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The Best of Jim Gordon 補足2 リッキー・ネルソンのサイケデリック・エラ・アルバム、Perspective
 
今日はツイッター上で、いくつかSmile Sessionsボックスの話題を見ました。史上もっとも有名な未完のアルバムでしょうが、未完というのはやはり弱いといわざるをえません。

「定本」があれば、そこにいたる道筋として、セッションを聴くのは血沸き肉踊る体験になりえますが、Smileの場合は、存在しなかったアルバムが完成した姿を想像する必要があります。

いちおう、ボックスのディスク1は、ありえたかもしれないSmileのリリース・ヴァージョンのようなものが収録されています。しかし、これはあくまでも「仮想」にすぎず、完成品と思えといわれても、困惑します。

ふつうのアルバムなら、想像力によって「完成」できるかもしれませんが、Smileはそうとうアヴァンギャルドが入っていますからね、ふつうの道をたどって、リスナーが再構築するのはほとんど不可能事です。まあ、近々、聴くだけは聴いてみようと思いますがね(センセ、パフューム・ボケはいい加減にして、クレジットぐらいおせーてくだせーな)。

Smile Sessions、箱の中身


この動画、アップローダーの名前がBeachBoysとなっていて、おまえ、そういう名前を使うのはいくらなんでも図々しいぞ、と思ってから、あ、ひょっとしてホンモノかよ、と思い直しました。オフィシャルCM動画かもしれません。

さて、今日もまたブライアン・ウィルソンに立ち向かうだけの余裕がないので、ベスト・オヴ・ジム・ゴードン補足のつづきをします。今回はリック・ネルソンの盤です。

リックのドラマーといえば、デビュー当初はアール・パーマー、その後、レギュラーのツアー・バンドをもってからは、このあいだのPet Soundsの記事でも登場したリッチー・フロストといったところです。

ジェイムズ・バートン、ジョー・オズボーン、リッチー・フロスト、それに、ジーン・ガーフまたはグレン・ハーディンを擁した超豪華ツアー・バンド(エルヴィス・プレスリーが居抜きで譲ってほしいとリックに申し入れたという伝説がある。じっさい、後年、エルヴィスはジェイムズ・バートンをバンド・マスター兼ギタリストとして迎え入れる)は、維持できなくなり、1963年に彼らはフリーランスになります。

ビートルズ登場以後のリック・ネルソンは低迷し、Garden Partyで復活を果たすまで、ドサまわりをつづけた、というのが一般にいわれているところです。

わたしはハリウッドに関するかぎり、全方位で聴く人間なので、しばしばディテールをおろそかにしてしまいます。ファンとしての基本的な作法である、全作品をいちおう聴いておく、なんてことも怠ってしまうのです。

リック・ネルソンは好きなのですが、それはヒット・アフター・ヒットの時代についてであり、それ以外ではGarden Partyのアルバムを買ったぐらいで、あとは欠落していました。いやはや、すまんことです。

と、リックに怠慢を謝っておき、その低迷期のアルバム、1968年のPerspectiveを、ジム・ゴードンゆえに聴いてみました。

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「アイタッ」でした。リックのヴォーカル・レンディションはともかくとして(すまん)、サウンドはあの時代のハリウッド丸出し、ゴージャスだったのです。

非常に雑駁ないい方になりますが、同時期のモンキーズの曲、たとえば、Someday Manなどと共通する、いわばモダーン・ロックンロール・オーケストラ・サウンドとでもいったものと感じます。

まずはアルバム・オープナー。

Ricky Nelson - When the Sun's Shined Its Face on Me


出だしは、ジミーにしてはいまひとつかな、と思いますが、エンディングにかけてのプレイはなかなかなものです。高速四分三連のフィルインが魅力的。

ドラミングとしてはこちらのほうがすぐれています。

Ricky Nelson - The Lady Stayed With Me


弦のプレイヤーまで列挙されていて、クレジットはむやみに長いのですが、リズム・セクションのパーソネルだけ書き写しておきます。

ドラムズ……ジム・ゴードン
ベース……ジョー・オズボーン、ハーヴィー・ニューマーク
アップライト・ベース……ジミー・ボンド
ピアノ……ドン・ランディー
オルガン……ジョン・フォーリー
ハープシコード……マイク・ルビーニ
ギター……ジェイムズ・バートン、マイク・デイシー、テリー・ボイラン、ジェフ・コマンダー、ジョン・ボイラン、デイヴィッド・コーエン、ラリー・コリエル
パーカッション……ミルト・ホランド、デニス・ブルース、ジョン・クローダー

60年代のハリウッドにしては知らないプレイヤーの多い録音ですが、この時期のツアー・バンドのメンバーも入っているということなのかもしれません。

このアルバムはひとりのアップローダーが徹底的にあげたようで、必要なものはみなクリップがありました。

60年代のジム・ゴードンは、ハル・ブレインにあまりにも似ていて、何度も取り違えています。つぎの曲なんかも、ブラインド・テストされたら、ハル・ブレインと答えかねません。

Ricky Nelson - Three Day Eternity


なかなかけっこうなドラミングです。なぜハルとまちがえやすいのかというと、タイムが似ている、チューニングがそっくり、というのがまず大きな理由ですが、もうひとつ、スティックの使い方、手首の使い方が近いのだと思います。よくスナップをきかせ、「手首でヒットする」タイプなのでしょう。腕力よりも、リストの強さで打つスラッガーというのがいるでしょう? あれです。

そういうタイプの場合、スネアの音は、高めのチューニングと相まって、軽やかになります。それで、スネアのバックビートだけ聴いていると、ハル・ブレインなのだか、ジム・ゴードンなのだか区別がつけられないことが多いのでしょう。

しかも、60年代のハリウッドの若いドラマーは、ハル・ブレインのように叩こうと努力していました。ハルのようなサウンドで、ハルのようなフィルインが叩ければ、仕事はいくらでもあったのです。

ジム・ゴードンはハル・ブレインの推薦によって、ハルが都合をつけられないセッションに名代として行きました。傑出した才能のあるドラマーが、意図的にハル・ブレインに似せようと思って叩いたのだから、そっくりになって当たり前というべきでしょう。

アルバムPerspectiveがリリースされた1968年、リック・ネルソンはすっかりデモードなシンガーになっていました。見ようによっては時代に阿たようなサウンドなので、かえって、似合わないアルバムと受け取られたかも知れません。

しかし、そうした時代のコンテクストから遠くなったいまこのアルバムを聴くと、サウンドとしてはよくできているし、なかには悪くないヴォーカルもあり、いままでこれを聴かなかったのは、先入観による間違いだったと感じます。

リック・ネルソンを聴くなら、やはり60年代初期だと思いますが、ハリウッドのエースたちのプレイを聴くなら、Perspectiveは捨てがたいアルバムです。


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by songsf4s | 2011-11-03 23:54 | ドラマー特集