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お嬢さん、失礼ですが、お名前は?――スターの向こうのガール・シンガーたち
 
昨日、アリサ・フランクリンを聴いていて、ほら、これじゃなくて、あの曲、と頭のなかでジタバタしてしまいました。思いだしたかったのはこの曲。

Aretha Franklin - Respect


もうひとつ続けて、わたしが「同系統」と感じるアリサ・フランクリンの曲を。

Aretha Franklin - I Say a Little Prayer


ユーチューブも最近は馬鹿にならないようで、ここまでくれば盤と同じ音質、イチニッパだなんて呆れた超低音質ファイルが、いっぱしに値段をぶら下げ、ウェブを駆けめぐっていますが、こうなるとユーチューブは立派な「配信バスター」です。

いや、この曲、もとの録音自体、かなりハイレベルで、これがトム・ダウドなら、やっぱり腕はたしかだったのだ、と思います。こういう立体感があり、クリアな音はもっとも好むところです。

それはともかく、タイトルに書いたように、本日の主役はうしろで歌っている女性シンガーたちです。

フロントのシンガーより、そういう人たちの声が気になることがしばしばあります。前回、アリサ・フランクリンを聴いているうちに、そちらのほうに気が流れました。

Respectでアリサといっしょに歌っているのは、妹だというのを昔読んだ記憶があったのですが、調べると、キャロライン・フランクリンという名だそうです。いくつか盤がありますが、姉さんのようには成功しなかったようです。

ついでにいうと、ドラムはジーン・クリスマン、ベースはトミー・コグビルです。Memphis Undergroudもコグビルだったような気がしますが、調べるのはネグッてつぎへ。

バート・バカラックとハル・デイヴィッドのI Say a Little Prayerをヒットさせた(たぶんオリジナルでもある)のはディオーン・ウォーウィックですが、このアリサ・フランクリン・ヴァージョンも、FENではよく聴きました。

どちらかというと、ウォーウィック盤より、アリサのほうが好みでしたが、その理由のいくぶんかはバックグラウンド・ヴォイスでした。こちらもクレジットがあります。スウィート・インスピレーションズが歌っているそうです(ドラムはロジャー・ホーキンズ)。

グループ名と同じタイトルという変な曲がヒットしましたっけ。

The Sweet Inspirations - The Sweet Inspiration


スウィート・インスピレーションズは、シシー・ヒューストン(娘がウィットニー、姪がディオーンとディー・ディーのウォーウィック姉妹)がつくったグループで、Just One Lookのドリス・トロイや、ジュディー・クレイも在籍したことがあるそうですが、I Say a Little Prayerのころのメンバーはよくわかりません。

スウィート・インスピレーションズのベースはたぶんNYで、バックグラウンドやデモで引っ張りだこだったとか。ちょうどハリウッドのブロッサムズのような存在だったようです。

アリサ・フランクリンが嫌いなわけではないのですが、声量があって、なおかつうまい、というのはわたしのおおいに好むところではなく、うしろで歌っているキャロライン・フランクリンやスウィート・インスピレーションズのほうに、強く耳を引っ張られました。

同じような、といっていいかどうかは微妙ですが、ギター・インストなどの女声コーラスというのも、同様の魅力があります。そういうことを意識するきっかけになった曲。

The Ventures - Lolita Ya Ya


これはスタンリー・キューブリックの映画『ロリータ』のテーマで、音楽監督と作曲はネルソン・リドルでした。サントラではなく、リドル自身による再録音なのだろうと思いますが、ともかく、元のほうをどうぞ。

Nelson Riddle - Lolita Ya Ya


これを聴いたときは、ふーん、でした。アレンジとしてはヴェンチャーズはかなり忠実にリドルの譜面をギター・コンボに置き換えていると思います。しかし、出来はヴェンチャーズのほうが数段上です。

それはなぜかといえば、ひとつはリード・ギターを重ねた音色のすばらしさ。レッキング・クルーの技量の高さが如実にあらわれたトラックです(この時期には、ツアー・バンドのメンバーはスタジオではプレイしていない)。

そしてもうひとつ、女性コーラスもヴェンチャーズ盤のほうがずっとチャーミングです。この二つで、勝負はついた、といっていいでしょう。

さらに魅力的な女声コーラス入りギター・インスト。

The T-Bones - No Matter What Shape (Your Stomach's in)


これまたレッキング・クルーの仕事で、ドラムはハル・ブレイン、ギターは不明ですが、この時期のTボーンズのリードはしばしばトミー・テデスコがプレイしていました。初期にはグレン・キャンベルが派手なプレイをしているLPもあります。

