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Stormy Monday その1 by Lee Michaels
タイトル
Stormy Monday
アーティスト
Lee Michaels
ライター
T-Bone Walker
収録アルバム
Lee Michaels
リリース年
1969年
他のヴァージョン
T-Bone Walker, Bobby Bland, Lou Rawls, Them, the Allman Brothers Band, Derek & the Dominos (boot), the McCoys, ?(Question Mark) & the Mysterians, Mountain
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嵐の歌には、Stormy Weatherのほかにもう一曲、ブロガー殺しのスタンダードがあります。エルヴィス以後の時代においては、Stormy Weatherよりはるかに人気のあったStormy Monday、別題Stormy Monday Blues、さらなる別題Call It Stormy Mondayです。

とてつもない数のカヴァーがありますが、トップ40に届いたヴァージョンはなく、ボビー・ブランド盤が1962年に43位までいったのが最高位です。そもそも、シングル・カットはそれほど多くないのでしょう。しかし、アルバム・トラックやライヴでは、ちょっとやってみたくなる曲なのだと思います。

◆ 鷲は金曜に飛んだ ◆◆
いちおう、歌詞を見てみますが、わたしにはよくわからないところがあると、最初にお断りしておきます。

They call it stormy Moday
But Tuesday's just as bad
They call it stormy Moday
But Tuesday's just as bad
Wednesday's worse
And Thursday's also sad

「世間では“嵐の月曜”といっている、でも、火曜だって同じぐらいひどいものさ、水曜はもっと悪い、木曜もやっぱりひどいものさ」

リー・マイケルズは、ちょっと変な歌い方をしているのですが、意味が通らない(「There's a call it stormy Monday」と聞こえる)ので、ここはオーソドックスなリーディングにしたがっておきます。

f0147840_0253677.jpg字句の意味をとることはむずかしくないのですが、じゃあ、なんの歌なんだといわれると、よくわかりません。ワーク・ソングの一種なのだと考えています。

月曜は気分が乗らないというのは、だれでも同感できることですが、それを「stormy」と表現するところがわたしのような日本語の語感に生きている人間にはわかりかねます。嵐を避けて、じっと小さくなっている、というのなら、わたしの感覚には合っていますが。

ともあれ、月曜がいきなり嵐、火曜はどうなるのかと思っていると、やっぱり嵐、どこまでいってもいい日はない、もっとひどくなっていく、というところが、なんだか笑えます。

Yes the eagle flies on Friday
And Saturday I go out to play
Eagle flies on Friday
And Saturday I go out to play
Sunday I go to church
I kneel down and pray

「金曜には鷲が飛び、土曜には町に出かけて遊ぶ、日曜には教会にいき、ひざまずいて祈る」

ほかはともかく、金曜日がわかりません。なぜ金曜に鷲が飛ぶのか? 辞書でeagleを引くと、第3項として、以下の定義があります。

f0147840_0265924.jpg3a ワシじるしの国章[国璽、軍旗、紋章、階級章、会員章、図形など] 《ローマ帝国・フランス軍の軍標、米国の国章[国璽]、米軍大佐の階級章など》
3b 《米国の》 ワシじるし 10 ドル金貨 《1933 年廃止》

第3項のaから派生した言葉につぎのようなものがあります。

eagle day
n.《軍俗》給料日《給料袋のワシじるしから》

f0147840_0275041.jpgこれで、金曜に鷲が飛ぶ謎は解決です。アメリカは基本的には週給制なので、金曜が給料日です。だから、金曜には「鷲」が飛んで、土曜には遊びまくり(当然、性的な暗示がある)、日曜には教会にいって、昨夜の「罪」を洗い流す、というように、話がトントンと段取りよくいってくれます。木曜までの4日間の歌詞は一歩も前に進まなかったのと、なんともあざやかな対象をなしています。

Tボーン・ウォーカー盤では、もう1ヴァースあるのですが、マイケルズは略しています。彼が略した理由はよくわかります。こんな歌詞だからです。

Lord have mercy, Lord have mercy on me
Lord have mercy, my heart's in misery
Crazy about my baby, yes, send her back to me

いきなり恋人のことが出てくるのがわかりませんし、曜日がついていない(日曜に教会で祈っているということでしょうが)ところが、形式を壊していますし、特段の意味があるわけでもないから、ここは略すほうが賢明です。

どちらにしろ、この曲はインプロヴのヴィークルに使われることが多く(その証拠に、この曲がロックンロール・スタンダードになったのは、長いインプロヴが当たり前になった60年代後半のことで、それ以前はブルース・シンガーの歌う曲だった)、ポイントはヴォーカルではなく、プレイのほうにあるわけで、くだらない歌詞は飛ばして、さっさとインプロヴに入りたいのはだれだって同じでしょう。

◆ グルーヴは下半身から ◆◆
リー・マイケルズにはDo You Know What I Meanというヒット曲がありますが、これ1曲だけですし、ハモンド・プレイヤーなので、だれに影響をあたえたわけでもなく、いまではすっかり忘れられた存在でしょう。ウェブ上にも、ファン・サイトがひとつあっただけです。

f0147840_030417.jpgわたしはハモンドという楽器が好きなので、音色がいい、つまり、ドロウバー・セッティングがうまいと感じたプレイヤーの盤には手を出していました。マイケルズのStormy Mondayを聴いたのはリリース時のことですが、ミドル・ティーンでなくなってからも、このアルバムはときおり引っ張り出して聴いています。あれから何十年もたつので、わが家のStormy Mondayはむやみに肥大化してしまいましたが、それでもやっぱり、このヴァージョンがいちばん好きです。その理由は、グルーヴに尽きます。

