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Harvest Moon by Neil Young
タイトル
Harvest Moon
アーティスト
Neil Young
ライター
Neil Young
収録アルバム
Harvest Moon
リリース年
1992年
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月齢としては完全に満ちてはいないようですが、四捨五入で今夜は中秋の名月、日付変更線の向こうでは明日がハーヴェスト・ムーン、すなわち収穫月にあたるようです。

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満月の歌と思われるものはほかにもあるのですが、ハーヴェスト・ムーンにちなんだ月の歌特集なので、いくぶんかは義理を感じるため、今夜はニール・ヤングの1992年のアルバム(録音は前年)、Harvest Moonのタイトル・トラックを取り上げます。当ブログに登場した曲のなかでもっとも新しいものだと思いますが、まったく違和感のないサウンドです。それには理由があるのですが、サウンドのことはあとまわしにして、歌詞を見ていきます。

◆ 糟糠の妻への愛? ◆◆
では、ファースト・ヴァースから、といいたいところですが、なんだか構成がよくわかりません。こりゃダメだと思い、ギターを持ち出してコードをとったのですが、やっぱり構成不可解。ほら、ニール・ヤングって、メロディー・ラインがあまり変化しないまま、歌詞だけがぞろぞろとつづく、トーキング・ブルースのような長い曲をよく書いていたじゃないですか。あのパターンに近いんです。

よって、コーラスのようなものが出てきて、一周したと感じるところまで、まとめて見ることにします。

Come a little bit closer
Hear what I have to say
Just like children sleepin'
We could dream this night away

But there's a full moon risin'
Let's go dancin' in the light
We know where the music's playin'
Let's go out and feel the night

Because I'm still in love with you
I want to see you dance again
Because I'm still in love with you
On this harvest moon

逐語的にはみるのはやめにして、ざっといきます。今夜は満月だから、このまま眠らずに、外に出て踊ろう、まだきみに恋しているから、きみが踊るのをまた見てみたい、このハーヴェスト・ムーンの夜に、てなことをいっています。

なんとなく、恋人ではなく、妻に語りかけているような雰囲気を感じるのですが、どんなものでしょう。もうひとつ、満月の夜、人は月の影響でおかしなことをする、という考え方があり、それが前提なのかと思います。ふだんはしないことをしてみたくなるわけです。

ちなみ、そういうことを科学的に研究した暇な人もいるようですが、月の満ち欠け(ないしは潮の干満)と重大事故発生率のあいだに関連性は見いだせなかったとか。男と女の「事故」はどうでしょうかね? シェールの『月の輝く夜に』なんて映画を思いだします。

We know where the music’s playin'というラインは、ハーヴェスト・ムーン・ボール、つまり収穫のお祝いのダンス会場のことを指しているのでしょう。

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Feel the night、夜を感じる、という表現は、なんとなく好ましいものに感じます。

◆ 月が欠ける前に ◆◆
つぎは、第2ブロックと感じる三つの連。これですべてです。

When we were strangers
I watched you from afar
When we were lovers
I loved you with all my heart

But now it's gettin' late
And the moon is climbin' high
I want to celebrate
See it shinin' in your eye

Because I'm still in love with you
I want to see you dance again
Because I'm still in love with you
On this harvest moon

f0147840_037931.jpg最初の二つの連は「ぼくらが他人だったころは、遠くからきみを見ていた、恋人だったときは全身全霊できみを愛した、でも、もう夜は闌け、月も高くなったから、きみの瞳に月が輝くのを見て祝いたい」といったあたりで、三連目は第一ブロックと同じです。

やはり、もう若くない夫婦なのでしょう。But now it's gettin' lateというラインは、時刻のことをいいながら、二人の人生のこともいっているように感じます。月も満ちれば欠けるが道理で、なんとなく「最後の満月」のようなニュアンスすら感じます。

f0147840_0382181.jpg日本語でも、月(の太陽光を反射する明るい部分)が細っていくのを、「欠ける」というネガティヴな言葉で表現しますが、英語で月が欠けることをいう動詞「wane」も、弱るだの、衰えるだの、消滅するだのと、ネガティヴな意味のスペクトルしかもたない単語です。月と狂気を結びつける考え方の淵源は、あの不思議な光にあるのでしょうが、衰弱の予感もまた、その結びつきを強めたのではないか、などと、ふと思いました。

ニール・ヤングは1945年の生まれだそうですから、この曲が91年の作だとすると、46歳のときに書いたことになりますが、中年らしい歌詞だと感じます。いや、こういう歌詞に共感するのもまた中高年でしょうけれど!

◆ 70年代サウンドの再現 ◆◆
f0147840_0392690.jpgこのHarvest Moonというタイトルから、だれもが、Heart of Goldが収録された、ニール・ヤングの代表作Harvestを連想します。じっさい、リプリーズはそのつもりで売り込んだようですが、ヤング自身は、Harvestの続篇としてつくったわけではないといっています。じっさい、歌詞を見るかぎりでは直接のつながりは感じませんが、しかし、サウンドは別です。それは、以下のパーソネルを見るだけでおわかりでしょう。

Neil Young & The Stray Gators:
Neil Young: guitar, banjo-guitar, piano, pump organ, vibes, vocal
Ben Keith: pedal steel guitar, dobro, bass marimba, vocal
Kenny Buttrey: drums
Tim Drummond: bass, marimba, broom
Spooner Oldham: piano, pump organ, keyboards

Harvestに参加した「ストレイ・ゲイターズ」のうち、Harvest Moonに参加していないのは、ジャック・ニーチーとジョン・ハリス(1曲のみ)だけです。ニーチーは91年にはもう亡くなっていたんでしたっけ? 特別な理由がないかぎり、ニーチーも参加しただろうと思われます。

ドラムとベースが同じだということは、わたしの論理では、同じバンドだということであり、同じサウンドがつくれることになります。じっさい、お聴きになれば、どなたも70年代の録音だと思うにちがいありません。80年代以降の不自然な低音の強さがまったくないのです。ビートルズのFree As a Birdが、かつてと同じドラムとベース、それにエンジニアがそろったために、後期ビートルズのサウンドをそのまま再現できたのと同じことです。

f0147840_040361.jpg70年代後半以降のニール・ヤングはあまり聴いたことがなく、唯一、スティルズ=ヤング・バンドだけはかなり気に入っていましたが、そのLong May You RunにMidnight on the Bayという叙情的な曲がありました。Harvest MoonはMidnight on the Bayの系列に属す曲で、わたしのように、昔は聴いていたのに、パンクに傾斜したあたりから彼を聴かなくなった人にはおすすめできるアルバムです。

最後に、ニール・ヤングは月に取り憑かれているのかもしれない、といって、歌詞に月が出てくるニール・ヤングの曲を調べあげたという奇特な人を見つけたので、よろしかったら、このページをご覧ください。After the Goldrush、Cinnamon Girl、Helplessなどのおなじみの曲をはじめ、24曲が取り上げられています。たしかに、取り憑かれているのかもしれません。

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by songsf4s | 2007-09-25 23:52 | Harvest Moonの歌