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San Francisco (Be Sure to Wear Some Flowers in Your Hair) by Scott McKenzie
タイトル
San Francisco (Be Sure to Wear Some Flowers in Your Hair)
アーティスト
Scott McKenzie
ライター
John Phillips
収録アルバム
The Voice of Scott McKenzie
リリース年
1967年
他のヴァージョン
live version of the same artist, Petula Clark
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◆ It was 40 years ago today ◆◆
ご存知でしたか? 今年の夏はThe Summer of Loveの40周年記念なんだそうです。たしかに、あれは1967年、今年は2007年、だれでもわかる計算です。ポール・マッカトニーがIt was twenty years ago todayと歌ってから、さらに40年たったわけで、われわれの世代も、あとは消えゆくのみですなあ、ご同輩。Will you still need me, will you still feed me, when I'm sixty-fourも、現実のスケデュールにのる地点まできちゃいましたねえ。いや、まったく。

f0147840_23511235.jpg説明抜きにThe Summer of Loveといっておわかりになるのは同世代ばかりで、以後の世代の非アメリカ人はご存知ないでしょうが、そろそろ辞書にも載ろうかという熟語です。たとえば、グレイトフル・デッドは、「サマー・オヴ・ラヴの精神を残す唯一のバンド」などと評されたりします。いや、宣伝文句みたいなものだから、本気にしてはいけませんが、そういう風にメディアなんかで、説明抜きで使ってよい言葉なのです。

1967年夏になにが起きたかは追々説明するとして(あるいは面倒だから省くか端折るかするとして)、あれがアメリカ人の若者にとっての東京オリンピックだったとしたら、三波春夫の「東京五輪音頭」にあたる曲が、今回とりあげるスコット・マケンジーのSan Francisco (Be Sure to Wear Some Flowers in Your Hair)という、ブロガー泣かせの長いタイトルの曲です。

f0147840_0351666.jpgこの曲と東京五輪音頭を結びつけたのは、わたしが史上初の人間だと思いますが、あの年のことを覚えている方は、はたと膝を叩いたでしょう? このブログをはじめてひと月半、やっと出た場外ホームラン級の卓見だと自負しています。

40周年と騒いで、またカビの生えた音楽を売ろうという企業の赤坂な考え(志ん生はいつも浅はかとはいわないのです)にくみするわけではないのですが、これに乗ると、得なことがひとつだけあるのです。このブログのコンテクストではもちだしようのない曲をもちだせるのです。

今日は東京五輪音頭程度の曲ですませておきますが、ジミヘン、デッド、フー、エアプレイン、ドアーズ、バッファロー・スプリングフィールド、バーズ、オーティス・レディング、なんならスタンデルズ、チョコレート・ウォッチバンド、サーティーンス・フロア・エレヴェーター、シャーラタンズ、アーサー・リー&ラヴ、クリア・ライト(どさくさまぎれに、だれも知らないバンドまでもちだしている)、その他、なんでもありの世界に突入するための布石でありまして、この方面が苦手の方は覚悟のほどを。いや、冗談冗談。あんまりぶっ飛んだものをとりあげると、わたしのほうが奇天烈な歌詞で大汗をかくことになってしまいます。

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ライヴ・デッド

いや、すでにけっこう目が回っています。だって、ついさっきまでは、今日はジャン&ディーンでもやるか、と思っていたのでありまして、急遽、方向転換し、がさがさとHDDを検索して、「そっち」関係をプレイヤーにドラッグしたので、忙しいのなんの。いや、ドラッグぐらいやりますが、音がちがいすぎる……いや、たいしてちがわないか。

◆ ラヴ&ピース ◆◆
では、三波春夫の東京五輪音頭、もとい、スコット・マケンジーの「花のサンフランシスコ」(という邦題でした)であります。作者はジョン・フィリップス、あの「花のカリフォルニア・ドリーミン」(ウソ邦題にご注意)の作者であります。いつものように、サウンドの検討はあとまわしにし、歌詞から見ていきます。

If you're going to San Francisco
Be sure to wear some flowers in your hair
If you're going to San Francisco
You're gonna meet some gentle people there

たいしたことはいっていませんね。サンフランシスコにいくのなら、かならず髪に花を挿そう、サンフランシスコにいけば、おだやかな人々に会えるだろう、といったところ。「ハア~、ちょいと桑港にゆくのなら、忘れちゃダメだよ、髪に花」とやれば、今年のお盆のダンス・ミュージックに変換可能……なわけないでしょ。

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サンフランシスコのヘイト・ストリートでのグレイトフル・デッドのフリー・コンサート。1966年か。見渡すかぎりずっと向こうまで人、人、人。200ワット程度のアンプなので、聞こえるはずがないのだが……。右端のレス・ポール・プレイヤーはジェリー・ガルシア、ドラムはビル・クルーズマン、左端のベースはフィル・レッシュ。

