先日は、次回からサード・アルバムへ、と書いたのだが、ハンブルクのスター・クラブでのライヴ盤も63年にドイツでリリースされたようなので、先にこちらを検討する。
それが終わったらサード・アルバムへと進むかというと、これがまた微妙で、ほかに同時期のBBCやスウェーデンのラジオ・ライヴも盤になっていて、収録曲を検討したうえで、そちらも取り上げるかどうか、後日決める。
スター・クラブのライヴ盤は、LPの時代とCDになってからでは、曲数が異なっているので、ここでは手元にあるCDヴァージョンの収録曲にしたがって見ていく。
いちおう、最初のLPヴァージョンの構成をDiscogsから以下に引き写した。
Sweets For My Sweet - The Searchers At The Star-Club Hamburg
Sweets For My Sweet
Ain't That Just Like Me?
Listen To Me
I Can Tell
Sick And Tired
Mashed Potatoes
I Sure Know A Lot About Love
Rosalie
Led In The Game
Hey, Joe
Always It's You
Hully Gully
What I'd Say
今回検討するCDヴァージョンは以下のような構成。
Complete Live at The Star-Club Hamburg
Sweets For My Sweet
Ain't That Just Like Me
Listen To Me
I Can Tell
Sick And Tired
Mashed Potatoes
I Sure Know a Lot About Love
Rosalie
Led in the Game
Hey Joe
Always It's You
Hully Gully
What'd I Say (uncutted long version)
Beautiful Dreamer
Sweet Nothin's
Shakin' All Over
Sweet Little Sixteen
Don't You Know
Maybelline
オリジナルLPが13曲なのに対して、CDのコンプリート・ヴァージョン21曲構成になっている。しかし、ライヴだから、すでに検討したスタジオ盤と重なる曲もあり、そういうものは省略する。
なお、盤のライナーには録音日時が記載されていないのだが、こういうものはレーベルと正規の契約を結ぶ以前のものと決まっているので、62年または63年前半の録音だろう。
◆ I Can Tell ◆◆
最初の3曲、Sweets For My Sweet、Ain't That Just Like Me、Listen To Meはすでにこのシリーズで取り上げているので、4曲目のI Can Tellへ。
作者はイーラス・ベイツ、すなわちボー・ディドリーで、オリジナルを歌ったのもディドリー自身。
The Searchers - I Can Tell (live)
Bo Diddley - I Can Tell
ほとんど別人28号と化していて、好みからいえば、スピードアップしたサーチャーズ盤がいい。ディドリーのオリジナルはそこらによくあるブルース崩しにしか思えない。
とはいえ、それもまた考えようで、オリジナルに隙があるとカヴァーは多くなる傾向がある。ボー・ディドリーの曲はそのパターンが多い、という偏見を持っている。
サーチャーズ盤のリード・ヴォーカルは、いつもの二人の声とは違うので、クリス・カーティスなのだろう。メロディックなものはトニー・ジャクソンとマイク:ペンダーに任せ、自分はロック系、ブルーズ系と思っていたのだろうか。
イギリスでは、サーチャーズより早く、または同時期にこのグループもカヴァーしている。
Johnny Kidd & The Pirates - I Can Tell
サーチャーズのカヴァーは、ボー・ディドリーのオリジナルより、こちらのほうにずっと近いので、ディドリー盤直接ではなく、ジョニー・キッド経由でカヴァーした可能性もあると思う。
ほかにゼファーズ(サーチャーズと同時代のイギリスのマイナー・グループ)のものもある。ゼファーズはほとんど盤がないにもかかわらず、クリップが上がっていたので、これも貼り付けておく。
The Zephyrs - I Can Tell
惜しかったねえ、ささやかなヒットがあれば、アルバムを出すぐらいのところには行けたのに、という感じだが、それにはヴォーカルの魅力が不足していたかもしれない。
サー・ヘンリー&ヒズ・バトラーズという60年代のデンマークのグループのものもちょっと面白いのだが(ギターとドラムがいい)、クリップはないし、サンプルをアップするほどのものでもないので、割愛。
