人気ブログランキング |
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇1 1963年の1
 
今回からしばらくのあいだ、というか、オン&オフでかなり長々と、「ブリティッシュ・ビート根問い」と題して、初期ブリティッシュ・ビート・グループがカヴァーした曲の戸籍調べをする。

正月いっぱいかかった、「大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー」というシリーズで、影響関係の毛糸のかたまりをそこそこ解きほぐせたように思う。だが、それはあくまでも中間結果、仮説を組み上げたにすぎなかった。

それを半歩進めて、「ブリティッシュ・ビート・グループがカヴァーしたのは、これこれの系統の曲が多い」と云うときに、統計的に依拠できる程度までは数字を確定したいと考え、くどい根問いをしようと思い立った。

すべての曲を集めたわけではないのだが、できるだけ省略せずに、彼らのカタログがどのような構成になっているかを検討すれば、なにか思いつくことがあるのではないか、という了簡のシリーズである。

まずは、カヴァー専門バンドと云いたくなるほど、カヴァー曲の選択とアレンジの上手さが特長だった、サーチャーズから取り掛かる。

◆ Sweets for My Sweet b/w It's All in Dream ◆◆
サーチャーズのことは概ねわかっているつもりだったのだが、いざ一曲一曲仔細に見ていくと、この曲はそもそもどこから出現したのか、と首をひねるものがずいぶんあった。

わかっていたのはヒットした曲ばかりで、B面やアルバム・トラックになると、本籍地がどこなのかさっぱり知れないものがかなりある。

イギリスはシングル曲がLPに収録されないことがしばしばあって、アルバム順というわけにはいかず、まずパイからのデビュー45。

イギリスではチャート・トッパーになったA面のSweets for My Sweetは、ドク・ポーマスとモート・シューマン作、オリジナルはドリフターズで、そちらもアメリカでヒットしている。

The Searchers - Sweets for My Sweet


The Drifters - Sweets for My Sweet


63年には、いわゆる「英国の侵略」はまだはじまっていないので、サーチャーズのカヴァーは、純粋に「ローカル盤」という意図だったのだろう。

サーチャーズの魅力の過半は彼らの声のミックスにあり、このデビュー盤でも、純粋なメイジャー曲であるにもかかわらず、彼らの特質である、ほどのよいメランコリーが加えられている。

ドリフターズのオリジナルは、彼らのトレイドマークになっていたラテン・パーカッションによる飾りつけがにぎやかで、ヒットも当然と感じる出来。残念ながら手元の盤にはプロデューサー・クレジットがない。いちおう検索したが、とりあえず判明しなかった。

ドリフターズのスタッフはみな白人で、こういうタイプのグループやシンガーというのが50年代から60年代にかけてはずいぶんあり、単純にR&Bないしはドゥーワップと色分けするのはためらわれる。初期ブリティッシュ・ビートに関係する曲にはこういうタイプがかなりあるので、いずれ数が揃ったところで再考するつもりだ。

B面のIt's All Been a Dreamの作者はChris Crummyとなっているので、検索したら、クリス・カーティス、すなわちサーチャーズのドラマーの別名とわかった。

カヴァー曲ではないので、この記事の対象ではないのだが、クリス・カーティスがデビュー盤のためにこういう曲を書いて、すでにこのようなヴォーカル・アレンジをし、スタイルを確立していたことは非常に興味深いので、いちおうクリップを貼り付ける。

The Searchers - It's All Been a Dream


◆ Alright ◆◆
つづいてデビューLP、Meet The Searchersへ。

アルバム・オープナーはすでに見たSweets for My Sweetなので飛ばして、2曲目のAlrightへ。ライター・クレジットは、Ross, Vanadoreとなっている。

これはJerry RossとLester Vanadoreのことで、前者はもちろんスパンキー&アワー・ギャングやカウシルズのプロデューサー。

後者は経歴不明で、Discogsには、Alrightのほかに数曲のクレジットがあり、どうやらアメリカのカントリー系のソングライター(あるいはパブリッシャーも兼業?)らしい。

Alright(またはAll Right)をやったのは、サーチャーズのほかに、スプートニクス、ゲス・フー、フレッシュトーンズとなっていて(ほかにペブルズという日本のグループもあるが)、後二者は明らかにサーチャーズよりあとの録音だから、オリジナルの可能性のあるのはスプートニクスのみ。