ギター・インストというのは、ご存知のように、ギンギラギンのギター・プレイを聞かせるものではありません。楽曲とサウンドで勝負するものです。

だから、たとえばシャドウズは、低音弦でスタートして、ひとまわりするとオクターヴ上げたり、ミュートに切り替えたり、半音移調をしたりといった工夫をしました。

Tボーンズが、というか、プロデューサーのジョー・サラシーノが、というべきでしょうが、女声コーラスを入れたのは、当然、そういう意図でしょう。

こういうタイプのサウンドがお好みならば、右のリンクから、Add More Musicにいらっしゃり、「レア・インスト」ページで、TボーンズのNo Matter What Shape (Your Stomack's In)とShippin' Chippin'をお聴きになるといいでしょう。とくに後者は女声コーラスのアルバムといってもいいほどです。

こうした女声コーラスをやった人たちの名前というのは、すごく気になるのですが、Tボーンズについては、いまだに判明していません。

また、日本ではむしろ、No Matter What ShapeよりヒットしたShippin' Chippin'のシングル・ヴァージョンも、女声コーラスが魅力的なのですが、これはクリップをエンベッドできないので、ご自分で検索なさってみてください。

お嬢さん、失礼ですが、お名前は?――スターの向こうのガール・シンガーたち_f0147840_004868.jpg小学校のときは、どういうわけか女声コーラスが好きで、つぎの曲もやはり映画を見ておおいに気に入り、つづけて二度、映画館に行きました。

依然としてクリップはないようなので、以前アップしたサンプルをもう一度貼りつけます。映画『黄金の男』のテーマ。

サンプル Martial Solal "Generique"

いやはや、だれがいけないのか、全体にピッチが狂って聞こえます。主犯はベースだと思いますが、それだけではないような……。

Tボーンズのほんわりとした味とはかけ離れた、強い歌ですし、インストというより、ほとんど歌のほうが主役に聞こえますが、気分はTボーンズと同じようなものなのだと思います。

アメリカのほんわりとしたものに戻ると、すでに記事にしたものですが、これが代表のような気がします。

Robin Ward - Wonderful Summer


フロントのロビン(ジャッキー)・ウォードは、本邦にはファンが多いようで、LPでもリイシューがあり、CD化もされました。ドラムはほとんどハル・ブレインで、その面でも楽しめるアルバムでした。

ただ、純粋に声だけでいうと、わたしはロビン・ウォードより、バックグラウンドで歌っているジャッキー・アレンのほうが好きです。まあ、フロントを食ってはいかんのですが、そういうことはまま起きるものです。ジャッキー・アレンは全編で大活躍しています。

最後に、ちょっと毛色の違うものを。女声コーラスなしだとドンと価値の落ちてしまう曲です。

James Taylor - Long Ago and Far Away


うしろで歌っているのはジョニ・ミッチェルです。いまじゃ、アン・マレイと並ぶ魔女声おばばになってしまいましたが、若いころは可憐な声をしていました。

いや、でも、彼女は本質的に、フロントで歌うより、こういうふうにうしろに下がったときに、フロントを食ってしまう、魔女タイプのシンガーだと思いますが。

ジェイムズ・テイラーは完全にジョニ・ミッチェルの引き立て役になっています。いや、わたしがこのシンガーをあまり好かないから、そう思うのかもしれませんが。

ヴァレリー・カーターなんかも、若いころはそういうタイプだったと思うのですが、これだ、という決定的な録音が思い浮かびません。バックグラウンドの仕事はけっこうやったと思うのですがね。

ジョニ・ミッチェルでおしまいと思ったのですが、もうひとついっちゃいます。そのヴァレリー・カーターが、バックグラウンドではなく、フロントで歌っているトラックでお別れとまいりましょう。コーラスも彼女のオーヴァーダブでしょう。ジュディー・コリンズのヒットのオリジナル。

Howdy Moon - Cook with Honey


なんともはや、かくも可憐なりしに、時は残酷な死神、彼女もまた魔女への道を歩みつつあります。


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アリサ・フランクリン
Now
Now


アリサ・フランクリン
I Never Loved a Man the Way I
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スウィート・インスピレーションズ
Sweet Inspirations
Sweet Inspirations


Tボーンズ
No Matter What Shape (Your Stomachs In)
No Matter What Shape (Your Stomachs In)


Tボーンズ(中古)
No Matter What Shape/Sippin And Chippin
No Matter What Shape/Sippin And Chippin


マルシャル・ソラル(『勝手にしやがれ』と『黄金の男』のOST)
A Bout de Souffle
A Bout de Souffle


ロビン・ウォード(MP3アルバム)
The Very Best Of
by songsf4s | 2011-11-21 23:59 | 60年代