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It Might As Well Rain Until September by Peggy Lipton
タイトル
It Might As Well Rain Until September
アーティスト
Peggy Lipton
ライター
Gerry Goffin, Carol King
収録アルバム
Peggy Lipton
リリース年度
1969年(possibly)
他のヴァージョン
Carol King, Bobby Vee
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Moon RiverやBlue Moon以外にも、月の曲にはいくつかヘヴィー級のものがあって、当然、その準備をしているのですが、なかなか進まず、ブライアン・ウィルソンが、スケデュールをこなすために、Party!やらライヴ盤やらをつなぎにしたのを真似しなければならない事態に追い込まれています。

本日は、月の曲ではなく、これまでに取り上げた曲の、あとから入手したヴァージョンをご紹介するという窮余の一策、その場しのぎ、「Party!」というところです。

◆ 大人の夏休み? ◆◆
f0147840_2335621.jpg看板に立てたのは、ペギー・リプトンのIt Might As Well Rain Until Septemberです。ペギー・リプトンといっても、シンガーではないので、ご存知ない方が大部分でしょうが、近年では「ツイン・ピークス」に出演していた女優で、このドラマで復帰する以前、まだデビューまもない二十歳のときに一枚だけアルバムをリリースしていまして(もう一枚あるといっているところがあるが、裏をとれず)、そのなかの一曲です。

f0147840_2337434.jpgわれわれの世代の場合、ペギー・リプトンは「ツイン・ピークス」の脇役ではなく、「モッズ特捜隊」の主役として記憶しています。これはサンフランシスコを舞台にした潜入捜査もので、元ヒッピーの3人の捜査官のひとりがペギー・リプトンでした。そういう設定からわかるように、サイケデリックの時代を反映したドラマだったわけで、それでわたしも見ちゃったりしたのです。

このアルバムの存在は、当時は知らず、あとになって、ハル・ブレインのことを調べていてぶつかり、ウィッシュ・リストに入れておいたもので、やあやあやあ、盲亀の浮木、優曇華の花、ここで会ったが百年目、てえんで、敵討ちみたいになって手に入れたものです。

こういう盤の場合、出来を云々するのはエチケット違反ですが、でも、彼女のファンなら十分に満足する程度の出来にはなっています。ピッチは揺れますが、ド下手のキャロル・キングよりはずっとマシですし、ムードももっています。ちょっと声にかわいげがないのがぜんぜん売れなかった理由でしょう。再発の見込みは薄いでしょうが、ドブのゴミまで浚っている時代ですから、そろそろ順番がまわってこないともかぎりません。

f0147840_23403771.jpgペギー・リプトン盤It Might As Well Rain Until Septemberのアレンジは、キング盤よりテンポを落とし、ほんの数歳ですが、ターゲット層があがったような雰囲気があります。じっさい、上げすぎで、もう学校なんか卒業しちゃって、九月まで夏休みなんてことはないだろ、みたいな雰囲気です。デモに毛が生えたようなキャロル・キング盤とはまったくちがう、弦、女声コーラス、テナー・サックスもあるフル・プロダクションで、60年代終わりのハリウッドだから、録音もスケール感があって、なかなか好みのサウンドです。

◆ パーソネル ◆◆
盤にはいちおうパーソネルがありますが、名前だけで、パートがないので、以下に補ったものを。大文字を使ったものは元からのクレジット、小文字はこちらで補ったものです。

Peggy Lipton - eponymous titled album credits
Lou Adler: Producer
Marty Paich: Arranger
Armin Steiner: Engineer
Eirik Wangberg: Engineer
The Blossoms: Vocals (Background)
Hal Blaine: Director
Louis Morell: guitar
Joe Osborne: bass
Mike Deasy Sr.: guitar
Gary Coleman: percussion (also possibly vibraphone)
Jimmie Gordon: drums? woodwinds?
Jim Horn: Flute, Saxophone
Larry Knechtel: keyboards
Charles Larkey: upright bass
Carole King: piano?