I Can Tellなどという変哲もないタイトルなので、HDDに検索をかけると、同題異曲がずいぶんヒットしてしまう。レスリー・ゴア、ハニーカムズ、レパラータ&ザ・デルロンズ、ベイカー・ナイトなどのものは別の曲である。
それで通り過ぎられれば問題なかったのだが、以下の曲は引っかかった。同じ曲ではないのだが、共通点があって、まったく無関係の曲とはにわかに断定できない。
サンプル The Youngbloods - I Can Tell
こちらの作者はボー・ディドリーではなく、チャック・ウィリスで、作者自身のヴァージョンはクリップがあった。
Chuck Willis & The Sandmen - I Can Tell
曲の構造はブルーズだが、スタイルは典型的なドゥーワップである。
結局、これも古い歌がベースになっているということではないか。それぞれに変形して歌っていて、アダプトした人間が作者としてクレジットされる、といういつものパターンで、同題にしてかつ共通点がありながら、作者名が異なるヴァリエーションが存在するのだろうと考える。
◆ Sick and Tired ◆◆
サーチャーズの曲はシンプルなものが多いが、ライヴになるといよいよ3コードばかりになっていく。つぎはアール・パーマーが単純きわまりないといったファッツ・ドミノの、じつに単純な曲。
The Searchers - Sick and Tired (live at The Star Club, Hamburg)
Fats Domino - Sick and Tired
やりやすそうだからか、オブスキュアな曲のわりにはカヴァーが多い。それぞれに味があって面白いのだが、たとえば、このヴァージョンはどうだろうか。
The Righteous Brothers - Sick and Tired
フィレーズ時代の録音だが、アルバム・トラックなので、スペクターは無関係、ビル・メドリーのプロデュースだろう。トラックはストレートでそれほど面白くないが、デュエットでやるのもまたいいな、と感じさせる。
つぎはファット・ドミノと同じニューオーリンズ録音。4つの4分音符のあつかいが平等ではない、うねるグルーヴがファッツのオリジナルと共通する。
Chris Kenner - Sick and Tired
テンポが違いすぎて比較しにくいかもしれないが、もう一度、ニューオーリンズとは異なるストレートなグルーヴのヴァージョンを。
Ronnie Hawkins - Sick and Tired
わたしはどうもホークス(ロニー・ホーキンズのバンド)が苦手なのだが、これはタイムが安定していて、危なっかしい感じがなく、もしもこれがホークスのプレイなら、「どうもお見それしました」である。
サム・ブテーラや、エディー・コクランがプロデュースしたボブ・デントンのもの、ドゥエイン・オールマンがプレイしたロニー・ホーキンズのリメイクなど、それぞれに面白いのだが、クリップがないので割愛する。
また、グレイトフル・デッドもやっているが、うちにはWBからのデビュー前の、あらま、と困惑するようなヴァージョンしかないので、これもなかったことにする! ヴォーカルはピグペンで、結局、その後、レパートリーからはずされたのだろう。
まだ二曲だけだが、聴くべきヴァージョンは山ほどあり、調べに手間取った疑問もあり、長くなったので、以下は次回へと。
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サーチャーズ
Definitive Pye Collection
サーチャーズ
Meet the Searchers
サーチャーズ
Sugar & Spice
サーチャーズ
Sugar & Spice
サーチャーズ
Live at the Star-Club Hamburg
ボー・ディドリー
His Best : The Chess 50th Anniversary Collection (紙ジャケット)
ジョニー・キッド&ザ・パイレーツ
The Best of Johnny Kidd & The Pirates
ヤングブラッズ
The Youngbloods/Earth Music/Elephant Mountain
チャック・ウィリス
Chuck Willis Wails-Complete Recordings 1951-56
ファッツ・ドミノ
Vol. 3-Imperial Singles
ライチャウス・ブラザーズ
ふられた気持(紙ジャケット仕様)
ロニー・ホーキンズ
RONNIE ROCKS
クリス・ケナー
I Like It Like That (THE DEFINITIVE CHRIS KENNER COLLECTION 1956-1968)