花が出てくるのは、われわれの世代にとってはあたりまえのことで、なんの説明もいらないのですが、この時期、ヒッピーのことを「フラワー・チルドレン」(ひとりなら、もちろん「フラワー・チャイルド」です)と呼んでいたほどで、ヒッピー・ムーヴメント、平和の象徴であったわけです。「ラヴ&ピース」の時代です。だから「おだやかな人々」が登場するのです。

ほんとうに髪に花を挿したヒッピーが、モンタレー・ポップ・フェスティヴァルの会場にでもいたのだろうかと思い、ちょっと本をひっくり返してみましたが、見あたりませんでした。あのときの写真で中学生の心に強く焼きついたのは、花ではなく、ボディー・ペインティングでした。いまじゃあどこの国のサッカー場でもあたりまえのようですが、あの時代には、ただただ驚きでした。半年ほどのあいだ、「ミュージック・ライフ」から切り取った、モンタレー・ポップの会場の写真を勉強机の前に貼りつけて眺めていたものです。

◆ またしてもアイコンの羅列 ◆◆
以下はセカンド・ヴァース。

All those who come to San Francisco
Summertime will be a love-in there
In the street of San Francisco
Gentle people with flowers in their hair


f0147840_0145936.jpg「ラヴ・イン」がハイフンで結ばれて一語になっています。辞書には「《俗》 ラヴイン 《ヒッピーなどの愛の集会》」とあります。わかったような、わからないような、ですが、そういうことがサンフランシスコあたりではあったのですね。「部族集会」tribal gatheringなんていうのと似たようなものでしょう。明日までにネタを仕込んでおくかもしれませんが、ここは「ヒッピーの集会」ということにして通りすぎましょう。夏になると、サンフランシスコでは「ラヴ・イン」があるのだよ、といっているだけです。

つぎはブリッジです。

All across the nation
Such a strange vibration
People in motion
There's a whole generation with a new explanation
People in motion, people in motion

f0147840_0423131.jpgそろそろ、こういう曲でも、サーフ・ミュージックと同じように、対象となる世界のアイコンを並べるということがおわかりでしょう。ここではvibrationがヒッピー文化特有のアイコンとして利用されています。ブライアン・ウィルソンのGood Vibrationsは1966年秋のナンバーワン・ヒットでした。feelingと意味は同じとみなしてよいでしょう。いまではべつにふつうの意味ですが、当時のいい年をした大人は、vibrationといわれても、振動を思い浮かべたのに対して、tuned-inした若者はすぐにfeelingのことだと理解できたわけです。そのへんの事情は、いまでも同じでしょう。若者は大人には理解できない言葉の用法を発明したがるものです。

3行目のexplanationは「説明」ではなく、「新しい考え方をする世代が存在する」といったあたりに見ておくのが無難かと思います。

◆ モンタレー・ポップのコマーシャル・ソング ◆◆
サウンド的には、このあと、もう一工夫がされているのですが、歌詞としては、セカンド・ヴァースをくり返すだけで、もう新しい言葉は出てきません。

東京五輪音頭だといった意味がおわかりでしょうか。サマー・オヴ・ラヴなのよ、ラヴ&ピースなのよ、というムードを「All across the nation」で盛り上げようという意図のもとにつくられた、史上初のロック・フェスティヴァルである「モンタレー・インターナショナル・ポップ・フェスティヴァル」のコマーシャル・ソングなのです。

f0147840_0102553.jpg燃えろ、燃えろ、燃えろ、モンタレーのステージでストラトキャスターを燃やすジミヘン。これはジッポのライター・オイルのコマーシャル?

なんだ、コマーシャル・ソングかよ、とガッカリなさるかもしれませんが、このフェスティヴァルの主催者のひとりであったジョン・フィリップスとしては、半分ぐらいは「時代精神」をまともに信じていたのだろうと思います(三波春夫さんも、東京五輪がもたらす精神の昂揚を信じていらしたのではないでしょうか)。そういうナイーヴな時代、ナイーヴな夏だったのです。

この曲は、1967年7月1日にビルボード4位にまで到達しました。ビートルズのAll You Need Is Loveの世界中継放送の直後にあたります。モンタレー・ポップ・フェスティヴァルもたしか6月下旬だったと思います。われわれ極東の子どもたちも、このころになると、よくわからないなにかがアメリカで起きていることをぼんやりと感じはじめていました。そのあたりのことは、明日以降に書きます。

