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Stormy by Classics IV
タイトル
Stormy
アーティスト
Classics IV
ライター
Perry "Buddy" C. Buie, James R. Cobb
収録アルバム
The Very Best of Classics IV
リリース年
1968年
他のヴァージョン
Bobbie Gentry, the Supremes, the Meters, the Ventures, the Funk Brothers
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◆ 4枚目のアルバムしかないバンド!? ◆◆
ホンモノの嵐の歌がまだちょっと残っていますが、昨日はキース・リードの嵐に翻弄され、半死半生の目に遭ったので、ちょっとお気楽な曲で息抜きをします。

いや、このまま、ずっと息を抜きっぱなしで、二度と暴風海域には戻らないかもしれませんが。なんたって、流行歌における「嵐」は「恋の嵐」であることのほうが本筋であり、比喩であるほうが正しい姿なのです。

スタンダードやトラッドには、タイトルに嵐がつく有名な曲がほかにありますが、わたしが育った時代にもっとも有名だったのは、このクラシックス・フォーのStormyです。わたしの手元には5種類のヴァージョンしかありませんが、もっと多くのカヴァーがあるでしょう。

f0147840_23551156.jpgClassics IVというのは、ご存知のない方を戸惑わせるバンド名のようで、昔、渋谷のレコード店で盤を漁っていたら、「Classics」と表示した板があって、「そんなバンドは知らないねえ」と通りすぎようとしたら(いや、60年代にそういうコーラス・グループがあったのですが、わたしは知りませんでした)、クラシックス・フォーのベスト盤がおいてありました。その店では、「クラシックス」というグループの4枚目のアルバムと思ったようです。

後世になんの影響もあたえず(メンバーの一部は、アトランタ・リズム・セクションに流れ込みますが、このバンド自体もそれほど影響力があったわけではありませんし、バンドの心臓部であるリズム隊はクラシックス・フォーとは無関係です)、純粋な娯楽としての音楽を提供したグループなので、忘れられて当然でしょう。しかし、同時代に生きた人たちなら、たとえ当時は彼らの盤を買わなくても、あとで2、3曲、聴きたくなったにちがいないと想像しています。その代表的な曲がこのStormyです。

◆ 現代版天照大神 ◆◆
それでは歌詞を見てみましょう。ファースト・ヴァースとコーラスをまとめていきます。

You were the sunshine, baby, whenever you smiled
But I call you Stormy today
All of a sudden that ole rain's fallin' down
And my world is cloudy and gray
You've gone away
Oh Stormy, oh Stormy
Bring back that sunny day

「微笑んでさえいれば、きみはいつだって太陽さ、でも、今日はストーミーだ、突然、雨が降りはじめて、ぼくの世界は雲に覆われて灰色になってしまった、きみはいってしまった、ああ、ストーミー、あの晴れた日を返してくれ」

f0147840_23573632.jpgワッハッハ、楽勝ですなあ。キース・リードの正反対の作詞家がいるとしたら、このJ・R・コブでしょう。どこにもわかりにくいところはなく、百科事典はおろか、英和辞典すら不要です。でも、ビルボード・チャートの上位には、こういう曲がこなくてはいけないのです。これぞ正調歌謡曲。トップ40ヒットがみな「青い影」みたいな歌詞になっちゃったら、世界は発狂したと考えるべきです。

コーラスも、いかにも、これはコーラスです、という造り。キース・リードみたいに長いコーラスなんてめったにあるものではなく、こういうふうに、タイトルを織り込んで(いや、コーラスのリフレインをタイトルにする、というべきか)、それを繰り返すのが流行歌の正しいコーラスのあり方です。

つづけてセカンド・ヴァース、短い歌詞なので、これがラスト・ヴァースです。

Yesterday's love was like a warm summer breeze
But, like the weather you changed
Now things are dreary, baby
And it's windy and cold
And I stand alone in the rain
Callin' your name

「昨日の愛は夏のそよ風のようなもの、でも、天気が変わるようにきみは変わってしまった、いまではすべては陰鬱になり、風が冷たく吹いている、ぼくは雨の中に寂しく立ちつくし、きみの名を呼んでいる」

