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Disney Girls その1 (by the Beach Boys)
タイトル
Disney Girls
アーティスト
The Beach Boys
ライター
Bruce Johnston
収録アルバム
Surf's Up
リリース年
1971年
他のヴァージョン
Cass Elliot, Bruce Johnston, Papa Do Run Run
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◆ ノスタルジーの入れ子構造 ◆◆
ブルース&テリーのSummer Means Funパティー・ペイジのOld Cape Codとくれば、多くの方が連想するように、必然的にDisney Girlsへと進みます。パティー・ペイジからの連想の糸はふたまたに分かれるのですが、まずは、後年、Old Cape Codを引用したというか、たぶん、この曲の直接の子どもとして生まれたのであろう歌を聴きましょう。

テレビドラマというものを見ない人間なので(「CSI」だけはべつですが)、なにがきっかけでそうなったのかわからないのですが、ここでとりあげるDisney Girlsは、一度もヒットしたことなどないのに、一時期、むやみにテレビから流れてきました。タイトルを知らなくても、音を聴けば、ああ、あれか、と思いだす方も多いのではないでしょうか。

1968年から73年までは、ビーチボーイズの暗黒時代といっていいのではないかと思いますが(音楽的にいいものがないといっているのではないので、誤解なきよう。キャリアのうえでのことです)、この曲はその最中、1971年にリリースされたアルバムSurf's Upに収録されました。暗緑色の陰鬱なジャケット・イラストレーションは、意味がわかりません。この絵ではSurf's Upが「波立ちぬ」とは解釈できず、どちらかというと「俺たちの負けだ、サーフィンは終わった」といっているように思えたものです。

f0147840_22232267.jpgそれだけに、74年夏の2枚組編集盤Endless Summerの大ヒットによる復活は印象的でした。60年代には、わたしはビーチボーイズの熱心なファンではなかったので、かえってよくわかるのですが、Endless Summerのヒットは、嵐の時代をくぐり抜け、平穏で退屈になったときの「あっ、そうだ、ビーチボーイズがいたじゃん!」という「底流としての気分」を掘り起こしたからにちがいありません。

Disney Girlsは、そうしたこととパラレルになっているというか、入れ子構造のようになっていると感じます。ブルース・ジョンストンがこの曲で描こうとしたのは、「ビーチボーイズの時代」よりもさらに以前の時代です。ビーチボーイズそのものがノスタルジックな存在になったとき、この曲は、売れなかったLPのたんなるアルバム・トラックという位置から、大きく浮上していきました。

◆ トゥッツィー・ロール ◆◆
恒例によって歌詞を検討します。ブルース・ジョンストンの後年のセルフ・カヴァー盤では、一部歌詞を変えていますが、ここではオリジナルのビーチボーイズ盤を使います。最初は4行1連かと思ったのですが、それではおかしいので、8行1連のヴァース/コーラス/ヴァース/コーラス/ブリッジ/ヴァース/コーラスという構成とみなします。

あまり面白みはないし、意味も不明瞭ですが、飛ばすわけにもいかないので、まずファースト・ヴァースの前半。

Clearing skies and drying eyes
Now I see your smile
Darkness goes and softness shows
A changing style

空は晴れ、涙は乾き、きみの笑顔が見える、暗闇は去り、穏やかさが変わりゆくスタイルを示す。わたしの駄訳も意味不明ですが、元も意味明瞭とはいいかねます。Clearing skiesという歌い出しは印象的ですが、作詞家がどこにいこうとしているかはまだ見えません。

ファースト・ヴァース後半でもストーリーは見えませんが、最後の行は耳を惹きます。

With kisses and a Tootsie Roll


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欧米の菓子類はあまり好まないので、食べたことがありませんが、トゥッツィー・ロールは「チョコレート味のキャンディー」なのだそうです。トゥッツィー・ロール社のウェブ・サイトによると、19世紀末からあったものだそうで、キャンディー版コカコーラとでもいうべき、きわめてアメリカ的存在のようです。わたしの世代の日本人でいうと、たとえば「マーブル・チョコレート」という言葉で思いだすようなことがらを連想させようとして、このキャンディーがファースト・ヴァースの末尾にポンとおかれたわけです。この曲がどこへ向かうかを示す最初の兆候です。

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1955年の「ナショナル・コミック」誌掲載の広告だそうです(部分)。ブルースもこういうイメージを喚起しようとしたのかもしれません。

◆ 同時代否定、過去への回帰 ◆◆
つづくファースト・コーラスで、これがなんの曲なのかということが、一気に、直接的に表現されます。

Oh reality, it's not for me
And it makes me laugh
Fantasy world and Disney girls
I'm coming back


「現実なんて興味がないし、笑っちゃうよ、ファンタシーの世界、ディズニー・ガールズにもどるんだ」というわけで、現実否定、同時代否定の歌なのです。ディズニー・ガールズというのは、タイトルになっているのだから、重要にちがいないのですが、これについては研究不足です。アネットのことが念頭にあるのでしょうか。「マウスケティアーズ」でしたっけ? われこそはと思う方、助け船をどうぞ。

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ブラザー・レコード時代のビーチボーイズのベスト盤Ten Years of Harmony。Disney Girlsも収録されている。

going backではなく、coming backとしたことにも意味があると思うのですが、深く考える能力も時間もないので、棚上げにします。しいていうと、「Iターン」ではなく、「Uターン」のニュアンスをもたせたというあたりでしょうか。

◆ パティー・ペイジというアイコン ◆◆
さて、いよいよ佳境です。パティー・ペイジのOld Cape Codは夏の歌なのだと言い切ってしまった(Old Cape Cod by Patti Pageの記事)根拠のひとつは、このセカンド・ヴァース前半にあります。

Patti Page and summer days
On old Cape Cod
Happy times making wine
In my garage


「パティー・ペイジと懐かしいコッド岬の夏の日々、ガレージでワインをつくった幸せな時代」とあります。パティー・ペイジのもっているイメージを借りて、自分が描こうとしているものを端的に表現したわけで、ある種の本歌取りといえるでしょう。

じっさい、曲調は、なんならパティー・ペイジが歌ってもかまわないようなものになっています。パティー・ペイジのOld Cape Codをイメージしながらつくったのでしょう。同時に、パティー・ペイジというアイコンによって、50年代の生活を思いださせようとしているのは、もちろんのことです。同じ50年代でも、エルヴィスとJailhouse Rockでは、この場合はぐあいが悪いのはいうまでもありません。ついでにいえば、ハル・ブレインはパティー・ペイジのことを「生粋のカントリー・ガール」といっています。

(以下、「Disney Girls その2」につづく)
by songsf4s | 2007-07-13 22:40 | 夏の歌