ルー・アドラーのセッションだから、彼とのコネでやってきたと思われるチャールズ・ラーキーとキャロル・キング以外は、みな実績十分の一流プレイヤーばかりです。

ハル・ブレインのダイレクターという肩書きは妙ですが、セッション・リーダーという意味でしょう。音から判断するかぎり、ドラムもプレイしています(オクトプラス・セットのタムが派手に鳴り響いているトラックあり。It Might As Well Rain Until Septemberはまちがいなくハル)。ドラマーとしての料金とリーダーとしての料金の両方をとったにちがいありません。この時期はダブル・スケールでしょうから、いちばん安いプレイヤーの3倍またはそれ以上のギャラで、「おいしい仕事」というやつです。

f0147840_23421956.jpgジム・ゴードンはドラマーと木管プレイヤーがいます。いかにもジム・ゴードンというドラミングはざっと聴いたかぎりでは見あたらないので、木管プレイヤーのほうかもしれません。

アーミン・スタイナーは、モータウンLAのエンジニアです。彼の自宅でもあったTTGスタジオが、モータウン・サウンドをつくった、なんていうと、デトロイト=ファンク・ブラザーズ信者の憤激を買うかもしれませんが、悪質なプロパガンダ映画がつくられたりしたために、天秤はアンフェアに傾きつつあるので、ハリウッド側に0.1グラムばかり錘を載せておきます。

◆ 九月に九月を思いだせといわれても…… ◆◆
f0147840_2347421.jpgこんなことを書くのはなんですが、もはや中学生ではないので、アイドルにうつつを抜かすなんてことはできなくて、じつは、ペギー・リプトンより、サウンドのほうを聴いてしまいます。彼女の歌は、悪くもありませんが、惚れるようなものでもありません。女優の余技にすぎない、というのが年寄りの正直な感想です。

前科たび重なるソフトロック方面では、またしても「名盤」などという声も上がっているようですが、毎度毎度、十年一日のごとくの「幻の名盤」、すなわち、それだけの立派な理由があって、ぜんぜん売れなかった盤の美称を懲りもせずに唱えているだけでしょう。同じ歌ばかりうたっていて、よく飽きないものです。名盤でもなければ、傑作でもなく、佳作ですらありません。埋もれるべくして埋もれた盤です。

f0147840_23491388.jpgなお、彼女は全11曲のうち、4曲を自分で書いています(他はローラ・ニーロ、キャロル・キングなどのカヴァー。リプトン盤Stoney Endは、ニーロ盤ほどよくはないが、ストライサンド盤より好ましい。ストライサンドは嫌いだといいたいだけだが)。とくにいいと思った曲はありませんが、後年、シナトラが歌ったLA Is My Ladyのソングライター・クレジットには、彼女の名前もあります。エルヴィスとデイトした余勢を駆って、シナトラもたらし込んだわけではなく、彼女はクウィンシー・ジョーンズ夫人だったので、旦那との共作なのです。

It Might As Well Rain Until Septemberも、タイトルは九月なのに、曲のなかの「現在」は七月ごろで、See You in Septemberと同じです。タイトルに九月があるものでもっとも有名なのはSeptember Songでしょうが、これも季節を歌ったものではありませんし、曲中の「現在」は「人生の冬」と解釈できます。September in the Rainも有名ですが、曲中の「現在」は不明です。

Try to remember the kind of September, then followと歌うTry to Rememberも、九月を思い起こせ、といっているのだから、曲中の「現在」は九月以外のいずれかの月ということになります。冬の歌でしょうかね。サミー・カーンとジミー・ヴァン・ヒューゼンのSeptember of My Yearsも、季節そのものをいっているわけではなく、人生のそれぞれの時期を季節にたとえた歌です。アース・ウィンド&ファイアのベスト盤(こういうものを買ったのは、トップ40蒐集の一環にすぎません。なんでも「いちおう押さえる」のです)に、Septemberという曲が入っていますが、守備範囲外。頭のほうをチラッと聴いたら、いきなりRememberといっていたので、これも九月の歌ではないでしょう。