マイケルズは、スタジオ録音でも、自分でフット・ベースを弾いています(「蹴って」いるというべきか)。このフット・ベースの味と、ドラムのフロスティーのキック・ドラムの兼ね合いがじつによろしいのです。これが、ほかのヴァージョンにはない、マイケルズ盤Stormy Mondayの魅力です。

f0147840_115274.jpgフット・ベースを録音に使った人は、考えてみると、ほとんど知りません。ラスカルズのフィーリクス・キャヴァリエが初期にスタジオでも何曲か(ラスカルズにはベースがいないので、ライヴでは当然、つねにフット・ベースだった)、スティーヴ・ウィンウッドはライヴで使っただけで、スタジオではつねにフェンダー・ベースだったと思います。いま一所懸命記憶をたどっているのですが、もう出てきません。ブライアン・ウィルソンが、Sloop John B.で、フェンダーとフット・ベースを重ねたというのがありましたが、これはフット・ベースを常用したオルガン・プレイヤーの例とはいえません。

ドアーズもベースがいませんし、盤でもフット・ベースのような音がしているときがありますが、あれは左手でオルガン・ベースを弾いているのであって、フット・ベースではありません。あとはジャズやラウンジのプレイヤーだけじゃないでしょうか(って、わたしはすべてのロックンロール・バンドを聴いたわけではないので、知らない例があるにちがいありませんが)。

f0147840_125176.jpgフット・ベースといっても、リー・マイケルズ、フィーリクス・キャバリエ、スティーヴ・ウィンウッドでは、それぞれかなりちがう音です。とくに、リー・マイケルズのフット・ベースには独特の味があります。キック・ドラムと同じで、その人固有のグルーヴが、手で扱う楽器よりも、ストレートに表現されるからではないでしょうか。つまり、リー・マイケルズは非常にいいグルーヴをもっている、すくなくとも、わたしには非常に好ましく感じられるグルーヴをもっているということです(いや、フェンダー・ベースを弾かせたら、スティーヴ・ウィンウッドは、そこらの本職なんか、みんな吹き飛ばしてしまうほどすごいグルーヴ。Empty Pagesなんか、ベースだけあれば他はいらないくらい)。

f0147840_141219.jpgじっさい、後半の長い(足ではなく両手による)オルガンのインプロヴも、リズミックだし、アクセントがクッキリしているので、退屈しません。インプロヴなんていうのは、言い換えれば「その場の思いつき」ということで、凡庸なプレイヤーがやっても面白いことはなにもありません。素晴らしいプレイヤーがやっても、やっぱり思いつきにすぎないのだから、32小節やろうと、64小節やろうと、5万小節やろうと、いいのは結局4小節だけ、なんてえのが関の山、残る49996小節はやっぱり凡庸なプレイヤーのプレイ同様、ゴミ箱直行の無意味な音の並びにすぎません。たいていの人が「指なり」に鍵盤、指板、その他もろもろの上で指その他の身体部位を上下運動しているだけであって、クソ面白くもない代物です。あれはリスナーのためにやっていると思ったら大間違いで、みな、自分たちの快感のためにやっているだけです。

この数十小節のリスナーの悪夢での唯一の救いがグルーヴです。リー・マイケルズほど、シンコペーションをきかせ、抑揚をハッキリとつけ、ソウルフルなオルガンを弾く人はいません。それは彼のタイム感に支えられています。じつになんとも気持ちのよい、退屈にはほど遠いインプロヴです。

◆ 足どうしの相性 ◆◆
ドラムのフロスティーという人は、マイケルズの盤でしか見たことのない名前ですが、欠点と長所のハッキリしたプレイヤーです。タイムはかなりいいほうで、フィルインのない「空の小節」については好みです。しかし、フィルインはしばしばミスッています。

f0147840_152098.jpgキック・ドラムのタイムは、マイケルズのフット・ベースときれいに合っていて、空の小節は気持ちのよいグルーヴを形成しています。しかし、パラディドルはミスるんですねえ。中学のとき、わたしは彼に似たドラマーだったと自分では思います。だからわかるのですが、これは左右の手のパワーがアンバランスな結果でしょう。わたしの場合、左手が強くかつ正確、右手が弱く、かつ不正確でしたが、フロスティーはたぶん左手のコントロールがうまくないのだと思います。そういうドラマーは案外多いのですけれどね。

運動能力と運動神経という分け方でいうと、フロスティーは、運動神経は発達しているけれど、運動能力が伴わないタイプで、速いパッセージになると、足がからまるようになって、両手で交互に正確なビートを叩けないのだと思います。

しかし、これはドラマーの欠点としては許容できるもので、逆だった場合は悲惨です。運動神経が悪い、すなわち、タイムが悪いのに手はよく動く場合、不快なビートを山ほど連打されちゃうわけですからね。

フロスティーはそんなことはありません。フィルインでのミスに目をつぶれば、あとは気持ちのよいビートで楽しませてくれます。

f0147840_162935.jpg書き忘れていましたが、Stormy Mondayは、この二人のプレイヤーだけで、一発録りをしたそうです。たしかに、どこにもオーヴァーダブの気配はなく、両手のハモンド、フット・ベース、ドラム、マイケルズのヴォーカルしか聞こえてきません。ハモンドという楽器の便利なところです。

退屈なだけのものがほとんですが、まだ山ほどヴァージョンがあるので、それについては、明日以降に検討させていただきます。
by songsf4s | 2007-10-16 23:54 | 嵐の歌