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39年目の続編 グレイトフル・デッドのEurope '72 vol. 2
 
前回、つぎの記事で千件目だということは書いたので、本日はファンファーレなし、はい、これで千件です。

ずいぶん休んでしまい、失礼いたしました。体調が悪かったわけではなく、連休中は元気に歩きまわっていました。だんだん長距離を歩きやすい季節になってくるので、これからも歩きが忙しくて休むことはしばしばあると思います。暑いあいだは10キロ程度しか歩かなかったので、また30キロ歩ける足に戻さないといかんな、と思っています。

世間の連休後はブログ連休を利用して、映画を見ていました。黒澤明関係のドキュメンタリーが二本、瀧本智行監督『犯人に告ぐ』、原田眞人監督『クライマーズ・ハイ』、堤幸彦監督『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』、林海象監督『THE CODE/暗号』、三池崇史監督『神様のパズル』といった本編にプラスすることの、水谷俊之演出『ルパンの消息』というテレフィーチャー(最近は使わないか。劇場用長編映画すなわち「本編」=フィーチャー・フィルムに対して、本編並の長さのあるテレビドラマをテレフィーチャーといった)が一本です。

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『犯人に告ぐ』より横浜の夜景。

このリストをひとめ見ればおわかりのように、この十年ぐらいの日本映画を見ようと意図的に選んだものです。むろん、個々に副次的な理由(最近の宍戸錠が見たい、馴染みの場所でロケしたものが見たい、遠藤憲一の行く末を占いたいなど)がありますし、シリアス・ドラマは不得手なので、ミステリー、サスペンス、サイファイを選んでいます。

ほかにも『青島要塞爆撃命令』や『独立愚連隊』や『修羅雪姫』など、古い映画も見ているのですが、それはわたしにとっては日常にすぎず、特筆するようなことではないのです。

日本映画がどうなるかは気になるので、この数年は、新しいものも見ろよ、と自分に言い聞かせています。いまや日本を代表する監督となった例のあの人や、例のこの人の映画が苦手なもので(あんなもの、ほんとうにみんな面白いと思っているの?)、ついネグッてしまうのです。

上述の映画は、いずれもそれなりに楽しめました。バカヤロー、とか、なんなのこれは、どういう意味? なんてことは思いませんでした。まあ、シリアス・ドラマだとしばしばそういうことになるので、犯人はだれだ、とか、どうやって捕まえるか、なんていう確実な愉しみのあるものを選んだのですがね。それでもなお、林海象作品については、ちょっと、というか、たくさん留保するものがあります。

もっとも印象に残ったのは、『クライマーズ・ハイ』での遠藤憲一です。五年後がすごく楽しみだ、と興奮しました。年をとってからがほんとうの俳優人生、というタイプに見えます。逆に『ルパンの消息』の遠藤憲一は、すごく違和感がありました。いいものとよくないものの差がこれほど大きい人は、やはり注目に値します。

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『クライマーズ・ハイ』の遠藤憲一。

以上、思ったより長くなってしまった枕おしまい。

◆ 時が真実を告げる ◆◆
たしか、比較的最近の記事でふれたのではないかと思いますが、グレイトフル・デッドの(セールス的にではなく、音楽的に)もっとも実りの多かったツアー、1972年のヨーロッパ・ツアーのすべてのステージを収めたコンプリート・ボックスが先年リリースされ、すぐになくなったので、このあいだ追加リリースがありました。

猫も興味津々のコンプリート・ボックスのデザイン紹介(BGMはGreatest Story Ever ToldとSugaree)

(膨大な機材の運搬のためか、デッドは客船でヨーロッパに向かった。このデザインはそれを踏まえて、長期旅行用の衣裳用大型トランクのミニチュアになっている)

わたしは1968年のセカンド・アルバム以来のデッドヘッドですが、なにもかも集めるという行為は、デッドにかぎらず、まったく関心がないので、このモンスター・ボックスはもちろん見送りました。