で、結局、純粋な九月の歌はない、なんて馬鹿馬鹿しい結論になりそうです。どなたか、これぞ九月の歌というのをご存知でしょうか? ファンク、ラップ、パンク、メタル、その他、同類のノイジーなのは対象外です。なろうことなら、サミー・カーン、ジョニー・マーサー、ジェリー・ゴーフィン、キース・リード、レイ・デイヴィーズといったハイ・レベルの作詞家が好ましいのですが。

◆ さまざまな珊瑚礁のむこう側 ◆◆
まだ他のヴァージョンを入手できたものがあります。まずは、Beyond the Reef。

f0147840_2350462.jpgこの曲のインスト盤を並べたときに、検索に引っかかったのに、書き落としてしまったのがマーティン・デニー盤です。ヴァイブラフォーンでくるだろうという予想を裏切って、デニーのピアノ、それも加工したプリペアード・ピアノかなにかがリード楽器です。まあ、だれが考えてもマーティン・デニー向きの曲ですから、当然、アヴェレージ以上の出来です。冒頭に霧笛のSEを入れてくるところが、デニーらしいと感じます。この曲では鳥の啼き声というわけにはいかないですよね。

f0147840_23514348.jpgマーティン・デニーのものとしては、アルバムBaked Alaskaに収録された、歌ありライヴ・ヴァージョンもあります。アンカレジの空軍基地でのライヴだそうで、それでBaked Alaskaというタイトルになったようです。ベイクト・アラスカとはメレンゲを使ったデザートのことだそうですが、西洋の菓子は好まないので、未経験。ときおり、ヴォイス・コントロールがちがうと思う箇所はありますが、なかなかいい声をしたシンガーです。

f0147840_23542394.jpgデニーのライヴァル、アーサー・ライマンのBeyond the Reefは、3種類も見つかりました。ライヴ×1,スタジオ×2で、スタジオのひとつは録音が悪く、聴く気になりませんが、もうひとつのHawaiian Sunset 2収録のものはなかなかけっこうな出来です。

アルバムBahia収録ヴァージョンでは、エレクトリック・ヴァイオリンかと思ってしまう妙な音が聞こえます。極端にトレブルをきかせたスティール・ギターなのだと思います。こういう風に、この音はなんだろうと思わせることは、昔は重要なことでした。これも冒頭に霧笛あり。去っていく恋人をたったいま港で送ったところ、という思い入れなのでしょう。

f0147840_23581113.jpgVintage Hawaiian Treasures Vol.1という編集盤に収録されていた、Lei Momi with the 49th State Hawaiians、「レイ・モミと49番目州ハワイ人たち」のヴァージョンは、長い時をくぐって現代にふたたび出現しただけあって、なかなかよろしい出来です。とくにレイ・モミという人のヴォーカルが印象的。これを聴いて、ナンシー梅木にも歌ってもらいたかった曲だなあ、と思いました。

先日、Moon of Manakoora by Dorothy Lamourで取り上げたばかりのロス・インディオス・タバハラスのSong of the Islandsというアルバムには、Beyond the Reefも収録されています。mstsswtrさんが、この記事のコメントで弦の種類について書かれていますが、なるほど、そこに意識を集中して聴くと、迷路に入りこみます。あるときはスティール弦に聞こえ、ある時はナイロン弦に聞こえ、助けてえ、です。リゾネイター・ギターの特性のほうが、弦の違いに勝ってしまうのでしょうね。低音弦を聴いていると、スティールのような気がしてくるのですが、いかがでしょう?

