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浅丘ルリ子の夜はふけて その2 共演・石原裕次郎篇
 
本題に入る前に、前回の記事のときには発見できなかったのですが、今日、たまたま見かけたので、『ギターを持った渡り鳥』のクリップを補足しておきます。

斉藤武市監督『ギターを持った渡り鳥』


ツイッターに書いてしまったのですが、このヴァージョンはやはりなかなかけっこうだったと思います。オーケストラの人数もこのときがいちばん多かったのかもしれません。

しかし、ふと思いましたが、黒澤明『用心棒』のオープニングに似ているような気がしてきました。『ギターを持った渡り鳥』は1959年、『用心棒』は1961年です。両者とも、なにか西部劇でも下敷きにしたのでしょうかね。

前回をお読みの方の大部分が今回のテーマを予想されたでしょうが、ナックル・ボールはなし、素直に石原裕次郎篇です。

裕次郎=ルリ子といえば、いわゆる「ムード・アクション」、ムード・アクションといえば『赤いハンカチ』と、まあ、昔からいわれていることを繰り返しておきます。自分の好みをいっているだけ、でもありますが。

無知にして裕次郎=ルリ子のスタートを知りませんが、強く印象に残ったのはこの映画。アクションはあまりないのですが、でもプリ・ムード・アクションといえるでしょう。

蔵原惟繕監督『銀座の恋の物語』


主題歌が有名になりすぎて、映画の位置が相対的に低くなってしまったような気がするのですが、これはいい映画です。子どものときも面白いと思ったし、テレビで見て、さらに裕次郎没後のニュープリントでの上映でも見て、いつ見ても満足しました。

夜明けの銀座を、人力車を引いて疾駆する裕次郎、というオープニングからしてけっこうでしたし、このあと、彼がジェリー藤尾と住んでいるアパートというか、屋根裏みたいなところのデザインがまたすばらしいのです。なにかフランス映画からもってきたのだろうと思いますが。

以前、「映画のトポロジー」という記事を書きましたが、『銀座の恋の物語』はその側面で非常に興味深く、石原裕次郎とジェリー藤尾のアパートからは、浅丘ルリ子(と和泉雅子)が働いている店が、中庭のような不思議な空間を挟んで見えるという、なかなか魅力的なセットデザイン(ないしはロケーション)でした。

ついでにいうと、深江章喜が、いつもの暴力的悪党ではなく、ちょび髭をはやした、おフランス帰りみたいな、嫌みでキザな詐欺師に扮していて、これがまたじつに楽しいのです。冗談ではなく、赤塚不二夫の「イヤミ」がモデルじゃないでしょうか!

フィルモグラフィーをながめて、ああ、あいだにこれを入れないといけないのか、と思った映画。ほとんどなにも映らず、予告編にすらなっていませんが、ほかにはクリップがないようなので。

蔵原惟繕監督『憎いあンちくしょう』


渡辺武信『日活アクションの華麗な世界』でも賞賛されていましたし、近ごろはまたこの映画の評判はとみに高まっているようですが、わたしはどうも肌に合いませんでした。

60年代的メディア・ヒーローを登場させた気持はよくわかるのですが、その人物像が図式的すぎて、裕次郎のキャラクターと衝突しているように感じました。この主人公の性格づけから思い起こす現実の人物は青島幸夫ですからね。

ただし、ランジェリー姿の浅丘ルリ子には、おお、と思いました。いや、そういう描き方にもっとも端的にあらわれているように、ここでの浅丘ルリ子は、彼女に背を向けて去っていく滝伸次に涙を流す可憐な少女ではないのです。ここで、はっきりとギア・チェンジがおこなわれたと思います。

肌に合わなかったとはいえ、これはきちんと取り上げて、検討してみようかな、と、今後の記事の候補に入れてあります。

つぎに目立つのは『夜霧のブルース』ですが、これはクリップを発見できませんでした。

小林正樹監督『切腹』の翻案だといわれて、ああ、なるほど、と思いましたが、裕次郎が港湾荷役の会社に乗り込んでいき、長々とストーリーを話し、最後は「斬り死に」する映画でした。死んだことのなかった裕次郎は、じつに楽しい撮影だったといっていたそうです。これもちょっと再見してみたい映画です。