しかし、デッドのライヴ盤でどれが好きかとなると、やはりEurope '72です。ビル・クルツマンのピークだった、ミッキー・ハートがいないシングル・ドラムの時期だった、キース・ゴッドショーが加わった、デッドの録音における試行錯誤が透明で重さのない独特のサウンドとして結実した、などの理由によります。

これはアルバムEurope '72には収録されていませんが、このツアーでのビル・クルツマンのスネアの音がもっともよくわかるクリップをあげておきます。

Grateful Dead - China Cat Sunflower Jam - I Know You Rider


つぎは、絵はありませんが、アルバムEurope '72のオープナーで、もっとも好ましい出来の曲のひとつ。

Grateful Dead - Cumberland Blues


デッドのグルーヴの独自性と魅力が端的にあらわれたトラックです。キース・ゴッドショーは大リーガー、ブレント・ミドランドはリトル・リーグの補欠というぐらいの差があったことが、はっきりとこのプレイで証明されています。ミドランドがいた80年代のデッドなんてアホらしくて聴けませんよ。

当時、Live/Deadというアルバムがあまりにも有名で、デッドのライヴ盤というと自動的にLive/Deadが指折られていましたが、わたしはEurope '72のほうが好きでした。

ドラムはひとりのほうがいいし、いなくなったドラマーがミッキー・ハートで、残ったドラマーがビル・クルツマンだったのだから、そして、彼の絶頂期は1970年から72年までだったのだから、当然、Live/DeadよりEurope '72のほうがいいに決まっています。

Live/Deadの前後のトラックも最近ではたくさん聴けるようになりましたが、それはべつに「Live/Dead II」といったような形でのリリースではありません。

しかし、Europe '72は、いまではデッドヘッズがもっとも愛するアルバムのひとつという評価が定まり、Europe '72 Plusなんていうファン・コンピレーションが出回ったりしていますし、ヨーロッパ・ツアーの盤は個別にリリースされてもいます。

そして、つい先日、Europe '72の「正規の続編」とでもいうべき、Europe '72 vol.2がライノからリリースされました。

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すぐれた作品の続編なんていうのは、あまりたいしたものにならないのが通弊ですが、Europe '72 vol.2は、続編とはいいながら、まったく異なった編集方針をとっていることが、トラック・リスティングスを見ただけでわかります。

Disc One:
1. Bertha - Tivolis Koncertsal,Copenhagen (4/14/72)
2. Me and My Uncle - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
3. Chinatown Shuffle - Tivolis Koncertsal, Copenhagen (4/14/72)
4. Sugaree - Olympia Theatre, Paris (5/3/72)
5. Beat It On Down the Line - Theatre Hall, Luxembourg (5/16/72)
6. Loser - Tivolis Koncertsal, Copenhagen (4/14/72)
7. Next Time You See Me - Olympia Theatre, Paris (5/4/72)
8. Black-Throated Wind - Tivolis Koncertsal, Copenhagen (4/14/72)
9. Dire Wolf - Jahrhundert Halle, Frankfurt (4/26/72)
10. Greatest Story Ever Told - Olympia Theatre, Paris (5/3/72)
11. Deal - Olympia Theatre, Paris (5/4/72)
12. Good Lovin’ - Jahrhundert Halle, Frankfurt (4/26/72)
13. Playing In the Band - StrandLyceum, London (5/24/72)

Disc Two:
1. Dark Star > - Bickershaw Festival, Wigan (5/7/72)
2. Drums > - Bickershaw Festival, Wigan (5/7/72)
3. The Other One > - Bickershaw Festival, Wigan (5/7/72)
4. Sing Me Back Home - Strand Lyceum, London (5/26/72)
5. Not Fade Away > - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
6. Goin’ Down the Road Feeling Bad > - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
7. Not Fade Away - Wembley Empire Pool, Wembley (4/7/72)
(タイトルの末尾にある「>」はメドレーでつぎのトラックに接続されていることを示す)

最初のEurope '72は、Jack Straw、Brown Eyed Woman、Ramble On Rose、Tennessee Jedというように、どういうわけか、封切りの曲が山ほどありました。後年、ジェリー・ガルシアが、リファレンスとしてスタジオ録音もしておくべきだった、とボヤいたほどです。

