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〔雨の日に備えて〕 ジャズ・ヘイターのためのゲーリー・バートン=ラリー・コリエル入門の2
 
枕など書いていると、またまたロング・ランになりかねないので、今日はさっそく前回の続きへと。

◆ 承前 二作目「Lofty Fake Anagram」 ◆◆
改めてLofty Fake Anagramのクレジットを見たら、こう書いてあった。

Recorded at RCA Victor's Music Center Of The World, Hollywood, CA on August 15, 1967 - August 17, 1967

DusterはNYのRCAでの録音だったが(さらに古いアルバムのなかには、ナッシュヴィルのRCAで録ったものもあった)、こちらはハリウッドのRCAだとは意識していなかった。

ヘンリー・マンシーニやパーシー・フェイスが録った(いや、クラシックの巨匠たちの録音のほうで有名だが)、ハル・ブレイン云うところの「飛行機格納庫のように巨大な」スタジオAではなく、もっと小さいスタジオBなどを使ったのだろう。

〔雨の日に備えて〕 ジャズ・ヘイターのためのゲーリー・バートン=ラリー・コリエル入門の2_f0147840_6561191.jpg
サンセット・ブールヴァード6363番地のハリウッドのRCAビル。正式名称RCA Victor's Music Center Of The World, Hollywood

さらに目を惹くのは録音日だ。6月下旬にモンタレー・インターナショナル・ポップ・フェスティヴァルがあり、ジャニスの歌にママ・キャスが唖然とし、オーティス・レディングがキャリア第2弾ロケットに点火し、キース・ムーンがドラムを蹴倒し、ジミがストラトを燃やした。

ビートルズはSgt. Pepperをリリースし、史上初の世界同時中継番組Our Worldに出演して、ライヴでAll You Need Is Loveを録音し、そうしたもろもろが前年からの底流に火をつけ、サイケデリックの嵐が吹き荒れた、まさにその真っ最中の1967年8月に、このLofty Fake Anagramは録音された。

前作でもちらりと垣間見えた、アヴァンギャルド指向というか、時代も時代なので、サイケデリック傾向のようなものは、ラリー・コリエルが在籍したあいだずっとつづくのだが、このアルバムではゲーリー・バートン作のつぎの曲がそのカテゴリーに入る。

The Gary Burton Quartet - The Beach (HQ Audio)


輪郭があいまいなだけで、まだメロディーはあるし、ゲーリー・バートンとラリー・コリエルがいっしょに弾くテーマ(のようなもの)もあるのだから、アヴァンギャルドの一歩手前だが、サイケデリック味は十分に濃い。

データ類をのぞけば、音楽のことをどうこう云うのはもちろんすべて主観だが、さらに深く主観の領域に入って云うと、子供の時分にこのあたりのアルバムを徹底的に聴いたのは、いや、「聴けた」のは、こういう匙加減、ニュアンス、アプローチ、持って行き方が、ジャズ・コンボ的ではなく、ロック・グループ的だったからだといまになってわかった。直感的に、自分がよく知っている音楽の親類だと理解したにちがいない。

アヴァンギャルド的要素は入り込んでくるのだが、フリー・ジャズのほうには向かわず、いわばビートルズ的な前傾姿勢を保つ、という意味なのだが、よけいにわからない云い方で申し訳ない(←自分で笑っている)。

なんというか、このあたりの曲は、アート・アンサンブル・オヴ・シカゴ的な意味でアヴァンギャルドではなく、ビートルズのRainやTomorrow Never KnowsやA Day in the Life、ジミ・ヘンドリクスのIf Six Was Nine的にサイケデリックしているのだ。

当時、そんな風に意識して聴いていたわけではないが、そういうニオイは嗅ぎ分けるもので、アート・アンサンブル・オヴ・シカゴには反応せず、ゲーリー・バートン・カルテットにはおおいに反応して、コリエルが抜けたあとの盤まで買い、71年の来日の時は、学校を早めに抜けて、制服のまま日比谷公会堂に行った(早すぎて先頭に並んでしまった)。

フリー・ジャズのコンボではないので、ふつうにテーマとコードのある曲のほうが多いのだが、やはりプレイ・スタイルの面で、時代を反映してサイケデリックな味つけがされている。ラリー・コリエルはそのためにゲーリー・バートンに招かれたのだと思う。つぎの曲がその典型。

The Gary Burton Quartet - Good Citizen Swallow (HQ Audio)


1:39あたりからコリエルのギターが入ってくるが、いきなりハウっているところが、やはりあの時代の4ビートから云えばまったくの異端。スティーヴ・スワロウのベースのための曲なので、コリエルのソロは短く切り上げられ、あとはエンディング直前の、たぶんヴォリューム・コントロールでアタックを消した、テープ逆回転風の音をチラッと入れてくることで、サイケデリック味を加えている。

Revolver、Sgt. Pepperと、ビートルズも2枚つづけて最後にサイケデリックな曲を持ってきてアルバムを終えていたが、Dusterにつづき、このLofty Fake Anagramでも、ゲーリー・バートンはビートルズと同じくテープ・ループを使ったアヴァンギャルドなコラージュでアルバムを終えている。

The Gary Burton Quartet - General Mojo Cuts Up (HQ Audio)


コンポーザー・クレジットはスティーヴ・スワロウとなっている。おそらく、スワロウ作のGeneral Mojo's Well-Laid Plan(Duster収録。前回とりあげた)のテープをもとにコラージュをつくったので、こちらもスワロウ作とされたのだろう。

じっさいには、モジョ将軍のテープ・コラージュだけでなく、さらに無調のインプロヴを録音し、もろもろをつなぎ合わせたのだろうと思う。日常、楽しんで聴くような曲ではないが、たとえば、フィルム・ノワールやアクション映画に使われたら、効果を上げそうな出来である。

まだ2枚しか聴いていないが、さらにこの項を次回へと延長する。なんだか、最低でもあと2回はかかりそうな……。



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The Gary Burton Quartet - Duster
ダスター


The Gary Burton Quartet - Lofty Fake Anagram/A Genuine Tong Funeral
Lofty Fake Anagram/A Genuine Tong Funeral
by songsf4s | 2016-10-07 07:07 | 60年代