◆ 出ると思っていたでしょうが…… ◆◆
スコット・マケンジーは、かつてママズ&パパズの連中といっしょにやっていたこともあるフォーキーなので(ジャーニーメンというグループを組んでいた)、パパ・ジョン・フィリップスの助けでスターダムを目指すことになったわけです。みごと、その年を象徴する大ヒットを得たわけですが、あとがつづきませんでした。そこそこ歌える人ですが、それ以上のなにかがあるとは思えないので、リスナーは妥当な判断を下したと思います。

わたしの耳はそこそこ歌えるヴォーカルなどに気をとられたりはしません。当然、ドラムとベースを聴きます。ベースはまちがいなくジョー・オズボーン、ドラムはハル・ブレイン。当然、グッド・グルーヴです。

ママ・パパの録音ではジョン・フィリップス自身もたいていの場合、ギターを弾いていたようで、深夜のセッションで酔っぱらってタイム・キーピングができなくなり、ハル・ブレインと大げんかになったこともあるそうです。ハルは、仕事ではもちろん、ふだんからアルコールは一滴も口にしないそうです。プロなのであります。

しかし、ママ・パパの場合でもトミー・テデスコも加わっていたくらいで、この曲では、フィリップスはルー・アドラーと共同プロデューサーになっているのだから、たぶん、ギターは弾かなかったのじゃないでしょうか。いま、マケンジーのインタヴューを見たら、グレン・キャンベルの名前をあげていました。ほかにラリー・ネクテル。といっても、この曲ではどこにいるのかわかりませんが。

ほかにシタールが聞こえますが、だれでしょうか。ハリウッドのスタジオでシタールものを一手に引き受けていたのはマイク・デイシーだそうですが、弾くのではなく、ミョーンと効果音的に使うのなら、あんなもの、だれだってできますから、だれであっても、ちがいはありません。

◆ オズボーンのストレート・フォース ◆◆
ついでにうと、イントロのヒッピー・ベルは、ママ・ミシェール・フィリップスのプレイです。ハルが、ミシェールにこれを振ってみな、と手渡したのだそうです。さすがは、『ブルー・ハワイ』のセッションにハリウッド中のパーカッションをかき集めて持ち込んだといわれるハルだけあって、パーカッションで「それらしさ」を演出するすべをよく知っています。

f0147840_0464619.jpgとにかく、このトラックは、いや、このトラックも、ハル・ブレインとジョー・オズボーンのグルーヴが決定的に重要な役割を果たしています。あとは付け足りです。エンディング前のストップで、オズボーンにスポットが当たるストレート・フォースのグルーヴなんて、やっぱりすごいものです。こういうシンプルなプレイでこそ、グルーヴのよしあしが露呈します。キャロル・ケイもめちゃくちゃにきれいなストレート・フォースを弾く人でした。

マケンジーは、オズボーンがフェンダー・ベースのフラット・ピッキング・スタイルを発明した、などといっていますが、歌手は歌っていればいいのであって、プレイ・スタイルの歴史なんか知ったことじゃないでしょうに。わたしだったら、だれが発明したなんてことを軽々に断言するような馬鹿なことはぜったいにしません。このころのハリウッドの特徴的なベース・サウンドは、キャロル・ケイ、ジョー・オズボーン、ラリー・ネクテルらのフラット・ピッキング・スタイルによってつくられたものである、ぐらいにとどめておくのが賢明です。

オズボーンはリック・ネルソン・バンドにスカウトされた1960年ごろから、ずっとフラット・ピッキング・スタイルだったので、かなり初期のフラット・ピッカーではあります。オズボーンに関心があるなら、リック・ネルソンのカタログは避けて通れません。ぜひ一聴を。ジェイムズ・バートンのギター・ソロまでついているのだから、これほどお買い得なカタログないといっていいほどです。ま、ドラムは、アール・パーマーの時はいいとして、リッチー・フロストはどうということはなくて、そこが困るんですがね。

ハリウッド産のいわゆる「ポップ・サイケデリック」、さらには世間一般では「オーセンティック」とみなされているサイケデリック・ミュージックとの、ハリウッドのバリバリのプロフェッショナルの関わりについては、明日以降にもう一度検討します。まあ、サーフ・ミュージックと同じ構図だと考えておいてください。出来のいいのはプロがつくった偽物、出来の悪いのは素人がやった本物、いつもこれです。

◆ 他のヴァージョン ◆◆
ペトゥラ・クラークは、合っていません。なにかの気の迷いでやってしまったのでしょう。マケンジーがモンタレーで歌ったライヴ・ヴァージョンもありますが、ドラムが下手で、死にそうになります。ベースはオズボーンでしょう。それ以上、とくにいうことべきことはないように思います。
by songsf4s | 2007-08-03 23:54 | 「愛の夏」の歌