それに対して、もちろん、続編では、新曲封切りなどありえないため、おなじみの曲のヨーロッパ・ツアー・ヴァージョンが並んでいます。めずらしいのは、Next Time You See Meぐらいではないでしょうか(マイケル・ブルームフィールドをはじめ、相当数のカヴァーがあるブルースで、ピグペンがリードをとっている)。

また、同時期にリリースされたジェリー・ガルシアとボブ・ウィアのそれぞれのソロ・アルバムからの曲も、当時はむろん、スタジオ盤のリリースが接近しすぎていてライヴ盤に収録するわけにはいかなかったのが、今回のヴォリューム2では、そういう配慮は無用なので、収録されています(Sugaree、Deal、Loser、Greatest Story Ever Told)。

まだリリースされて間がないため、ユーチューブにはクリップがないので、一曲だけ、サンプルにしました。

サンプル Grateful Dead "Greatest Story Ever Told"

Greatest Story Ever Toldはボブ・ウィアの曲で、1972年に彼のはじめてのソロ・アルバムAceで発表されたばかりでした。Aceはキース・ゴッドショーがデッドに加わって最初のスタジオ録音でもあり、なかなかいいアルバムでした。

この曲はAceのアルバム・オープナーで、デッドにしてはめずらしいアップテンポのホットな曲だったこともあって、その後、ライヴではおなじみのレパートリーになりました。

しかし、とくに出来のいいものはなく、いずれも隔靴掻痒というぐあいで、今回のEurope '72 vol. 2で、やっといいライヴ・ヴァージョンを聴けました。

トラック単位でいうなら、BerthaはSkull and Rosesヴァージョンほどではないにしても、十分に楽しめる出来ですし(こちらはキース・ゴッドショーのピアノが入っているすぐれたヴァージョンという特色がある)、Black-Throated Windも、わたしが知るかぎりで、もっともいいヴァージョンです。

Loserもこのヴァージョンがベスト、Sugareeも上々の出来、Dire Wolfは、Dick's Picks vol. 8収録のアコースティック・ヴァージョンは別格として、エレクトリック・ヴァージョンとしては今回のものがベストです。

ディスク2のDark Starからドラム・ソロ、The Other Oneという接続は、ちょっとしたものです。ドラム・ソロの最後にThe Other Oneのタムタム・パターンが出てきて、ええ、まさかそのつなぎはしないでしょ、と思っていたら、ちゃんとThe Other Oneが出てきて、おお、本気かよ、でした。このパターンは二度とやっていないのではないでしょうか。大作と大作をつなげる豪快さは、若さあってのことのように感じます。総プレイング・タイムは52分30秒! 聴くのも楽じゃありません。

Good Lovin'はウォーロックス時代からの古いレパートリーで、デッドは何度も盤にしていますが、Europe '72 vol. 2のものは微妙にニュアンスがちがい、「クール・ヴァージョン」とでもいう趣です。これはこれでけっこう。キース・ゴッドショーのピアノのせいでニュアンスが変化したのかもしれません。

という調子で、39年目の続編は正編を上まわりかねない出来です。デッドは低音をカットする傾向があるのですが、そのもっとも甚だしいのがEurope '72でした。今回の続編でも、基本的には同じ音で、邪魔な低音の重さはありません。

しかし、ビル・クルツマンのドラミングは、続編のほうがずっといい音になっています。スネアもタムタム(正編よりすこし重めのミックスになった)もライド・シンバルも、じつにいい音になっていて、俺がドラマーだったら、こういう風に録音し、マスタリングしてもらいたい、と思うほどです。

いま、この記事をアップしようとして、ツイッターで杉浦直樹没を知りました。うっかりしていましたが、ついこのあいだまで長々と書いた『俺は待ってるぜ』は、杉浦直樹のデビュー作だったことを知りました。合掌。


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グレイトフル・デッド
Europe '72
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グレイトフル・デッド
Vol. 2-Europe '72
Vol. 2-Europe '72
by songsf4s | 2011-09-29 23:46