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ロバート・ゼメキス監督『抱きしめたい』に描かれた1964年のビートル・クレイズ その1
 
ビートルズが来日したとき、チケットは郵便で申し込み、抽選という仕組みだったと記憶しています。

わたしは中学一年で、たとえ抽選にあたったとしても、夜間の外出はできない環境にいました。だから悔しくないかというと、そんなことはなく、やはり行きたかったと思います。

ロバート・ゼメキスの処女作『抱きしめたい』(I Want to Hold Your Hand, 1978)は、時期と場所はちがうものの、やはり、なにがなんでもビートルズを見たい女の子たちの奮闘を描いた物語で、ビートルズ・ファンにはたまらなく可笑しく、たまらなく胸を締めつけられる映画でした。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で嘖嘖たる名声を得る以前から、ロバート・ゼメキスは冴えた演出を見せていました(例のUCLA映画学科の出身ではなかったか?)。もうオープニングから、1ショット、1ショットがツボをついてくるのです。

前回の「胸の熱くなるビートルズ――Live in Washington D.C., Feb 1964」という記事でご紹介したように、1964年2月のビートルズの初訪米は、主としてエド・サリヴァン・ショウに出演するためでした。

映画は、アヴァン・タイトルで、明日はその当日、ショウの準備が進むエド・サリヴァン劇場からはじまります。

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スタッフ・ミーティングにあらわれたエド・サリヴァンが、じつによくて、いきなり笑えます。

「きみたちが、リヴァプールからやってきたこのビートルズを名乗る若者たちは、いったい何者なんだといぶかっているのは承知している」

とエド・サリヴァンは云います。

「数年前、われわれはエルヴィス・プレスリーと名乗る若い歌い手をこのステージに迎えた。彼は、君たちの何人かは覚えているはずだが、彼を見た、このスタジオの若者たちは、ちょっとした大騒ぎを巻き起こした」

「さて、明日の夜、同じこのステージに、われわれは四人分のエルヴィスを迎えることになる!」

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「よって、諸君には、途方もない絶叫、ヒステリー、過呼吸、失神、卒倒、感情激発、ひきつけ、さらには自殺企図といったものを覚悟してほしい。そんなのは当たり前のことなのだ」

「明晩、アメリカとカナダ合わせて9000万人の視聴者にライヴで番組を届ける。だから、断じて何者にもわれわれの『リアリー・ビッグ・シュー』を邪魔させてはならない」

といった瞬間、I Want to Hold Your Handのイントロが流れ、ビートルズのアメリカ到着のニュース・リールへと画面は切り替わります。この間のよさ! これで一気に乗らないビートルズ・ファンはいないでしょう。

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そして、そのI Want to Hold Your Handのダイナミック・レンジが狭くなると、レコード・ショップの店内に流れているのだとわかります。このあたりの処理もじつにきれいで、うまいなあ、と思います。

ここで登場人物たちが紹介されます。

ポール命、という熱烈なビートルズ・ファンのロージー(ウェンディー・ジョー・スパーバー)、明日には結婚するのだからビートルズどころじゃないというパム(ナンシー・アレン)、レコード・ショップ経営者の娘なのに、「ビートルズをボイコットしよう」などというジャニス(スーザン・ケンダル・ニューマン)、写真家志望でなにがなんでもビートルズを撮ると決意しているグレイス(テレサ・サルダーナ)。

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ニュージャージーに住むこの四人が、それぞれに思いを抱えて、ニューヨークへと、エド・サリヴァン・ショウへと突進する冒険物語がロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』です。

ここからはクリップがあります。

『抱きしめたい』パート2


ホテルにもぐりこむのにリムジンが必要だ、あそこにいるラリー(マーク・マクルーア)は葬儀屋の息子だ、リムジンをいっぱいもっている、というわけで、哀れ、気弱なラリーはたぶらかされて、父親のリムジンを持ち出して、馬鹿騒ぎの片棒をかつぐハメになります。

ロージーはずっとラジオをきいていて、ときおり、クイズ(エド・サリヴァン・ショウのチケットがあたる)があるたびに、手近な電話に突進するというのは、繰り返しギャグになります。このへんの処理もルーキーとは思えない堂々たるものです。

上掲のクリップの最後、朝になって車がNYに着き、Twist and Shoutが流れる、ヒロインたちが、ホテルを見つける、群衆と警官隊のショット、Twist and Shoutが大きくなる、この流れのうまいこと!

ゼメキス自身、相当なビートルズ・ファンなのでしょう。そうじゃなければ、いくら演出の才能があっても、ここまでみごとにツボを押さえられるとは思えません。

記憶を喚起しておきますが、このとき、アメリカでヒットしていたのはI Want to Hold Your Hand、イギリスのカタログで考えると、With the Beatles、つまりセカンド・アルバムまでしかありません。

その制約のなかで、ロバート・ゼメキスは、うまく曲を並べたと思います(音楽監督のクレジットはないので、ゼメキス自身が選曲したと想像される)。

『抱きしめたい』パート3


リムジン乗りつけ作戦は失敗しますが、少女たちのうち三人は、混乱に乗じてホテル潜入に成功します。しかし、単純な作戦はみな失敗し、彼女らは追い払われます。

今日、結婚するというパムだけは、指輪を落として探しているうちに置いていかれ、これが幸いすることになります。

『抱きしめたい』パート4


ファブ4の後ろ姿を見ただけで、「タッパーウェアとか現実的なものを買わなければいけない身」のはずのパムが、失神しそうになるところが秀抜です。

ビートルズ訪米で重要な役割を果たしたDJ、マリー・ザ・Kのインタヴューで、トニーが「フォー・シーズンズはどうなったんだよ」と抗議するのも笑えます。大丈夫、フォー・シーズンズはビートルズ旋風に耐えました。

ちょっとした成り行きで、ビートルズの部屋に潜入することになったパムは……そのあたりはまた次回ということに。


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by songsf4s | 2011-12-08 23:07 | 映画