人気ブログランキング |
Beyond the Reef by Marty Robbins
タイトル
Beyond the Reef
アーティスト
Marty Robbins
ライター
Jack Pitman
収録アルバム
The Essential Marty Robbins 1951-1982
リリース年
1962年
他のヴァージョン
山口淑子(李香蘭), Elvis Presley, The Ventures, 50 Guitars
f0147840_236549.jpg

◆ 迂回路を通って ◆◆
マーティー・ロビンズの名前を知ったのは、グレイトフル・デッドがライヴ・アルバムSteal Your Faceで、彼のEl Pasoをカヴァーしていたからです。

おかしな経路でたどり着いたものだと思いますが、カントリー・ミュージックが身近になかったわれわれの世代は、バーズのSweetheart of the Rodeo、ボブ・ディランのNashville Skyline、フライング・ブリートー・ブラザーズのGilded Palace of Sin、グレイトフル・デッドのWorkingman's Deadなど、60年代末期に相次いでリリースされた、カントリーに傾斜したアルバムが契機になって、こういう方面も聴くようになったケースは多いだろうと思います。

f0147840_2385329.jpg
f0147840_2393679.jpg

f0147840_23122391.jpg
f0147840_23124586.jpg

じっさいにロビンズの盤を買ってみると、たしかにカントリー・ミュージックに分類できるものが多いのですが、初期にはロカビリー(エルヴィスもやったThat's Alright、チャック・ベリーのMaybellineなど)もやっていますし、September in the RainやUnchained Melodyなどのスタンダードを歌ったアルバムもあれば、ハワイアンのアルバムもあり、テックス・メックス的な曲もやっています。

わたしは上記のような経路でカントリー・ミュージックにたどり着いた人間ですから、ちょっとこれは渋すぎるというシンガーにぶつかり、跳ね返されたこともしばしばですが、この多様性のおかげで、ロビンズにははじめから親しみを感じました。4ビートの曲もうまいシンガーなのです。そちらはまたの機会にとりあげるとして、夏なのでまずは「いわゆるハワイアン」です。

◆ 普遍性のあるスタイル ◆◆
マーティー・ロビンズは第2次大戦に従軍し、一時期はソロモン諸島に駐屯したことがあり、ハワイアン・ミュージックへの傾斜はこの時期に生まれたものだそうです。

ソロモン諸島は「山がちの火山島が多く、その他多くの小さな環礁、隆起サンゴ礁がある。最大の島はガダルカナル島。気候は高温多湿で、4~11月に南東貿易風が卓越し(中略)、日中の気温は26℃以上に達する」(世界大百科)という土地柄だということは、知っておいてもいい背景情報でしょう。われわれ日本人は、三次にわたるソロモン海海戦や、ガダルカナル島の激戦と飢餓を覚えておくべきかもしれませんが。

f0147840_23172548.jpg

昔のカントリー・シンガーの多くがそうでしたが、ロビンズも美声の持ち主で、スロウな曲も、ミドルからアップ・テンポの曲も、どちらも魅力があります。ヴィブラートをほとんど使わない歌い方も、ひょっとしたら、美声のせいではないかと思います。この声でヴィブラートを多用すると、イヤったらしく聞こえるでしょう。

山口淑子/李香蘭の「珊瑚礁の彼方に」で、女性シンガー向きの曲と書いたことと矛盾してしまいますが、ロビンズのBeyond the Reefも、適度な思い入れでおさめ、比較的あっさりとした歌い方をしている点が好ましく感じます。エンディングでの裏声によるエモーショナルな表現(ヨーデルっぽくて、カントリー・シンガーだなあ、と感じますが)を強調したくて、そこまでは抑えて歌ったのかもしれません。

アルフレッド・アパカやビング・クロスビーの盤を聴いていないので、こういってしまうのはちょっと気がさすのですが、女性シンガーが苦手だったり、日本語の歌詞を好まない方は、このロビンズ盤Beyond the Reefをお聴きになるとよいと思います。カントリーの臭みが強いタイプではなく、より普遍的なスタイルをもっている人なので、あの手の音が苦手な人でもすんなり入っていけるでしょう。

◆ ジェリー・バードの名人芸 ◆◆
ロビンズはニューヨークやハリウッドでも録音していますが、ホームグラウンドはナッシュヴィルで、この曲も彼の他のナッシュヴィル録音とほぼ同じメンバーで録音されています。いつもとちがうのは、スティール・ギターがジェリー・バードという人になっていることです。

バードはナッシュヴィルのスタジオ・プレイヤーとしては古株で、アーネスト・タブやレッド・フォーリーとプレイしたそうですが、気になって検索したら、マーティー・ロビンズとテレビで共演している映像にぶつかりました。ちゃんとBeyond the Reefもやっています。

盤では、バードはエレクトリファイしたラップまたはペダル・スティールを弾いていますが、このBeyond the Reefのテレビ・ライブでは、リゾネイター・ギターでやっています。これが素晴らしくて、ほかにも同じ番組の映像がいくつかあったので、すべて見てしまいました。スティール・ギターに関心のある方にはお奨めします。ハーモニクスのプレイはバードの十八番だそうですが、そういうプレイも見ることができます。ちょっとしたものです!

f0147840_2319444.jpg

この年になると、「いいプレイ」とはいうのは、「速いプレイ」ではないことぐらいわかっていますが、こういうのこそがまさしく「うまいプレイ」だと改めて思いました。スライド・バーをかまえる手つき、ギターを膝に載せる身ごなしを見ただけで、音を聴く前から修練のほどがうかがえて、名人といわれた昔の噺家が着物の裾を払うようす、羽織の紐を解く手つき、湯呑みのふたを取る間合いを思い浮かべました。

歌詞の検討はつぎのエルヴィス篇でさせていただきます。
by songsf4s | 2007-07-24 23:25 | 夏の歌