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芦川いづみデイの日は暮れて
 
特段の理由はないのです。たんに、つい、うかうかと芦川いづみのクリップをたぐってしまい、本日、手元にあるのはこの話題だけとなってしまったのでした。

いやはや、ひとたび見はじめると止まらないもので、至福の時となってしまいます。まず、美男美女ばかりぞろぞろ出てきて、いい加減にしろよ、といいそうになるクリップから。長いのでクリックするならそのおつもりで。

西川克巳監督『東京の人』 - 芦川いづみ、月丘夢路、新珠三千代


男優のほうは滝沢修、葉山良二、青山恭二を確認できます。月丘夢路と葉山良二が会う場面の背景はいったいどこなんでしょうか。イタリア・ロケ、なんていわれたら信じてしまいそうな建築。

月丘夢路というのはちょっと妖艶というイメージだったのですが、大人になってから小津安二郎の『晩春』を見過ぎて、印象が変わってしまいました。しかし、こういう映画を見ると、やはり年増女の魅力を発散していて、ほほう、です。『鷲と鷹』のときより、こちらのほうがずっといいのではないでしょうか。

いちおう、テーマ曲(らしい)のほうも貼りつけておきます。やはり映画からのショットが使われています。

三浦洸一 - 東京の人


『東京の人』は未見ですが、こちらは再見したくて、かつてVHSを買いました。

中平康監督『あした晴れるか』


冒頭にやっちゃ場が出てきて、石原裕次郎がカメラマン、担当編集者が芦川いづみという映画はどれだっけ、なんてことをチラッと思ったことがあったので買ったのですが、明朗闊達単純明快、楽しい映画でした。

ご存知ない方のために注釈しておくと、やっちゃ場というのは東京青果市場のことで、かつて秋葉原駅のすぐまえにありました。いまや高層ビルが建ち並ぶ馬鹿馬鹿しさ。東京でもっともイヤな場所のひとつに変じました。

裕次郎扮するカメラマンが「東京探検」というテーマで写真を撮るという展開なので、あの時代の東京風景をたっぷり見られます。時がたつにつれて、その面でも価値が高まった映画です。

酔っぱらった芦川いづみが、「こんどは血まみれメリーちょうだい」といい、裕次郎に「血まみれ?」といわれ、「ブランデー飲むと回虫わかないの」というのに笑いました。いまや、「回虫ってなによ」という人も多いのでしょうが。

西河克己監督『青年の椅子』


藤村有弘が芦川いづみの婚約者という設定は無理無理で、観客は即座に、これは破談になるな、と卦を立ててしまいますなあ。

浅丘ルリ子は沈鬱な表情の多い役がずいぶんありましたが、芦川いづみは「明るく朗らかに」を絵に描いたような役柄が多かったような記憶があります。

石坂洋次郎原作ものからくる印象なのでしょうが、「わたし、これからの女というものは、これこれこういうことが大事なのではないかと思います。男女のことも、いままでのようなじめついた日陰のものとしてではなく、明るい太陽の下で考えるべきなのではないでしょうか」などといった意見を正面から述べたり、ポンポンと男をやりこめるような役も似合いました。石坂洋次郎的な戦後民主主義を具現した存在と、すくなくともわたしは見ていました。

そういう民主主義という抽象観念の肉体化の極北は、この映画での役かもしれません。やはり石坂洋次郎原作。

中平康監督『あいつと私』


60年安保を(あまり目立たない)背景にした、裕福な家庭の子女が通う私立大学の学生たちの話ですから、自然と女の自立といったテーマが忍び込んで、芦川いづみはしきりに政治観、人生観、社会観を一人称で(!)陳述します。まあ、彼女がやると、角が立たず、そういう女性像も魅力的に見えます。

脈絡もなく、いま目についてしまったので、貼りつけます。アクションの日活としては、やけくそみたいに異質な映画でした。

森永健次郎監督『若草物語』


大昔、テレビで見たときは、芦川いづみが長女で、その下が浅丘ルリ子、という設定がちょっと意外でした。まあ、微妙なところですが、どちらかというと、浅丘ルリ子は長女的と感じます。

結局、石原裕次郎や小林旭でまわしていくことが苦しくなり、松竹かよ、という日活にはありえないような女性映画が生まれることになったのでしょう。

美女たちが妍を競うのは麗しいのですが、しかし、なんだか物足りない映画でした。キャスティングがまわらなくて、苦肉の策としてこういう映画をつくるのはやはり賢明ではないのでしょう。男優の粒が小さくて、女優の豪華さが生かされていませんでした。

それにしても、いつもの文脈から脱出したはずだった吉永小百合は、またここにも浜田光夫が待っていて、なーんだ、だったのでしょうねえ!

もう一本。これまた、ポンポンまくしたてる戦後的女性を演じています。

牛原陽一監督『堂堂たる人生』


日活はタイプ・キャスティングというか、そんなことをする余裕すらなく、主演ははじめから決まっていて、それに合わせて話を選んだり、つくったりしていたわけで、『若草物語』のように不安定なキャスティングは例外中の例外、この『堂堂たる人生』も、いつもの安定したキャスティングです。

とはいいながら、桂小金冶がまた寿司屋のオヤジというのは笑ってしまいます。この人はほかの役ができる気がしません!

わたしのもっとも好きな芦川いづみ出演作品は『あじさいの歌』ですが、これは残念ながらクリップがありませんでした。以前はあったのですけれどねえ。もっとユーチューブを活用してくれるといいのですが。

それにしても、なぜ、昭和30年代の日活映画を見ていると、こうも幸せな気分になるのでしょうか。わがことながら、じつに不可解千万です。


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by songsf4s | 2011-11-29 23:44 | 映画