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Beyond the Reef by the Ventures
タイトル
Beyond the Reef
アーティスト
The Ventures
ライター
Jack Pitman
収録アルバム
Another Smash!!!
リリース年
1961年
他のヴァージョン
The 50 Guitars, 山口淑子(李香蘭), Marty Robbins, Elvis Presley
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◆ 初期ヴェンチャーズ・セッション ◆◆
このBeyond the Reefは、1961年リリースのサード・アルバムに収録されました。デビューからこのあたりにいたる時期の「ヴェンチャーズ」セッションの主要メンバーは、以下のように考えるのが妥当でしょう。

・ビリー・ストレンジ:リード・ギター
・(場合によって、トミー・テデスコ:セカンド・ギター)
・キャロル・ケイ:リズム・ギター
・レイ・ポールマン:フェンダー・ベース
・ハル・ブレイン:ドラムズ

f0147840_22243195.jpgメル・テイラー(手前)とハル・ブレイン

もちろん、こんな簡単な話ではなく、時代が下るにつれて、ここにさまざまなプレイヤーたちがからんできます。からんでいないのは、ツアー用ヴェンチャーズだけ、といっていいくらいです(冗談ですよ、そんなに青筋立てないで)。とにかく、これがデビューから2ないし3年のあいだ、ヴェンチャーズの盤をつくった人たちです。メル・テイラー加入後は、ハル・ブレインのトラックは減少していきます。

ギタリストとしてはほかにグレン・キャンベル、ジェイムズ・バートン、デイヴィッド・ゲイツ(ベースも)、トミー・オールサップ(Country Classicsのみか)らの名前が、データやうわさ話に出てきています。

◆ シンプルな編成 ◆◆
アルバム全体を見ると、ヒット曲Lullaby of the Leaves(木の葉の子守唄)、日本のアマチュア・バンドが好んだBulldog、わたしの好きなLonely Heartをはじめ、みなギターは2本で、4ピースのバンドに、曲によってはストリングスやコーラスをかぶせるという構成です。この盤では、トミー・テデスコは弾いていないだろうと思います。

f0147840_22273839.jpgBeyond the Reefもこの4人による録音と考えられますが、リードとリズムのほかに、この曲だけは、スティール・ギターないしはふつうのギターのオブリガートが聞こえます。これが微妙で、確信をもてないので、突っ込み大歓迎ですが、スライド・バーを使ってふつうのギターを弾いた可能性も否定できません。ハーモニクスやミュートしたアルペジオが中心で、たまに音の尻尾がスライドすることがある程度にすぎず、ペダル・スティールやラップ・スティールでなければ不可能というプレイではないのです。いや、ペダル・スティールにはさわったこともないので、このへんはあまり自信がないのですが、わたしは、ビリー・ストレンジがオーヴァーダブしたのではないかと考えます。

どうであれ、ビリー・ストレンジはスロウな曲を非常に得意としているので、ここでもていねいなピッキングと、ゆったりした間合いのコード・プレイを聴かせてくれています。

◆ さてお待ちかね、50ギターズ登場 ◆◆
ヴェンチャーズというプロジェクトが大成功したせいか、60年代のハリウッドでは、同様のギター・インストゥルメンタル・プロジェクトが大量に簇生しました。雨後の竹の子のマット・グロッソ状態という感じで、このジャングルのごとき分野の研究だけで、一生を終えることもできるほどです。

サーフ・インストも、このマット・グロッソの一部といえますが、サーフ/ドラッグではないインストもたくさんあり、ワン・ショットのものもあれば、シリーズ化されたものもあります。長寿シリーズのチャンピオンがヴェンチャーズ――じゃなくて、エキゾティック・ギターズと50ギターズです。

f0147840_22305950.jpgアル・ケイシーがリードを弾いたエキゾティック・ギターズに関しては、右のリンクからいけるAdd More Music To Your Dayの看板番組である「レア・インスト」で(MP3つきで)全貌を知ることができますが、50ギターズは数枚しか聴いたことがなく、全体像は謎に包まれています。

でも、いいニュースがあります。Add More Musicでは、まもなく、かどうかはわかりませんが、いずれいつか、50ギターズを公開するそうです。Kセンセのていねいなマスタリングは、本家本元のビリー・ストレンジ・オフィシャル・ウェブ・サイトでも評判になったくらいで、インターナショナルな定評がありますから、じつに待ち遠しいかぎりです。

◆ 国境の南のそのまた西 ◆◆
50ギターズについてこれまでに知りえたことを並べると、これはトミー・“スナッフ”・ギャレットのプロジェクトで、初期にはローリンド・アルメイダがリードを弾いたが、途中からトミー・テデスコに交代し、大部分の盤はテデスコがリードを弾いたらしい、アール・パーマーがドラム・ストゥールに坐った盤もある、といった程度です。

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トミー・“スナッフ”・ギャレット(口ひげ)とトミー・テデスコ。ひょっとしたら50ギターズのセッションか?

