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ビートルズのヴァリアント Revolver Sessions
 
ビートルズのAnthologyは、フランク・ザッパのBeat the Bootシリーズと同じで、山ほどどころか、星の数ほども出まわっているブートの息の根を止めるための、ブート・バスターだったのでしょう。つまり「オフィシャル・ブート」です(もうひとつの目的はジョージ・ハリソンを経済的に援助するためともいわれていた)。

たしかに、ブートでおなじみのもの、たとえば、How Do You Do Itであるとか、Strawberry Fields Foreverの合成前テイクといった上澄みはもれなく、最高の音質で収録されましたし、さすがは本家のブート(ちがうか)と感心するものも出てきました。

いちばん気に入ったのは、この曲のこのヴァージョン。

The Beatles - And Your Bird Can Sing (vocal overdubbing onto take 2)


聴けばわかることを説明して恐縮ですが、つまり、ヴォーカルまで含めていちおうできあがったテイク2に、さらにふくらませるために、ジョンとポールだけでヴォーカル・オーヴァーダビングをおこなっているところです。

右チャンネルは二人のヴォーカルが完了しているもので(ジョンのヴォーカルはすでにダブルになっている)、新しい「ヴォーカル」(になりそこねた!)はセンターに定位されています。

どこに感銘を受けたかというと、元からあるジョンのヴォーカルの「When your prized possessions start to weigh you down」のdo-o-o-o-wnというジョンの声とヴォイス・コントロールです。思い起こせば、ジョンのこういうところが子どものころはたまらなく好きでした。

感傷とは異なったレベルでいうと、このアレンジはリリース・ヴァージョンよりずっとポップで、あとちょっとでシングルというところまでいっているのに、とも思いました。とくに12弦が効果的ですし、6弦のプレイを積み上げたレイヤーの響きもおおいに魅力的です。

おそらく彼らは、この万国旗びらびらの満艦飾ギター・レイヤーのきらびやかさが気に入らなかったのだろうと思います。Revolverで、彼らは実験的な音をめざしたのであって、ポップであることは過去に属していたのですから。

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どうであれ、わたしのほうは、こんな時期になってもまだ、ジョン・レノンはその必殺技を捨てていなかったことを知って、こりゃすげえ、と叫びました。つぎは、この失敗したオーヴァーダブ以前のものを聴きたいとせつに願いました。

ということで、つぎはそのオーヴァーダブ以前のテイク2を聴きます。こちらもユーチューブにあがっているのですが、このヴァージョンについては音質を重視したいので、サンプルにしました。

サンプル The Beatles "And Your Bird Can Sing" (take 2)

耳がビートルズに過適応しているのかもしれませんが、これを聴くと、なるほど、ヴォーカル・レイヤーはもう一層必要だ、と思います。すでにジョンはダブルですが、ここにジョンとポールのヴォーカルをもう一層載せれば、ギター・レイヤーとも釣り合いがとれ、じつに厚いサウンドになるにちがいありません。

このヴァージョンにたどりついて、あれ? と思ったことがあります。吹いてしまったテイク2では、ジョンはWhen your bike is brokenと歌っています。Anthologyのテイク2を聴いたときは、元々はbikeだったのが、のちに変更されてbirdになったのだと納得したのですが、笑い声なしのテイク2では、birdと歌っています。

bikeとしたのは、思いつきの冗談だったのかもしれません。あるいは元々はbikeだったのをbirdと変更して録音したのに、オーヴァーダブでまちがえて変更前に戻ってしまったのかもしれません。

ユーチューブに、このヴァージョンの「完成予想図」がありました。

The Beatles - And Your Bird Can Sing (take 2, fan mix)


ジョンとポールがオーヴァーダブ・セッションで吹かなければ、こういうものができあがっていたのではないか、というわけです。気持はよくわかります。ひどい音ですが、将来、ソフトウェアの改善によって、もっといい音でこういうことができるようになるかもしれません。

それでふと、ずっと昔、PCに関する論文(著者はアラン・ケイという人だった!)を読んだとき、いろいろ夢想したことを思いだしました。そのひとつは、いずれ、オリジナル・マルチ・トラックが売られるようになり、われわれは自分で好みのミックス・ダウンをして音楽を聴けるようになる、というものでした。

こんなこと、いまではその気になれば、すぐにできます。マルチ・トラックのファイル形式はサウンド・エディターによって異なりますが、たとえば、Audacityのようなフリーウェアをスタンダードにしようと定めてしまうか、ファイルにAudacityを同梱すればいいだけのことです。

ウェブでの配布でもいいし、先般のビートルズの24/96ファイルのように、USBなどのメディアでもかまいません。だれかやりませんかね? いや、どこかの会社でひそかに企画が進行しているかもしれません。

閑話休題。これにはいろいろな仮名がふられますなあ。「むだばなしはさておき」が多数派でしょうか。「それはともかく」というのも見た記憶があります。

てなことはさておき、もう一曲ぐらいはなんとかしましょう。とはいっても、もうサンプルにしたいものも見あたりません。ユーチューブを使って、好みのヴァリアントを少々あげるにとどめます。

The Beatles - Here, There and Everywhere (Take 14)


オーヴァーダブをする前に放棄したヴァージョンか、と思っていると、あとになってジョンとジョージのハーモニーが入ってくるところが、ちょっと感動的ですらあります。おおむねポールがひとりで歌うこのアレンジも悪くないと思います。

いまさらAnthologyのテイクを持ち出すのは気が引けますが、つぎの曲も最初に聴いたときは、これがボツは惜しいと思いました。

The Beatles - Got to Get You into My Life


あたくしはジョンのバッキング・ヴォーカルが大好きなので、この場合も、サウンドがどうとか、アレンジがどうとか、ポールのヴォーカル・レンディションがどうとかといったことは考えていなくて、ジョンがいいなあ、と思っただけです。

Revolverは微妙なアルバムだと昔も思ったし、いまも同じように感じます。まあ、あのような状態はいつまでもつづけるわけには行かず、ここらで大きな転換が必要だったことはたしかです。時代の要請もありました。

だから、変化したこと自体はけっこうだと思います。さはさりながら、デビューからRubber Soulまでの楽曲のレベルの高さを当然のことのように考えていたファンの多くは、Revolverで、やはり「あれ?」と感じただろうと思います。

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このあとにSgt. Pepper'sがあることがいまではわかっているので、たとえRevolverそれ自体には納得がいかなくても、Pepper'sへの助走と見ることができますが、リリースの時点では、なんだか中途半端なものに感じました。

Rubber Soulまではかならずあった、ジョンのきわめてすぐれた曲というのが、このアルバムにはないというのも、気に入りませんでした。She Said, She Saidなどは子どものときにはそれなりに気に入っていましたが、それも相対的なことにすぎません。たとえば、A Hard Day's Nightに収録されていたら、目立たなかったでしょう。

驚いたことに、ジョンは自分の声が嫌いだったそうで、このアルバムあたりから、ジョージ・マーティンに声を加工するように要求するようになったとマーク・ルーイゾーンは書いています。

RainやTomorrow Never Knowsに、それがストレートに反映されることになりますが、ポップなAnd Your Bird Can Singが改変されてあのようになったのもまた、「チャーミングなジョン」をジョン自身が否定した結果ではないかという気がします。

かくして、わたしにとっては、ここからは「神々の黄昏」、長い下り坂となります。次回は、下り坂でぐっと一踏ん張りし、持ちこたえようとした四人の音楽を聴きます。Against the Fall of the Nightといいたくなりますが。


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by songsf4s | 2011-10-19 23:56 | ブリティシュ・インヴェイジョン