一丁上がり。当ブログはじまって以来の楽な歌詞でした。以下、コーラスを繰り返してフェイドアウトします。

◆ 疾風怒濤の時代のエアポケット的歌謡曲 ◆◆
歌詞はワン・アイディアのクリシェで、設定に忠実にしたがって比喩を使っているという点以外は、とくにどうということのないものですが、曲とサウンドは印象的でした。でも、当時は買いませんでした。

68年といえば疾風怒濤の時代、パワー・トリオの全盛期、まだジミヘンが生きていて、ギュインだのゴワンだのとギターを虐待していたころです。中学生としては、どうしたってそっちのほうに気を奪われるわけで、Stormyにまで手がまわるはずがないのです。すでにスティーヴ・ウィンウッドやマイケル・ブルームフィールドも、わたしの「必聴リスト」に入っていましたし。

f0147840_235967.jpg時がめぐり、人が年を取るのは、なかなかけっこうなことで、ジミヘンはジミヘン、クラシックス・フォーはクラシックス・フォー、どちらもけっこうと思えるようになりました。こちらの年齢が、ほんの2、3年ずれていれば、リリース当時に買っていただろうと思います。

ドラムは安定していますし(リード・ヴォーカルのデニス・ヨーストがドラムということになっています。とりあえず、そう受け取っておきますが、検討の余地ありでしょう)、リヴァーブのかけ方も深すぎず、浅すぎず、いいサウンドだと思います。いや、録音技術的にどうこうというものではありませんが、AMラジオで聴くぶんにはほどのよいサウンドなのです。

◆ ボビー・ジェントリーの圧倒的カヴァー ◆◆
わが家にはいくつかカヴァー盤がありますが、なんといっても、ボビー・ジェントリー盤が抜きんでています。

f0147840_004483.jpgこのトラックの出所はよくわからず、いまもまたOde to Bobbie Gentryにいって確認しましたが、初出は編集盤CDらしく、どうやら、アウトテイクのように思われます。たしかに、ボビーのヴォーカルに、ナイロン・ギターとアップライト・ベースのバックがついているだけで、オーヴァーダブ前の未完成ヴァージョンのように聞こえます。

しかし、これを当時はリリースしなかったのは惜しいなあと思います。ボビーにもってこいの楽曲で、彼女が自分で書いたのかと思ってしまうほどです。まあ、それは、彼女がメイジャー・セヴンス・コードを好んで使うライターであり、Stormyがメイジャー・セヴンス・コードでつくられた曲だから、ということでしょう。でも、ボビーのレンディションも、デニス・ヨーストのような非個性的、匿名的なもの(歌謡曲はそれでいいのですが)ではなく、いかにも初期のボビーらしい、プライヴェートな雰囲気があり、じつに好ましい出来です。

f0147840_034929.jpgヴォーカルものとしては、ほかにスプリームズ盤をもっています。なんだか、違和感のあるリマスタリングで、そこまでドラムを持ち上げなくてもいいだろうという音です。バックビートがうるさくて、声が聞こえないのが今風のバランシングだとしても、スプリームズは大昔のグループなんだから、昔風の音でかまわないだろうに、と思います。たまたま、オリジナル・レコーディングが非常に分離のよいものだったので、今風にミックスしてしまったといったあたりでしょうか。

◆ いるのやら、いないのやら、ほんにあなたは屁のようなお人 ◆◆
残りはインストばかりで、甲乙つけがたい出来です。といっても、いいほうではなく、あまりよくないほうの、です。

ファンク・ブラザーズ盤は、オーヴァーダブだらけのひどい音質で、スプリームズと同じレーベルの盤とは思えないほどです。ファンク・ブラザーズとは、数年前に映画にもなったスタジオ・プレイヤーの集団で、デトロイトでモータウンのためにレコーディングしていたプレイヤーに、だれかが後年あたえた名称です。そういう性質の「バンド」なので、個体ではなく、流体で、ピアノのアール・ヴァン・ダイクを中心にしたスタジオ・プロジェクトといったあたりでしょう。

