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Mornin' Glory by Bobbie Gentry
タイトル
Mornin' Glory
アーティスト
Bobbie Gentry
ライター
Bobbie Gentry
収録アルバム
The Delta Sweete
リリース年
1968年
他のヴァージョン
Bobbie Gentry and Glen Campbell
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◆ 土に還っても聴きつづけたい曲 ◆◆
棺桶にいっしょに入れてほしいアルバム13枚とか、墓の下でも歌いたい曲42曲とか、くだらない遊びをやったことがありますが、このブログをはじめて以来、どういうわけか、そういうわがオールタイム・ベストには当たりませんでした。これまた、四季折々の歌という枠組みがもたらしたものです。

今回はやっと、土になってからも聴きつづけたい42曲のなかでも、最上位にくる曲の登場です。といっても、この曲については、よそで徹底的に書いてしまったので、もうなにも書くことは残っていないようです。それくらい、子どものころから大好きだった曲なのです。よって、今回は百万言を費やすかわりに、みなさんに音そのものを聴いていただきたいと思います。この曲はMP3で手軽に聴くことができるのです。

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_23371545.jpg右のFriendsリンクの先頭にあるAdd More Musicにいらっしゃり、トップページに並んでいるリンクのなかほど、「An Ode to Bobbie」をクリックしてください。ボビー・ジェントリー特集のトップ・ページが開きますので、ちょっとスクロール・ダウンしてください。なかほどに各アルバムのページへのリンクがあるので、2枚目のDelta Sweeteをクリックします。そのページの左側のソング・リスティングのあたりに「ダウンロードはこちらから」というリンクがあるので、これをクリックすると、アルバムの全曲をひとまとめにしたZIPファイルのダウンロードがはじまります。

上の「他のヴァージョン」としてあげた、ボビー・ジェントリーとグレン・キャンベルのデュエット盤も同じところにありますので、よろしかったら、またボビー・ジェントリー特集ページのトップにもどり、4枚目のBobbie Gentry and Glen Campbellをダウンロードしてください。

どちらのアルバムもLPリップですが、かなりいい状態で、ノイズはほとんどないと思います。なお、このファイルをプレイするには、ZIPに対応した解凍ソフトと、MP3に対応したメディア・プレイヤーが必要です。

◆ 危険な、危険な、ものすごくあぶない歌詞 ◆◆
音については書き尽くしましたし、みなさんもお聴きになったでしょうから、もう書くことはなにもないといっていいくらいです。残るは歌詞の細部ぐらいなのですが、これは書いたものかどうか、ちょっとためらいます。

いわゆる「後朝」(「きぬぎぬ」と読みます。意味は辞書をご覧になってください。文字から想像できるでしょうが)のことを歌った色っぽい歌詞なんです。「後朝」の場合、「後朝の別れ」と熟すように、別れの含意があるようですが、ボビー・ジェントリーのこの「朝顔」という曲にはそういう意味合いはなく、目が覚めてからの幸せな気分を歌っているだけです。危ないところは選り分けることにして、とにかく、歌詞を検討していくことにしましょう。

Good mornin' mornin' glory
Good mornin' what's your story
Good mornin' where'd you spend the night
Where did your night dreams take you
Sorry but I had to wake you
Oh I just had to make you
Shed your precious mornin' light on me

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_23391593.jpgご覧のとおり、語り手の女性のほうが先に目覚め、となりで眠っていた夫ないしは恋人を起こして、朝の「語らい」をしている(ものすごく遠まわしな婉曲表現だということにご注意。ほんとうは、語らいなんてものじゃなくて……)という設定です。夫婦だとしたら、結婚後まもないはずで、わたしは恋人だと考えています。長年連れ添った夫婦が、毎朝こんな色っぽい状態になっていたら、まともに日常生活を送れません!

わたしはこの盤を中学三年生のときに買いましたが、中学生にはじつにもって毒な歌詞でした。もちろん、ロックンロール小僧は、歌詞を理解するために、英語だけはまじめに勉強していましたから、これくらいの歌詞だと意味はほぼわかっちゃったのです。いや、じっさいには中学生の妄想のさらに先をいく、露骨な歌詞だったことが、大人になってわかったのですけれどね!

恋人の目を覚まさせ、「Oh I just had to make you shed your precious mornin' light on me」すなわち「あなたのすてきな朝の光をわたしに浴びせてほしかった」というのは、まあ、どうにでも解釈してください。未成年には「あなたの微笑みがみたかった」あたりの安全な解釈を推奨します。成人はどのようにでも想像をたくましくしてください。危ないところをぜんぜん避けてないなあ。

◆ さらにのろけはつづく ◆◆

Oh good mornin' sleepy baby
You know, I'm thinking maybe
I love you even more today
Every time you go to sleep
I'm jealous of the dreams
That keep you away from me

