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All Summer Long by the Beach Boys
タイトル
All Summer Long
アーティスト
The Beach Boys
ライター
Brian Wilson
収録アルバム
All Summer Long
リリース年
1964年
他のヴァージョン
alternate take, vocal only mix
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こんなことは黙っていればわからないのですが、このところずっと迷走状態をつづけていまして、夕食後になって、やっぱり今夜はちがう曲にしよう、などと切り替え、焦りに焦りまくり、日付が変わる直前に強引に更新し、それから写真のアップロードと手直しをするといった綱渡りをつづけています。

今夜も、コメントに書いたように、はっぴいえんどの「暗闇坂むささび変化」でいくつもりだったのに、話はずるずると地中にもぐりこんでいき、とうていまとまりをつけられなくなったので、このブログをスタートしたときの予定表に戻って、きわめつけの「夏休みエンディング・ソング」をやります。

サウンド面は、長く複雑な考察を必要とする面倒なところがなく、ドラムがハル・ブレインでもなさそうなので、そのへんの検討は2、3段落で十分そうだし、わが家にはカヴァー・ヴァージョンもないので(オルタネート・テイクはありますが)、そこで泥沼になることもない、ただ、歌詞を検討すればそれで完了という、「一家に一枚、安心の一曲」であります。

◆ メランコリックで軽快、これぞビーチボーイズ ◆◆
それでは、今夜はテンポよく、ヴァースからヴァースへと駆け抜けていきたいと思います。フロントとバックで、コール&レスポンスになるところもあるので、そういうところは、バックの歌詞をパーレンに入れて示しますが、バックがただフロントの歌詞をくり返すだけのところは、その箇所も示さずに、ただ省略します。

Sittin' in my car outside your house
'Member when you spilled coke all over your blouse
T-shirts, cut-offs and a pair of thongs
We've been having fun all summer long

「君の家の外に車を止めているとき、コークをこぼしてブラウスをびしょびしょにしちゃったね、Tシャツ、カットオフ、ゴムサンダル、この夏はずっと楽しかった」

時間がたつというのはありがたいもので、1964年にこれを訳せといわれたら、ちょっと困っていたでしょうが、いまではなんでもありません。アルファベットをカタカナにするだけで通じるのですから。「カットオフ」なんてものは、昔の日本ではだれも穿いていなかったし、したがって、それを指す言葉も知りませんでした。まさか数年後に、自分が古くなったリーヴァイズやリーをぶった切ることになろうとは思いもよりませんでしたよ。

ここでも以前、書いたかもしれませんが、わたしはスロウ・バラッドに対してはきわめて強い耐性をもっていまして、泣き落としにやられることはまずありません。勝手に感情移入してろ、俺はベース・ラインでも聴く、てなもんです。しかし、逆に、アップテンポでいながら、どこかにメランコリーを感じる曲には無茶苦茶に弱くて、コロッとやられてしまいます。

f0147840_23495425.jpgこの曲なんか、夏の終わりの深夜、ガードを下ろしているときなどに、ラジオから流れてきたりすると、思わず落涙しそうになります。いま、訳していてももらい泣き(って、向こうは泣いていないから、「もらう」わけにはいきませんが!)しそうになりました。いったい、なんなんでしょうね、これは。ただ、単語を並べているだけじゃないですか。Tシャツやサンダルのどこに、このわたしめは感情移入してしまうのか、まったく謎です。よくわからないので、Tシャツを眺めながら、もう一度考えてみます。

彼女を送ってきて、車は駐めたけれど、「まだいいじゃん」といって引き留め、車のなかでちょっと悪さをしようと、狭いところで無理な体勢をとろうとしたら、ささやかなバッド・ムーヴの結果(なにをやっていたのやら)、コークの缶を倒すという失策を招いてしまった……こういうことが、恋人たちにとって、たぶん、二人だけのいちばん大事なことなのだと思います。ブライアンはつねに共作者を必要とした人で、自分は作詞家ではないと思っていたふしがありますが、どうしてどうして、こういうことに着目することこそが、すぐれた作詞家の第一の資質です。

◆ 去りゆく夏 ◆◆
以下はコーラスです。

(All summer long you've been with me)
I can't see enough of you
(All summer long we've both been free)
Won't be long til summer time is through
Not for us now!

「夏のあいだずっと、君はいっしょにいてくれた、どんなに会ってもまた会いたくなった、夏のあいだずっと、僕たちは自由だった、でも、その夏ももうじき終わっちゃう、僕らだけはこのままにしておいてくれ!」

f0147840_0124290.jpg受験生は、can't see enough of youなんていう言いまわしについて、いまも英語教師の注意を受けているのではないかと想像します。日本語スピーキング・ピープルの受験生としては、英語スピーキング・ピープルのこういう感覚がいちばん理解しにくかった記憶があります。歌にはよく登場する言いまわしなので、そっちへいったんパラフレーズして、教科書やサブリーダーを理解しようとつとめたものです。

ついでにいえば、not for us nowというのも、地の文としてならともかく、歌詞の形としては訳しにくいラインに感じます。「僕たちだけは例外にしてくれ」なんていうのは、いまどきのなんでもありのJポップはいざ知らず、言葉の響きを大切にする歌詞においては、日本語の歌詞にはなりません。

◆ ソングライターの自己言及メタ構造 ◆◆
では、セカンドにして最後のヴァースへ。

Miniature golf and Hondas in the hills
When we rode the horse we got some thrills
Every now and then we hear our song
We've been having fun all summer long
Won't be long till summer time is through
(Summer time is through)
Not for us now!