しかし、このStormyはじつに怪しいトラックです。オーヴァーダブがひどくてよく聞こえないのですが、ベーシックはどうやらスプリームズと同じもののようです。なーんだ、馬鹿馬鹿しい。スプリームズ盤はハリウッド録音でしょう。そのベーシックにあとからゴチャゴチャとオーヴァーダブして、インスト盤をでっち上げただけです。そのオーヴァーダブですら、きっとハリウッドでやったにちがいありません。

f0147840_053457.jpgなにがファンク・ブラザーズだ、なにがアール・ヴァン・ダイクだ、モータウンのやることはいつも尻が割れている、と笑い飛ばしておけばいいだけです。だいたい、ファンク・ブラザーズなんて、実在すら怪しいのだから、トラックだって幽霊みたいなものです。会社がファンク・ブラザーズというラベルを貼ったものがファンク・ブラザーズになるだけであって、実体なんかありゃしないでしょうに。でも、依然として神話捏造にはげんでいるのは、まあ、見上げたものかもしれません。いや、見上げるたって、車寅次郎がいう「見上げたもんだよ、カエルのなんとか」ですけれどね。

f0147840_06533.jpgもうひとつ、ミーターズ盤があります。どうも、このバンド、出来損ないのMG'sという印象で、わたしは乗れません。この曲も、MG'sのGroovin'みたいな雰囲気ですが、ただし、これではMG'sのようなヒットにはならないと断言できます。MG'sは白人にもわかるプレイをしていたけれど、ミーターズはそのへんの配慮はいっさいしなかったというところでしょうか。泥臭さが鼻につきます。ひとりひとりのプレイに、MG'sのような共感がわきません。グルーヴは重要ですが、グルーヴ「だけしかない」のでは、わたしにとってはマンボ・ジャンボです。

f0147840_084182.jpgあ、まだ終わりじゃなかった。ヴェンチャーズ盤がありました。忘れていい出来です。最近、何度かけなした時期の録音で、この曲のドラムはたぶんジョン・グェランでしょう。バックビートはいつもよりすこしだけマシですが、またフィルインで突っ込んでいます。いや、まあ、最近けなした他の曲よりはマシな出来ですが、マシだからといっても、べつに聴かなければならないようなものでもありません。

◆ またしてもロイヤルティーの移動 ◆◆
この曲にも、最近、裁判沙汰があったそうです。ジョン・レジェンドというシンガーだかなんだかが、Stormyを盗作したとして、この曲の作者たちから訴えられ、敗訴したのだとか。

レジェンドという人(ぜんぜん存じません)は、そんな曲は聴いたこともないといっているそうですが、たとえそうだとしても、そっくりだったら負けます。争点は似ているか似ていないかであって、聴いたことがあるかどうかではない、ということさえわからない、非理知的な人たちが集まった業界なのですね。

コードのパターンはかぎられているのだから、他人の空似みたいなことも起きるでしょうが、こういうケースは、ずっと以前に耳にしたことがあり、それが曲を作っているときに無意識のうちに出てきて、真似をしたことに気づかないか、気づいても、ナメてかかるということが多いように思えます。

この点について、ジミー・ウェブがその著Tunesmithのなかで紙幅を割いています。彼は、政治家の「なにぶん古いことでございまして」と同類の、「聴いたことがない」という、だれもが使う弁解にはきわめて冷淡で、オフレコの内訳話をいくつか上げ、多くは意図的な盗作であると断じています。

f0147840_093828.jpg最後にデニス・ヨーストのことを。ヨーストは昨年、転倒して外傷性脳障害を負い、目下、リハビリ中であると、オフィシャル・サイトで奥さんが書いています。ここの記述によると、ヨーストが「クラシックス・フォー」という名称を登記したなどというつまらないことがわかりますが、それをどのように利用しているかもうかがえて、なるほどなあ、と思います。

トップ10ヒットが3曲もあるバンドですが、治療代の寄付を募らねばならない程度の蓄えしかないということもわかり、楽曲の著作権をもっていないと、この業界ではきびしい末路が待っているということまでわかるのでした。マシュー・フィッシャーの訴訟も、そういう切実なことだったのかもしれません。
by songsf4s | 2007-10-04 23:44 | 嵐の歌