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【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇5 1963年の5
 
サーチャーズの30周年記念3枚組というものに、そこそこ詳しいライナーノーツが付属しているのだが、この盤のディスコグラフィーでも、デビューLPはMeet the Searchers、セカンド・アルバムはSugra and Spiceとしている。

前回、allmusicのディスコグラフィーでは逆になっていると書いたが、ほかに逆順のディスコグラフィーは見つけられなかったので、多数決で、Meet the Searchersのほうをデビュー盤と確定する。いつものallmusicのデタラメにすぎないようだ。

◆ Listen to Me ◆◆
サーチャーズのセカンド・アルバム、Sugar and SpiceのA面5曲目は、バディー・ホリーのロッカ・バラッド。作者はホリー自身とプロデューサーのノーマン・ペティー。

The Searchers - Listen to Me


Buddy Holly - Listen to Me


バディー・ホリーの両輪のひとつはPeggy Sue、Not Fade Away、Rave Onに代表されるような、パワー・コードのロックンロールだが、もうひとつの車輪は、このListen to Meや、ビートルズがカヴァーしたWords of Love、映画『スタンド・バイ・ミー』でも使われたEverydayといった、シンプルなコードのロッカ・バラッドである。

バディー・ホリーの曲は、速いのも、遅いのも、おおむね3コードだし、歌いやすいし、ほんとうにパフォーマーに「やさしく」できていると思う。呵々。

サーチャーズは例によって、オリジナルよりすこしスピードアップしているが、これはテンポの変更がいい結果につながった例だろう。ちょうど、ビートルズのWords of Loveと同じぐらいの速さだ。

◆ The Unhappy Girls ◆◆
A面の最後におかれたThe Unhappy Girlsは、おそらくカール・パーキンズがオリジナル。作者はフレッド・バーチとマリジョン・ウィルキン、前者はカントリー系のソングライターで、代表作はトーマス・ウェイン&ザ・デルロンズやフリートウッズがヒットさせたTragedy。後者はナッシュヴィルで活動したシンガー兼ソングライター、といった程度のことしかわからなかった。

The Searchers - The Unhappy Girls


Carl Perkins - The Unhappy Girls


聴けばわかることを書いて恐縮だが、カール・パーキンズのヴァージョンは、ロカビリー・スタイルで、カントリーに半分重心がかかっている。そのあたりはBlue Swede Shoes以来、変わっていない。

サーチャーズ盤は、主としてトニー・ジャクソンのトレブルをきかせたギターのせいで、カール・パーキンズ盤よりロックンロール・ニュアンスが強くなっていて、これはこれで好ましい。

しかし、トニー・ジャクソンというプレイヤーも、ナメていると、期待以上のプレイをすることがあって、あらら、と思う。この曲なんか、わたしがジャクソンに期待するものの5割増しぐらいの出来である。呵々。

ほかに、ジェイ・チャンス&ザ・チャンセラーズという、ロンドンはソーホーのグループのヴァージョンがみつかった。

Jay Chance & The Chancellors - The Unhappy Girls


録音、リリース時期がはっきりしないのだが、50年代から活動していたそうだし、音からいっても60年代はじめのスタイル、サーチャーズとほぼ同時期のものと推測できる。こちらのヴァージョンのほうが先で、サーチャーズはチャンセラーズ経由でカヴァーした可能性もある。ドラムのタイムは不安定だが、ギター・プレイはなかなか魅力的。

余談。

カール・パーキンズのThe Unhappy Girlsを聴こうとしてフォルダーを開いたら、前回あつかったOne of These Daysをパーキンズも歌っていたことに気づいた。

このカール・パーキンズ・セッショノグラフィーによると、パーキンズのOne of These Daysは1964年10月8日の録音で、サーチャーズよりあと、したがって、重大なミスではなかったのだが。

Carl Perkins - One of These Days


このヴァージョンもなかなか好ましい。パーキンズのヴォーカル・レンディションとギターがいい。

◆ Ain't That Just Like Me ◆◆
B面トップのAin't That Just Like Meはコースターズがオリジナル、作者はキャディラックスのリード・シンガーで一時期コースターズにも在籍したアール・キャロル。プロデューサーは例によってジェリー・リーバー&マイク・ストーラー。

サーチャーズのクリップはライヴしかなかったので、スタジオ録音をサンプルにした。

サンプル The Searchers - Ain't That Just Like Me

The Coasters - Ain't That Just Like Me


たんに慣れているだけなのかもしれないが、コースターズよりもサーチャーズのテンポのほうがいいと感じる。

ライヴを見るとヴォーカルの分担がわかる。

The Searchers - Ain't That Just Like Me [The ES Show - 1964]


後半でシャウトしている聴き慣れない声は誰かと思ったら、ドラムのクリス・カーティスだった。いや、クリス・カーティスの声はサーチャーズ・ファンなら知っているが、それはあのハイ・ハーモニーであって、こんな低い音域で歌うのはめずらしい。トニー・ジャクソンもマイク・ペンダーも、シャウトはイヤだといって、カーティスが歌うことになったのかもしれない。

この曲はホリーズのヴァージョンがもっとも人口に膾炙しているのではないだろうか。パーロフォンからの彼らのデビュー・シングルだった。

The Hollies - (Ain't That) Just Like Me


オフィシャル・ホリーズ・ウェブサイトのディスコグラフィーによれば、彼らのAin't That Just Like Meは1963年3月1日リリースなので、サーチャーズより早いことになる。サーチャーズは、コースターズ盤ではなく、ホリーズ盤に依拠してテンポを決めた可能性が高いと思う。

ボビー・カムストックのカヴァーというのもあるが、このディスコグラフィーが正しければ、カムストック盤は1964年3月14日リリースで、ホリーズないしはサーチャーズのヴァージョンをベースにしているのではないだろうか。

Bobby Comstock - Ain't That Just Like Me



◆ Oh My Lover ◆◆
B面の2曲目はまたオブスキュアなもので、オリジナルはシフォーンズ、作者はシフォーンズの生みの親であり、彼女たちの大ヒット、He's So Fineを書いたロニー・マック(Memphisのヒットがあるギター・プレイヤーのロニー・マックとは別人。RonnieとLonnie)。

The Searchers - Oh My Lover


The Chiffons - Oh My Lover


この曲自体はまったく有名ではないが、シフォーンズはHe's So Fineの大ヒットがあり、イギリスの連中はみなガール・グループを聴いていたのだから、B面かアルバム・トラックとして知り、カヴァーしたのだと推測できる。

ロニー・マックはHe's So Fineのプロデュースをし、このシングルがチャートを上昇しはじめた時までは生きていた。彼の雇い主であったトークンズが急いでゴールド・ディスクを手配したが、出来上がった時には、マックはガンに斃れていたという。

ジョージ・ハリソンは後年、My Sweet LordはHe's So Fineの盗作であると、ロニー・マックの楽曲出版権をもつトークンズの会社に訴えられ、敗訴しているが、まあ、それほどまでに、あの時代のイギリスの連中はガール・グループをよく聴いていたのだ、と云える(苦しいw)。

ということで、サーチャーズはまたしても、人気のあるシンガーの非有名曲を選択し、他のバンドに「渋いじゃん」といわせようとしたのだと思う。あはは。


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by songsf4s | 2014-02-18 21:51 | ブリティシュ・インヴェイジョン