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_234233.jpg犬も食わないのは夫婦げんかばかりとはかぎらないわけで、のろけというのも、つきあっていられなかったりします。セカンド・ヴァースは大甘のコンコンチキ。あの空前絶後のセクシー・ヴォイスで、しかも無茶苦茶なオンマイクで、リスナーの耳に口を寄せてささやくように歌うんだから、こりゃもうたまらんというヤツです。

後半、毎晩あなたが眠りにつくたびに、あなたを遠くに連れ去る夢に嫉妬する、というのは、なかなかキュートなラインです。この曲にはそういう側面はゼロですが、ボビーはちょっとしたストーリーテラーで、作詞家としての才能もたっぷり持ち合わせていて、小説家になっても成功したのではないかと思うほど、人物描写のうまい人でした。

Good mornin' mornin' glory
I'll have to thank the sandman
For he's let you wake up in my arms again

「サンドマン」は「砂男」とそのまま訳されることもありますが、眠りの精のことで、当然、子守唄にはよく登場します。いまパッと思いだせるのは、Lullaby in Ragtimeの「You can tell the sandman is on his way」というラインです。「サンドマンはもうこっちにむかっているよ」とは、すなわち、そら、もうまぶたが重くなってきたね、といっているわけです。わたしはゴードン・ジェンキンズがアレンジしたニルソン歌うこの曲を、昔、死ぬほど何度も聴きました。いまでも、シナトラなどを聴いていて、あ、ジェンキンズだ、とわかるくらいにです。

寄り道終了。このラインは、また今朝も、わたしの腕のなかであなたを目覚めさせてくれたのだもの、サンドマンに感謝しなくちゃね、といっているわけです。のろけまくっております。

◆ 「朝顔」のほんとうの意味 ◆◆

Oh, come on darling time to get up
I have your breakfast table set up
Its such a lovely morning to see
And I have my mornin' glory with me

ダーリン、そろそろ起きる(目覚めるではなく、ベッドから出る)時間よ、朝食のしたくができたわよ、ほんとうにいい朝よ、それにわたしの朝顔がいっしょにいるんだしね、といったあたりでしょうか(8月27日に間違いに気づき、こっそり修正)。なんか、むちゃくちゃにリアルだなあ、と感じてしまってはまずいのかもしれませんが、でもやっぱり、この恋人たちの朝の描写は、赤面するほどリアルだと思います。

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_23454153.jpg目が覚めてもなかなかベッドから出られないというのは、夫婦じゃないに決まっているわけで、朝のひとときを終わらせるのが惜しくてしかたのない、ホットな恋人たちにちがいありません。いつまでもそうしているわけにはいかないからこそ、「さあ、起きてご飯を食べましょう」という言葉が出てくるのです。みなさんも身に覚えがあるでしょうに!

朝顔というタイトルが意味するものは、ここでは恋人のことになっています。わたしは朝顔から男を連想しませんが、英語では、おそらくmorning gloryという語の響きから、不自然には感じないのでしょう。

なーんていうインチキなごたくはもちろん建前で、不自然どころか、朝顔という語は、英語では男性を指すものとして使われる場合があるのです。俗語辞典(リーダーズ英和辞典でもけっこうです)をお持ちの方は、この語を引いてみれば、なんだ、そうだったのか! てえんで、百パーセントこの歌とタイトルの意味が理解できるはずです。この場合、女性にはありえない現象を指しているわけで、男でなければならないのです。源氏物語の朝顔の君が、なんて呑気なことをいっている場合じゃござんせんよ。じつは、ものすごく露骨な歌なのです。

◆ 私生活にちょっと寄り道 ◆◆
以上、歌詞はドキドキものですが、それにもまして、ボビーの歌声は、朝顔の裏の意味なんか知らなくても、たっぷりとドキドキできます。

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_23513115.jpg女性週刊誌的なことを書くべきかどうか、ちょっとためらいもあるのですが、この曲をつくったときに、ボビーのベッドで横に寝ていた男性は、たぶん、プロデューサーのケリー・ゴードンです。たしか、アレンジャーのジミー・ハスケルがいっていたのだと記憶していますが、ボビーとのことが原因で、ゴードンは離婚することになったそうです。ファム・ファタールというところでしょう。容貌もファム・ファタールだし、歌声に至っては、身の破滅になってもいいと感じるほど魅力的です。まあ、盤を聴いていたって、破滅なんかするわけないし、じっさい、中三のときから聴いていても安全だったから、そういう馬鹿なことがいえるわけですけれどね。

ボビーはのちに、ラスヴェガスの老いたるカジノ王と結婚し、すぐに離婚します。やはりハスケルがいっていたのですが、ボビーはつねづね「お金は大事よ。わたしはお金持ちになるの」といっていたそうで、有言実行だったことになります。それで幸せになったかどうかは知りませんが、最後にハスケルがみたときには、車のとなりに息子を乗せ、元気そうだったとのことです。