プロジェクト名が示すとおり、多数のギタリストが動員されていますが、50本はいくらなんでもサバ読むなこのヤローで、十数本だろうと思います。最近はあまり見ないのですが、昔はよくマンドリン合奏というものがあって、多数のマンドリン・プレイヤーがユニゾンでプレイしていましたが、あれをギターに置き換えたようなものを想像していただければ……って、マンドリン合奏そのものが、もうわからないですよねえ。

ま、とにかく、多数のギター・プレイヤーがトレモロで、オブリガートやカウンターメロディー、ときにはメロディーそのものを弾いているわけです。多数のアコースティック・ギターがシングル・ノートで弾くと、サステインが短く聞こえ、ブツ切れの音になってしまうので、それを回避するために、マンドリン合奏と同じように、トレモロ・ピッキングをする、というのはギタリストならどなたにもご了解いただけると思います。

ここにパーカッション類やベース、ときにはドラムズを加えたものの上に、ガット・ギターのリードがのっかる、というのが基本パターンです。エレクトリックなギター・インストとはかけ離れたもので、マンドリン合奏のギター版というほうがはるかに近いでしょう。

したがって、初期は地味だったのですが、トミー・テデスコがリードになってからは、アレンジも複雑になり(Beyond the Reefが収録されたReturn to Paradiseのアレンジャーはアーニー・フリーマン。よくこんなふつうではない編成のアレンジができるものだと感心します)、装飾音が増え、トミーも派手なプレイを展開するので、ぐっと楽しくなります。テレキャスターだとちゃらんぽらんなプレイをするとき(ラウターズのLet's Go)がある人ですが、ガットをもたせると、マラカスをもった植木等のように人格が一変し、気合いの入ったプレイをします。

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トミー・テデスコとガット・ギター。右肩はレッド・スケルトンのサイン。「感謝をこめて」とある。

はじめて聴いたとき、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』を思いだしたぐらいで、50ギターズのどのアルバムも、なんとなく国境の南みたいな響きになっています。この曲は、それではちょっとぐあいが悪く、すこし経度を西にずらすために、オール・ゾーズ・エキゾティック・パーカッションズのみならず、スティール・ギターも加えられています。当たるも八卦当たらぬも八卦、印象だけにもとづく憶測を述べると、わたしはアヴァランシェーズのペダル・スティールを思いだしました。ウェイン・バーディックという人のプレイかもしれないと感じます。

なんにせよ、文句なしに楽しいサウンドで、同じアルバムに収録されたエキゾティカ・クラシックのQuiet Villageなんか、ドラムが活躍することもあって、おおいに盛り上がります。星の数ほどある各種Quiet Villageのなかでも三本指に入れてよい出来です。Beyond the Reefも、多人数のアンサンブルを好む方には、ヴェンチャーズより50ギターズのほうが面白いかもしれません。

◆ トミー・テデスコのセッション・ワーク ◆◆
トミー・テデスコのガットを聴いたことのない方には、以下の曲での彼のプレイをお聴きになるようにお奨めします。

Elvis Presley "Memories"
Gary Lewis and the Playboys "Sure Gonna Miss Her"
The Association "Rose Petals, Incense and a Kitten"
The 5th Dimension "Up, Up and Away"

トミー・テデスコは過去の仕事にあまり関心がないタイプのプレイヤーで、自伝でもそれほど多くは語っていません。しかし、ハル・ブレインの談話によると、エルヴィスのMemoriesにはいくぶんの思い入れがあるようです。

ある夜、トミーがハルのところに電話をかけてきて、「なあ、いま車でラジオをかけていたら、Memoriesが流れてきたんだ。オレそっくりのプレイでな、なんだか泣けてしかたなかった」というのだそうです。

ハルは「それはそうだろう、あれはおまえのプレイだ。俺たちはいっしょにエルヴィスのセッションをやったじゃないか」と答えたとか。これを読んでもらい泣きしそうになりました。Memoriesでのトミーは、泣きたくなるほど素晴らしいのです。
by songsf4s | 2007-07-26 22:55 | 夏の歌