このヴァース、ミニチュア・ゴルフは日本ではあまりないし、ビーチボーイズを筆頭に、サーフ・グループのお気に入りだったホンダのミニバイクもべつに好きではないので、シラッと通りすぎ、三行目へ。

f0147840_0143321.jpg「our song」という表現には何度か出くわしていますが(調べずにそらで出てくるのは、バッキンガムズのHey baby, they're playin' our song)、文脈から、僕たちが好きだった曲、二人が気に入っていた曲、という意味になります。夏休みのバックドロップとして、海や山のみならず、音楽もぜったいに欠くことのできないものだったわけで、その結果として、汗牛充棟の夏の歌を相手に、このブログを毎日更新しなければならない事態にはまりこんでいるのです。

いや、恋人たちにとっても、音楽は重要で(カットオフやサンダルと同程度には)、ソングライターとしては、ぜひ、ひと言いっておきたかったのでしょう。もちろん、バリー・マンとジェリー・ゴーフィンのWho Put the Bomp?を連想したりするわけですね。

あとは、これまでに出てきたラインをくり返すだけで、新しい言葉はもう出てきません。なにしろ、2分にも満たない曲ですからね。こんなに楽に終わっていいのだろうかと、キツネにつままれた気分です。

◆ よれよれのトラッキング・セッション ◆◆
サウンドについては、マリンバを使ったことがクレヴァーだという以外には、とくに思うことはありません。とりわけイントロのマリンバ・リックは、それまでに長いストーリーがあり、いちおう、めでたしめでたしの結末を迎えて、画面暗転、タイトルがスクロールしはじめる、といった感じで、ある種の転調効果を生みだしていて、うまいなあ、と思います。こういう効果のあるイントロとしては、ロネッツのBaby I Love You、ホリーズのAin't This a Peculiar Situationをあげておきます。

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ドラムはハル・ブレインではありません。ときおり弟を「揉んで」みたくなるブライアンが悪い癖を出して、サーフィンばかりしていないで、たまにはスタジオで働け、てえんで、デニスの耳をつかんで、海からスタジオまで引っぱってきたのではないでしょうか。いくら初期テイクとはいえ、あんなボロボロの四分三連を叩くプロはいないでしょう。

そもそも、ハル・ブレインがいれば、かならず彼がカウントインするので、声が記録されていますが(ヴェンチャーズでも彼の声が聞こえるものがあります!)、ブライアンがカウントしたり、だれかべつの声が聞こえてくるだけで、ハルの声は聞こえません。

f0147840_025014.jpgいやはや、マリンバもイントロでミスってばかりで、よれよれのセッションです。ベースは、フィンガリングの音ではなく、フラット・ピッキングなのですが、これ、キャロル・ケイなんでしょうか。彼女も調子の悪い日がありますが、ちがうんじゃないでしょうかね。ひょっとしてブライアンかなあ。トークバックの声はチャック・ブリッツばかりで、ブライアンの指示がまったくないことから、そんな想像をしてみたくなります。

これで、よくあの完成品にたどり着いたものだと、むしろ感心してしまいました。テイク数はあっという間に30に到達し、最後はテイク43です。ほとんどがイントロでブレイク・ダウンしていて、最後までたどりついたものは、Unsurpassed Mastersの6巻目ではテイク43だけのようです。これにリズム・ギター(うまい! ベースもこのテイクはグッド・グルーヴ)などをオーヴァーダブして、完成としたのでしょう。

◆ For the Love of Dennis ◆◆
デニス・ウィルソン・ファンとして、ひと言、彼のためにいっておきます。フィルインでは、ご老人が階段で足をもつれさせるようなプレイをしますが、バックビートはけっして悪くありません。ジョン・グェランなんかよりずっと筋のいいドラマーです。

運動神経と運動能力の二つに分けると、デニスは運動神経はよいけれど、運動能力が伴わないタイプ、グェランは運動能力はあるけれど、もともとろくでもない運動神経をしているタイプです。野球選手でいうと、グェランは松井稼頭央。広岡達朗がいう「ボールとケンカする」内野手です。吉田義男みたいに、ボールは卵を受け取るようにフワリと、グラヴに吸い込ませるようにキャッチしなければいけないのです。

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わたしが内野守備コーチだったら、グェランなんか任されても、「あんなもん、鍛えても無駄だ、一生突っ込みつづけて、しまいには頭から棺桶に飛び込むだけさ。それより、俺にデニスを任せてくれ、3年でレギュラーをとらせてみせる」といいます。ああ、それで、ブライアンはあきらめきれず、ときおり、デニスをスタジオに押し込んでいたんですね。

今日は予定より早くゲームが終わったので、試合に関係ない駄話をしてしまいました。どうせついでだから、関係のない写真もおいておきます。The BeachlesのSgt. Petsound'sという、くだらない代物。これ、どこかに音がないでしょうかね。たいしたもんじゃないらしいですが、EMIと揉めたとかで、もうどこにも落ちていません。

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by songsf4s | 2007-08-31 23:57 | 去りゆく夏を惜しむ歌