ではあるものの、山勘で云うと、その可能性は低い。アメリカのシンガーによるAlrightは発見できなかったが、ヴァナドーアの本籍地であるカントリーないしはロカビリー・シンガーのヴァージョンがあるのではないかという気がする。情報をお持ちの方はコメント欄かツイッターでお知らせいただけるとありがたい。

The Searchers - Alright


スプートニクスのヴァージョンはカヴァーだと思うが、いちおうサンプルを。

サンプル The Spootnicks - Alright

◆ Love Potion No. 9 ◆◆
これはイギリスではシングル・カットされず、65年になってアメリカでリリースされて、ビルボード・チャート3位までいく大ヒットとなった。

その余波は日本にまでおよび、日米において、サーチャーズの代表作とみなされている。わたし自身、子供のころにラジオで聴いた記憶のあるサーチャーズのヒットはこの曲のみ。

作者はアトランティック・レコードのドリフターズやコースターズをスターに押し上げた、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラー、オリジナルはやはりアトランティックのクローヴァーズ。

クローヴァーズの盤ではプロデューサー・クレジットは発見できなかったが、There's a Riot Goin' On! The Rock'N'Roll Classics of Lieber and Stollerというライノの編集盤では、この曲はプローデュースもリーバー&ストーラーとされている。

The Searchers - Love Potion No. 9


The Clovers - Love Potion No. 9


こちらが色眼鏡をかけて見るせいなのか、歌詞はかなり濃厚にブードゥーの雰囲気があり、クローヴァーズのヴォーカル・レンディションもそれを前提にした、やや粘っこいものに感じる。

アップライト・ベースのオクターヴ上に、ギターで同じラインをかぶせる、クローヴァーズ盤におけるリーバー&ストーラーの手法は興味深い。これは60年代にハリウッドでしばしば利用される。リーバー&ストーラーに弟子入りしたフィル・スペクターによって、ハリウッドにもたらされたのかもしれない。

サーチャーズ盤は、例によって彼らの特質が明瞭にあらわれている。クローヴァーズ盤にあった、ややダーティーな味わいはきれいに洗濯され、ユーモラスな側面にアクセントのおかれた、軽い仕上がりだ。それがヒットの要因だろう。

サーチャーズ以降のヴァージョンをここにいちいち書くことはしないが、わたしの考えでは、そうしたカヴァーの大部分は、クローヴァーズではなく、サーチャーズ盤をベースにしている。クローヴァーズのオリジナルをはるかにしのぐ大ヒットとなり、サーチャーズの曲として記憶されたのだから、当然のことだが。

◆ Farmer John ◆◆
つづいてデビュー・アルバムの4曲目。作者はドン・“シュガーケイン”・ハリスとデューイ・テリー、すなわち、ドン&デューイの名でシンギング・デュオとして活動した二人であり、オリジナル録音も彼ら自身の歌。プロデューサーは木管プレイヤーのハロルド・バティスト。

The Searchers - Farmer John


Don & Dewey - Famer John

音がよくないのだが、これしか見当たらなかったのであしからず。手元にあるスペシャルティー・レコードのボックスに収録されたヴァージョンはまともな録音である。

ドン&デューイはR&Bではなくロックンロール・デュオと呼ばれることが多いようだが、やはり歌い方はブラック・シンガーのスタイルだし、ドラムのアール・パーマーを中心としたプレイヤーたちも、R&Bスタイルでやっている。

サーチャーズはこの曲をシングル・カットせず、アメリカでは以下のヴァージョンがヒットすることになった。

The Premieres - Farmer John


チャン・ロメロのHippy Hippy Shakeと並び、LAチカーノ・ロックの編集盤にはかならずといっていいほど収録されている曲で、このディック・クラークのアメリカン・バンド・スタンドの映像を見ると、はっきり彼らがチカーノであることがわかる。

しかし、これは1964年のリリース、サーチャーズよりあとの録音と考えて大丈夫だろう。

先は長いので、今回はここまで。これまでの曲を見ても、「ある傾向」を読み取れるのだが、その点もまた、もっと先にいってから、ゆっくり検討する。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう

The Searchers
Definitive Pye Collection
Definitive Pye Collection

The Searchers
Meet the Searchers
Meet the Searchers

The Drifters
5CD ORIGINAL ALBUM SERIES BOX SET
5CD ORIGINAL ALBUM SERIES BOX SET

Jerry Leiber & Mike Stoller
(The Clovers - Love Potion No. 9を収録)
The Songs Of Leiber & Stoller [Import]
The Songs Of Leiber & Stoller [Import]
by songsf4s | 2014-02-05 23:05 | ブリティシュ・インヴェイジョン