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『俺は待ってるぜ』さらに補足 高村倉太郎撮影監督の回想 その1
 
せいぜいひと月ぐらいと思っていた更新中止が長引いて、定期的にチェックされているお客さんには申し訳ないことと恐縮しております。

細部をすっ飛ばして、できるだけ簡単に書くと、以下のような事情です。

悪法が成立した→MP3サンプルの上げ下げはこの法律に抵触する恐れがある→MP3は使いにくくなった→ユーチューブにクリップとしてあげるのが目下のところもっとも簡便な迂回策である→ちょっと試したが、PCが不調で落ちやすく、flv作成ソフトもちょうどいいものが見あたらない→面倒になった。

結局、抜本的な解決策のひとつは、PCのはらわたの換装なのですが、昔と違ってシステムを組むのも面倒になってしまい、先送りにしています。ツイッターとメールぐらいだったら、いまのままでも十分ですから。

上記の法律が施行されたので、記事中においているMP3サンプルのストリーミングは中止しました。記事を書き換えるのは煩瑣なので、リンクは書き換えないまま、リンク先にアクセスできないように処置しました。

ストリーミングしかできない仕様ならいいのですが、どこも落とす選択肢があるので、リンクを削除するか、リンク先をアクセス不能にするか、ファイルないしはアカウントを削除するぐらいしか打つ手がなくなってしまったしだいです。ご寛恕を。

◆ 松竹から日活へ ◆◆
ということで、本格的な再開はCPUを交換して後のことになるでしょう。今回は、手もとに『撮影監督 高村倉太郎』という本があるうちに、ちょっと補足を書いておくだけの、一時的な復活です。

高村倉太郎キャメラマンは、日活が製作を再開したときに各社から引き抜かれたスタッフのひとりで、鈴木清太郎、すなわち鈴木清順同様、松竹にいたのを、かつて松竹に在籍した西河克己(吉永小百合と浜田光夫の青春映画群で知られる)にリクルートされたそうです。

いま撮影監督としての高村倉太郎の代表作をあげるなら、『幕末太陽傳』『州崎パラダイス 赤信号』、『南国土佐を後にして』も含む渡り鳥シリーズ、『紅の流れ星』あたりが妥当でしょう。

鈴木清順は、監督昇進と給料三倍という条件で日活に移ったと語っていました。高村倉太郎はすでに助手ではなく、キャメラマンに昇格済みだったからだと推測されますが、給料は倍額という約束だったそうです。

しかし、問題は金よりも、勤続年数や先輩後輩の縛りがきつくないことのほうが大きな魅力だったと高村倉太郎は回想しています。じっさい、日活関係者はしばしばその点に言及しています。

松竹に比較しての話でしょうが、日活首脳陣は、現場のやり方にあまり口を挟まなかったと高村倉太郎は証言しています。となると、鈴木清順の馘首の事情について、また想像をたくましくしそうになりますが。

◆ 『俺は待ってるぜ』の撮影 ◆◆
石原裕次郎の代表作、それも初期のものではあるし、フォトジェニックな側面でもすぐれた映画だったので、『撮影監督高村倉太郎』でも、『俺は待ってるぜ』は詳細にコメントされています。

本の記述の順序は無視して、シーン順に見ていきます。なによりもまず、タイトルが気になります。

『俺は待ってるぜ』ダイジェスト


このクリップには肝心の部分が出てきませんが、タイトルのあいだ、雨粒が落ちて、水溜まりが揺れています。雨がやんで、水溜まりの表面が静かになると、「監督 蔵原惟繕」と出ます。

レストラン「リーフ」とその前を行く機関車からしてすでにきわめてスタイリッシュな絵になっていますが、この水溜まりの水面による雨降りと雨上がりの表現は、気取りの駄目押しとでもいったところで、立ち上がり、第一ラウンド2分57秒に繰り出された、別れ際の鋭いストレートに感じます。

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このあと、リーフの電飾が消え、ダスターコートを羽織った石原裕次郎が外に出てきて、ドアに鍵をかけ、封書を投函した帰り、山下公園の岸壁に佇む、コートにレイン・ハットの北原三枝に目をとめ、声をかけます。

高村倉太郎の回想によると、当初、蔵原監督は、このシークェンス全体を雨中の出来事にしようと考えていたそうです。

しかし、高村キャメラマンは、それはダメだと反対しました。雨が降っていると、二人の主役は傘を差して登場することになる。最初から傘の中はダメ、観客に顔を見せなければいけない、と蔵原監督を説得し、あの水溜まりによる雨降りと雨上がりの表現を代案としたのだそうです。

これは、高村倉太郎が松竹で訓練された結果なのでしょう。たとえば松竹では、人物をシルエットにするのは御法度だったそうです。夜の場面でも、きちんと顔にライトを当て、観客に表情を見せるようにと首脳陣が注文をつけたのだとか。

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いえ、高村倉太郎は、シルエットをやりたかったそうです。だから、松竹首脳陣ほど厳密なコードに縛られていたわけではありません。

それでもなお、タイトルが終わった、さあ主役が登場する、という場面でスターの顔が見えないというのは、高村キャメラマンとしては許容できない逸脱表現だったということです。結果から見て、高村案は正鵠を得たものだったと思います。

そのシルエットですが、『俺は待ってるぜ』でじっさいに使われています。以前、「蔵原惟繕監督、佐藤勝音楽監督『俺は待ってるぜ』(日活) その2」という記事でそのショットをキャプチャーしましたが、ここに再度貼り付けます。

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明確にはわかりませんが、たぶん、山下公園の海に向かって右手、倉庫が並ぶ岸壁で、北西にレンズを向けて撮影されたと思うのですが、問題があります。横浜港で、西陽が水面で反射してキラキラ見える場所というのは、ごくかぎられるのではないか、ということです。ひょっとしたら、朝陽だったのかもしれません。

次回も高村倉太郎の回想を書きます。


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俺は待ってるぜ [DVD]
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書籍
撮影監督高村倉太郎
撮影監督高村倉太郎
by songsf4s | 2012-11-05 22:22 | 映画