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In the Good Old Summertime by Les Paul with Mary Ford その1
タイトル
In the Good Old Summertime
アーティスト
Les Paul with Mary Ford
ライター
Ren Shields, George Evans
収録アルバム
The Best of the Capitol Masters
リリース年
1950年
他のヴァージョン
Nat 'King' Cole
 
 
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◆ 1世紀以上昔の曲 ◆◆
パティー・ペイジのOld Cape Codからの連想の糸は、ひとつはブルース・ジョンストンのDisney Girlsへとつながっていますが、もうひとつはレス・ポールへとつながっています。

レス・ポールのこの時期の曲ならどれでもいいのですが、たまたま季節をあつかったものは、わが家ではこの曲ぐらいしか見あたらず、たまたま出来もよいので、このIn the Good Old Summertimeを聴くことにします。

これはものすごく古い曲のようで、The Great Song Thesaurusを調べると(わが家ではエルヴィス以前の曲を調べようとすると、これ以外に頼りになる資料がないのです)、1902年の作品となっています。百年以上前の曲!

そのせいか、構成がはっきりしません。1ヴァースのみのようにも思えるのですが、2ヴァースなのかもしれません。それくらいに短いので、以下にすべての歌詞を書き写します。他の人のヴァージョンをベースに、レス・ポール&メアリー・フォード盤に合わせて修正しました。

In the good old summertime
In the good old summertime
Strolling down the shady lanes
With my sweetheart, mine
I hold his hand, and he holds mine
That's a very good sign
That he's my tootsy-wootsy
In the good old summertime

「古きよき昔の夏 木陰の小径を恋人とそぞろ歩き わたしは彼の手をとり 彼はわたしの手をとる」といった、たいした意味があるとは思えない、でも、グッド・フィーリンはある歌詞です。

tootsy-wootsyという見慣れない単語がありますが、リーダーズ英和辞典で調べると、tootsを見よとなっています。

toots [t_ts] _《口》
_n. [voc.] 《女性に向かって》 ねえ, あんた, おまえ, 娘さん, ねえちゃん, よう, かわいこちゃん; 娘, 女.

オンラインの「Dictionary.com」では、スラングで「足」footのことである、となっていて、19世紀なかばに生まれた語としています。昔の流行語なのでしょう。

足という単語が、女性を指す単語に化けるところから、アメリカ男性の美脚妄想へと進むのは、どこかよそにおまかせします。この言葉を、女性であるメアリー・フォードが男性をたたえるものとして歌うと、ある種の倒錯美のようなものになるのかもしれませんが、そのへんのことは非ネイティヴにはよくわかりません。どちらにしろ、21世紀のネイティヴにはもう古くさい言葉に思えるのではないでしょうか。

ということで、わたしにもわかること、サウンドのほうに話を転じます。

◆ 50年代サウンドへの(痛い)寄り道 ◆◆
話は飛びますが、中学のときに、わたしが好んで聴いていたさまざなアーティストがカヴァーしていた、チャック・ベリーを聴いてみたくなりました。あのころは、国内ではチャック・ベリーの盤がなにもなくて(このへんに60年代の「現在絶対主義」があらわれています。同時代の変化が激しすぎて、ほんのすこし以前の音楽がどんどん見捨てられていったのです)、生まれてはじめて輸入盤のオーダーという大冒険をすることになりました。当時の国内盤LPの標準的な価格が1800円ぐらいだったと思いますが、これは結局、数カ月の時間と4000円以上の費用を要しました。

そのようにして手に入れただいじな盤を、わくわくしながらターンテーブルに載せたのですが、その期待は一瞬にしてしぼみました。というより、「爆縮」といっていいくらいの強い失望でした。ドラムはオフで聞こえず、それがむしろ幸いに思えるほどダメなタイムでした。では、チャック・ベリーのギターが面白いかというと、それほどでもなかったのです。すでにジミ・ヘンドリクスやマイケル・ブルームフィールドを聴いたあとですからね。

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わたしが買ったのはこれではなく、Greatest Hitsのほうなのですが、スキャンが間に合わなかったので、とりあえずこれで。

いまのわたしは、このドラマーに対する評価は変えていないものの、チャック・ベリーのカタログ全体に対しては、相応の愛着をもっています。しかし、中学生にはいまのわたしのような歴史的パースペクティヴなどもちようもなく、また、同情心もなかったので、ものすごく正直な反応をしたのだと思います。「なんだよ、この古くさい音は」という感想を得ただけで、4000円は煙となって消えてました。4000円の痛みに中学生は泣きました。

◆ レス・ポールの「ニュー・サウンド」 ◆◆
こういう経験があったので、自分が育った60年代以前の盤を買うときは、これも神の思し召し、一度は経験しなければならないのだから、まあ、我慢して聴きましょう、ぐらいの気分で、期待などしないようになっていました。

しかし、レス・ポールの盤だけは、そういう覚悟が馬鹿みたいに思えました。志ん生の「火焔太鼓」のおかみさんみたいに、甚兵衛さんに「そこの柱につかまれ、ビックリして坐りションベンするんじゃねえぞ」とあらかじめ注意しておいてもらいたかったくらいです。こんなに斬新なサウンドに出合う予定ではありませんでした。

こういうことというのは、文字でいってみてもどうにもなりませんね。ギタリストなら、一度はレス・ポールを聴いてみるべきです。サウンドというものに興味のある人は、レス・ポールを抜きにしては、アメリカの録音技術の発展は語れないことを思い知らされるでしょう。時代を超越したすごみのあるサウンドです。

(以下、「In the Good Old Summertime
by Les Paul with Mary Ford その2」
につづく)
by songsf4s | 2007-07-15 23:49 | 夏の歌