲がひとつも入っていないので、これを聴いて、やっぱり、じっさいにはスポットをもらっていたのだなと思いました。

だいたい、クラプトンの歌は、歌と呼べるような代物ではなく、いくらうまさをひけらかす歌手はダメといっても、ここまで下手さをひけらかされても困ります。ドミノーズが面白いのは、スタジオではドゥエイン・オールマンがギターでクラプトンを圧倒していること、ジム・ゴードンがすごみのあるプレイをしていること、クラプトンの歌の弱さをボビー・ウィットロックがカヴァーしているおかげです。

いえ、わたしはドミノーズの大ファンなのです。ただし、ギターとヴォーカルの人はぜんぜんいらないのです。ドラムとベースとキーボードだけならば、ツアー・バンドとしては、ロックンロール史上の三本指に入ると思います。

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ドミノーズ 左から無用の人(音は消せないので、せめてもと思い、エアーブラシで顔を消してみました)、ボビー・ウィットロック、ジム・ゴードン、カール・レイドルの素晴らしいトリオ

f0147840_0244698.jpgとにかく、ドミノーズの時代、ジム・ゴードンは絶好調で、In Concertなんか、ほかの音はまったく不要、というか、邪魔な雑音にすぎないから消えてほしい、ジム・ゴードンだけ聴いていれば幸せ、と思うほどです。ジム・ゴードンは素晴らしいプレイをたくさん残していますが、ドミノーズのIn Concertほどすごいプレイは、あとにもさきにもありません。Why Does Love Got to Be So Sadの強烈なライド、Let It Rainの精密なバックビート、ドラマーにこれ以上望むものはありません。

カール・レイドルはとくに好きなベーシストではありませんが、ジム・ゴードンとの相性ということでは、この人がいちばんだったと思います。ドラマーはベースしだい、ベースはドラマーしだい、というところもありますから。

ボビー・ウィットロックがまた好みなのです。でも、ドミノーズでは、クラプトンのヴォーカルを補うだけで、間尺に合わない役どころだなあ、と思います。Laylaのコーラス部で、ウィットロックのシャウトを消してみなさい。クラプトンのシャウトなんて聴けたもんじゃありませんよ。アルバムLaylaの最後に、ウィットロックのバラッドが入っていますが、どうしようもないヴォーカルを死ぬほど聴かされたあとにあれが出てくると、ほんとうに地獄で仏と思います。

ボビー・ウィットロックを聴くならエポニマス・タイトルのデビュー盤でしょう。これは、クレジットはないものの、半数ほどのトラックは明らかにクラプトン抜きのドミノーズによるもので、クラプトン嫌いには、一家に一枚、幸せを呼ぶ秀作です。

がしかし、これがCD化されていないんですねえ。わたしは大昔に買ったLPをリップして、しばしばプレイヤーにドラッグしています。ベスト・オヴ・ジム・ゴードンというプレイリストには、ここから4曲を選んでいます。ストレート・ロッカーのプレイもいいのですが、Song for PauraとThe Scenary Has Slowly Changedという2曲のバラッドでのプレイがまたすごいのです。バラッドのプレイがうまい人が、ほんとうにうまいドラマーです。ドミノーズのライヴと並ぶ、ジム・ゴードンの代表作と考えます。

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ボビー・ウィットロックのデビュー盤Bobby Whitlockのジャケット 上からフロント、バック、フォールド

で、話をドミノーズのブートにもどしますが、録音があまりよくなくて、肝心のジム・ゴードンが聞こえないのです。当てごととなんとかは向こうから外れる、ジム・ゴードンのファイン・プレイ、スーパー・プレイを期待したのに、聴きたくもない下手なヴォーカルと凡庸で死ぬほど退屈な「たんなる指の運動ギター」を聴かされて、おおいにめげました。そのなかで、ヴォーカルがウィットロックに交代する、このStormy Mondayは唯一の救いになっています。残念賞みたいな救いですが。
by songsf4s | 2007-10-17 23:54 | 嵐の歌