『憎いあンちくしょう』で大人の女として成熟する方向へ舵を切った浅丘ルリ子は、64年のこの映画、ムード・アクションの代表作で大輪の花を咲かせます。

舛田利雄監督『赤いハンカチ』


『赤いハンカチ』については、当家ではかつて長々と記事を書いたので、ご興味がおありの方はこのページの下の方にある特集一覧の右側の列、中頃のリンクをクリックなさってみてください。

このあとのルリ子=裕次郎ものは、だいたい路線がかたまって、一定の幅のなかで動いていく感じですが、印象深い映画が数本ありました。

松尾昭典監督『二人の世界』


これはなかなか凝ったストーリーで、フェリーノ・ヴァルガと名乗る石原裕次郎扮するヒーローは、昔、おしかぶせられて逃亡するハメになった事件の時効寸前に日本に戻って、冤をはらそうとしますが、これがなかなか思うようにいかず、けっこう意外な展開でした。しかも、浅丘ルリ子が、○×するし、そこに深江章喜の一徹なヤクザがからんで、最後までダレませんでした。

ただ、そこで我に返りますが、いわゆる「ムード・アクション」のパセティックな甘みというのは、こういう波瀾万丈すぎるプロットでは薄くなってしまい、そちらを期待するとちょっとうっちゃりを食った感じになります。

未見の方はこの段落を読まないでいただきたいのですが、浅丘ルリ子の愛ゆえの裏切りをどう受け止めるか、という「愛のモラル」の問題の提出はなかなか興味深く、日活アクションの定型にはまらない展開の作品です。

あれ、あの映画はなんといったっけ、というのがあって、逆戻りします。

松尾昭典監督『夕陽の丘』


石原裕次郎の兄貴分が中谷一郎、その情婦が浅丘ルリ子という設定で、あれ、となり、でも、これはただではすまないなあ、と設定自体に緊張させられる映画でした。

いま、キャストを見て、そうか、浅丘ルリ子は姉と妹の両方をやったのだったな、と思いだしました。美少女の延長線上と、大人の女の両面をひとつの映画のなかで描いてみようという、けっこういいところをついた企画だったことになります。

それほどよかったという印象はないのですが、中谷一郎が好きなので、それなりに楽しく見てしまった記憶があります。

つぎに印象深い映画は江崎実生監督の『帰らざる波止場』なのですが、これはクリップがありません。

これまた浅丘ルリ子が「かならずしもモラリスティックではない」女を演じていて、おおいに好みの映画です。横浜港の遊覧船に乗った浅丘ルリ子が、そっと指輪をはずして海に捨てる、というオープニングが好きでして、あのへんにいくたびに、そのことを思いだします。

それから、記憶で書きますが、音楽はほとんど軽いボサノヴァで(渡哲也と共演した『紅の流れ星』に近い)、そのあたりもおおいに好ましい味わいでした。

ここでもまた、浅丘ルリ子の暗い過去を、裕次郎扮する冤罪をはらすために帰ってきた男がどう受け止めるか、という「愛のモラル」の問題が提出されます。いい映画でした。

ルリ子=裕次郎のムード・アクション、掉尾を飾る大花火は、やはりこれでしょう。

松尾昭典監督『夜霧よ今夜も有難う』


あまりにも露骨な『カサブランカ』で、昔は見ていて尻がむずむずしたのですが、年をとると、まあいいか、という気分です。今度再見するときには、頭から尻尾まで楽しんでしまいそうな予感がします。

赤木圭一郎や渡哲也との共演、さらには植木等との共演など、いろいろ考えられるのですが、ほんとうにそういうのをやるか、これでおしまいにするか、まだ決めていません。



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by songsf4s | 2011-12-03 23:53 | 映画