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Whiskey by New Riders of the Purple Sage
タイトル
Whiskey
アーティスト
New Riders of the Purple Sage
ライター
John Dawson
収録アルバム
Gypsy Cowboy
リリース年
1972年
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ラヴ・ソングにはすぐに飽きてしまう人間なので、今回は変化球、それもスライダーではなく、ナックルでいきます。アメリカ文化を多少ともご存知の方は、月の歌の特集にWhiskeyというタイトルが出てくれば、ああ、あれのことね、とすぐにおわかりかと思います。そう、あれの歌です。わからなかった方にも、あとで種明かしをしますので、ご心配なく。

f0147840_21373783.jpgニュー・ライダーズ・オヴ・ザ・パープル・セイジというバンドもご存知なければ、もちろん、彼らのWhiskeyもお聴きになったことがないという方が多いでしょうが、安心してください。今回はオフィシャル・サイトのMusicページでMP3ファイルをダウンロードすることができます。

しかも、販売サイトによくある、首から上だけのケチなファイルとは大違い、ちゃんとイントロからエンディングまで五体満足ですし、96だとか128Kbpsといったケチな音質でもありません。160Kbpsです。盤を買わなくてもオーケイってくらいで、こんなに大盤振る舞いをしていいのだろうかと思います。軽快な曲ですので、せっかくの勧進元からの大盤振る舞い、ぜひMP3をお聴きになりながら、以下をお読みください。

◆ 簡単で正直な商売 ◆◆
では、ファースト・ヴァースから。オフィシャル・サイトに歌詞も用意されているのですが、どこかの制作会社に任せたらしく、第三者が聴き取りをしたかなんかで、どう聴いても、そうは歌っていないと思うところがあるため、グレイトフル・デッド歌詞サイトにあった、より正確と思われる歌詞に依拠することにします。

My family's always been in whiskey
It's a simple honest way to earn a dime
The only trouble's been my uncle sam now
He been tryin' to collect taxes all the time

「わが家は昔からウィスキー商売をやってきた、簡単で正直な商売だからな、唯一の問題はアンクル・サムさ、あいつらはいつも税金を取り立てようと待ちかまえているんだ」

f0147840_21434236.jpgだいたいおわかりいただけたでしょうか。たいていの国では酒類にはかならず税金がかかるわけで、この語り手は税金を払わないウィスキーの密造 and/or 搬送をビジネスにしていることがわかります。映画などにもときおり登場しますが、どうやら、アメリカではこのビジネスはかなり盛んにおこなわれているようです。密造酒関係のウェブ・サイトも豊富で、歴史から蒸留ノウハウにいたるまで懇切丁寧に解説されています。そういうところで、少々写真を拾い、今回の飾り付けに利用させてもらいました。

◆ お立ち会い、シェヴィーはシェヴィーでもちょとちがう ◆◆
セカンド・ヴァースでは、語り手の「ビジネス」のディテールが描写されています。

Now this ain't no ordinary chevy
The motor and suspension ain't the same
Whiskey as you know is very heavy
And getting through is what they call the game

「こいつはふつうのシェヴィーとはちがうんだぜ、エンジンとサスペンションは特別仕立てでな、だれだって知っているように、ウィスキーってやつはえらく重いじゃないか、こういうゲームのことを、世間じゃ通り抜けっていっているわけさ」

4行目はよく聞こえませんし、わたしの解釈もテキトーですので、あまり信用しないでください。

f0147840_21524865.jpgふつうのシェヴィーではなく、重いウィスキーを積んでもへたったりしない、頑丈なサスペンションと強力なエンジンに交換したシヴォレー(当然ながら、ちゃんとシェヴィーという略称を使っています。ファースト・クラスのBeach Babyの記事で、その点にふれました)のトラックで、注文主のところまで商品を搬送することを、この曲は語っているわけで、アルバム・タイトルがGypsy Cowboyとなっていることから、現代のカウボーイ・ソングという意図なのだと思います。

