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東宝映画のOST2種―『白昼の襲撃』(日野皓正)と『さらばモスクワ愚連隊』(八木正生&黛敏郎)
 
折にふれてご紹介している畏友、三河の侍大将Oさんに、こういうのはどうですかと聴かせていただいたサウンドトラック盤で、ささやかな記憶がよみがえりました。

一枚は堀川弘通監督、加山雄三主演、黛敏郎および八木正生音楽監督『さらばモスクワ愚連隊』(東宝、1968年)です。

f0147840_2315757.jpg原作は五木寛之の同題短編小説で、単行本上梓の直後に読んだ記憶があります。理由は単純、ジャズをあつかった小説、という当時としてはきわめてめずらしいものだったからです。

あとから考えれば、河野典生のほうが先鞭をつけていたのかもしれませんが、当時、わたしはまだ中学生、読書量も知れたもの、作家の知識もありませんでした(それで思いだした。近々、河野典生原作の映画を取り上げたいと思っている)。

ジャズに関心を持ったのは中学三年からの三年間ほどで、以後はホームグラウンドに戻って、ジャズを聴くことはあまり多くありません。『さらばモスクワ愚連隊』は、そのプラハの春のように短かった「わたしのジャズの季節」に小説を読み、映画を見ました。

いま、キャストを見ていて、ドラマーの富樫雅彦が出演していたことに気づきました。すっかり忘れていましたが、ガキのころからドラム・クレイジー、当時、日本のドラマーでは富樫雅彦をとくに気にしていて、チャンスがあれば(たとえば、友だちのもっている盤に富樫雅彦のクレジットを見つけるとか)プレイを聴くようにしていました。したがって、この映画を見た小さな動機のひとつは、富樫雅彦の出演だったにちがいありません。

まずは音を聴かないと話になりません。ひとつだけ見つかったこの映画のクリップを貼りつけます。ありがたいことに、富樫雅彦の出演シーンです。音に動きをシンクさせていないのは残念ですが。

八木正生「Bフラットのブルース」(映画『さらばモスクワ愚連隊』より)


なかなかいいプレイで、脊椎損傷で下半身不随になってしまったのは、ほんとうに残念なことだと感じます(Wikiでも「事故」としているし、手元に資料がないので、詳しく書くことは避けるが、当時は「事件」として報道された。刃物で刺されたと記憶している)。

『さらばモスクワ愚連隊』という映画そのものは、すでに記憶から脱落していて、期待したほどは面白くなかった、という「感触」だけが残っています。

加山雄三は元ピアニストのプロモーターで、ジャズを通じて日ソ交流を試みて、政治的な理由から挫折する、といったようなプロットだったと記憶しています。

盤にはクレジットがないのですが、当時の雑誌記事では、加山雄三がピアノをプレイするシーンで流れたのは菊地雅章のプレイだと報道されていました。そのプレスコに、加山雄三がまじめに動きをシンクさせていたことが、この映画でもっとも強く印象に残ったことです。

いまでもそうでしょうが、当時は楽器をプレイできる主演クラスの俳優というのは見あたらなくて、そういう場面は、子どもにとってはフラストレーションばかりを感じるものでした。だから、加山雄三の本気の「シンク」に強い感銘を受けました。

一般映画でもそうですが、音楽がテーマになった映画は、これくらい本気でやってほしいものです。さりながら、俳優がまじめに楽器をプレイする演技をしたものといって、あとは『アマデウス』ぐらいしか思いつきません。

上掲のクリップのようなタイプの音のほうがわたしは好ましく感じますが、当時からすでに富樫雅彦はフリー・フォームのほうに傾斜していて、そういう雰囲気がいくぶんかあらわれたトラックがあるので、それをサンプルにします。

サンプル 八木正生&黛敏郎「モスクワの別れ」

黛敏郎はオーケストラ曲とクラシック・ピアノの曲、八木正生はコンボの曲とジャズ・ピアノの曲、というような役割分担だろうと思うのですが、この曲はジャズ・コンボにオーケストラをかぶせてあって、ここまでくると、どちらの仕事ともつきません。

すべてのパーソネルがわかっているわけではありませんが、いちおうコピーしておきます。

ピアノ……八木正生
ピアノ……宮沢明子
ドラム……富樫雅彦
トランペット……日野皓正
トロンポーン……東本安博
クラリネット……宮沢昭
ギター……沢田駿吾

ピアノが二人いますが、ジャズ系の曲は八木正生自身、宮沢明子がプレイしたのは、クラシック・ピアノのトラックでしょう。一曲だけ、ロック系のトラックがありますが、そちらは八木正生や富樫雅彦のプレイではなく、加山雄三周辺のバンドによるものではないでしょうか(寺内タケシとブルージーンズ、ワイルド・ワンズ、ランチャーズなど)。

もう一曲、ストレートな4ビートのトラックをサンプルにします。これまたけっこうなドラミングです。

サンプル 八木正夫「マイルス・ジョンソン・クインテットのコンサート・シーン」

わたしはすぐにジャズへの関心を失ってしまったので、復帰後の富樫雅彦のプレイというのを聴いたことがありませんでした。見つかったクリップはほとんどフリーフォームで、あまり趣味ではないのですが、ひとつ、ストレートなもの、しかも、プレイぶりが見られるものがありました。

Masahiko Togashi & J.J.Spirits - Memories


イントネーション、アクセントの付け方というのは、あまり変わらないもののようです。強いアクセントは若いころと同じようなイントネーションに聞こえます。

もうひとつ、富樫雅彦のクリップをおきます。ドン・チェリーおよびチャーリー・ヘイデンと共演したアルバムから。フリー・フォームなのですが、ドラム好きにはなかなか面白い曲です。

Masahiko Togashi, Don Cherry & Charlie Haden - June


音楽形式は異なっていても、ドラマーの本性というのは、かならずあらわれるものだなあ、と感心しました。タイムも変化しないものですが、イントネーションもまた、ドラマーの本然からわきあがってくるエモーションが、耳に聞こえる形としてあらわされたものなのでしょう。

タイトルに書いたとおり、もう一枚『白昼の襲撃』のOSTについても書くつもりだったのですが、まじめに富樫雅彦のプレイを聴いていたら疲労困憊してしまったので、そちらのほうは次回送りとさせていただきます。


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黛敏郎および八木正生(CD)
さらばモスクワ愚連隊(オリジナル・サウンドトラック)
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日野皓正クインテット(CD)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)
by songsf4s | 2012-01-15 23:56 | 映画・TV音楽