◆ スタッフについて ◆◆
ジミー・ハスケルは、ウェスト・コースト・ジャズの大立者、ショーティー・ロジャーズと共同でアレンジしたボビーのデビュー盤でグラミーを得ていますが、アレンジの出来としては、同じくロジャーズ=ハスケルのコンビがアレンジした、Mornin' Glory収録のセカンド・アルバムのほうがよいと思います。グラミーはあくまでも大ヒットした盤とその関係者にあたえられるものなので、ヒットしないと、いくら出来がよくても対象外になってしまうのです。そういうきついバイアスがかかっているのだから、グラミーの価値は頭のなかで補正して考えないといけないことになります。Mornin' Gloryのアレンジについていえば、ヴァイオリンよりも、チェロ、ヴィオラなどの音がめだつ部分が好みです。

ボビーの盤を聴く楽しみのひとつは、例によって、ハリウッド強力ギター陣の活躍です。デビュー盤よりセカンド、セカンドよりサードというように、あとにいくほどギターは強力になっていきますが(4枚目はグレン・キャンベルとの共演盤なので、リードは当然グレン。グレンが悪いというのではないが、ほかのプレイヤーの音はめだたなくなる。5枚目はナッシュヴィル録音で、ハリウッドのようなヴァラエティーに富んだギター・プレイは聴けない。いや、テレキャスターのプレイなどはなかなか悪くないが、バラッドでの美しいガットのプレイはない)、このMornin' Gloryでも、なかなか冴えたガットのオブリガートを聴くことができます。第一候補はトミー・テデスコ。ピックでガットを弾いたことで有名なのは、なんといってもテデスコです。

ほかの曲でも大活躍しているハーモニカは、この曲では決定的に重要な役割を果たしています。キャピトルのインハウス・プロデューサーだったトミー・モーガンのプレイにちがいありません。メチャクチャにうまいし、音色がじつにきれいです。

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_23474139.jpgデビュー盤では、これまたウェストコースト・ジャズの大物、レッド・ミッチェルがアップライト・ベースをプレイしたそうですが、Mornin' Gloryのベースもアップライトなので、またミッチェルがプレイしたのかもしれません。キャロル・ケイもボビーの盤ではプレイしたといっていますが、彼女が登場するのは早くてつぎのサード、ひょっとしたらグレンとの共演盤だけかもしれません。

なんにせよ、素晴らしいスタッフに囲まれ、それでも、我を押し通したボビーのこのセカンド(ケリー・ゴードンは完全に尻に敷かれていたようで、いわばイグゼキャティヴ・プロデューサーとして神棚に祭り上げられ、はしごを外されて、ボビーが主導権をとったらしい。ボビーは後年、クレジットはどうであれ、じっさいにはすべてわたしが自分でプロデュースした、女だからクレジットされなかったのだ、といっている)は、彼女の代表作であり、40年聴きつづけたいまも、ときおりプレイヤーにドラッグして、しみじみと聴き入ってしまいます。しゃれこうべになっても聴きたい曲ベスト13のなかでも、五本指に入れます。

◆ グレンとのデュエット盤 ◆◆
ボビーは、デビュー盤のモンスター・ヒットに最後まで苦しめられました。いまでも、ボビー・ジェントリーというと、Ode to Billie Joeということになっていて、あの曲が好きではないわたしは、40年間、ずっとうんざりしつづけています。あんなのより出来のよい曲をボビーは山ほど書いています。そもそも、歌詞だけに価値がある曲なので、音楽というより、ラップみたいなもの、といってわるければ、短編小説のようなものと思うべきでしょう。

Mornin\' Glory by Bobbie Gentry_f0147840_23484612.jpg以後はまったく鳴かず飛ばずで、しまいには、売り出し中のグレン・キャンベルの引き立て役をやらされるハメになるのですが、皮肉にも、これがヒットしてしまい、またまたボビーのキャリアを邪魔することになります。なぜ引き立て役かというと、スタッフは完全にグレンのレギュラーで固められているからです。いや、ハリウッドだから、どちらのスタッフも似たようなものですが、プロデューサー/アレンジャーが、グレンの側のアル・ディローリーだというのが決定的で、サウンドは完全にグレンのスタイル(いや、つまり、アル・ディローリーのサウンドという意味ですが)で、お膳立てが整ったところに、ボビーが乗っかっただけなのです。

Mornin' Gloryも、テンポが速すぎて、ボビーのオリジナル盤にあった、朝、ベッドでぐずぐずしている色っぽさはかけらもありません。まあ、男女デュエットでこの曲を情緒たっぷりに歌ったら、まちがいなくラジオから締め出しを食らっちゃいますけれどね。というわけで、つまらない出来のヴァージョンです、というか、この曲はカヴァーしないでほしかったと思います。

それにしても、この曲については書き尽くしたというわりにはよく書いたものだと、われながら呆れています。それから、朝顔の意味が○×△☆だとしたら、これは夏の歌とはいえないだろうというご意見もあるかもしれませんが、建前としては、ボビーも夏の朝を歌ったことにしているのだと、わたしは考えています。
by songsf4s | 2007-08-25 23:52 | 夏の歌