車をチューンアップしているのは、ウィスキーの重さだけが理由ではないでしょう。ここで「アンクル・サム」と呼んでいる国税庁の役人または警官の追跡を受けた場合には、逃げ足も必要なのにちがいありません。

デイモン・ラニアン・ファンは、ああ、そういえば、といって「プリンセス・オハラ」という、名馬がウィスキー密輸業者のトラックと、セントラル・パーク通り抜けの「カー・チェイス」をする、愉快な短編を連想したりするのですが、ラニアン・ファンはいらっしゃらないですかね? じつに楽しい物語なんですが。

◆ 健康によくない職業 ◆◆
つづいて、思わずいっしょに歌いたくなる軽快なコーラスに突入しますが、ここは歌詞の聴き取りにも、わたしの解釈にも問題のある箇所です。以下は、正しい聴き取りと思われる歌詞です。

It's a dark and rainy night
But my engine's running right
And I hope to get to Memphis before dawn
Yeah and if I make it through
Gonna save what I have to
It ain't healty running whiskey very long

「今夜は暗くて雨も降っているけれど、エンジンは快調そのものさ、なんとか夜明け前にメンフィスに着きたいものだ、これをやりとげれば、やらなければならないことをしないですむだろう、ウィスキー運びなんてものを長くつづけるのは健康によくないからな」

微妙なのは5行目のGonna save what I have toです。どうしても金を稼がねばならない事情があって、最後のひと仕事をやっている、という状況ではないでしょうか。「やらなければならないことを省く」とは、このひと仕事さえやれば、もう二度とウィスキー運びはしないですむ、という意味のように思います。

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摘発された密造酒業者のトラック

そう考えれば、最後の「ウィスキー運びなんてものを長くつづけるのは健康によくないからな」にすんなりつながるでしょう。ただし、オフィシャル・サイトでは、ここを「Then help me running whiskey very long」としています。でも、これでは意味が通らないと思います。

◆ メンフィスまでノンストップでぶっ飛ばせ ◆◆
つづいてサード・ヴァース。

Three hundred miles from home to Memphis
There's a dozen men along the way
Never stop and let'em do no looking
Yeah, that was what my pappy used to say

「わが家からメンフィスまで300マイル、道筋には一ダースの連中が待ちかまえている、けっして止まるな、ぜったいに見つかるんじゃない、親父がよくそういっていたものさ」

ここではmenというあいまいな表現になっていますが、ライヴでは、ジョン・ドウソンははっきりと「敵」を名指していると、グレイトフル・デッド歌詞研究サイトの注釈にあります。いくつかヴァリエーションがあるようですが、たとえば、「And a dozen cops that know me on the way」つまり「途中には俺のことを知っているおまわりが一ダースも待ちかまえている」などと歌ったそうです。盤でボカしたのは、会社ともめるのを避けるためだったのでしょう。

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密造酒業者の検問

ここでコーラスをくり返し、ペダル・スティールの間奏をはさんで、最後のヴァースに突入します。

Three hundred miles from home to Memphis
And susan says she don't want me to go
She said now honey don't take chances
Ah love I want to keep ya don't ya know

「わが家からメンフィスまで300マイル、スーザンは俺を行かせたがらない、あいつは、そんな危ないことはやめて、あなたにいっしょにいてもらいたいのに、といっていた」

f0147840_22135565.jpgとはいえ、彼が危ない仕事をやっているのは、スーザンと彼自身の未来のためにちがいありません。わたしはすぐに想像をふくらませるので、スーザンのおなかには彼の子どもが宿っているのではないか、なんて思っちゃうのですけれどね。

以下、またコーラスをくり返し、「ウィスキー運びなんて長くやるのは健康によくないぜ」と何度も歌って終わります。じっさい、健康によくないだろうなあ、と思うのでありました。

◆ 月光酒業者 ◆◆
ちょっと待った、月の歌の特集じゃないのか、この歌のどこにも月なんか出てこなかったぞ、と思った方もいらっしゃるかもしれません。なぜ、月が出てこないかというと、ウィスキーと月の関係は周知のことで、わざわざいうまでもないからです。

