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胸の熱くなるビートルズ――Live in Washington D.C., Feb 1964
 
昔、まだLDだった時代に、The Beatles First U.S. Visitというものを買いました。ビートルズの最初のアメリカツアーの記録で、よくできたドキュメンタリーでした。

最初のツアーといっても、最大の目的はエド・サリヴァン・ショウ出演で、ほかには、ワシントンでのライヴが予定されていたことぐらいだったと思います。

最近はすっかり無精になってしまい、そのへんのことは調べて確認せずに先に進みます。

このドキュメンタリーに、ワシントンでのライヴ・フッティジが出てくるのですが、それを見て、うわあ、と思いました。いや、いろいろな意味で「うわあ」なので、簡単に説明はできません。

幸い、その後、このワシントン・コロシアムのライヴを丸ごと収めたパッケージがリリースされたので、それを見ながら説明します。

The Beatles - Washington D.C - Roll Over Beethoven


いきなりジョージの歌で来るとは思いませんでした。当時にあっては当然のことですが、見たとおり、モニター・スピーカーはありません。こんなワーキャー・カオスでは、自分の声も、自分の楽器も聞こえないでしょう。

それでいて、ジョージは向かって左のマイクが駄目だとすぐに判断し、隣のマイクに移動しています。慣れというのはすごいものです!

ここがどれほどひどい環境だったかということを知っていただくために、この直前の、ステージに上がったときのショットをご覧いただきたいと思います。

The Beatles - Washington D.C オープニング


中華料理じゃないんだから、ふつう、ドラマーは回転したくないと思いますよ。これは武道館のようなタイプの会場で、反対側にも向けるための仕掛けなのですが、リンゴはどう感じたでしょうかねえ。慣れたもの、かもしれませんが。

そんなことは気にならなかったのか、それとも、腹を立てて、それがアドレナリンを促進したのか、このライヴは、まずリンゴが爆発して、それが誘爆を起こしていく、という雰囲気です。

The Beatles - Washington D.C - From Me to You


古今亭志ん生が、本気でやるのはせいぜい年に一回だ、毎日本気でやっていたら身が持たない、といっていましたが、ビートルズも、いつもライヴはテキトーでした。こんなに本気なのは、記録されたものでは、これだけじゃないでしょうか。

The Beatles - Washington D.C - I Saw Her Standing There


史上最高のI Saw Her Standing Thereでしょう、これは。

つぎの曲もちょっと驚きました。

The Beatles - Washington D.C - This Boy


この環境で3パート・ハーモニーをやるんだから、大胆というか、慣れは怖ろしいというか、呆れます。さすがにポールが目立つところではずしていますが、無理もありませんよ。

すでにツイッターに書いてしまいましたが、つぎの曲もちょっと驚きました。

The Beatles - Washington D.C - All My Loving


なにに驚いたかというと、ギター・ブレイクのあとのヴァースでハーモニーをつけていたのが、ジョンではなく、ジョージだったということです。半世紀近く聴いていて、いまさらこんなことに気づくとは思いませんでした。

ふつうなら、どう考えてもジョンがハーモニーをつけるところなのに、なぜジョージが歌ったのか?

われわれの世代の多くが経験していますが、この曲のジョン・レノンのリズム・ギターはかなりタフなプレイです。三連のストロークですから、まじめにやらないとミスをします。

だから、ジョンはギターに集中したくて、この部分のハーモニーをジョージにやらせたのだと思います。ジョージは軽くカッティングしているだけですから。

この曲のスタジオ録音はどうなっているかというと、改めて確認したら、やはりジョージの声に聞こえました。先入観というのはおそるべきもので、何十年も知らずにいました!

つぎのクリップの冒頭のショットには、なんだか妙に胸が熱くなりました。

The Beatles - Washington D.C - She Loves You


She Loves Youだとわかった瞬間、客席がドーンと揺れます。そういう気分だろうなあ、と思いました。もうこうなったら、ピッチもタイムあるものか、ガッツだけだ、と思います。

このライヴのすごさはいろいろな面で感じるのですが、結局、客の聴きたい気分、見たい気分と、ビートルズのやりたい気分が、ものすごく高いところで、ガチッと噛み合って、合金化してしまった、ということなのだと思います。ビートルズとファンにとって、これほど幸せな日は、ほかにあったかどうか。

The Beatles - Washington D.C - I Want to Hold Your Hand


不思議です。数千人のキャパシティーのある箱でしょうに、ビートルズはまるで、小さなクラブで、なじみの仲間たちを前にしたような、俺たちとお前ら、といったムードでやっています。

いや、むろん、このステージに上がる前に、さすがに彼らも気合いを入れたはずです。この前々日ぐらいでしょうか、エド・サリヴァン・ショウ出演は、記録的な視聴率をとりました。

つぎはコンサートで成功すれば、「アメリカでの成功」は盤石になります。ここ一番の大勝負だと、彼らは意識してステージにあがったにちがいありません。

にもかかわらず、ただテンションを上げただけで、ファブ4はリラックスして、なおかつ、ホットにやっています。

レコーディングでも感じますが、ここが勝負の分かれ目、という大一番になると、ほんとうにビートルズは強かったなあ、とまたまた感心しました。とくに、ジョン・レノンの強さが際だっていると思いますがね。

キリがないので、つぎの曲でおしまいにします。この時期のジョン・レノンを象徴する一曲。

The Beatles - Washington D.C - Twist and Shout


I Want to Hold Your Handはちょっとテンションが下がった感じでしたが、 Twist and Shoutはなかなかけっこうな出来です。

わたしは、かならずしも熱狂というものに肯定的ではないのですが、1964年のビートルズに対するアメリカの子どもたちの熱狂は、無理もないなあ、と思います。

ロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』という映画を思いだしました。エド・サリヴァン・ショウに出演するビートルズをなんとしても見ようと決意した女の子たちの大騒動を描いた、ゼメキスの処女作です。次回は、DVDを見つけて、その映画のことでも書こうかと思います。


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by songsf4s | 2011-12-07 23:49 | 60年代