◆ リプトン、バルドー、Reiko Ike……なに、池玲子? ◆◆
まだMoon Riverの補足が残っているのですが、各種ヴァージョンを聴くだけで疲労困憊したので、本日はここまで、残りは他日に。

最後によけいなことを少々。検索したら、ウェブ・ラジオのようなもので、ペギー・リプトンのLu(ローラ・ニーロの曲)にぶつかりましたが、セカンド・アルバムがあった証拠だとはいえません。シングルのみのリリースだった可能性もあります。出来はなかなかけっこう。それにしても、このプログラム、いきなり梶芽依子(ミーコ・カジと発音していましたが)ではじまったので、仰天しました。つぎがブリジット・バルドー、そしてペギー・リプトン。

先日は、梶芽依子と池玲子のLPリップに出くわして驚きました。思わぬところで日本音楽の輸出がはじまっているようです。池玲子のセクシー・アルバムが音楽かどうかは意見が分かれるところでしょうが、ブリジッド・バルドーとセルジュ・ゲインズブールのJe T'aime...Moi Non Plus、すなわち「ジュテーム」が音楽なら、池玲子だって立派な音楽だ、ということにしておきます。いまや、池玲子は世界に誇る日本の文化遺産、こんな日がくるなんて、だれが思ったか! よけいなことですが、「ジュテーム」ってI Saw Her Againの盗作に聞こえませんかね?

ついでに、この番組を聴いていて、Marcia Strassmanという人のThe Flower Childrenという曲はハル・ブレインだということに気づきました。なにしろ、4万曲の男、知らないものがまだまだぞろぞろ出てきます。

トリヴィアをもうひとつ。ペギー・リプトンの出身校というのに出くわしました。ハリウッド・プロフェッショナル・スクールというところで、一説に、MGMのルイス・メイヤーが、まだ子どもだったジュディー・ガーランドの学業と撮影を両立させるために創立した学校だとか。要するに、撮影の都合でいくらでも欠席できるのでしょう。在校者はなかなか印象的ですが、カタカナに直す気力も残っていないので、以下に原文をペーストします。アンディー・ウィリアムズ、コニー・スティーヴンズ、ブレンダ・リー(じゃあ、住まいはハリウッドで、録音のためにナッシュヴィルに通っていた?)、アネット、カウシルズ、カール・ウィルソンあたりにご注意を。

Between 1935 and 1985, its students included Judy Garland, Mickey Rooney, Betty Grable, Andy Williams, Piper Laurie, Carol O'Connor, Natalie Wood, Ryan O'Neal, Val Kilmer, Melanie Griffith, Jill St. John, Tatum O'Neal, Annette O'Toole, Connie Stevens, Linda Blair, Sue Lyon ("Lolita"), ice skater Peggy Fleming, the Cowsills, Carl Wilson (of the Beach Boys), Debra Paget, Brenda Lee, Peggy Ryan, John Barrymore Jr., The Collins Kids, Molly Bee, Tommy Kirk, Mitzi Gaynor, Yvette Mimieux, Patty McCormack ("The Bad Seed"), Barry Gordon ("A Thousand Clowns"), JoAnn Castle (of "The Lawrence Welk Show") , Suzanne Luckey (the Mayor's daughter in "The Music Man"), Tony Butala (of The Letterman), and many young TV personalities, including most of the original Mouseketeers (such as Annette Funicello, Cubby O'Brien, Lonnie Burr, Doreen Tracey, Tommy Cole and Sharon Baird), Lauren Chapin ("Father Knows Best"), Melody Patterson ("F-Troop"), Valerie Bertinelli ("One Day at a Time"), Peggy Lipton ("Mod Squad"), Todd Bridges ("Different Strokes"), Butch Patrick ("Eddie Munster"), Marta Kristen (Judy in "Lost in Space"), Jimmy Boyd, Bobby Driscoll, four of the six Brady Bunch kids and many others.

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by songsf4s | 2007-09-21 23:54 | 夏の歌