こういう密造酒のことをmoonshine wiskey、または、たんにmoonshineと呼び、密造業者をmoonshinerと呼ぶのです。したがって、このWhiskeyの語り手もまたムーンシャイナー、ただそれだけの理由で、月の歌の特集にこの曲をもってくるという強引なことをやってしまったというしだい。だから、今日は「ナックル」だと申し上げたのです。

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こんなサイトもありました

でも、わたしはこういう物語性の強い、ディテールに富んだ、ウィットのある歌詞が好きなので、もちだせる隙さえあれば、これからもいつだって投入するだろうと思います。Whiskey as you know is very heavyなんて、当たり前のことをいっているのに、妙に可笑しいのは、やはり作詞家の手腕でしょう。as you knowがきいています。

こういうことを歌ったものとしては、ほかにヴァン・モリソンの、その名もズバリ、Moonshine Whiskeyという曲を知っていますが、まだほかにもいくつかあるだろうと思います。カントリー・ミュージックのテーマにはもってこいではないでしょうか。

◆ 新紫聖人牧童楽団簡略始末記 ◆◆
NRPSは、ジョン・“マーマデューク”・ドウソンと、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアを核にスタートし、デイヴィッド・ネルソン(ギター)、デイヴ・トーバート(ベース)が加わり、さらにデッドの他のメンバーが入れ替わり立ち替わり加わってライヴをやっているうちに、徐々に独立したバンドの体裁を整えていき、たまたまいわゆる「アコースティック・デッド」時代だったので、デッドのオープニング・アクトをつとめるようになり、やがてCBSからデビューすることになったようです。

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デビュー当時のラインアップ 左端がWhiskeyの作者ジョン・ドウソン、その右がジェリー・ガルシア、右端はスペンサー・ドライデン

デビュー盤の録音途中で、助っ人のデッドのミッキー・ハートにかわって、ジェファーソン・エアプレインのドラマー、スペンサー・ドライデンが加わり(エアプレインのときとはうってかわり、やっと居場所を見つけたという雰囲気のプレイ)、セカンド・アルバムでは、これまた結果的に助っ人の位置になってしまったジェリー・ガルシアにかわって、ペダル・スティールのバディー・ケイジが加わり、レギュラー・ラインアップが整います。

このWhiskeyが収録されたサード・アルバムは、このラインアップで録音されています。Whiskeyではさらに、ダーリーン・ディドメニコという人がコーラスのハイ・パートを歌っていて、これがなかなかけっこうな響きになっています。

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左からスペンサー・ドライデン、デイヴ・トーバート、ジョン・ドウソン、デイヴィッド・ネルソン、バディー・ケイジ

デイヴィッド・ネルソンという人は、おそらくピックを使わず、テレキャスターをフィンガリングで弾いているのだと思いますが、独特のスタイルで、好ましいプレイをします。デッドのBox of Rain(アルバムAmerican Beauty収録)でもゲストで間奏を弾いていますが、これがまたなかなかけっこうな出来です。Whiskeyでは右チャンネルに配されているのがネルソンのギターです。フェンダーでアルペジオをやったりするところが、ちょっと変わっています。

その後、トーバートにかわってバーズのスキップ・バッティンが入ったり、ドライデンが抜けたり、紆余曲折あって現在に至っているようですが、4枚目までしか買わなかったわたしは、近年のNRPSにはとんと不案内なので、これにて失礼。

付 記
Whiskeyが気に入って、オフィシャル・サイトから他のファイルもダウンロードなさるなら、まずはデビュー盤の曲からはじめるようにおすすめします。どの曲がどうだなどとお節介なことは申しませんが、昔、もっともよく聴いたのはデビュー盤でしたし、最近、聴き直し、やはりいい盤だと思いました。いまでは拡大版が出ていますが、オリジナルの状態で十分だと思います。
by songsf4s | 2007-09-17 22:58 | Harvest Moonの歌