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風速50米 by フランキー堺
タイトル
風速50米
アーティスト
フランキー堺
ライター
三木鶏郎
収録アルバム
三木鶏郎集大成CD トリロー・コレクション
リリース年
1956年(放送)
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◆ タライに七輪 ◆◆
久しぶりに日本の曲です。長い歌詞で、書き写すのはちょっとしんどいため、JPEGで失礼させていただきます。

それではファースト・ヴァース。いや、ヴァースとコーラスをひとまとめかもしれません。カギ括弧にくくられた最後の2行は、ストップ・タイムでのセリフです。

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金物屋で金槌と釘を「借りてこい」というところで、おやおや、となります。敗戦直後の物資不足のなごりというより、落語の引用のように感じます。独立した噺ではなく、たとえば「しわい屋」などのケチ親父噺の枕によく利用される小咄です。

ある商家の主人が小僧に「隣にいってトンカチを借りてこい」と命じ、小僧が隣にいって戻ってきます。小僧「叩くと減るから貸せないといわれました」主人「なんてケチなヤツだ。しようがない、うちのを使え」

これを引用したのではないでしょうか。三木鶏郎は、山の手の生まれとはいえ、戦前の東京人、これくらいの小咄は知っていて当たり前です。

タライに七輪なんていうものは、いまやおいてある家は稀でしょう。もちろん、わたしが子どものころは、わが家にも両方ともありましたし、タライで行水したこともあります。この曲が書かれてからほんの半世紀あまり、ずいぶん、生活が変わったものだと改めて思います。

セカンド・ヴァース(およびコーラス?)。

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ここはちょっと誤植があります。「女房に駆け出せ」ではなく、ファースト・ヴァースと同じく、「女房よ駆け出せ」、「雨戸に襖」ではなく「雨戸や襖」です。ただ、ファーストは「雨戸に襖」なので、フランキー堺がまちがえたのかもしれません。

サードはファーストと同じで、セリフだけが異なります。

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と、これがサゲになって、チョンです。

◆ トリロー式節約術 ◆◆
いやはや、いろいろな意味で、うまいものだと感心しちゃいます。

f0147840_23442952.jpgまず第一に、「歌詞の節約」すなわち作詞時間の短縮方法に感心します。自伝からも、放送のスケデュールに追われながら、綱渡りで曲を書いていることがうかがえますが、それがこの曲のつくりによくあらわれています。ファースト・ヴァースをつくって、あとはそのヴァリエーションですませているのです。

セカンドは、ファーストの設定をひっくり返して、「釘付け」を「釘抜け」に変えただけ、サードは、セリフ以外はファーストとまったく同じ、それでいて、通常の繰り返しではなく、ちゃんと意味を変えているところは、ちょっとした離れ業です。

これはもう才能というしかありません。この才能がなければ、毎週の放送に合わせて、最新のトピックを取り入れながら、風刺音楽コントをつくることなどできなかったでしょう。

f0147840_23453196.jpg三木鶏郎のピアノとフランキー堺の歌およびパーカッション(のようななにか。ひょっとしたら張り扇か)だけというもので、テープ録音したものを放送したのでしょうが、録音自体はスタジオ・ライヴでしょう。三木鶏郎のピアノも達者なものですが、フランキー堺も、ドラマーであり、かつてコミック・バンドのリーダーだったこともあり、のちに喜劇俳優として大活躍する、というこの人の経歴をすべてまとめて、三分間に凝縮したようなパフォーマンスを聴かせてくれています。やはり、タイム感はあらゆるパフォーマンス、芸事のもっとも重要な基礎だということが確認できます。

おそらくこの曲は、ナンシー梅木のICE CANDY同様、放送されたあとは、盤になることもなく、三木鶏郎のもとにずっと眠りつづけていたのだと思われます。1986年のLP版「三木鶏郎集大成」が盤としての初出でしょう。ピアノとパーカッションだけという、盤としては不十分なバッキングですが、やっつけ仕事とはいえないなにかを感じる出来です。こういうものが発掘され、LPになり、CDになり、いまも聴けることを喜びたいと思います。
by songsf4s | 2007-10-11 23:37 | 嵐の歌